横浜の弁護士(元社会保険労務士)寺岡幸吉のブログ

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即日判決と、罰金刑の未決勾留日数算入

2013年10月28日 | 裁判

 今日は、労働法以外の法律の話を書きたいと思います。

 先日、私が被告人国選弁護人を担当した刑事事件の公判が行われました。国選弁護人には、被疑者段階(警察に捕まって勾留が始まった状態)から選任される被疑者国選弁護人と、起訴されてから選任される被告人国選弁護人とがあります。
 被疑者段階から国選弁護人が就く事件か、起訴されて被告人と呼ばれるようにならないと国選弁護人が就かない事件かは、それぞれの事件の法定刑によって決まります。現在は、法定刑が、死刑、無期若しくは長期が三年を超える懲役刑もしくは禁固刑の場合には、勾留が続いていて、かつ、被疑者にお金がないなどの事情で私選援護人を頼めない時に被疑者国選弁護人が就きます。
 以前よりは、被疑者国選の対象事件は広がっており、刑法で定められているだいたいの犯罪には被疑者国選が就くのですが、器物損壊罪や住居(建造物)侵入などは、被疑者国選弁護人は就きません。

 今回の事案は、建造物侵入で、起訴されて初めて弁護人(私)が就いたという事案でした。こういう人の場合、お金がないだけでなく、助けてくれる親戚や友人などもいない、ということが多いのですが、この人の場合は、お母さんがとても心配していて被害弁償金をすぐに出してくれたし、元雇用主の友人が、出てきたらまた自分のところで働かせると言って、裁判官宛の手紙を書いてくれたので、本人にとって有利な事情がいろいろとありました。
 被疑者段階で私選弁護人が就いていれば、起訴されずに済んだか、悪くても略式手続で罰金刑だったでしょう。そうなっていれば、1ヶ月以上早く釈放されたはず。

 公判で私は、彼にとって有利な証拠を提出し、被告人質問でも、今後は、友人のところで真面目に働く、今回の事件では本当に懲りた、というようなことを話してもらいました。

 検察官の求刑は、罰金10万円。そこで私は、未決勾留日数を金銭に換算して罰金刑に算入することを求めました。実務では、罰金刑を払うお金が無さそうな人について、未決勾留1日につき5千円に換算して、罰金刑に算入するという判決が出されることがあるのです。
 この取り扱いについて、wikipediaでは、「実例は少ない」と書かれていますが、別に裁判官がやりたがらない訳ではなく、単に、ふさわしい事件が少ないだけだと思います。もちろん、法律上の根拠はあります(刑法21条)。ただ、換算額である、1日あたり5千円というのは、実務上の慣習でしょう。

 私が、未決勾留日数を金銭に換算して算入していただきたいと述べたら、裁判官は頷きました。そして、審理が終了したとき、「この後、5分ほど休廷して、判決を言い渡します。」と言ってくれました。この事案で、これ以上勾留を続けるのはかわいそうだと思ってくれたのでしょう。
 ちなみに、民事訴訟の場合には、「判決の言渡しは、判決書の原本に基づいてする。」(民事訴訟法252条)という規定があるので、弁論終結後、即日で判決を言い渡すことは原則(例外:民訴法254条)としてできませんが(通常は2ヶ月後くらい)、刑事事件の判決の言渡しについては判決書を必要とするという規定がないので、理論上可能です。実際にやるかどうかは、裁判官によってかなり違います。

 今回は、場合によってはあり得ると思っていたので私はあわてなかったのですが、検察官は予想していなかったようでした。即日言渡しがありうるなと思ったら、裁判所書記官に電話して、この裁判官は即日言渡しをけっこうする人かどうか、聞いておいた方がいいかもしれません。


 このブログでは、最近、労働法に関する話題ばかり書いていますが、他にもいろいろな事件を手がけています。また、就業規則の診断や、あるべき就業規則の提案や作成も、もちろん行います。

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