JINX 猫強

 オリジナルとかパロ小説とかをやっている猫好きパワーストーン好きのブログです。
 猫小説とか色々書いています。
 

経費削減SS (一輝と猫7)

2013-05-11 23:47:00 | ノンジャンル
「猫が喋るのか?」
 
 重ねて問われ、一輝は言葉を呑んだ。

 よくよく見れば、氷河の眸が潤んでいる。

 シャワーを浴びたせいだと思っていたが、氷河の頬が朱く色づいている。

「喋らん」

 一輝は氷河から視線を反らせた。

 酔っぱらいに関わると、ろくな事にならないからだ。

「当たり前だ、バカ――」

 氷河は一輝から視線を、膝の上のいささか気の毒な猫に戻し、言葉を続けた。

 一輝を罵倒する間も、氷河は猫の両脚を掴んだまま、開放はしなかった。

「――本当に、一輝はおバカでチュねぇー」
 
 氷河は猫の耳許に囁いた。

 そういえば、さっきから氷河の言動はおかしい“でチュねー”など、普段の氷河なら、絶対に使わない言葉だ。
 
――阿呆らしい。

 一輝はテレビのリモコンに手を伸ばした。

 普段、氷河は一輝がリビングに居るときは、直ぐに部屋に篭ってしまう。

 部屋に篭ったら最後、氷河は中々、姿を表さない。

 城戸沙織からの仕事をしていれば、食事の用意をしないのも当然だと思っていることが、一輝には肚立たしい。

 今は酔ってはいるが、氷河は一輝の傍らで、普段は決して見せない無邪気な笑みを見せている。

 奇妙なストレッチを施されてる猫には気の毒だが、それだけでも良いか、と思いながら一輝は、画面に視線を転じた。

「続く」

 いゃー、なんか前回のお話、最後の方がおかしくなっていたので、打ち直しました。
 眠気に負けました。
 これからは気をつけますので、もう少しお付き合い下さいッ☆


経費削減SS (一輝と猫6)

2013-05-11 00:46:00 | ノンジャンル
 一輝はビールを飲みながら、膝の上にのせたアホ猫を構い続ける氷河を見ていた。

「可愛いなぁ、お前は」
 
 柔らかな笑みを浮かべ、猫の頬を撫で、時には抱き上げ、腹に頬摺を摺り寄せ、膝の上に座らせ、両の脚を上げさせている様は、もう猫を乾かすのではなく、猫で遊ぶレベルであった。

 最初は撫でられ、肩を揉まれご満悦だったアホ猫も、今は迷惑顔を隠さない。

 隙を見て、逃亡を企てようも一度、捕られた聖闘士の腕からは、さすがに逃れられないようであった。

「もう、いいのではないか」

 見兼ね、一輝は声を掛けた。

「何が?」

 氷河が笑顔を収め、一輝に視線を転じた。

「何が? ではない、嫌がっているだろうが」

 猫は基本的に、体を拘束されるのを嫌う、現に猫は、有るかな無きかの尻尾を振り、不興を顕にしている。

「猫が喋るのか?」

 氷河の問いに、一輝は言葉を詰まらせた。

 猫が喋るわけがない、そんな当然なことを真顔で問う氷河の真意が、解らない。

「お前、酔って――」

 酔っているのではないか、という言葉が途中で凍った。


 外見とは裏腹に、氷河はアルコールに弱い。

 以前、何かの折に城戸邸で、酒盛りをしたことがあった。

 闘いで重症を負った聖闘士たちは、静養の為にかなりの期間、、城戸邸で軟禁状態に置おかれていた。

 連戦に次ぐ連戦に、城戸沙織は聖闘士たちの体調にナーバスになっていた時期があった。

 ある晩、星矢が屋敷のあちこちから、アルコールや肴を持ち出し、宴会を開いた事があった。
 
 屋敷にいる人間たちは、辰巳や沙織がいないときには、聖闘士たちのすることに口を挟まない。

 銀河聖戦(ギャラクシアン・ウォーズ)開始直前に、聖域から戻ったばかりの星矢が沙織と口論となり、屋敷の一部を、素手で破壊したことがあったからだ。
 
 深夜の宴会に、氷河は良い顔をしなかった。
 
 いい子振るなと、星矢がウイスキーを注いで渡したグラスを、当惑気味に見つめる氷河に「まさか、酒が飲めないのではあるまい?」と、一輝が声をかけた。
 
「まさか」と応え、氷河は手にしたグラスを一息に煽った。

 周囲から歓声が揚がったが、氷河はその場で倒れてしまった。
 
 いきなり服の袖を掴んだ腕に力を掛けられ、一輝は氷河が闘いを挑んでくる気なのかと思った。

 が、酒乱か私闘と思った氷河は一輝に縋り付いたまま、膝を折った。

「おい、どうしたーー」

 一輝は氷河の背に腕を回した。それが悪夢の始まりであった――。
 どうなったのか、いつの間に一輝に覆いかぶさる形になっていた氷河が、今口に放り込んだ後のウイスキーをーー。
 
 あれ程、一輝の背中を凍り付かせ、周囲の聖闘士立ちを恐怖させた日はない。
 
 覚えていないのは、周囲に(特に一輝)迷惑を掛けた氷河だけであった。
 
 あれから、星矢たちは氷河にアルコールを進めるのは止めた。
 
 その氷河が、ビールを浴びた猫の体を洗い流すために、密室である浴室に入り、空間に漂うアルコールに酔った?

 まさかとは思うが、氷河だから解りはしない。

 一輝は注意深く氷河の様子を見守ることにした。

「つづく」