TOITAの「航空無線通信士受験塾」
夏休み特別企画
~実は、無線工学は、面白い~
今回は、「実は、無線工学は、面白い」と言うお話を致
します。
昔話で恐縮ですが、小学生の頃、東京の神田錦町にあり
ます科学教材社から出版されていました「模型とラジオ
」と言う雑誌を購読していました。
この雑誌は、前に 調べましたところ 1984年に廃刊にな
ったそうです。この雑誌は、子供向けに模型用の角材や
板、そしてケント紙、それに模型用のモーターを使った
模型の作り方を紹介したり、ラジオや無線機の作り方を
書いた月刊雑誌でした。
小学校の頃は、雑誌を見て模型を作っていました。その
頃は、雑誌を見ては、夢が広がり、特に長い夏休みは、
工作に集中する事が出来ましたのでそのクオリティは、
子供の作る工作の域を遥かに超えた物でした。
夏になると想いだす良い思い出です。
一方、ラジオの製作については、少し、記事を目にする
だけでしたが中学に入ると無線関係のクラブがあり、入
部する事は、極、自然でした。
知的興味をそそられるものでしたので、疑問より、それ
なりの知識が身に付く事が嬉しい時期でした。
また、自分で作った免許のいらない無線機から電波が出
る事、自体、子供だった私には、とても、エキサイティ
ングな事でした。
理系の人間には、私の様に、少しづつその世界に近づい
た人と高校または、大学からその世界に入って来る人が
います。
私は、前者の方なので後者の人の事は、分からないので
すが、工学の教え方は、高校 (工業高校)、大学( 工学部
)と同じ事を繰り返し教えてもらう項目が有りますが 上
の学校へ行くにつれ、教え方が 高度になっています。
例えば、中学の頃はアマチュア無線の免許を取る為に独
学していましたが受験参考書の内容は、今から思えば、
意味も良くわかっていなかっと思いますが、覚える事が
楽しかった時期でした。その頃、受験した資格は、覚え
るだけで受かる資格でした。
そして、高校では、初めて電子工学を勉強したのですが
、高校での教え方は、三角関数や対数等等数学が入って
きました。大学になりますと、微分積分は、もとより高
度な数学ばかりで説明されています。
数式が全てを物語っているのです。
数式が言っている事か分からないと全然ついていけませ
ん。
逆に数式が理解できますと、これほど、簡単明瞭に説明
できるのかと感動してしまいます。 ( この辺が理数系の
人間の感じ方なのかも知れませんネ。)
大学から工学を学ぶ人は、いきなり数式での説明から入
りますが普通高校での数学の知識がありますので、現実
味は、感じられないかもしれませんが理解は、される様
です。
航空無線通信士を目指す方は、大半が文系の方です。
私は、現在、大学で電磁気学や無線工学等を教えていま
すが、彼らに教える事は、比較的に楽ですし、教えてい
て楽しくもあります。
それは、小学校・中学で野球をやって来た学生に高校や
大学で野球を教える様なものだからです。
皆様は、実際に野球のプレーをされなくても、一応のル
ールを知っていますので、観戦して楽しむ事が、出来る
と思いますが、世界には、野球をやらない国の方が多い
のです。(2024年のパリでのオリンピックでは、 野球
は、行われませんでした。)
野球をやらない国の友人の前で日本人同士が野球の話で
もり上がっていたとしたら、その友人は、話の内容がサ
ッパリ分かりませので話の中へ入る事が出来ません。
こんどは、友人どうしが無線工学の話をしていたところ
へ皆さまが顔を出したとします。
するとこの時の皆様は、野球の話をしていた時に顔を出
した外国の友人と同じ状態になる事が容易に想像がつき
ます。
例えば、「航空無線通信士受験用参考書」と銘打った参
考書に八木アンテナの説明が有ります。
私は、参考書がどの様に説明しているか、参考の為に皆
様と同じ参考書をもっています。先ほど、ちらっと、眺
めてみましたところ、文系の方向けの説明では、ありま
せんでした。
とても、難しく感じられる事と思いました。
その一節を引用いたしますと、この様に書かれています
。
放射器B の後方λ/4 の位置にλ/2 より少し長い反射器C
を設け、Bの前方λ/4 にλ/2 より僅かに短い導波器 Aを
設けたアンテナである。
導波器の数を増やすと利得が増大し、指向性を鋭くする
事が出来る。
予備知識の有る方には、これでも良いのですが、そもそ
も、「電波」って何?と思われている方には、意味も分
からず、「放射器・反射器・導波器で構成されていて導
波器の数を増やすと利得が増大し指向性が増す」と言う
意味のわからない名称や専門用語の羅列ですのでまるで
呪文としか思えない事でしょう。
「利得」が何か?「指向性」が何か?サッパリわからず
現実味が感じられません。
八木アンテナについて説明するには、「電気」って何?
。「電波」って何?。
と言う所からお話をしなければなりませんので当講座で
は、「空中線と電波伝搬」の章でそれらのお話をいたし
ます。
それを読んで頂ければ、街中で見かける魚の骨の様な味
気ないアルミの棒の塊が身近に感じられ、これで放送局
と繋がっているのかと実感され、楽しくなってきます。
周りの友達の誰もが知らない事が手に取る様に見えてく
るのです。電波が見えてくる様な錯覚にさえ陥ります。
工学を教える方の多くは、相手が有る程度分かっている
事を前提にお話をされます。
全然知らない方に教えるのは、有る程度、分かっている
方に教えるのの何倍もの労力が必要になります。
書籍でしたら2倍以上の厚さになります。
参考書の著者がこの労力をおしまなければ、皆様は、容
易に理解出来る様になると考えています。
また、今迄、当塾でお受けした質問にお答えした時の皆
様方からの反応でもそれを感じます。
私は、思っています。入口さえ掴めれば、一度動き出し
た自動車が、どんどん加速する様に、勉強は、ドンドン
はかどると。
当講座を受講された方は、それを実感されますが、この
話を聞かれた方は、ウソだと思われる事でしょう。「無
線工学がそんなに簡単に分かる様になる訳ない。」と
無線工学の入口を見つける事の大切さをお話いたしまし
たが、次に大切な事は、物事の「本質」を掴む事です。
本質を掴むとは、物事を簡単に言い表せる事です。
六年前の6月。2年生で学部で成績が1番の学生が、第1
級陸上無線技術士の試験を受験するので勉強しているが
まだ、電子回路の授業が始まっていないので ”増幅” が
理解できないと質問に来ました。
この後にお話しします”増幅”の本質を説明しましたとこ
ろ腕試しに過去問をするたびに80点取れました。 90点
取れました。100取れましたと言って喜んでいました。
私の所へ来るたびに理解が進んだ様です。
本質を捉える事をトランジスターの増幅回路を例にお話
致します。
参考書のトランジスターの増幅の説明では、下の図には
、ありませんが、トランジスターのベースとそこに繋が
る抵抗の間に微弱な信号が繋がれますと、コレクター側
に信号が増幅されて出て来る事を暗に示しています。
そして、次は、式を駆使して電流増幅度や電圧増幅度、
そして電力増幅度の説明にはいります。増幅の意味が分
かりませんのに急に式を並び立てられても困られる事と
想います。急に説明が難しくなり皆様が理系の人間とは
、所詮、住む世界が違うので本気に勉強する必要が無い
、仮のものと思う様になってしまいます。
それでは「増幅」って一体、どの様な事なのでしょうか
?」ましてや、電流増幅度や電圧増幅度、電力増幅度等
は、なおさら分かりません。電流や電圧、そして、電力
が大きくなるのか?まさに、文系の方に対して、反則攻
撃の嵐です。
先にお話をしました、中学のクラブの先輩は、新入生の
私にノミが牛程に大きくなる事だと説明され、面白い例
だと思った事を今でも覚えています。
つまり、「増幅」とは、何かを大きくする事だと言いた
かったのだと思います。
しかし、今に思えば、その説明は、間違いなのです。
例えば、水の温度を上げる事を増幅に例えたとします。
図に× が描いて有る所で、左から入った水がガスの火で
温められて右からお湯になる様な事を増幅に例える事は
、誤りです。何故なら 上の図では 左から入った水と右
から出てくるお湯は、繋がっていますが増幅器では、入
力と出力が繋がっていませんので入力と出力は、別物な
のです。
次の図をご覧下さい。
図が少し分かりにくいのですが、左の水色のパイプに水
が循環しています。右の太いパイプには、温められてお
湯になった水が循環しています。両方のパイプの水が循
環しているのは、両方のパイプの中に水車が有り、連動
して回っているからです。
この様子を薄緑色で示す箱で覆ってしまえば、中が見え
ませんので、左の水が右からお湯になって出てきた様に
見えます。
この様に左のパイプの水の流れが、右のパイプでは、お
湯の流れになる事が増幅です。
左の水と右の水(お湯)は、別物なのです。
先のトランジスターの回路で言いますとベースからエミ
ッターに流れる信号による電流とコレクターからエミッ
ターへ流れる電流は、別物と言う事です。
入力側では、信号による電流。出力側では、電源による
電流が流れます。つまり、別の源から流れる別の電流な
のです。
右の水は、ガスと言う外部からのエネルギーの供給によ
り温められています。
ガスが供給されていなければ、右側のパイプの中を循環
するのは、お湯ではなく、水ですので、これまた、左の
パイプの水が右側のパイプを流れている様に見えるで事
でしょう。
増幅回路で言えば、外部からのエネルギーは、電源(こ
こでは、電池)です。
増幅を一言で言いますと、入力信号を拡大した相似形の
信号を出力側に作り出す事です。
工学部の学生でもここまで本質を考える学生は、いませ
んが、本質を掴んだ先の学生は、他の学生より又、一段
先へ進みました。
四年前、小惑星リュウグウにハヤブサ2が着陸しました。
以前、人工衛星の制御の仕事をした事がありましたが、
その作業は、電波を通じて行われます。
皆様も、航空無線通信士の免許を取得し、電波を通し、
通信をしたり、航空標識を利用されますと、いやおうな
く電波が身近になる日々が来ます。
次回から 3回に分けて実は、 法規は、面白いと言うお話
を致します。