JINX 猫強

 オリジナルとかパロ小説とかをやっている猫好きパワーストーン好きのブログです。
 猫小説とか色々書いています。
 

聖闘士学園へようこそ・番外編10

2007-07-31 02:57:04 | プチ・原稿
 朝倉匡章は、後から入ってきた二人の生徒を盗み見た。
 朝倉は、見るからに凶悪そうな生徒たちから逃れるように人気のない校舎を散策していた。
 そして、興味本位で寄った美術準備室で、人相の悪い生徒が床にうつ伏せになった金色の髪の生徒を足蹴にしているのを見てしまった。
 その二人が時を同じくして、食堂に姿を現した。
 朝倉は以前の学校で、苛めにあっていた。
 あの留学生も人気のない美術準備室に引き込まれ苛めにあっていたに違いなかった。
 無表情は装ってはいても、どれほど恐ろしく苦痛であったかと思う。
 そして、それは樹海に囲まれた学校生活で永遠に続くのだ。
「なにか、ありませんか?」
 瞬は早々に会議を切り上げようとした。
 会議より、兄を問い詰める方が大事であった。
「…なければ、これで会議を終わります」
 議長の宣告に、朝倉は思わず手を上げていた。
 
「続く」

聖闘士学園へようこそ 番外編 9

2007-07-28 02:10:05 | プチ・原稿
 開かれた扉に、瞬は視線を巡らし瞼を見開いた。
 時間には遅れたが、気まぐれで団体行動などに興味も示さないと思っていた氷河が会議の場に現れてくれた。
 だが、最後に現れた人物に、瞬は形のよい眉を顰めた。
 これまた団体行動など無視するはずの兄が、氷河のすぐあとに現れた。
 いや、群れるのが嫌いだと入学を拒否し続けていた兄が、どういう気まぐれか、樹海に囲まれた学園にやってきた。
 理由は、氷河に違いなかった。
 瞬は、兄と氷河のあってはならない関係に気付いていて、顔を背け続けてきた。
 その目で見れば、氷河の髪が濡れているのも気にかかる。そして微かに漂う石鹸の芳香も気にかかる、他の誰が気付かなくても瞬にはわかる、伊達にエイトセンシズを極めたわけではないのだ。
「なにをしている瞬、早く会議とやらを始めろ」
 一輝がテーブルの上に脚を投げ出した。
「解りました…」
 瞬は平静を装った。
 会議が終わったあとで、取っちめる肚を瞬は固めた。
「…それでは、寮での生活や学校生活で、なにか改善点などがありましたら…」
 そう口にしてはいるが、寮での生活や学校生活などはどうでもよくなっていた。
 寮など、屋根があるだけで良しとせねばならない。
 決められた時間に食事が出て、暖かい寝所が用意されていて、さらに勉強を教えてもらえるのだから、感謝せねばならない。
 なにか異議を唱える生徒がいれば、まとめてアンドロメダ島に空輸したい気分に、瞬は捕らわれていた。

「続く」

聖闘士学園へようこそ(番外編)8

2007-07-27 02:10:27 | プチ・原稿
「オラッ、とっとと入りやがれ!」
 アンドロメダは5人を食堂に蹴り入れ、瞬を仰ぎ見た、言葉を続けた。
「あと、何人だ」
 アンドロメダの言葉に瞬は戸惑いを見せた。
 アンドロメダが部屋を出てから寮会議に出ていない生徒の大半を暗黒聖闘士たちが引っ張ってきてくれていた。
 集まっていない生徒はあと3名。
 そのうちの2名は兄と氷河だ。
 あの二人が本気でサボタージュする気なら、暗黒聖闘士たちにも連れてくることは不可能だ。
 あと1人を暗黒聖闘士の誰かが連れてきてくれたら会議を始めるしかなさそうであった。
 扉の開いた気配に瞬は視線を転じ、現れた生徒に微笑みかけた。
 細身の気の弱そうな生徒であった。小脇にスケッチブックを抱えている。
 以前の学校では苛めで不登校になり、一時は自殺騒動も起こした朝倉匡章(あさくらただあき)という生徒であった。
 この学校には新しい第一歩を踏み出すために編入してきた。
 注意をするよう、沙織のメモに会った生徒だ。
 朝倉は長時間待たされ、不機嫌な生徒たちの間をすり抜けるように歩を進めていた。
「たく、おせーんだよッ」
 呟いた生徒があらぬ方を見ながら、こちらへやってくる朝倉に脚をかけた。
 生徒は半ば脚を蹴られ、前方につんのめっていた。
 朝倉の顔が床に着く寸前、紫龍が支え、自身の隣に座らせた。
 朝倉は無言で自分を庇ってくれた長髪の生徒を見つめていた。
 以前の学校は、自分の転ぶのを周囲は笑いながら見物していた。転んだ自分の上を踏みつけてゆく生徒も多数いた。
 だが、この生徒は違う。
 素行の悪い生徒が集まる学校だと聞いていたが、ここならなにかが変わりそうな気がした。

「続く」
 
 

聖闘士学園へようこそ・番外編 7

2007-07-26 03:01:03 | プチ・原稿
「な、なんだってこんな…」
 化け物じみた二人が揃って同じ学園にいるのかと阿部は舌打ちし、金髪をやりすごし場所を移動した。
「どうする、阿部?」
 怪奇現象の場に居合わせたというだけでそろって前学園を追い出され、阿部とともにこの樹海の檻に放り込まれた井上が口を開いた。
「どうって」
 こう、恐ろしげな者どもが跋扈しているようでは、問題を起こすにも相手を選ばねばならない。
「このまま、卒業するまでこの学園へいろってか? こんな所じゃあ、タバコ1箱買いに行けねぇ」
 同じく現場に居合わせた植田が口を開いた。
「タバコだけじゃあねぇ、こう樹海に囲まれていたんじゃあ、抜け出すこともできやぁしねぇぜ」
 江藤が拳を握り締めた。
「そんなこと、知るかよ」
 阿部がそっぽを向いた。
「それに、ここは男子校っていうじゃあねぇか」
 夜遊び好きの小野田が壁を蹴った。
「うるせぇ、場所を変えるぞ」
 不吉な二人を見た場所から移動し、問題を起こし、すぐさま退学になる肚を阿部は固めた。
「おい、あれなんかどうだ」
 真新しい校舎を物珍しげに見回しながら歩いている小柄な生徒に江藤が目をつけた。
「おう、あれなら手ごろだな」
 阿部は目を細めた。
 生徒には気の毒だが早々に因縁を付け、痛め付け、退学になることに一味は決めた。

「おい、チビ」
 背後からの声に、星矢は周囲を見回した。
 だが、辺りには星矢の他に人影はない。
「なに、辺りを見回してんだよ、おめぇしかいねーだろう、チビはよぅ」
 植田が星矢の頭を軽く叩いた。
「なにすんだよ」 
 星矢は辺りを取り囲んだ5人の男たちを眺め回した。
「チビをチビといってどこが悪い、え? チビ」
 小野田が膝を曲げ、星矢と視線を合わせて見せた。
「お前ら、オレに喧嘩を売っんのか」
 星矢が小野田を睨み付けた。
「喧嘩になるのか、チビ助がッ」
 いって殴りつけてきた小野田の拳を、星矢は悠々と交わした。
「いっておくけどな、オレは強いぜ」
 己を取り囲む男たちの頭上を飛び越え、星矢が笑った。
 喧嘩は女神から禁じられてはいるが、相手から仕掛けてくるものは仕方がない。それも、相手は理由もなく星矢に因縁をつけてきているのだ。
 こういう相手なら痛め付けるのにそう、心は痛めずにすむ、それに、逃げるという文字は、聖闘士にはないのだ。
「なにが、強いだこのガキがッ」
 身軽なガキにそれぞれが殴りかかった。
「バーカ、強えー強いっていったんだよ」
 星矢は殴りかかってきた一人の腕を掴み放り投げ、掴みかかってきた生徒の足を払い、一歩引いた生徒の腕を掴み引き寄せ、腕とベルトに手をかけ持ち上げると、呆然と自身を見つめている二人に向かい叩きつけた。
「つ、強ぇ~」
 植田の下敷きになった、小野寺が呻いた。
 呻いたときには、簡単に殴り倒せると思った生徒は背を向けていた。
 苦痛に呻きながら、阿部たちは最初に因縁をつけた生徒の言葉を思い出していた。
――この学園には、あなたたちの常識では測れない人が他にもいるんですから…。
 生徒はそういった。
 確かにその通りであった。

 阿部たちは、自分たちが殴りかかった生徒の名前が、城戸星矢であることを後で知った。
 そして、最初に因縁をつけた生徒の名も城戸瞬であること、やたらと人相の悪い、額に傷のある男も城戸一輝…後に風紀委員として阿部たちの前に立ち塞がる漆黒の髪を背まで垂らした城戸紫龍たちが異母兄弟であることを知ることになる。

 以来、阿部たちは校舎の隅でタバコをふかし、だべっているしかない。
 今は第1回寮会議、なるものが開かれている。
 そんなものにはバカバカしくて出る気にはなれない。
 いくら寮生活が改善されようと、酒やタバコが出るわけではない。
 まじめな学生生活など、阿部たちには送るつもりは毛頭ない。
 思い描くのは自堕落な、先日までの日常のみだ。
 このような学園へ押し込められるのなら、いま少し控えめに過ごすのだったと阿部たちは悔いていた。
 不意に金属を震わせる鋭い音に凍り付いた5人を、漆黒の鎖が絡め取っていた。
「なッ、熱ィ!」
 腕に巻きつけられた鎖に、持っていたタバコごと絡め取られ、井上が悲鳴を上げた。
「見つけたぜ」
 声に、5人は一斉に扉に視線を据えた。
 目の前に立ち、鎖を引き据えているのは、銀色の髪を持つ留学生の一人だ。
 この学園には留学生が多い。
 そして、その留学生たちはどういうわけが、一輝と呼ばれる人相の悪い男に忠誠心厚い。
「手間かけさせんじゃあねえ」
 阿部が殴りつければ3メートルは吹っ飛びそうな華奢な生徒に引き立てたれ、阿部たちは食道に引き立てられていた。

「続く」

聖闘士学園へようこそ・番外編 6 

2007-07-23 02:48:09 | ノンジャンル
 こうなったら、この学園でも問題を起こし退学になるしかないと、阿部はたまたま脇を通り過ぎた学生の肩を掴み引き寄せ、仲間はその周囲を取り囲んだ。
 腕の中の学生を見つめ、阿部は違和感に捕らわれた。
 この学園は全国の問題児、それも少年刑務所に行く一歩手前の学生や不登校の生徒の寄せ集めだと聞かされていた。が、いきなり肩を掴まれ驚いている生徒はモデルを思わせる端正な肢体と容貌を兼ねそろえていた。
 ライトブラウンの瞳が、突然の暴挙に見開かれている。
「なーに、髪を染めてやがるんだ」
 阿部は自分のことを棚に上げ、瞳の色と同色の髪の毛を軽くつまんだ。
「これは、地毛です」
 生徒が弱々しく口を開いた、なぜ自分がこんな目に合っているのか、まるで理解していない表情であった。
「逆らってんじゃあねーよ」
 阿部は腕を振り上げた。問題を起こしたいだけだから相手は誰でも良かった。だが、理由もなく殴りつけるには、目の前の少年は華奢で、端正すぎた。
 阿部は拳ではなく、平手を見舞うつもりだった。
 だが、振り上げた腕は背後で掴まれていた。
「なに、しやがるッ!」
 振り向き、阿部は瞠目した。
 男の姿を認めた仲間が、一斉に阿部から遠退いた。
 阿部の腕を掴んでいる男は、以前の学園を退学するきっかけを作った男の片割れであった。それも人相の悪い方の。
「なにしやがるは、こちらのセリフよ」
 男が唇の端を吊り上げ、眸を細めた。そうすると悪い人相に更に凄みが増す。
「やめてください兄さん」
 肩を掴んでいた学生の言葉に、阿部は生徒の肩を突き飛ばすように放した。
「瞬がキサマになにをした?」
 瞬と呼ばれた学生を放した阿部の腕を、男が捩じ上げた。
 驚きのあまりに人質になりえる弟を放してしまったことを、阿部は悔いた。
「いえ、別に…」
 阿部はぎこちない笑顔で言葉を紡ぎだした。
「別になにもなくて、オレの弟を殴るのかキサマ」
 更に腕を捩じ上げられ阿部は呻いた。
「やめてくださいてばッ」
 いって瞬は男と阿部を引き放してくれた。
「なんだ、せっかく助けてやったというのに…」
 男が瞬に笑いかけた。
「もう、ボクはそんなに子供じゃありませんよ」
 瞬が腕を組みそっぽを向いている。
「着くそうそう、因縁をつけられていたではないか」
 男の言葉に瞬が柳眉を吊り上げ、阿部を振り返った。
「もう、あなたたちが変なことするから…」
 そこで瞬は言葉を切った。
「…いいですか、この学園にはあなたたちの常識では測れない人が他にもいるんですから、もうこんなことはしない方がいいですよ」
 そう口にし瞬は、阿部たちをこの場から解放してくれた。
 だが、阿部は瞬の言葉など真に受けてはいなかった。
――なにが、あなたたちの常識では測れない人が他にもいる、だ。
 心中、嘲った。
 阿部とて、街に出れば喧嘩でそうそう負けはしない。
 いえば、あの男は別格だ。
 そう思って歩き出し、阿部とその一味は柱の影に身を隠していた。
 目の前から歩いてくる金髪の青年には見覚えがあった。
 ゆったりとこちらに歩を進めているのは、あの悪夢の元凶の美しい片割れであった。

「続く」

 強引に、一輝と氷河を出してみました。

 阿部とその取り巻きの散々な一日は《聖闘士学園へようこそ》に載ってまーす。ちょっと宣伝してみました☆