浴室のドアの開いた気配に、一輝は思考を打ち切り、雑巾をバケツに放り込むと、ソファに腰を下ろした。
床を拭くためとはいえ、這いつくばっている姿など、みっともなくて見せられる物ではないからだ。
たとえ、それが雑巾がけを命じた氷河であってもだ。
一輝はソファに深々と腰を下ろし、浴室から戻った氷河を仰ぎ見、これ以上に無いほど瞼を見開いた。
ビールを被った猫を洗い流すついでに、自身もシャワーを浴びたのであろう氷河は、バスローブを纏っていた。
氷河のバスローブ姿など珍しくもないが、氷河はその懐に、猫を入れていた。
大きく開いたローブから顔だけを出している猫に、一輝は肚を立てた。
「キサマッ、何の真似だ」
一輝に指を突きつけられ、氷河が眉を顰めた。
「何って、猫がドライヤーを嫌がるから、こうして――」
氷河が頭に被っていたタオルで、猫の耳の後ろ拭いた。
その優しげな手つきに、一輝は更に肚を立てた。
「キサマッ、何をしているッ」
これまでの付合いの中で、氷河が一輝に優しく触れたことなど、ただの1度もない。それを、どこの馬の骨とも解らない猫を、よりにもよって懐に――。
「何って、こうしておけばドライヤーを欠ける必要も無いし、拭く手間を省けるだろう」
氷河は一輝の斜め向かいのソファのかけた。
「そんな猫、表に放り出してしまえ」
一輝は自分の身体を舐めるふりをしながら、氷河の素肌を舐める猫に肚を立てた。
「何を言う、そんなことができるか」
氷河が猫の頬に自分のそれを擦りつけた。
「やめんか、キサマッ――」
猫が氷河の頬を舐めながら、横目で一輝を見ている。
その猫の頭を指で撫でている氷河に、一輝はムカッ肚を立てた。
「続く」
床を拭くためとはいえ、這いつくばっている姿など、みっともなくて見せられる物ではないからだ。
たとえ、それが雑巾がけを命じた氷河であってもだ。
一輝はソファに深々と腰を下ろし、浴室から戻った氷河を仰ぎ見、これ以上に無いほど瞼を見開いた。
ビールを被った猫を洗い流すついでに、自身もシャワーを浴びたのであろう氷河は、バスローブを纏っていた。
氷河のバスローブ姿など珍しくもないが、氷河はその懐に、猫を入れていた。
大きく開いたローブから顔だけを出している猫に、一輝は肚を立てた。
「キサマッ、何の真似だ」
一輝に指を突きつけられ、氷河が眉を顰めた。
「何って、猫がドライヤーを嫌がるから、こうして――」
氷河が頭に被っていたタオルで、猫の耳の後ろ拭いた。
その優しげな手つきに、一輝は更に肚を立てた。
「キサマッ、何をしているッ」
これまでの付合いの中で、氷河が一輝に優しく触れたことなど、ただの1度もない。それを、どこの馬の骨とも解らない猫を、よりにもよって懐に――。
「何って、こうしておけばドライヤーを欠ける必要も無いし、拭く手間を省けるだろう」
氷河は一輝の斜め向かいのソファのかけた。
「そんな猫、表に放り出してしまえ」
一輝は自分の身体を舐めるふりをしながら、氷河の素肌を舐める猫に肚を立てた。
「何を言う、そんなことができるか」
氷河が猫の頬に自分のそれを擦りつけた。
「やめんか、キサマッ――」
猫が氷河の頬を舐めながら、横目で一輝を見ている。
その猫の頭を指で撫でている氷河に、一輝はムカッ肚を立てた。
「続く」