JINX 猫強

 オリジナルとかパロ小説とかをやっている猫好きパワーストーン好きのブログです。
 猫小説とか色々書いています。
 

アリシア 7

2007-09-09 02:48:21 | ノンジャンル
「いつまで付いてくる気だ」
 氷河は背後の気配に声をかけた。
「気付いていたのか」
 暗黒白鳥星座は物陰から出た。
「なぜ、オレを見張る」
 日本を出てから付きまとう小宇宙を氷河は感じていた。それが、日本に入っても続いている。
「一輝様のご命令だからだ」
 暗黒白鳥星座は日本を出る主に白鳥星座の動向を見守るよう命じられ、二度と青銅聖闘士たちと接触させないよう言い付かっていた。
「一輝はどうした?」
 ふと、自分に愛を囁いた男の顔を思い出した。
「カノン島だ、お前に勧められてな」
 暗黒白鳥星座の言葉に、氷河は目を見張った。
 殺生谷での闘いで、氷河は一輝の腕の感覚を奪った。腕が落ちかねない凍傷を負ったまま白銀聖闘士たちと対峙していた一輝に、氷河はカノン島の噴煙の中へ七日七晩身を置けば腕は完治すると教えはした。だが、一輝が氷河の助言に従うとは思っていなかった。
「で、一輝はなぜオレを見張らせる?」
 氷河は暗黒白鳥星座に向き直った。

「続く」
 
 久しぶりなのに、短くってすみません。

私信・たくさんの本のお申し込みとご感想ありがとうございます。これからも細々とですが続けて行きます。
 あと、リクエストしていただいた鴆もやりたいです(次くらいでしょうか…)ズバリ、リクエスト順ですッ。
 
 

アリシア 6

2007-09-04 01:35:14 | プチ・原稿
 氷河は混乱していた。
 起こるはずのない海域で発生した海底地震と、氷に残された師のメッセージ。
――SANCTUARY。
 母の許に行くため、氷河が穿った氷の横に刻まれていた師のメッセージ。
 聖域とは女神を奉じ護る聖闘士の集う、文字通り聖なる地だ。
 氷河は足も踏み入れたことがない。
 その聖域に来いということなのか…。
 だが、氷河は勅令を果たさないまま、故郷の東シベリアに戻った。
 日本と同様、刺客を差し向けるということなら考えられる。
 だが師からのメッセージだけ、というのが解らない。
 勅令を果たさなかった氷河を処罰するのなら、メッセージを残すという手間を師はかけない。
 悪は悪として、クールに討つ。
 そこに、師弟の感情は成立しない。
 それに、この地震…。
 殺生谷で白銀聖闘士は、富士の岩盤をも砕いている。師は黄金聖闘士だ、海底に地震を起こすぐらいは、なんでもあるまい。
 だが、氷河に直接害が及ばない海底地震など、起こす意味が師にはない。
 勅命を果たさない氷河を処罰することなく、メッセージだけを残した師…。
 そもそもがなぜ、聖域は城戸沙織に拘ったのか…。
 確かに城戸沙織は亡き祖父の思いを継ぎ「銀河聖戦」を開催した。
 だが、城戸沙織は企業家だ。
 二度と「銀河聖戦」などが催されないようグラード闘技場を破壊するだけでよかったのではないか…。
 解らない。
 今となっては城戸沙織が、自身を女神だと言っていたことも気にかかる。
 聖闘士とは地上を守護する女神を護るものだからだ。
 はっきりとはしないが、沙織と聖域は、なにか関係があるのではないか…。
 その関係ゆえに、師は氷河にメッセージを残したのではないか…。
 日本…。
 氷河は重く雲の垂れ込める空を見上げた。
 再び訪れることはあるまいと、思っていた国を思った。
 城戸沙織に会えば、師の不可解な行動の謎が解けるような気がした。
 だが、日本には…。
 氷河は二度と会うことはないと思っていた男の姿を思い浮かべ、唇を噛んだ。

「続く」

 しまった、アリシア(聖域編)ってすればよかった☆

アリシア 5

2007-09-01 02:01:31 | ノンジャンル
 その日はなにかが違っていた。
 吐く息をも凍らせる大気も、凍て付いた大地も変わらない。
 だが、なにかが違う。
 しいて言えば、師を前にしたときの緊張感。
 緋色の髪と、宝石のような紅い眸を持った美しい人――。

 だが、氷河は白鳥星座の聖闘士としての称号を手に入れて以来、師と会うことはなかった。
 本来なら氷河が授かった白鳥星座の聖衣を授かるのは別の人物であった。
 その男は師と同等に強靭な身体能力と精神を持った、限りない優しさを秘めた男であった。
 母を亡くし、肉親すべてを信じられない氷河に、真の友情と強さを教えてくれたアイザックは氷河の為に、今だにこの冷たい深海を彷徨っている。
 敵にも己にも常にクールに徹するように指導されていたのにも拘らず、氷河は母への思慕を断ち切ることができなかった。
 師は、甘さを断ち切ることのできぬ弟子に聖闘士としての称号は与えたが、聖闘士の証の聖衣は、与えようとはしなかった。
 氷河が聖闘士になったのは女神を護るためではない。母の亡骸を、身も凍る海底から引き上げるためだ。
 氷河は聖闘士としての力を、亡き母のみに捧げることしか考えてはいなかった。
 師は氷河の心を見抜き、氷河に聖衣は与えなかった。
 だが、日本で開催された「銀河聖戦」に聖域は激怒し、師は肉親への情を断ち切る最後の機会を、氷河に聖衣を与え日本へ向かわせることで与えてくれた。
 その機会を、氷河は生かすことができなかった。
 氷河は決して肉親の情に負け、白銀聖闘士を討ったのではなかった。
「氷河」
 木戸を開き入ってきたヤコフの呼びかけに、氷河は我に返った。
「町まで買い物に行くのに付き合っておくれよ」
 ヤコフは氷河のコートの裾を掴んだ。
 ヤコフは東シベリアの定住民の子供であった。師はこの極寒の定住民族を、害獣や災厄から護っていた。
 ヤコフは師にもアイザックにも、氷河にも懐いていた。
「解った、今日は小麦粉か」
 日常品を売る町から、はこの集落は遠い。馬車を使っても、幼いヤコフには買い物は危険と隣り合わせの困難な仕事だ。
「それと、ウォッカに野菜」
 遠い道のりを馬車で氷河と買い物に出れることを、ヤコフは喜んでいた。
「それは大変だな」
 氷河はヤコフの髪を撫でた。
 聖闘士として身につけた力ではあるが氷河はこの極寒の地で母の眠りと、このあどけない笑顔を護りながら生きてゆこうと心に誓っていた。

「続く」

 ちょっと開いてしまいました。
 毎回見に来てくださる方々、ありがとうございます。
 もっと、ちゃっちゃと書けたらいいですね(汗)