社会保障 立て直しを
![]() (写真)2024年11月8日、東京・日比谷野外音楽堂で開かれた「年金一揆&フェスタ」で「安心できる年金を実現しよう」と声をあげる |
かつては「外交安保は保守、内政はリベラル」といわれた石破茂首相も、政権のふたを開けてみると、安倍・菅・岸田各政権がすすめてきた「自己責任論」に基づく新自由主義路線を反省なくごり押ししています。石破首相は少子化と人口減少を「静かなる有事」と評しましたが、社会保障では「次の時代に負担を先送りさせない」などと述べ、手当たり次第に国民負担増と給付削減を押し付けようとし、社会保障の「有事」をもたらしています。
一方で、昨年10月の総選挙で自公が大敗し、与党過半数割れとなるなか、社会保障の分野でもこれまでの自民党政治のおおもとからの検証と転換が求められています。2025年、自公政権が破壊の限りを尽くした社会保障の立て直しが問われています。
石破政権は、岸田前政権が子ども・子育て政策の財源確保を名目にまとめた社会保障削減メニュー「全世代型社会保障構築をめざす改革の道筋(改革工程)」に沿って、「現役世代の負担軽減」を前面に掲げて医療・介護・年金の切り下げを加速しています。
●医療
厚生労働省は25年度予算案で、医療機関での患者の窓口負担に上限額を設ける「高額療養費制度」を見直します。収入によって上限額が変わる所得区分を細分化し、上限額を8月から2年かけて段階的に引き上げます。
平均所得層の年収370万~510万円は、現行上限額の定額部分が10%増えて月約8万8000円になります。厚労省は「現役世代の保険料負担軽減」を口実にしていますが、同省の試算では保険料の軽減額はわずか。いざ、大きな病気やけがで医療機関にかかっても、「高額療養費制度」がセーフティーネットの役割を果たせなければ、救えるはずの患者の受診抑制につながりかねません。
財務相の諮問機関・財政制度等審議会の建議では、「改革工程」に示された項目に限らず幅広く改革に取り組むべきとし、「年齢によらず医療費の自己負担を原則3割」とすることなど、血も涙もない国民負担増を求めており、社会保障の切り崩しは底なしです。
●介護
政府は2024年度の介護報酬改定で、訪問介護の基本報酬を引き下げました。全国ホームヘルパー協議会と日本ホームヘルパー協会は「さらなる人材不足を招くことは明らか」と批判しました。
その言葉通り、厚労省は昨年末、全国の介護事業所の休廃止が急増しているとする調査結果を公表。民間調査会社の調査でも訪問介護事業者の倒産件数が過去最高を記録し、深刻な実態が浮き彫りとなっています。
石破政権は「改革工程」に基づき、介護保険サービスの利用者2割負担の拡大など、負担増と給付削減を狙っています。
●年金
自公政権は毎年のように年金支給水準を切り下げ、政権復帰してからの12年間の公的年金の引き下げ額は実質7・8%、12年間の削減合計は30兆円を超えます。今年は5年に1度の年金制度改正の年です。
昨年7月に発表した「財政検証」によると、過去30年と同じ実質経済成長率が続く想定で、年金支給水準を自動的に引き下げる「マクロ経済スライド」により、基礎年金の減額調整が57年度まで続く見通し。これでは急激な物価高騰に対応できず、高齢者のくらしを支えられません。
●年収の壁
昨年は国民民主党が自民・公明両党と協議してきた所得税の課税最低額「年収103万円の壁」を巡って、178万円への引き上げに必要な財源(約7兆~8兆円)が焦点となりました。全国知事会など自治体側は約5兆円の減収を懸念しましたが、国民の玉木雄一郎代表(役職停止中)は、総務省が自治体を「工作」しているなどと述べ、自治体側の猛反発を受けました。
「手取りを増やす」に反対する理由はありませんが、大企業・富裕層への税優遇や、大企業がため込んだ巨額の内部留保、アメリカ言いなりですすめられている大軍拡など、政治のゆがみにメスを入れずして巨額の財源は生み出せません。
日本共産党の田村智子委員長は次のように述べています。
「国民の切実な要求を実現しようとすれば、その財源をどうするかにたちまちぶつかることになります。“財源などお構いなし”の議論は、一時的部分的な共感を得たとしても、新しい政治への展望とはなりえません」(昨年11月の都道府県委員長会議)
●財界の要求
昨年9月、石破首相が自民党新総裁に選出されると、財界代表から社会保障抑制を期待する声が相次ぎました。前政権から国民負担増と給付抑制を受け継いだ25年度予算案に対しても「歳出改革の加速」「税・社会保障の一体改革に向けた議論」(十倉雅和経団連会長)、「医療・介護分野の徹底した歳出改革や全世代による応能負担」(新倉剛史経済同友会代表幹事)など、さらなる社会保障破壊を求めています。
政府の社会保障削減政策の根本には、利益の最大化を求める新自由主義に基づく財界要求があります。今直面する医療・介護・年金をはじめとする社会保障の危機は、そのおおもとにある新自由主義政策との国民的なたたかいがなければ打開できません。
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