JINX 猫強

 オリジナルとかパロ小説とかをやっている猫好きパワーストーン好きのブログです。
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経費削減SS (一輝と猫4)

2013-05-06 23:16:00 | ノンジャンル
 浴室のドアの開いた気配に、一輝は思考を打ち切り、雑巾をバケツに放り込むと、ソファに腰を下ろした。
 床を拭くためとはいえ、這いつくばっている姿など、みっともなくて見せられる物ではないからだ。

 たとえ、それが雑巾がけを命じた氷河であってもだ。

 一輝はソファに深々と腰を下ろし、浴室から戻った氷河を仰ぎ見、これ以上に無いほど瞼を見開いた。
 ビールを被った猫を洗い流すついでに、自身もシャワーを浴びたのであろう氷河は、バスローブを纏っていた。

 氷河のバスローブ姿など珍しくもないが、氷河はその懐に、猫を入れていた。
 
 大きく開いたローブから顔だけを出している猫に、一輝は肚を立てた。

「キサマッ、何の真似だ」
 
 一輝に指を突きつけられ、氷河が眉を顰めた。

「何って、猫がドライヤーを嫌がるから、こうして――」
 
 氷河が頭に被っていたタオルで、猫の耳の後ろ拭いた。
 その優しげな手つきに、一輝は更に肚を立てた。

「キサマッ、何をしているッ」
 
 これまでの付合いの中で、氷河が一輝に優しく触れたことなど、ただの1度もない。それを、どこの馬の骨とも解らない猫を、よりにもよって懐に――。

「何って、こうしておけばドライヤーを欠ける必要も無いし、拭く手間を省けるだろう」
 
 氷河は一輝の斜め向かいのソファのかけた。

「そんな猫、表に放り出してしまえ」

 一輝は自分の身体を舐めるふりをしながら、氷河の素肌を舐める猫に肚を立てた。

「何を言う、そんなことができるか」

 氷河が猫の頬に自分のそれを擦りつけた。

「やめんか、キサマッ――」

 猫が氷河の頬を舐めながら、横目で一輝を見ている。
 その猫の頭を指で撫でている氷河に、一輝はムカッ肚を立てた。


「続く」