第11節 砂漠の国の王子 第2話
結局ラミエル帝とアイシス姫はダンスを踊るでもなく,二人でひそひそと話をして夜会を過ごした。周囲の者にすれば二人が何を話しているのか気になって仕方がないのだがもちろん内容が分かるはずもない。
「今日はありがとう。部屋までお送りしましょう」
「送って下さるの?嬉しいこと」
アイシス姫は上品に笑うとすっと席を立った。真昼の太陽の姫君と言われるはっきりとした顔立ちの美姫である。彼女にほのかに憧れを持つ王子も多いが,彼女は好みもはっきりしているので自分のタイプではない王子からの誘いはきっぱりと断っていた。
夜会が終わり,アイシス姫を虹の館まで送ったラミエル帝が霧の館の自室に戻った時,彼は扉に白い紙がはさんであるのを見付けた。
“夜会後,来てもらいたし 迎えをよこす”
月の君はこれから何が起ころうとしているのか分からなかった。が,その紙をそっと机の引き出しにしまった。
夜中,ラミエルが仕事をしていると,来客を知らせるチャイムが鳴った。
「はい」
彼がドアを開けると複数の男達が立っていた。彼らのマントの留め具の紋章は紛れもなくアイシス姫が見せてくれた例の紋章だった。
「私に何か用でしょうか」
月の君は静かに尋ねた。
「あなた様をお迎えに参りました。ラミエル・デ・ルーン陛下」
「あなた達は何者です?」
「おいで下さればお分かりになると思います。我が陛下がお待ちしております」
「面会でしたら正式なルートを通して欲しいのですが」
「いえ,それはできませぬ。諸事情がございまして・・・。陛下,どうぞこちらへ。ご心配には及びません。我が陛下はあなた様の母君様に縁の者です」
「母君の?」
「はい。ですからどうぞこちらへ・・」
ラミエルは一瞬どうしようか迷ったが,亡き母シフェラザード女王の縁の者と聞いてはそのまま放っておくこともできなかった。好奇心もあって月の君は男達についていくことにした。何かまだよく分からないが悪い人たちではなさそうだ。
霧の館を出て,暫く行くと大きな屋敷に着いた。案内されて中に入る。長い廊下を歩いて突き当たりの部屋に入ると,高貴な一人の男が椅子に座っていた。まだ,あまり歳をとっていない感じである。その男はラミエル帝を見ると椅子から立ち上がり,
「よく来て下さった。ラミエル・デ・ルーン帝」
と声を掛けた。
ラミエルはその男を真っ直ぐに見つめた。思わずはっとするような美しく冷たい顔だ。
その男はラミエル帝を向かいの椅子に座らせ,自分も座った。
「私はアルファルド・ミザール・レグルス。太陽の国ベテルギウス帝国の皇帝です」
「ベテルギウス?あの・・・南の神秘に閉ざされた昼の光の都としてみんなから恐れられている国・・・・」
「よく御存知じゃ,ラミエル殿。そなたは本当に、シフェラザードによく似ている」
「母であるシフェラザードの縁の方とお聞きしましたが,母とどういう関係ですか?」
質問をするラミエル帝をアルファルド帝は優しい眼差しで見つめた。
「私は,そなたの父にそなたの母を奪われた男だよ」
まだ若々しい皇帝は月の君の質問に静かに答えた。
**********************************
いつも応援ありがとうございます。ただ今,4つのランキングに参加しています。
よかったら下のところをポチッとクリックしていただけると嬉しいです。
結局ラミエル帝とアイシス姫はダンスを踊るでもなく,二人でひそひそと話をして夜会を過ごした。周囲の者にすれば二人が何を話しているのか気になって仕方がないのだがもちろん内容が分かるはずもない。
「今日はありがとう。部屋までお送りしましょう」
「送って下さるの?嬉しいこと」
アイシス姫は上品に笑うとすっと席を立った。真昼の太陽の姫君と言われるはっきりとした顔立ちの美姫である。彼女にほのかに憧れを持つ王子も多いが,彼女は好みもはっきりしているので自分のタイプではない王子からの誘いはきっぱりと断っていた。
夜会が終わり,アイシス姫を虹の館まで送ったラミエル帝が霧の館の自室に戻った時,彼は扉に白い紙がはさんであるのを見付けた。
“夜会後,来てもらいたし 迎えをよこす”
月の君はこれから何が起ころうとしているのか分からなかった。が,その紙をそっと机の引き出しにしまった。
夜中,ラミエルが仕事をしていると,来客を知らせるチャイムが鳴った。
「はい」
彼がドアを開けると複数の男達が立っていた。彼らのマントの留め具の紋章は紛れもなくアイシス姫が見せてくれた例の紋章だった。
「私に何か用でしょうか」
月の君は静かに尋ねた。
「あなた様をお迎えに参りました。ラミエル・デ・ルーン陛下」
「あなた達は何者です?」
「おいで下さればお分かりになると思います。我が陛下がお待ちしております」
「面会でしたら正式なルートを通して欲しいのですが」
「いえ,それはできませぬ。諸事情がございまして・・・。陛下,どうぞこちらへ。ご心配には及びません。我が陛下はあなた様の母君様に縁の者です」
「母君の?」
「はい。ですからどうぞこちらへ・・」
ラミエルは一瞬どうしようか迷ったが,亡き母シフェラザード女王の縁の者と聞いてはそのまま放っておくこともできなかった。好奇心もあって月の君は男達についていくことにした。何かまだよく分からないが悪い人たちではなさそうだ。
霧の館を出て,暫く行くと大きな屋敷に着いた。案内されて中に入る。長い廊下を歩いて突き当たりの部屋に入ると,高貴な一人の男が椅子に座っていた。まだ,あまり歳をとっていない感じである。その男はラミエル帝を見ると椅子から立ち上がり,
「よく来て下さった。ラミエル・デ・ルーン帝」
と声を掛けた。
ラミエルはその男を真っ直ぐに見つめた。思わずはっとするような美しく冷たい顔だ。
その男はラミエル帝を向かいの椅子に座らせ,自分も座った。
「私はアルファルド・ミザール・レグルス。太陽の国ベテルギウス帝国の皇帝です」
「ベテルギウス?あの・・・南の神秘に閉ざされた昼の光の都としてみんなから恐れられている国・・・・」
「よく御存知じゃ,ラミエル殿。そなたは本当に、シフェラザードによく似ている」
「母であるシフェラザードの縁の方とお聞きしましたが,母とどういう関係ですか?」
質問をするラミエル帝をアルファルド帝は優しい眼差しで見つめた。
「私は,そなたの父にそなたの母を奪われた男だよ」
まだ若々しい皇帝は月の君の質問に静かに答えた。
**********************************
いつも応援ありがとうございます。ただ今,4つのランキングに参加しています。
よかったら下のところをポチッとクリックしていただけると嬉しいです。