テルサのFantastic Stories

今まで書きためていたとりとめもない物語を少しずつ連載していきます。ファンタジー物が多いです。ぜひ読んでみて下さい。

4-20 「ある国の物語」 第五章 月神降臨

2011-10-24 01:16:26 | 「ある国の物語」 第五章 
第4節 覚醒  第20話

「ラミエル陛下は,このように月のサークレットを送り返してきておられる。彼の君に月のサークレットを常時はめていただくことは,今となっては難しい」
「大司教様,もはや同じサークレットでは通用しますまい。この際,封印の力の強い新しい月のサークレットをお作りになられては・・・。ノブレス大神様の神力もお借りして作り直しましょう。そして,クリスタリアから送られた月のサークレットということは伏せ,どなたかからの贈り物ということにすれば,きっと陛下も疑いなくはめてくださるかと・・・」
「かなり用心せねばすぐ見破られるからのう。おまけに月の聖帝と認めぬ限り,月のサークレットをはめればひどい頭痛に見舞われてしまう」
「大司教様,あの時は魔性となられてやむをえない状況でした。魔性となられていない時であれば大丈夫かと思われます」
「ふむ・・・」

 カルタニア大司教はクリスタリアのルナ・パレスから水晶を持ち出し,月のサークレットを作り直すことにした。ばれぬようにデザインも変え,封印の力を天帝ノブレス大神に与えてもらうことにした。

 巨大な天帝像の前にカルタニア大司教は跪く。

「ノブレス大神様。もはや月の聖帝様は,前の月のサークレットをご用心なさってはめてくださいませぬ。どうか・・・・どうか新たにお力をこのサークレットにお与え下さい」

 大司教の祈りに静かに天帝像の目が開く。

「よかろう。そのサークレットに封印の力を授ける」

 天井から稲妻のような声が轟いたかと思うと,天帝像の目が黄金に光り,その光の矢はまっすぐに台上に置かれた新しい月のサークレットに向かって放たれた。サークレットは一瞬光り輝くとその輝きをおさめ,元に戻る。

「ありがとうございます。天帝ノブレス大神様」

 丁寧にお辞儀をすると,大司教はサークレットを手に取り,神殿を後にした。

 大司教はよくよく考えた末,ラミエル帝が一番用心しないアリエル皇子からのプレゼントということにして,アリエル皇子からラミエル帝にそのサークレットを送ってもらうことにした。アリエル皇子は月の聖帝とか言うことは口にしない男で,しかもラミエル帝と仲の良い友人ということもあって,さすがのラミエル帝もその贈り物のサークレットの正体を見破ることはできなかった。何しろ,アリエル皇子とクリスタリア神皇国は全く何の関係もないのである。

 ラミエル帝はアリエル皇子を疑うことは決してしない。だから贈り物も疑いなく心から喜んでいた。よって,サークレットもはめてくれるかと期待したが,ラミエル帝は自分の大切な宝物にしてしまってしまい込み,飾り物にしてしまっている。

 困ったアリエル皇子は何とかラミエル帝にサークレットをはめさせようと思った。
 
 
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「ある国の物語」

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4-19 「ある国の物語」 第五章 月神降臨

2011-10-17 01:27:37 | 「ある国の物語」 第五章 
第4節 覚醒  第19話

 天帝教の各地の神殿にもそれぞれ国民が押し寄せていた。

 ラミエル帝はクリスタリア神皇国の者に対しても謁見を拒否し,政教分離の徹底した態度を貫いた。一度は月の神としての目覚めを覚悟した月の君。しかし,今は意地でも否定し続けている。そして,その事は闇の宗教者をますます喜ばせることとなった。

「月の神レイミール・ラ・ルネシス様は魔帝としての絶大な負の力を持っていらっしゃる。ノブレス大神はその負の力を封印することによって,無理に正の力へと向けさせた。このままいけば,ラミエル様と聖なるレイミール様と魔性のレイミール様の理想的合体は不可能だ」

 天帝教の司教達は不安がっている。
“なんとしても聖なる月の神として覚醒していただかないと・・・・・”
 
 ところが,当のラミエル帝はクリスタリア神皇国に使者を立て,秘宝である『月の雫』と月のサークレットを送り返す一方,月の聖帝であることを全面否定し,レイミール・ラ・ルネシス神の信仰を異端とみなして月の聖帝を崇拝する者は国外追放という信じがたい命を下し,自分の耳に月の「つ」の字も入れないようにした。
 おかげでファンタジア帝国内部で月の聖帝と言う者はいなくなってしまった。

 しかし,みんなは月の聖帝をさす隠語として「太陰の皇子」を使い,やはり噂をしあった。

 ラミエル帝は少し周りが静かになったので,すっかり落ち着いて政務に励んでいた。月の聖帝のことや魔性のことも気にならなくなっていつもの冷たい月の君に戻っていた。

“私は私である。ここにいる私は紛れもなく私自身なのだ”

 彼は聖と魔性両方のレイミール・ラ・ルネシス神を心の奥深くに閉じこめ,決して同一になろうとはしなかった。

 クリスタリア神皇国では,カルタニア大司教が溜息をついていた。

「周りがあまりにもうるさく言い過ぎてラミエル陛下のご機嫌を損ねてしまった。覚醒の時,かなり抵抗されましょう。この先が思いやられるわい」
「国内の者は,月の聖帝と言えぬために,太陰の皇子という隠語を使っているそうでございます」
「ただ,ご自分の遠い過去を思い出し,御心を開いて昔のご自分を受け入れて下さればそれでよろしいのだ。ご自分は月の聖帝レイミール・ラ・ルネシスであると自覚して下されば,それで目覚めは何の苦もなく聖帝の方で行われるはず。その時こそ,人間として生きてこられたラミエル様と魔性のレイミール・ラ・ルネシス様も合体され,伝説の月の神レイミール・ラ・ルネシス様そのものとして覚醒されるのに・・・・。陛下はあくまでも拒否していらっしゃる」
「このままですとどうなるのでしょうか,大司教様」
「私にも詳しいことは分からぬ。ただ,月の聖神殿で目覚められることがなければ,どっちにしてもこの世は滅びるであろうな。魔帝として目覚められれば,もはや封印できるかどうか・・・」
「大司教様」
「ただ・・・私が心配していることは他にもある。それはもしかしたら,目覚めが早くなるかもしれないということじゃ。陛下が20歳になられてから最初の満月の夜に月の神は覚醒される。ところがそれに関係なく,今,今まで封印されていたはずの力が出てきておられる。もしかすれば,その日まで封印がもたないかもしれませぬ。そうなれば,月の聖帝は不完全なまま目覚められ,魔性の方が強くなるかもしれませぬ。ことに陛下が双方を拒否されているとなれば,この先どうなるのか見当もつかぬ」
「では・・・ぜひとも月のサークレットをしていただかねば・・・」
「それはそうなのじゃが・・・」

 大司教はふうーっと大きな溜息をつくと頭を抱えた。

 
 
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