JINX 猫強

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一色達也殴られる (魔性より)

2022-11-29 16:01:44 | 日記

 一色達也(いっしき たつや)は困り果てていた。

 三條一冴(さんじょう いっさ)の機嫌が悪い。

 原因は解る。

 溝口紫央(みぞぐち しおう)ーー。

 溝口は三條の想い人であった。

 溝口は警視庁公安警察に所属する凄腕の捜査員であった。

 その溝口が、潜入捜査で一色たちの通う高校にやってきた。

 当時、一色たちは三條を中心に教師イジメに専念していた。

 一色たちの親はそれぞれ大企業を経営し、三條の父親に至っては政治家との太いパイプを持った政財界の大物であった。

 一色たちに怖いものはなかった。

 ある夜、一色たちは三條に誘われるまま、男子教師を襲い強姦した。

 鶴見教雄(つるみ みちお)というその教師はその後、自殺をした。

 遺書も残さず、早朝の校舎からの飛び降り自殺であった。

 自体を重く見た警視庁は私立・愛染学苑に潜入捜査員を送り込んだ。

 それが溝口だった。

 一色たちは溝口に逮捕され、少年刑務所に放り込まれた。

 それまで、なんの苦労もなく、将来も約束された一色たちであった。

 当然、報復した。

 捕らえた溝口に筆舌に尽くし難い拷問を繰り返した。

 一時は心神喪失まで追い込んだ溝口だが、一瞬の油断を疲れ、一色たちは半殺しにされ、今度は刑務所に叩き込まれた。

 一色たちは手を引こうとしたが三條は懲りなかった。

 執拗に溝口に固執した。

 そして、生け捕りにした溝口を拷問の末、記憶喪失までに追い込んだ。

 だが、溝口を助け出した者があった。

 溝口は最初に一色たちに捉えられ、過剰なまでに暴行し脱出した時点で警視庁を馘(くび)になっていた。

 だが、それは表向きのことに過ぎなかった。

 溝口は警察が表立って着手できない事件に関わり、殺し屋に狙われていたのだった。

 記憶を取り戻した溝口は一色たちの新しく起こした会社に殴り込んできた。

 その時、一色たちはまだ溝口に執着する三條を持て余していた。

 溝口は三條を支配し、ついでに一色たちも支配してしまった。

 以来、一色たちは溝口の営む小さな探偵事務所でこき使われる日々を送っていた。

 警視庁が表立って関われない事件を裏から捜査するのに、探偵という仕事は都合が良かった。

 少年刑務所と刑務所に相次いで叩き込まれた自分たちを身内は敬遠し、その身柄を溝口に預けてしまった。

 三條以外には、いい迷惑としか言いようがない。

 その三條が機嫌が悪い。

 どこがいいのか、三條は溝口に恋い焦がれていた。

 あまりの執着に溝口は警戒した。

 三條たちは溝口を囚えるために、両親を人質にとっている。

 手元で監視。

 それが溝口の決断だったのかもしれないーー。

 その溝口が2日前から姿を消していた。

 浮気や人探し、などといった探偵の仕事は三條たちと一緒に出向くが、なにか危険な仕事には溝口が一人で出向く。

 それが三條には気に入らないのだ。

 三條は怯えている。

 いつか、溝口が自分の許を去るのではないかとーー。

 そんなことはないと周囲が慰めても、三條は聞かない。

 自分が溝口に好かれる要素がないと、ただひたすらに落ち込む。

「あーあ、しかし、溝口もよー」

 三條の醸し出す陰気さを振り払うように一色が口を開いた。

「ケチらないでもっとヤラせてやればいいのによぅー」

 溝口と三條は身体の関係がある、最も身体の関係があるのは三條だけではない。

 一色・三條・大久保澄也(おおくぼ すみや)犬飼克馬(いぬかい かつま)の4人は溝口を強姦し虐待しまくっている。

 だが、心が通じての関係は三條だけであった。

 だが、滅多にヤラせてもらえない。

 それでいて姿をせすのだから、三條の不安は耐えない。

「大体、今更ケチるような間かよ」

 一色はペットボトルから水を飲んだ。

 一色は外に通じる扉には背を向けていた。

 何気なく見た、三條たちの顔が引き攣っている。

 それを認識したときには頭部に衝撃を受けていた。

「誰がケチだ」

 聞き覚えのある、だが、今は聞きたくない声に、一色は全身を強張らせた。

「いえ、あの…別に、溝口さんのことを言ってるわけじぁ…」

 一色は口ごもった。

「まぁ、いい」

 溝口は席で凝固している4人を見回した。

「溝口ぃ」

 御門真聖(みかど まさき)が溝口の傍らに駆け寄った。

 真聖はただ一人、溝口に敵意見せなかった青年だった。

 溝口も真聖は可愛がっていた。

「溝口さん、だろう? 呼び捨ては駄目だと言ってあるだろう」

 頭を撫でられる真聖を見て、三條がまた不機嫌になった。

「はーい」

 おとなしく頭を撫でられている真聖を見て、犬飼も不機嫌になった。

 犬飼と真聖もデキているのだった。

「よし、行ってよし」

 溝口が真聖を押しやった。

「お前たち、高橋さんに渡す資料はちゃんと纏めたか?」

 溝口が三條に声をかけた。

 高橋とは、先日夫の浮気調査を依頼しに来た主婦であった。

「はい、バッチリ、画像も声も撮れました。コレで慰謝料間違いなし」

 三條が封筒を引き出しから取り出した。

「そうか、なら、お前たち今日は上がっていいぞ」

 溝口が自分の椅子に腰をおろしながら口を開いた。

「え、いいんすか? まだ3時スよ」

 犬飼が身を乗り出した。

「たまにはいい、明日からはこき使う」

 溝口はパソコンを立ち上げながら口を開いた。

「やった、真聖、前に言っていた店に連れて行ってやるよ」

 犬飼が真聖の腕を掴んだ。

「俺達も、羽を伸ばすかなー」

 大久保が一色をうながした。

「そうだな」

 浮気調査といえどもまだまだ調査員駆け出しの一色たちには緊張の連続であった。対象者に気づかれる事があれば、溝口に容赦のない叱責を受ける。

「お前はいいのか?」

 大久保が三條に声をかけた。

「俺は、いい」

 三條は座ったまま溝口を見つめていた。

「あ、そう?」

 一色は大久保を促して事務所を出た。

 凶悪で、乱暴でも、ただ一人の三條の想い人が溝口であった。

ーー報われるといいな、三條…。

 さも、愛おしい者を見るような眸を溝口に向けていた三條の残像に一色は声をかけた。

 荒れに荒れ、人を人とも思わぬ傍若無人な自分たちの前にただ一人立ちふさがり、自分たちを更生に導いてくれたのが溝口であった。

 誰にも心を開くことがなかった三條の、唯一の心の拠り所が溝口であった。

ーーしかし、あの二人が…。

 世の中は解らないものだと、街の雑踏に踏み出す一色の唇が笑みを刻んでいた。

 

■ ■ ■

 コレは前に出した「魔性」のパロです。

 DLsiteさんでダウンロードできます。

 まぁ、本もまだたくさんうちにあるのですがーー。

 凶悪な4人組ですが、今はホンノ180ページ状態です。

 なんか、久しぶりの原稿なのでドキドキしています。

 よかったら感想とかリクエスト、お聞かせ下さいね


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