中国の行為は“ルール違反” “パクリ” 「中国製」新幹線や銃を問う

2010年08月10日 | news
「中国製」新幹線や銃を問う

松本 仁一
ジャーナリスト、元朝日新聞編集委員

 中国が、日本の新幹線などの技術供与を受けて開発した高速鉄道システムをロシアやブラジルなどに売り込み中で、日本は価格面でとても太刀打ちできない状況だという。

 4日の朝日新聞国際面で報じられた。中国側は「海外技術に基づいてはいるが、基本的には自主開発」といっているという。中国はまたこの手を使っているのか、と思った。以前に私が取材した自動小銃のケースとまったく同様なのだ。

○カラシニコフの中国版

 中国は「五六式」という自動小銃を軍の制式銃に採用している。「五六式」というのは「1956年採用型」という意味だ。旧ソ連製の1947年式カラシニコフ自動小銃(AK47)を、56年から採用してライセンス生産を始めた。それを型式名に付けた。基本構造はAK47とまったく変わっていない。要するに、AK47の中国版なのである。

 旧ソ連は、冷戦時代の1950年代から70年代にかけ、東側陣営の約30カ国に、AK47の製造ライセンスを供与した。東ドイツ、ハンガリー、ポーランドなどの東欧諸国やエジプト、中国、北朝鮮など社会主義国が相次いでAK47の工場をつくり、独自生産を開始した。

 1991年にソ連が崩壊すると、AK自動小銃の製造権はロシアの武器製造企業「イジマシュ」に引き継がれた。イジマシュは旧ソ連のイジェフスク兵器廠で、その後民営化されて名前が変り、ロシア最大の武器会社となっている。

 ソ連崩壊で、旧ソ連が外国に供与したライセンス契約はすべて消滅した。そのため各国はイジマシュ社との間で新しい契約を交わさなければならない。しかし中国はそうしなかった。知らん顔でAKの生産を続けたのである。そればかりか、そうして生産した自動小銃を南米やアフリカの不安定地域に大量に輸出した。

 AKを開発したミハイル・カラシニコフ氏は90歳の今も健在で、イジマシュ社の主任設計技師を務めている。2004年11月10日、彼の85歳の誕生日に招待され、ウラル山地に近いイジェフスクの町で彼に会った。彼は中国製AKの「五六式」について、きわめて強い不快感を示した。

 「中国はライセンス切れにもかかわらず、私たちに断わりなくAKの生産を続けている。そうしてつくったAKを、注文さえあれば犯罪者にでも売る。それがAKの評判を落とすことにつながっている。開発者としてはきわめて不愉快だ」

 「私たちが抗議すると中国側は、いやこれはAKではありません、独自に開発したものなんです、ほら、この部分とこの部分が違うでしょう、などと答えてごまかす。冗談ではない、だれが見てもAKだ。私の設計をそのまま使っている」

○資源目当て

   AKは正価で一丁約300ドルだ。しかし中国は材質を落とすなどして価格を下げ、一丁150ドル前後で売りさばいた。資源目当てで、独裁政権にAKを無償供与したりもしている。  スーダン西部の援助組織で働いていた私の友人は、黒人住民を襲撃するアラブ民兵が、新型の中国製AK自動小銃を使っているのを見たという。黒い艶消しの銃身は、それまでのアフリカの内戦では目撃されたことはなかった。「スーダンの石油目当てで供与した銃なんでしょうね」とその友人はいった。

 今度の新幹線にしても同じことがいえそうだ。日本から新幹線「はやて」の技術供与を受けた。それを少し改変して「独自の開発」として外国に売り込む。開発費がかかっていないし、労賃は安いから、見積もりは日本のメーカーが提示する価格より相当安くなる。いったん売りこんでしまえば、あとは部品や修理などで、ビジネス関係を将来的に独占できることになる。

 いわば、行列に子どもが横入りしているようなものだ。ルール違反である。日本や欧米の国がそんなことをしたら、国際経済社会からはじき出されてしまうだろう。途上国の中国だから「仕方がないな」と大目に見られているのが現状だ。大人の社会では通用しないことをしているのである。中国は、自分たちの行為が「子どもの横入り」であることを自覚しておくべきだと思う。

 中国はGNPで日本を抜き、世界第2位になろうとしている。その経済大国が、国ぐるみで外国技術のパクリをやっているようでは、ビジネスの基本である信用が育たない。経済大国として国際的な発言力を持つ大人になっていくためには、中国は大人といわれるにふさわしいマナーを身につけなければならない。

http://allatanys.jp/B001/UGC020006220100809COK00608.html?from=yoltop






中国、高速鉄道輸出に積極的 「先輩」日本は複雑
2010年8月4日6時54分
 
 【北京=古谷浩一】中国が「高速鉄道」の輸出にアクセルを踏み始めた。政府主導で積極的な売り込みを展開。対象国との経済貿易関係の拡大を狙う。アジア周辺国との関係では、政治的な影響力の増大につなげる戦略的な動きとも受け止められている。

 「中国の鉄道は、海外進出戦略の実施を加速する。関係企業を積極的に組織し、国外の鉄道プロジェクトの輸出市場を開拓。国際的に高速鉄道の技術を分かち合いたい」

 中国鉄道省の何華武総工程師は7月末、北京での記者会見で、政府が主導して鉄道技術を輸出する姿勢を訴えた。

 同省は米国、ロシア、ブラジル、サウジアラビアなどとの鉄道建設協力の調整チームを立ち上げたことを明らかにする。「数十カ国が自国の鉄道プロジェクトへの我が国の参加を希望している」(王志国・鉄道次官)といい、トルコやベネズエラの高速鉄道建設計画に中国企業が関与を始めているとされる。

 政府をあげての後押し姿勢は鮮明で、アルゼンチンのフェルナンデス大統領が7月に訪中し、胡錦濤(フー・チンタオ)国家主席と会談した後、両国は100億ドルに上る鉄道関係の合意文書に調印したと伝えられた。

 中国は2000年以降、高速鉄道の建設を重視してきた。日本の新幹線「はやて」を基に製造された車両などが導入されたが、鉄道省は「海外技術に基づく自主開発」との位置づけだ。

 高速鉄道の輸出推進の狙いについて、商務省国際貿易経済協力研究院の梅新育研究員は「『メード・イン・チャイナ』が貿易相手国の国家インフラになることで、中国製品がさらに浸透する。中国ブランドの印象も向上する」などと中国紙に利点を強調する。

 費用面での競争力の強さは無視できない。ベトナム国会は6月、ハノイ―ホーチミン(約1600キロ)の高速鉄道建設計画案を否決した。同案は日本の新幹線方式を採用する見通しだったが、560億ドルといわれる投資額に「負担が大きい」との反対が出たためだ。中国の高速鉄道なら、「費用は新幹線の半分」(中国紙)とされる。

 海外進出を強める背景には、政治的な狙いも指摘される。鉄道省は7月、雲南省から国境を接するミャンマー(ビルマ)やラオスにそれぞれ国際高速鉄道を建設する計画を明らかにした。詳細は不明だが、自由貿易協定(FTA)の実施が始まった東南アジア諸国との輸送能力の拡大を目指すもの。実現すれば、両国における中国の政治的な存在感が一層高まることは間違いない。

 中国の専門家の中には、(1)中国北部からロシアへ(2)中国西部からカザフスタン経由で中央アジア諸国へ(3)中国南部からベトナム経由で東南アジア諸国へ……との三つの国際高速鉄道の建設の必要性を訴える論調も出てきている。

■価格競争力、中国にかなわず

 中国の高速鉄道の一部は日本の新幹線技術をもとに導入された経緯があり、中国にとって日本は先輩格。その中国が積極的な鉄道輸出を進め、日本と競合し始めていることに、日本の鉄道関係者は複雑な心境だ。

 7月に告示されたブラジルの高速鉄道計画。ルラ大統領が2016年のリオデジャネイロ五輪までの開通を目指す国家プロジェクトだ。リオ―サンパウロ間のエコノミークラスの料金を一番安く設定出来る事業者が落札するとの見方が地元で飛び交う。

 日本は価格競争力では中国にかなわない。運行や建設まで受注者が担うなどリスクが高い案件ともいわれ、日本の企業連合は採算を慎重に見極めている。

 ブラジルを含めて、中国は政府首脳によるトップセールスなど国家あげての融資などで受注獲得に貪欲(どんよく)だ。経済協力開発機構(OECD)非加盟で国際ルールの縛りを受けにくいことも営業活動の自由度を高めている。前原誠司国交相も米国やベトナムに直接出向いてトップセールスを重ねているが、国交省幹部は「中国の影は常につきまとう。対抗手段を真剣に考えないといけない」と危機感を募らせている。(澄川卓也、サンパウロ=平山亜理)

     ◇

 〈中国の高速鉄道〉 2020年までに1万6千キロの高速鉄道網を整備する計画。日本の新幹線網(2千キロ強)の8倍近い。08年8月の北京五輪開催直前には北京―天津(約115キロ)を最高時速350キロで結ぶ高速鉄道の運転を開始。09年12月には武漢―広州(1069キロ)が開業した。12年には北京―上海(1318キロ)が開業予定。日本やドイツなど外国企業が技術移転している。

http://www.asahi.com/business/update/0804/TKY201008040002.html


日本の新幹線、技術もういらない?!高速鉄道の自主開発を発表ー中国
新型列車は「国産」?仏企業が激怒!日本の新幹線輸出のライバルにもー中国
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第95回「サクランボの育成者権を守った山形県の知財保護姿勢」
(2007/08/16)

 山形県の高級サクランボ、「紅秀峰(べにしゅうほう)」の枝(穂木)のオーストラリアへの持ち出しをめぐって、山形県がオーストラリア・タスマニア州のサクランボ生産販売会社社長らを種苗法違反(育成者権の侵害)で県警に告訴していた紛争は、このほど和解によって決着した。

オーストラリアから逆輸入されそうになった紅秀峰

 紅秀峰(写真右下)は、山形県農業総合研究センターが品種改良して開発したサクランボで、佐藤錦と並ぶ高級サクランボの双璧である。佐藤錦に比べてやや大きめであり、酸味も薄くそのぶん甘味を感じる。さらに実が固くて日持ちがよく、収穫時期が佐藤錦の終わった7月上旬から始まるため、市場でも競合しない。
 県は1991年に種苗法による品種登録をし、育成者権を確立した。

これで同法に基づき、18年間は県の許諾がなければ譲渡や販売が禁じられることとなった。ちなみに現在は、果樹などの永年性植物は30年間、その他の植物は25年間、育成者権が保護される。

 登録から8年後の1999年、山形県を訪れたオーストラリア人に、県内のサクランボ農家から紅秀峰の枝(穂木)がプレゼントされた。オーストラリア人は、県の許諾を受けないままオーストラリアに持ち出し、自分の農園で接ぎ木をして増殖、生産していた。増産して日本向けに輸出することも考えていたらしい。

グルメ雑誌の紹介記事から侵害告訴に発展

 植物新品種の育成者権保護・活用の研究者で、紅秀峰事件のいきさつに詳しい、独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)ジャカルタセンターの阿部道太さんによると、紅秀峰の育成者権がにわかに問題になったのは、2005年5月のこと。国内のグルメ情報誌に、山形県の農家がオーストラリア人に紅秀峰の苗をあげたことが「美談」として取り上げられ、すでにオーストラリアで栽培された紅秀峰が逆輸入される計画もあることが紹介されたのがきっかけだったという。

 この内容を伝え聞いた県は、逆輸入されれば県内のサクランボ農家に打撃を与える恐れがあるとして事実調査をし、枝(穂木)が持ち出されていたことを確認したため、2005年11月に育成者権の侵害でこのオーストラリア人を県警に告訴していた。

 告訴された後、双方が代理人を立てて和解交渉を進めてきた。オーストラリア人は、故意に持ち出したわけではないことに理解を求めながら、県や県内のサクランボ生産者に迷惑をかけたことを反省し、謝罪の意思を表明したという。

 また、紅秀峰の品種登録期間終了後の2009年11月20日から2012年11月19日までの3年間、紅秀峰の種苗や収穫物を日本に輸出しないことも、和解に盛り込むことに、同意した。県はこれに合意して、去る7月18日に和解書を締結し、同日付で県警への告訴を取り下げた。

 県農林水産部は和解の理由について、「許可なく持ち出されて生産されたことは遺憾である。しかし種苗法の保護期間を超えて自粛を確約させたことに加え、県民や県内生産者らの利益は守られると判断した」と語っている。

 また阿部さんは、「日本の育成者権に関する訴訟がほとんどない中で、育成者権者である県として毅然(きぜん)とした姿勢で侵害行為に対抗し、権利期間満了後3年間まで輸出をしないとの確約をとったことは、今後の日本の育成者権の保護・活用のあり方を考える上で、画期的な出来事である。これは他の育成者権者に対する重要な手本となるのではないか」と語っており、今回の和解決着を評価している。

外国に持ち出された育成者権侵害は多数ある

 紅秀峰の事件に見るような育成者権の侵害事件は、このほかにも多数発生している。最近特に問題となっているのは、外国に持ち出された新品種が外国で栽培され、その収穫物が日本に輸入されて、国内の農家に打撃を与えることである。栽培コストは外国収穫物にかなわないから、野放しにすると、日本の農家は壊滅的な打撃を受ける。

 例えば、北海道が育成者権者になっているインゲン豆の「雪手亡」の種苗が無断で中国に持ち出され、その収穫物が日本に輸入されていた。同じ北海道の小豆の「きたのおとめ」も同様の被害に遭っている。このほか、栃木県のいちご「とちおとめ」は韓国に、熊本県のいぐさ「ひのみどり」と、種苗会社が育成者権を持っているカーネーションの「ヒリピンバー」は、中国に持ち出され、いずれも日本に輸入されて大きな問題になっている。

 これらのケースはいずれも対抗措置を講じているが、一般的に育成者権を侵害されても、法的な対抗措置を実行するケースはきわめて少ない。日本での全育成者権者2055件に対するアンケート調査(回答は約26%)によると、3割以上(543件以上)が権利侵害を受けた経験を持っているという。工業製品に比べると異常な高率である。

 侵害された権利者で何らかの対抗措置を講じたと回答したのは60%、何もしなかったは40%だった。対抗措置の内容は対面交渉が29%、警告書の送付が40%、民事・刑事訴訟まで至ったのは、8%にすぎなかったという(「立法と調査」2007年4月、No.266号 「より有効で使いやすい制度に~種苗法改正案~」農林水産委員会調査室の本島裕三氏の論文)。

県民の権利と利益を守った山形県の告訴

 紅秀峰の事件では、権利者である「県」という公的機関が、いきなり県警に告訴するという法的手段に訴えた。これについて阿部さんは「私たちが一般に知財の侵害問題を扱う場合は、企業や大学自身の利益を侵害されていることに対して対抗措置をとるが、県が権利者である場合、県民の権利と利益を損なうことになるという判断だったと思う。山形県が最初から告訴に踏み切ったのは、そういう理由があったからだろう」と言う。

 この告訴、和解事件の顛末(てんまつ)について、弁理士の丹波真也氏は「日本の制度運用に詳しいと思えない外国人が、日本の生産農家から苗木を“プレゼント”されたのであり、日本の育成者権の存在を知っていながら苗をだまし取ったような事情ではないようだ。今回の場合、侵害を承知で故意に国外に持ち出したとして刑事事件で立件することは難しいと思う。そういう法律の適用や勝ち負け云々(うんぬん)の話でなく、阿部さんの言うように、断固たる姿勢を見せることが、侵害事件では大事な場合がある。苗の無許諾輸出には断固として対抗措置を取る、という姿勢を県下の農家や海外にアピールしたことには、重要な意味がある」と語っている。

http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/baba.cfm?i=20070814c8000c8

オーストラリアに奪われた日本のさくらんぼ
http://www.youtube.com/watch?v=4sSOkSpKYe8

山形県の登録サクランボ「紅秀峰」、豪州以外に中国でも無断栽培・販売か
イチゴ泥棒国家ー韓国 日本のイチゴを無断で栽培し、国家ぐるみでシラを切る
韓国イチゴ生産者団体代表 「日本から品種が自然に入ってきただけなので無断栽培じゃない」




種苗法 - Wikipedia
種苗法(しゅびょうほう;平成10年5月29日法律第83号)とは、植物の新品種の創作に対する保護を定めた法律であり、植物の新たな品種(花や農産物等)の創作をした者は、その新品種を登録することで、植物の新品種を育成する権利(育成者権)を占有することができる旨が定められている。
現在の種苗法は、1991年に改正された植物の新品種の保護に関する国際条約(略称:UPOV条約(UPOVは本条約を管理する植物新品種保護国際同盟の仏文略称))を踏まえて、旧種苗法(昭和22年法律第115号)を全部改正したものである。


植物の新品種の保護に関する国際条約 - Wikipedia
この条約の目的は、植物の新品種を育成者権という知的財産権として保護することにより、植物新品種の開発を促進し、これを通じて公益に寄与することにあり、このために植物新品種の保護の水準等について国際的なルールを定めている。
2006年9月現在のこの条約の締約国は、62か国である。日本は1991年改正条約を締結している。


植物新品種保護国際同盟 - Wikipedia
植物新品種保護国際同盟(略称:UPOV)は、植物の新品種の保護に関する国際条約に基づき設立された国際機関である。本部はスイスのジュネーヴにあり、庁舎を世界知的所有権機関(WIPO)と共用している。また、UPOVの事務局長も、WIPOの事務局長が兼任している。








知はうごく:日本ブランド(4-3)

農産品でも「海賊版」

農林水産省の知的財産戦略で柱のひとつとされる日本の高級農産品。中国で販売されている日本産リンゴの人気は高い=上海市内の百貨店

 「日本の農業技術の高さは他国に類を見ない」。農林水産省の知的財産戦略本部は、3月にまとめた「農林水産省知的財産戦略」の中でそう誇っている。

 日本の農業は、海外農産品の攻勢と高齢化という問題に直面し、「生き残るためには、価格競争ではなく付加価値で勝負するしかない」(同省知財戦略チームの横田美香課長補佐)と待ったなしの状況だ。

 静岡のメロンは典型的な成功例であり、同省は農家が手塩にかけて育て上げる高級農産品の振興を知財戦略の柱に据えている。

 しかし、この一方で、苦労して開発した農産品や花卉(かき)などの生産技術が不正に持ち出され、被害を受けるケースも後を絶たない。

 農水省はこうした海賊版に対する対策に着手。同省所管の独立行政法人「種苗管理センター」は一昨年、“品種保護Gメン”と呼ばれる品種保護対策官制度を創設し、海外などから不正に持ち込まれる苗や花などのチェックに乗り出した。

 同省の知財戦略では、DNA技術を活用した海賊版の水際取締り強化、アジア各国への育成者権保護制度整備の働きかけ、さらに技術協力や専門人材育成を推進する「東アジア植物品種保護フォーラム」の創設なども提唱しているが、課題山積だ。




侵害されるカーネーションの育成者権

 兵庫県の淡路島北部にある淡路市は日本有数のカーネーション栽培地。温室面積27ヘクタールは日本最大を誇る。国内はもちろん、世界のカーネーション農家が目標とするのが淡路市で培われた栽培技術だ。

 同地域のカーネーション農家は約160軒。祖父、父から受け継ぐ300坪の温室で3代目、井上雅俊氏(31)は7品種のカーネーションを育てている。

 「潤沢な水、温暖な気候など栽培に面した自然環境に加え、試行錯誤を繰り返して病害虫対策などの技術を磨きあげた結果、淡路のカーネーションの品質は世界最高レベルに達したのです」と井上氏は胸を張る。

 カーネーション市場は毎年、世界で200品種が新たに生まれ、200品種が淘汰(とうた)されるといわれるほど競争が厳しい。栽培技術者は「より美しい花を咲かせよう」と日夜、品種改良を繰り返し、感性した花の美しさはバイオテクノロジー(生物工学技術)の結晶といえる。農業バイオ分野で最先端を走る日本は、カーネーションの種苗開発でも世界をリード。キリンビールから分社された種苗メーカー「キリンアグリバイオ」(本社・東京)では、世界におけるカーネーションの苗の販売シェアが35パーセントに達する。

 ところが、近年、安い外国産のカーネーションが大量に輸入され、日本産の地位を脅かすようになった。しかも、その苗が問題だ。井上氏たち栽培農家の頭を悩ませているのは、中国から輸入されるカーネーションの8割近くが日本産の種苗の育成者権を侵害し、無断栽培されたものだという現状だ。

 育成者権は、農産物の新品種開発者が、その品種を独占的に栽培、出荷できるよう種苗法で定められた権利。工業製品の特許と同様、開発者の利益を守って産業発展を促す仕組みで、品種登録の日から20年間(樹木は25年間)、権利が保護される。

 しかし、特許と同じように、育成者権も中国などアジア各国で侵害され、農産品の「海賊版」が日本に流入するケースが相次いでいる。

 カーネーションの場合、キリンアグリバイオなど日本の有力種苗メーカーが広大な土地と安い労働力を求めて中国で苗の栽培を始めたところ、ロイヤルティー(使用料)を支払わず無断で種苗を持ち出し、栽培するシンジケートともいえる農業集団が中国に築き上げられていった。

 中国本土では日本の種苗法による規制が効かないため、違法行為も野放し状態。「青果市場を通じて国内に流通するコロンビア産などのカーネーションは、きちんとロイヤルティーが支払われているが、市場を通さずスーパーなどが直輸入しているものは、ほとんどが違法栽培された中国産だと思っていい」と井上さんは苦々しく語る。

 カーネーション以外にも、北海道のインゲン豆「雪手亡(ゆきてぼう)」や、熊本県の高級イグサ品種「ひのみどり」が中国で、栃木県のイチゴ「とちおとめ」が韓国で大量に栽培されて出回り、日本にも輸入されるなどの被害が発生している。山形県の高級サクランボ「紅秀峰」の苗木もオーストラリアに持ち出され、不正に栽培された。

 こうした中で、淡路島をはじめ国内のカーネーションの生産農家の技術者たちは10数年前から中国やコロンビア、ケニアなどに出向き、現地で技術指導を行っている。栽培技術の伝播という目的に加え、近年は知的財産への理解を深めてもらい、権利を守らせようという狙いもある。

 「攻め」の品種改良や栽培技術向上と、「守り」の育成権保護。知的財産をめぐる二正面作戦に、日本の農業の未来がかかっている。

http://www.sankei.co.jp/keizai/sangyo/070511/sng070511001.htm
http://www.sankei.co.jp/keizai/sangyo/070511/sng070511000.htm
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