TPP参加、強い意欲=原発新増設、個別に判断-野田首相

2011年10月18日 | news
TPP参加、強い意欲=原発新増設、個別に判断-野田首相

 野田佳彦首相は17日午後、首相官邸で内閣記者会のインタビューに応じ、環太平洋連携協定(TPP)について「日本は貿易立国であるべきだ。アジア太平洋地域は間違いなく成長のエンジンになるので、高いレベルでの経済の連携をしていくことは日本にとってプラスだ」と述べ、交渉参加に強い意欲を示した。

 TPP交渉への参加問題について、政府は11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議までの態度決定を目指し、農業再生のための基本方針と行動計画の取りまとめを急いでいる。首相は「特定の時期に特定の結論ありきではない。被災地の農業の再生をどうするか、産業の空洞化をどう回避するか、広範な視点から議論して、なるべく早い時期に結論を出す」と強調した。

 東日本大震災の復興財源から除外する方向で検討しているたばこ税増税に関し、首相は「公明党は決して反対ではないので、柔軟によく話を伺いながら対応していきたい」と述べ、最終的に除外しない可能性に言及した。自民党が復興債の償還期間を60年の建設国債並みとするよう求めていることについては、「従来の建設国債と同じになるから、それは違う」と否定的な見解を示した。

 建設を凍結した国家公務員朝霞宿舎に関し、首相は「(建設)中止も含めて財務省の検討会に判断を委ねたい」と述べた。

 一方、原発の新増設については、「進捗(しんちょく)状況が違う。建設が相当進んでいるものもあるので、案件ごとに個々に判断していく」と語り、着工済みの原発は完成後の稼働を認める場合もあるとの考えを改めて示した。(2011/10/17-18:34)

http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2011101700396






外務省、TPPの利点と懸念説明 民主の経済連携PTで
2011年10月17日22時1分

 外務省は17日、民主党の経済連携プロジェクトチームで、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に日本が参加したときに考えられる利点や懸念を交渉分野ごとに明らかにした。

 利点として挙げているのは、米国や豪州などへの輸出品の関税が撤廃され、資源の安定調達の道も開けることだ。一方、その裏返しとして、これまで日本が結んできた経済連携協定(EPA)では「聖域」だった農林水産品の「関税撤廃が求められる」とした。

 公共事業や金融分野ではおもに新興国で、日本企業の活躍の場が広がる可能性がある。外国人専門家や単純労働者が「国内に大量に流入する事態は考えられない」と説明。一方、米韓の自由貿易協定(FTA)では、韓国の医薬品政策に米国が異議を申し立てられるようになっており、TPPでもこうした規定が置かれる可能性があるとした

http://www.asahi.com/business/update/1017/TKY201110170545.html




単純労働者、来ませんからっ! TPP交渉参加の不安に政府が反論
2011.10.17 20:58

 民主党は17日、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉参加の是非を話し合う経済連携プロジェクトチーム(PT、鉢呂吉雄座長)の会合を開いた。政府側は、参加慎重派が懸念する外国人単純労働者の大量流入や、医療保険制度の大幅変更といった事態が起きない見通しであることを強調したうえで、交渉参加に理解を求めた。政府は11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会合までに、交渉参加の合意を取り付けたい考えだ。

 TPP交渉への参加をめぐっては、主に(1)外国人労働者や専門家の受け入れ(2)医療・保険制度(3)食品安全-の3分野で、党内の慎重派や日本医師会、全国農業協同組合中央会(JA全中)など関係団体から反対論が強まっている。政府は「(反対意見には)誤解に基づくものも多い」(枝野幸男経済産業相)として、説得を急いでいる。

 この日のPTで政府側は、労働者の流入について「短期商用目的や企業内転勤のケースは(移動自由化の)交渉対象だが、単純労働者は対象外」と説明。「流入が容易になるとは考えられない」と結論付けた。海外資格を持つ医師、弁護士など専門家の受け入れでも「海外資格をそのまま国内資格として承認する義務はない」として、即時の大量流入を否定した。

 一方、医師会などは、営利企業の参入による医療の質の低下や、保険診療と保険外診療を併用する「混合診療」解禁による医療格差の拡大を懸念。これについて政府は「いずれも交渉の対象外」として、国内の現行制度が維持される見通しを強調した。

 輸入食品の安全性確保については、仮にTPP交渉に参加した場合でも、検疫制度の変更などを一方的に求められるとは考えづらく、「たとえ求められても受け入れない」方針だ。

 政府側はPTを通じて慎重派の不安を払拭したい考えだが、慎重派の間ではPT役員の人選や会合の進め方といった導入部分ですでに異論が相次いでおり、今後、議論の難航も予想される。

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/111017/fnc11101720590011-n1.htm


経団連会長、TPP参加で労働力として移民奨励

 日本経団連の米倉弘昌会長は8日の記者会見で、「日本に忠誠を誓う外国からの移住者をどんどん奨励すべきだ」と述べ、人材の移動が自由化される環太平洋経済連携協定(TPP)への日本の参加を、改めて促した。

 米倉会長は「将来の労働力は足りず、需要をつくりだす消費人口も減る」と述べ、積極的な移民の受け入れが必要との考えを強調した。

(2010年11月8日19時58分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20101108-OYT1T00983.htm






TPP慎重派が戦線拡大=「医療劣化につがなる」-民主

 環太平洋連携協定(TPP)交渉参加問題をめぐり、民主党有志らによる「TPPを慎重に考える会」(会長・山田正彦前農林水産相)は12日、日本医師会の中川俊男副会長らを講師に招いて勉強会を開いた。農業分野以外の問題点を指摘し、慎重論を広げるのが目的。
 中川氏は勉強会で、TPPへの参加を「医療開国の危機」と訴えた。外資系企業が日本の医療に参入すれば高額の自由診療を行い、国は診療報酬を引き上げなくなるため、地方の病院などが立ち行かなくなるとの理屈だ。日本歯科医師会の宮村一弘副会長も「極めてリアルな懸念だ」と同調した。
 民主党の鳩山由紀夫元首相や国民新党の亀井静香代表らが出席。山田氏は終了後、記者団に慎重派の署名が190人に上ったことを明らかにし、野田佳彦首相への直談判について「そのタイミングを考えたい」と語った。(2011/10/12-20:38)

http://www.jiji.co.jp/jc/c?g=eco_30&k=2011101200867





TPPは「乗ってはならないバス」…亀井代表

 国民新党の亀井代表は12日の党議員総会で、環太平洋経済連携協定(TPP)について、「交渉参加ありきで乗り遅れてはいけないというのはバカな話だ。乗ってはならないバスに乗ってはいけない。乗ったら、途中で飛び降りることなんて出来ない」と述べた。

 自ら11日に藤村官房長官に電話し、TPPを議論する関係閣僚会合に同党の自見金融相を加えるよう要請したことも明らかにした。

(2011年10月13日00時30分  読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20111012-OYT1T00941.htm






TPPに「例外品目認めず」米農業団体が改めて強調(10/13 14:55)

 アメリカ議会がFTA=自由貿易協定を承認したことで、次の関心はTPP=環太平洋経済協定に移っています。アメリカの農業団体トップが、「全農産物を対象にするべきだ」と例外品目は認められないと主張しました。

 全米農業連合会、ボブ・ストールマン会長:「我々がいつも主張しているのは、すべての農産物を対象にする必要があるということだ」
 自由貿易の拡大を推進する超党派の議員集会に参加したストールマン会長は、「日本の農業団体がTPP参加に反対なのは知っている」としたうえで、仮に日本が交渉に参加してコメの関税率などについて「特別扱い」を求めても認めるべきではないという考えを示しました。TPPの骨格を決める話し合いは、各国の思惑が衝突して進んでおらず、集会に参加した議員からは先行きを心配する声も上がっていました。

http://news.tv-asahi.co.jp/ann/news/web/html/211013024.html







米韓FTA、議会が承認 対米輸出で日本不利に

 【ワシントン共同】米議会上下両院は12日、韓国など3カ国との自由貿易協定(FTA)批准に向けた法案について、超党派の賛成多数で可決した。最初の署名から4年以上が経過した米韓FTAは、両国が目指す来年1月の発効へ大きく前進した。

 発効すれば、米国を含む環太平洋連携協定(TPP)への参加判断が遅れる日本が、韓国との対米輸出競争で不利になることは確実。懸案のFTA批准にこぎ着けた米国は、TPP交渉を加速するとみられる。

 米韓両国は13日の首脳会談で、FTA批准を成果に同盟関係強化を打ち出す。

2011/10/13 10:26   【共同通信】
http://www.47news.jp/CN/201110/CN2011101301000135.html



対韓FTA、米議会が可決 日本企業は不利に
民主・共和歩み寄り、輸出促進と雇用増期待
2011/10/13 10:58

 【ワシントン=御調昌邦】米上下両院は12日、それぞれ韓国、コロンビア、パナマとの自由貿易協定(FTA)の実施法案を賛成多数で可決した。オバマ大統領が近く署名して同法が成立し、米国側の批准手続きが完了する。米政府は企業の輸出促進を通じ、米国の景気や雇用の改善を後押しすると期待している。米国市場では、日本企業が韓国企業に対し関税面などで不利な競争条件になる可能性もある。

 米議会は野党の共和党が下院の過半数を握る「ねじれ」状態にあるが、FTA法案では民主、共和両党が歩み寄った。上下両院の採決では両党議員の多くが賛成に回り、議会通過にこぎ着けた。

 オバマ大統領は可決後に声明を発表し、FTAについて「米国の労働者と企業にとって大きな勝利だ」と歓迎した。そのうえで「輸出を大幅に促進し、給料の良い何万人もの雇用の創出を後押しする」として、米経済にとって大きな意味があることを強調した。

 3カ国とのFTAはすべてブッシュ前政権が各国政府と署名したもので、議会承認までに4年超の時間がかかった。韓国側の批准手続きは終わっていないが、順調にいけば来年1月に発効する見通しだ。

 オバマ大統領は景気回復や雇用創出のため輸出を5年で倍増する目標を掲げており、今回のFTAは目標実現への大きな柱と位置付ける。特に3カ国で最も経済規模が大きい韓国とのFTAでは、今後5年以内に工業品や消費財の95%の関税を撤廃。輸出額を年間110億ドル押し上げ、米国内の雇用を7万人創出する効果を期待している。

 オバマ政権は通商協定の懸案だったFTA法案の議会承認が得られたことで、今後は現在交渉中の環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に力を入れていく可能性がある。

http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C9381959FE3E1E2E3E28DE3E1E3E2E0E2E3E3E2E2E2E2E2E2;at=DGXZZO0195570008122009000000

【TPP】米国外交公文、ウィキリークスが公表「日本、韓国その他の国を押しつぶすことができる」
民主党の規制仕分けという茶番劇 ~「規制を撤廃しろ」米国の対日要求 TPPで“拍車”






【米韓】 米紙「韓国、日本を追い抜いて米国最高の友人に、両国首脳の関係は…」[10/14]
http://kamome.2ch.net/test/read.cgi/news4plus/1318662471/-100

http://image.chosun.com/sitedata/image/201110/14/2011101401551_0.jpg
▲13日(現地時間)ホワイトハウスで李明博(イ・ミョンバク)大統領の国賓訪問に対する公式歓迎式後、オバマ大統領の執務室で開かれた単独首脳会談で両国大統領がポーズを取っている。

「韓国がアジアで(日本を抜いて)米国の新しい‘ベストフレンド(最高の友人)’になるのか?」

米国クリスチャンサイエンスモニター(CSM)は李明博(イ・ミョンバク)大統領の国賓訪問のニュースを扱って、アジア専門家の話を引用し「韓国と米国のきずながより一層強化され今はワシントンの最友邦国リストに韓国が日本より上に置かれるという分析まで出ている」と13日報道した。

米国ヘリテージ財団、ブルース・クリンナー(Klingner)専任研究員は「イ大統領とオバマ大統領が‘プロメンス(bromance・brotherとromanceの合成語で非常に親しい男性を意味)’関係と見える」とまで述べた。

同紙によれば、韓米FTAを貫徹するために米国政府は「韓米FTAが成し遂げられれば、米国は輸出が約110億ドル増える効果があり、数千の働き口も新しくできる」と雰囲気を評価した。また、4年を超え交渉してきた韓米FTA履行法案が米国議会で批准される成果を上げることによって、専門家たちは「北朝鮮の核問題と中国の軍事力拡張など東北アジア情勢も韓米両国関係に直ちにどんな波紋も起こし得ないだろう」と予想した、と同紙は伝えた。

ビクター・チャ、ジョージタウン大教授も「現在の韓米関係は歴史上最高に良かった頂点の一つに上がったようだ」として「イ・ミョンバク政権で韓国はアフガニスタンに派兵し、G20を成功的に開催したし、緑色成長を共に導いていくなど米国の最高の友好国になった」と話した。

だが、今回の米国国会の韓米FTA履行法案批准とイ大統領の米国国賓訪問が両国間に‘バラ色’の未来だけを見せているのではないと同紙は解説した。同紙はオバマ大統領が「もし米国人らが現代・起亜車を運転すれば、韓国人も同じようにシボレー・クライスラー・フォード車を運転しなければならない」と語ったと伝えた。

イ大統領はオバマ大統領の歓待を受けて米国を国賓訪問しながらデトロイトにあるゼネラルモータース工場も一緒に訪問する予定で、これは「‘米国産’自動車がソウルと釜山でも近い将来、たくさん目についたら良いだろう」ということをいうためのものだと同紙は分析した。


また、イ大統領の訪米のニュースなど友好的な韓米の雰囲気のためにまだ水面上に大きくあらわれていないが、▲米軍の性暴行問題▲米国経済危機とこれにともなう米軍縮小▲韓国国会での韓米FTA履行法案批准処理なども韓米関係を脅かす潜在的要素と指摘した。

ソース:朝鮮日報(韓国語) 米紙"韓、日制には米最高の友人、MBとオバマ関係は…"
http://news.chosun.com/site/data/html_dir/2011/10/14/2011101401788.html

関連記事:Is South Korea America's new best friend in Asia?
http://www.csmonitor.com/USA/Foreign-Policy/2011/1013/Is-South-Korea-America-s-ne
w-best-friend-in-Asia




オバマ大統領、「韓国、米国に売った分だけ買うのが均衡貿易」
2011/10/15(Sat) 12:21

バラク・オバマ米国大統領は14日(現地時間)、米国を国賓訪問中の李明博(イ・ミョンバク)大統領と米国自動車産業の心臓部、ミシガン州デトロイトのGM工場を訪問し、韓米自由貿易協定(FTA)を言及して、「韓国は米国に売った分だけ買う。これが均衡貿易」と強調した。オバマ大統領はGMオリオン工場の米国勤労者に、「米国人が現代・起亜の自動車を買うなら、韓国人も米国で製造されたシボレー、フォードを買うべきだ」と強調した。

http://contents.innolife.net/news/list.php?ac_id=1&ai_id=139411

「運命を共有」雇用増へアジア重視 オバマ米大統領演説「対米輸出、繁栄の道ではない」






米韓FTA、韓国野党は反発
2011.10.13 22:37
13日、ソウル市内ですわりこみ米とのFTAに反対する市民ら(AP)

 【ソウル=加藤達也】米韓自由貿易協定(FTA)の米国での批准が確実となったことを受け、韓国の政府・与党は今月中の国会承認を目指す。しかし、米韓FTAで生活基盤を奪われかねない農業関係者を中心に反発の声は根強く、民主党など野党は米国との再交渉を要求。与党側は強行採決も辞さない構えだ。

 「海外からの投資が増え、雇用創出につながる」

 李明博大統領は12日、米ワシントンで米国での議会承認を前にFTAによる効果を強調した。一方、野党民主党の孫鶴圭代表は「米韓FTAの発効で社会の二極化は深まる恐れがある」と徹底批判した。

 韓国では、ウォン安誘導による輸出振興策でサムスンなどの財閥系企業が業績を伸ばす一方、国民生活は年4・4%という消費者物価上昇と高い失業率の“双子の高率”に直面。生活水準の二極化が止まらない。

 特に農業関係者の不安は高まる。米韓FTAにより、畜産業では今後15年間で約7兆3千億ウォンもの生産額減少が見込まれ、「韓国農業は壊滅する」(農業関係者)との声も出る。

 野党に同調する世論は根強いだけに、来年に大統領選を控え、強行採決に持ち込めば政権に打撃を与える可能性もある。

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/111013/fnc11101322410023-n1.htm


FTA政策に見る日韓の温度差
「同盟」強化のために毒素条項を飲むのか?
趙 章恩

追加交渉の合意を批判する野党

 日本の新聞やネットのコメントを見ると韓米FTA締結を前向きに評価し、「日本はまた出遅れた」、「対米輸出における韓国との差は広がるばかり」と懸念する意見が多いようだ。しかし、韓国内でも賛成の声ばかりではない。意見が分れているのが実情だ。北朝鮮による砲撃直後の合意だっただけに「韓国は安全保障のために、米国との同盟を確固たるものとする必要があった。そのため、損をしてでも合意に踏み切った」と心配する声も大きい。


ネット世論は「毒素条項」を懸念

 韓米FTA関連記事の下に付けられたコメントは数十万件に及ぶ。ネット上の掲示板にも、反対する意見が目立つ。

 「韓米FTAにおいて、韓国の利益はどこにあるのか」。

 「北朝鮮の砲撃直後に追加交渉で合意するとはタイミングが絶妙すぎる」。

 「牛肉や自動車だけの問題ではない、その裏にある毒素条項を忘れてはならない」。

 「医療保険、教育、電気、ガス、水道など全部開放してしまっていいのか」。

 「自国の利益のために踏ん張る米議員を見習え」。

 ネットで討論が繰り広げられている「毒素条項」に関してまとめると、以下のようになる。

(1)サービス市場開放のNegative list:サービス市場を全面的に開放する。例外的に禁止する品目だけを明記する。

(2)Ratchet条項:一度規制を緩和するとどんなことがあっても元に戻せない、狂牛病が発生しても牛肉の輸入を中断できない。

(3)Future most-favored-nation treatment:未来最恵国待遇:今後、韓国が他の国とFTAを締結した場合、その条件が米国に対する条件よりも有利な場合は、米にも同じ条件を適用する。

(4)Snap-back:自動車分野で韓国が協定に違反した場合、または米国製自動車の販売・流通に深刻な影響を及ぼすと米企業が判断した場合、米の自動車輸入関税2.5%撤廃を無効にする。

(5)ISD:Investor-State Dispute Settlement。韓国に投資した企業が、韓国の政策によって損害を被った場合、世界銀行傘下の国際投資紛争仲裁センターに提訴できる。韓国で裁判は行わない。韓国にだけ適用。

(6)Non-Violation Complaint:米国企業が期待した利益を得られなかった場合、韓国がFTAに違反していなくても、米国政府が米国企業の代わりに、国際機関に対して韓国を提訴できる。例えば米の民間医療保険会社が「韓国の公共制度である国民医療保険のせいで営業がうまくいかない」として、米国政府に対し韓国を提訴するよう求める可能性がある。韓米FTAに反対する人たちはこれが乱用されるのではないかと恐れている。

(7)韓国政府が規制の必要性を立証できない場合は、市場開放のための追加措置を取る必要が生じる。

(8)米企業・米国人に対しては、韓国の法律より韓米FTAを優先適用
 例えば牛肉の場合、韓国では食用にできない部位を、米国法は加工用食肉として認めている。FTAが優先されると、そういった部位も輸入しなければならなくなる。また韓国法は、公共企業や放送局といった基幹となる企業において、外国人の持分を制限している。FTAが優先されると、韓国の全企業が外国人持分制限を撤廃する必要がある。外国人または外国企業の持分制限率は事業分野ごとに異なる。

(9)知的財産権を米が直接規制
 例えば米国企業が、韓国のWEBサイトを閉鎖することができるようになる。韓国では現在、非営利目的で映画のレビューを書くためであれば、映画シーンのキャプチャー画像を1~2枚載せても、誰も文句を言わない。しかし、米国から見るとこれは著作権違反。このため、その掲示物い対して訴訟が始まれば、サイト閉鎖に追い込まれることが十分ありえる。非営利目的のBlogやSNSであっても、転載などで訴訟が多発する可能性あり。

(10)公企業の民営化

 ほかにも、いろいろな毒素条項がある。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20101213/217516/?P=3






TPP参加自体が目的なのか(中野剛志 京都大学大学院工学研究科准教授)

 政府は十分な議論もせずに、TPP交渉への参加を急いでいる。
 対象分野は多岐にわたるのに、得られるメリットも明らかになっていない。
 日本がTPPに参加するとどうなるのかは、米韓FTAが参考になるだろう。
 韓国政府が喜んでいるのは、FTAを締結したという事実だけだ。

 環大平洋経済連携協定(TPP)を巡る議論が再び活発化している。政府内の推進論者は「まずは交渉に参加し、どうしても譲れないものがあるなら途中で離脱すればよい」との論理に立っている。

 しかし、途中離脱はほぼ不可能だ。交渉参加とは、参加を前提とする一定のコミットメントというのが国際社会の常識である。実際、多国間交渉から途中離脱した国の例はほとんどない。

 特に米国は日本のTPP参加に期待している。それなのに、日本が交渉参加を表明しておきながら交渉の途中で離脱したら、日米関係は者しく悪化するだろう。TPP交渉全体も混乱し、日本はすべての交渉参加国から国際的な信頼を失う。日本はいったん交渉に参加したら、こうした事態を恐れるがゆえに離脱できなくなる。勝算がなければ交渉には参加すべきではない。

 しかし政府は、勝算どころか「どうしても譲れないもの」とは何かすら明らかにせず、交渉参加を急いでいる。TPPの対象分野は、農業や工業だけではない。金融サービス、投資、政府調達、労働、環境、衛生など多岐にわたる。「どうしても譲れないもの」は数多いのに、十分な議論もせずに交渉に参加するのは無謀だ。

 日本が得られるメリットも明らかでない。TPPの交渉参加国に日本を加えて経済規模のシェアを見ると、米国が約7割、日本は約2割になる。経団連の米倉弘昌会長は外需獲得のためにTPP参加が必要だと言うが、TPPによって日本が獲得できそうな市場は米国にしかない。しかも米国の工業関税はすでに十分に低い。日本企業は米国での現地生産を進めているので、米国が関税を撤廃しても日本企業の受ける恩恵は限られよう。

 米国は5年間で輸出を倍増する方針だが、これは1ドル=70円程度でないと達成できないといわれる。現に円高・ドル安が進んでおり、また企業のグローバル化で、関税の有無はもはや企業の国際競争力を左右する決定的な要因ではなくなっている。

 輸出倍増を掲げる米国が日本から得たいものは、通商代表部の報告書を見れば一目瞭然だ。そこに挙げられている項目は農業はもちろん、通信、IT C盾報技術)、医療機器・医薬品、金融サービス、法律、政府調達、知的財産権、保険、投資、その他の障壁(自動車、自動車部品)と多岐にわたる。特に米国に強みのある金融・保険には関心が高く「日本の民間保険市場は米国についで巨大」だと狙いを定めている。

 リーマン・ショック後、米最大手の保険会社AIGが破綻し、国有化された。だから米国は、これまで以上に日本の保険市場に関心を抱いているのだろう。「共済に関する規制の基準・監督を競争相手である民間企業と同じ条件にすべきだ」としており、共済の解体を狙っているようにも見える。

 日本がTPPに参加するとどうなるかは、米韓自由貿易協定(FTA)という先行事例を見るとよいだろう。米韓FTAもTPPと同様に、急進的な貿易自由化を目指し、かつ対象範囲が広い。また米国の対韓要求は、対日要求と酷似している。

 その米韓FTAの結果はこうだ。農産品はコメを除き実質的にすべて自由化することになった。自動車は、米国メーカーが参入しやすいように安全基準や排ガス規制を緩和することになった。協同組合や郵便局、信用金庫の保険サービスは米国の要求通り、一般の民間保険と同じ扱いになることが決まった。法務。会計・税務サービスや知的財産権の条項も、米国の要求に従っている。投資家は不利益を被ったら政府を訴えることができるという条項もある。

 ちなみに、同条項は北米自由貿易協定(NAFTA)にもあり、これに基づき米国のある燃料企業はカナダ政府を訴え、敗訴したカナダ政府は燃料規制の一部を撤廃させられた。米国の進めるFTAとは、ある面で、各国が自国の安全や健康、環境を自分たちの基準で決められなくするものだ。

 米韓FTAで、米国の要求をのんだ見返りに韓国が得たのは、米国のたった2.5%の自動車関税や5%のテレビ関税の撤廃とコメの非自由化だけだった。オバマ大統領は一般教書演説で「米韓FTAで米国の雇用は7万人増える」と凱歌(がいか)をあげたが、これは韓国の雇用を同数奪ったことではないのか。

 韓国の前大統領政策企画秘書官のチョン・テイン氏によれば「主要な争点において、我々が得たものは何もない。米国が要求することは、ほとんど一つ残らずすべて譲歩した」。では、なぜ韓国政府は喜んでいるのか。それは、FTA締結自体が目的化していたからだ。チョン氏は言う。「官僚たちは決して責任を負わない。残る責任は大統領がかぶらざるを得ない」

 米韓FTAは、TPP参加が自己目的化している現実を私たちに教えていないか。官僚たちは責任を負わない。責任は国民が負うのだ。

日経ヴェリタス 10月16日
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/page-2.html#main







山田正彦(元農水大臣):TPPは農業だけの問題ではない! ── 日本は米国の51番目の州になる

今回のTPPインタビューは前農林水産大臣の山田正彦氏です。山田氏はTPPを農業だけの問題に矮小化されないよう注意を呼びかけます。
国会議員、大臣、牧場経営者、弁護士と多様な視点を持つ山田氏から、TPPが他分野に及ぼす影響を伺うことができました。

*   *   *   *   *

山田正彦氏(元農水相・民主党衆院議員)
「TPPは農業だけの問題ではない!」

TPPは"国の形が変わる"かどうかの大きな問題です。

TPP交渉では貿易はもちろん金融や知的財産などが協議されており、参加国は共通の制度で揃えるという動きのようです。制度を変えるということは国の形がかわるということです。極端にいえば、日本は米国の51番目の州になりかねない問題で、国民的議論が不可欠です。

しかし国民どころか、菅総理も実情をよくわかっていないように思えます。首相と動いている民主党議員が本当のことを伝えられているのでしょうか。

━国民に情報を出すはずの大手新聞社は「農業vs輸出産業」という対立構造で報じました

大新聞、何を考えてるんだという気分です。TPP交渉は24の作業部会で協議されており、人・モノ・金・サービスを自由にしていくものと考えられます。

例えば24作業部会には「政府調達」が入っています。地方自治体の公共事業は23億円以上の案件のみ外国企業が参入できます。TPPへの参加で公共事業の参入を自由にすれば、地方の土木会社は致命的な打撃を受けます。

「労働」について言えば、平均賃金1万5,000円のベトナム人労働者が自由に来れるようになったら日本の雇用状況はどう変化していきますか。

大手新聞が「農業が足を引っ張っている」と書いたことは大変残念です。インドとの2国間交渉では労働者の問題が最後まで残り、EUとのEPA交渉は自動車の安全基準が問題で進んでいません。ちなみに協定を結んでいるメキシコとの間でも、最後までもめたのは車の問題でした。それでも農業が自由貿易の足を引っ張っていると言えますか。国民は「TPPは農業の問題」と思い込んでしまいました。

─「自由化に反対するのは農業界」という報道の視点は相変わらずです。今回のTPP報道では毎度のことながら高関税率で「鎖国」する農業界というイメージが流されました

日本の農業は開国しています。EUの平均農産物関税率は19.5%ですが、日本は約11%で韓国の62.2%と比較しても相当低い方です。マスメディアがコメの関税だけをとりあげるので、国民は日本の農産物の関税は高いと思い込んでいます。

━農業政策と関税ゼロのTPPを同時に進めるべきだという意見があります

日本の農業は昨年から初めて戸別所得補償に取り組むことになりました。モデル事業を開始し、ようやく今年から本格実施という時に、TPPで関税をゼロするなんて誰が考えてもおかしいでしょう。

戸別所得補償と関税を下げるTPPはセットではありません。

現在世界中で食料危機が起こると言われており、ロシアやウクライナでは小麦など穀物の輸出を制限しています。一部の国では食料をめぐって暴動が起きているという時代です。食料は関税で守る部分は守り、自給率を確保することは当然のことです。

<米国の本当のねらい>

─TPP加盟国+日本のGDPを見てみると約9割が日米で占めます(参考:中野剛志氏インタビュー)。TPPは日米貿易の色が強く、「アジアの成長」との直接関係は薄いことがわかります


日本はTPP参加表明9国のうち、すでに6カ国と2国間協定を結んでいます。結んでいない国はニュージーランド、豪州、そして米国です。

米国の本当の狙いはどこにあるのでしょうか。日米の2国間で交渉するのであれば、お互いにセンシティブ品目を設けてFTAやEPAで進めた方が両国にとって利益になります。

1,200兆円とも言われる民間預貯金やゆうちょ預貯金が米国の狙いではないでしょうか。米国は民間の医療保険を日本に押しつけようとしているように思えます。このことも24の作業部会で話されているはずです。

─1月13日、14日にワシントンで日米協議がありました

今まで民主党内で16回の議論を経てTPPへの見解をまとめました。TPPの協議は情報収集協議にとどめることとしました。事前交渉でありません。

協議の内容は催促しても出してくれません。われわれにとってみれば今、大事なことは交渉の中身です。政府はどういうことが話されているのか、情報をオープンにして国民的議論にしてもらいたいです。

内閣府が10月に出した試算の根拠についても「出せません」と言ってきました。TPPに参加すればGDPが増えるという試算で、輸入がどれだけ増えるのか、国内の生産構造がどれだけ変わるのかなど、"国家機密"か知りませんが根拠を出せないようです。

http://www.the-journal.jp/contents/newsspiral/2011/01/tpp_8.html

中野剛志:TPPはトロイの木馬──関税自主権を失った日本は内側から滅びる
http://www.the-journal.jp/contents/newsspiral/2011/01/tpp_5.html

構図「製造業vs.農業」の目くらまし効果
問題は「24分の2」に矮小化、残り22項目の議論を聞いたことがあるか
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20110303/218708/?P=2

日本、家電の「純輸入国」に AV機器、初の「入超」








参考:先進的に自由化が進んでいるわが国農産物市場

1.自由化の進んだわが国農産物市場

 わが国の農産物市場は、諸外国に比較して閉鎖的で、国内農家は農産物への高い関税と国からの多額の補助金によって守られている、と認識されている方がまだまだ多いようです。 しかし、実態はかなり異なっています。先進国の中で、わが国ほど農業、農村を守っていない国はないのではないかと思えるほど、薄い政策しか講じられていないのです。 具体的には次のようになっています。
○低い関税率を設定しています。

農産物の平均関税率は12%で、EUの20%、スイス51%、メキシコ43%などと比較して低い水準となっています。米など特定の農産物には高い関税が設定されていますが、その品目は限られています。他方、野菜(3%)など多くの品目は低い関税率となっており、無税品目数も全体の4分の1程度になっています。 つまり、日本は農産物に関してもかなり開かれた市場になっています。

 *米は、現在341円/kg(精米:778%)の関税が設定されており、 民間の業者が主食用の米を輸入することは事実上できません。しかし、こうした高関税を設定する代償としてとして最低輸入量義務が課せられ、国がミニマムアクセス米として年約77万トンの米を輸入しています。その多くは、飼料米、加工用米に回り、一部を除き主食用として市場に出回るとことはありません。

○価格支持政策とは決別しています。

余剰農産物を、設定された価格で政府が買い上げ、当該農産物の市場価格を維持する仕組みは容易されていません。もっぱら、生産団体などによる在庫調整に対する国からの助成制度や生産調整によって対応しています。この点、欧米とはかなり異なっています。

○農家への直接支払い制度は不十分

 畑作については、麦、大豆、澱粉用馬鈴薯、てんさいを対象とした直接支払いがありますが、対象農家が限られ予算も限定されている。水田作については転作作物導入への支援として産地確立交付金制度などがあるが、これも限定的。

○輸出補助金はありません。

日本の農産物輸出は、品質で真っ向から勝負しています。欧米は、低い価格の農産物に輸出補助金を上乗せし、さらなる低価格での輸出をしています。日本の農産物輸出はなかなか容易ではありません。

2.厚いで政策によって保護されている欧米農業

 これに対し、欧米は高関税、価格支持と輸出補助金の三点セットによる手厚い農業保護をおこなっています。  例えば、乳製品には高い関税を設定し、豪州など安い乳製品との直接の競争にさらされないようにしています。また、余剰乳製品が発生した場合には、政府が一定の価格で買い上げ、価格の下落を防いでいます。典型的な価格支持政策です。

 関税の引き下げとなった農作物については、基本的に生産費と市場価格の差額を補填する直接支払いや不足払い制度によって農家の所得を補填し、安い外国農産物との価格競争でも生き残れるようにしています。

 さらに、過剰在庫が出てくれば、輸出補助金をつけた輸出、もしくは食料援助(聞こえはいいが究極の輸出補助ともいえる。)によって海外へ出しています。 こうした構図は、砂糖、小麦、綿花など他の主要農産物に適用されています。こうした経済支援のうえに、欧米の農業は成立しているのです。だからこそ、欧米は、戦後、自給率の向上を達成することができました。一方、関税は引き下げても十分な代償措置をほとんど講じてこなかったわが国の自給率は下がり続けました。保護の手厚さの違いが自給率の推移の際だった違いを生み出したといえます。

 国内農業保護は、米国では、別の形でも行われています。  穀物からのエタノール生産です。化石エネルギー依存からの脱却を旗印に、米国ではトウモロコシによるエタノール生産が盛んです。世界的な穀物価格高騰の大きな要因ともなりました。米国は、トウモロコシの市場価格が低い場合には、生産農家に対し不足払い方式による経済支援をおこなってきました。トウモロコシをエタノール生産に振り向けることで、需給を逼迫させトウモロコシの市場価格が上がれば、農家への補助金を削減することができます。その分はエタノール生産への補助に回すこともできるわけです。

 トウモロコシの価格上昇は、特にトウモロコシを主食とする開発途上国の住民の家計を直撃します。米国を違って家計に占める食料費支出の大きいこれからの国々では、主食となる食料の価格高騰は、死活問題にもなりまねません。

 世界への安定的な食料供給国を標榜してきた米国の、本当の姿がここにあります。

 ところで、なぜ、輸出補助金は何故問題か。

 輸出補助金は農産物の国際市場価格を下げます。輸入国側にとってありがたいことではあります。しかし、開発途上国などお金のない国は、補助金を出せず、低価格での農産物輸出では農家は生き残れません。つまり、先進国による輸出補助金は農産物の市場価格を押し下げ、開発途上国の農業生産拡大のブレーキとなっているのです。

 米国やEUは一方で輸入国の関税を引き下げ、その輸出先を拡大しています。 他方で、国内農業を保護し、輸出補助金によって余剰農産物を処理しつつ、それらが開発途上国の農業発展を妨げているという構図が浮かび上がってきます。

 開発途上国の農業発展のおくれは、先進国の輸出補助金だけで片付けられるほど単純な問題ではありません。しかし、少なくとも輸出補助金が重要な要素であることは間違いありません。

 おかしな話ですが、それが国際社会の現実です。

参議院議員 平野たつお公式Webサイト(平成21年12月)
http://www.tatuo.jp/091215nosan.html


【参考資料】



主要国の農産物平均関税率(出典:OECD)

インド124.3
ノルウェー123.7
韓国62.2
インドネシア47.2
メキシコ42.9
ブラジル35.3
タイ34.6
アルゼンチン32.8
EU19.5
マレーシア13.6
日本11.7
米国5.5

http://www.tatuo.jp/091215-3.pdf








評論家・屋山太郎 農業と心中のTPP反対は愚だ
2011.10.18 02:27

 TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉に参加するかどうかで、与党の民主党が割れている。TPPをめぐる党内の会合で、山田正彦前農水相は191人の署名を集めて、強い反対論を展開していた。言論界でも、東谷暁氏らが「平成の開国が国を滅ぼす」式の反対論を唱えている。

■ 貿易協定の歴史に理念あり

 農水族、農水官僚も含めて、この人たちは世界の安全や経済の成長がどういう枠組みで発展してきたのか考えたことがあるのか。

 第一次大戦も第二次大戦も、開戦に至った動機は、各国が経済的利益を追求した結果、ブロック経済の独善に陥り、傷を深めたからだ。この反省に立って戦後、GATT(関税および貿易に関する一般協定、後のWTO=世界貿易機関)がつくられて、各国が共通の貿易ルールを設定し、経済活動の輪を広げていくことになった。

 交渉は、東京ラウンド、ウルグアイ・ラウンド、ドーハ・ラウンドなどと名付けられ、一回の交渉に約10年を費やして、貿易自由化を徐々に進めてきた。先進国と途上国が貿易を自由化しようというのであるから、交易条件が異なり過ぎて、うまくは進まない。

 ウルグアイ・ラウンドは農業の自由化問題で行き詰まった。1993年、日本は細川護煕政権時代にコメの関税化を呑(の)む大英断を下した。これが予定通りに進行すれば、現在の800%のコメ関税は漸次、引き下げられ、今頃は関税ゼロが実現していたかもしれない。だが、続いて行われたドーハ・ラウンドで農業問題が進展せずに、交渉は打ち切りとなった。

■ 国際潮流に完全に乗り遅れた

 一方で、農業以外の分野で貿易を進めたいという国や農業を含んでも妥協の余地がある国が、互いに貿易協定を結ぶ風潮が強まってきた。交易の態様によって、EPA(経済連携協定)やFTA(自由貿易協定)と形は変わるが、日本は農業部門がほとんど自由化を拒否しているので、農業が支障にならないFTAばかりだ。完全に世界の潮流に乗り遅れている。貿易のGDP(国内総生産)に占める割合は、先進諸国の集まり、OECD(経済協力開発機構)34カ国中最低となっているのだ。

 私はかつて、ジュネーブのWTOで貿易交渉を取材したことがあるが、同じ農産品を抱えていても市場を広げた方が得をするということを悟った。貿易は、比較優位の品物が世界に広まり、世界中の人が最良の物を最も安い価格で手に入れられるのが理想である。

 日本の農水官僚や農業団体、族議員は将来の利益を見ず、自由化といえば闇雲(やみくも)に反対するだけだ。バナナを自由化しようとしたときには、青森県のリンゴ農家が大反対した。リンゴが売れなくなるというのだ。だが、自由化に踏み切ると、青森リンゴの改良が進んで多種類のリンゴを供給するようになった。今では台湾や中国に輸出され国内消費も格段に増えた。

 アメリカンチェリーの輸入自由化に当たっても、山形県を中心とする産地が猛反対したが、今や、山形産サクランボは「高級品化」を遂げる一方、米国のサクランボも大粒化している。日本のサクランボの生産額は、あるシンクタンクの試算によれば、この17年間で1・5倍に増えている。

 東谷氏は、米韓FTAは多分、発効しないと述べていた。米韓が発効しないから日本も焦るなという理屈は奇妙だ。が、オバマ米大統領は、国賓として訪米した韓国の李明博大統領との間で米韓関係を経済・貿易分野も含めた「多元的戦略同盟」に格上げすることで合意した。韓国は協定発効後、5年間で農業対策を講ずることになる。同じ経済基盤に立つことは安全保障上も重要な意味がある。

■ 米韓FTAで日本空洞化加速

 日本はTPPへの反対理由として、自国の「農業保護」しか見ていないが、韓国は自動車、テレビなど非農業部門の生産性や所得が上がってこそ、自国農産物の消費も増えるのだと理解している。

 日本がTPPに加盟するもう一つの意味がある。米韓同盟が経済を加えた多重性を追求しているごとく、米国を中心に太平洋を取り巻く国々との連携を強化し、安全保障の効果を高めることだ。

 米韓FTAの発効を機に、円高に伴う日本企業の韓国への流出は加速するだろう。日本企業が韓国で製造して米国に売る場合、関税の2・5%はなくなるからだ。加えて、日本の法人税率が40%なのに対し韓国の法人税率は24%、電力料金は日本の4割と安い。

 コメを守ることは日本経済を守ることにならない。農業分野では蔬菜(そさい)、果樹で自立している農家は少なくない。成功している分野ほど国や農協が口を出していない。土木業からの新規参入の希望は多いから、参入を自由にするための農地法の改正が不可欠である。

 コメ問題の解決法は二つある。一つは規模拡大する農家に厚い補助をすること。二つ目はコメの品種改良を行う一方、関税を自ら引き下げていくことだ。こうした農業構造の流れを阻害しているのは農協の存在と知るべきだろう。(ややま たろう)

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/111018/plc11101802280003-n1.htm








TPP来月結論 野田政権は乱暴過ぎないか
2011年10月13日   

 国の社会・経済構造を激変させかねない問題なのに、国民への十分な説明もなく、議論の時間もなく、あまりにも拙速だ。政府が環太平洋連携協定(TPP)交渉参加に関する結論を11月上旬に出すことだ。

 それに先立ち10月中に農林漁業強化の方針も示すという。農業団体などの強い反対論を尻目に、TPP参加へ前のめりの政府の姿勢が透けて見える。

 経済、産業、社会にどんな影響が及ぶのか、国は十分に説明責任を尽くしていない。貿易立国として議論自体を否定するものではないが、いま国がやるべきことは国民の目に見える熟議であり、生煮えの結論を出すことではない。

 TPPに参加する米国など9カ国はアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議での「大枠合意」を目指していた。「11月上旬」という期限は、ハワイで開かれるAPECが念頭にある。

 選挙を来年に控えるオバマ大統領は、APECで日本の参加表明を期待しているといわれる。しかし、国民合意が存在しないものを期待されてもいい迷惑だ。野田佳彦首相はオバマ大統領におもねるのか、国民と真摯(しんし)に向き合うのか、政治家として良識を示してほしい。

 11月上旬に結論と言いながら基本的な情報が不足している。

 内閣府の試算によると、TPPに参加すると最大で実質国内総生産(GDP)を0・65%、3・2兆円押し上げる。これに対し農水省は1・6%、7・9兆円減らすと主張する。政府内で大きく試算が違えば、国民は議論できない。

 農業関係者からは「TPP参加は日本農業の壊滅への道」という激しい反対論がある。国は「食と農林漁業の再生実現会議」の中間提言で農林水産業の強化策を打ち出しているが、十分に予算に裏打ちされた支援策ではない。

 農業だけにとどまらず、TPPは環境、労働、公共事業など24分野で新たなルール作りを進める。これほどの変革を促す話を、1カ月で周知、議論、結論を出せるのか。あまりにも乱暴ではないか。

 推進派からは「国益に反するなら、交渉入り後に途中離脱すればいい」という意見もある。無責任だ。これでは国際的な信頼を失う。いま必要なのは国益を損なう拙速な結論ではなく、国民的議論をしっかり積み上げることだ。

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-182735-storytopic-11.html

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