聖闘士学園へようこそ 11

「はい」
　瞬は朝倉を見つめた。
　早速、なにかあったのかと思った。
　今も、服装を乱した生徒に脚をかけられ転びそうになったばかりだ。つい最近、瞬自身も
「実は、その…」
　朝倉は背後に男の視線を感じながら口を開いた。
　いや、さっきの光景を公表するということは、ここにいる生徒たちの標的にされることになるかもしれない。
　だが、苛められる自分を傍観していた同級生のような真似はしたくない。
　所詮、自分はこういう役回りなのだ、と。
「さっき、ボク…生徒が苛められているのを見ました」
　朝倉の言葉に瞬は瞼を見開いた。
　朝倉は自分のではなく、他人が苛められている現場を見たと、告白する。
　そんなことをすれば、今度は自身が標的にされるにも拘らず、だ。
「誰が、誰をですか」
　気弱で虚弱そうな生徒に、過去の出来事を払拭し、新しい日常を送るために転校してきた生徒にそう、告白させる行為を瞬は憎んだ。
「名前は知りませんが、あの人が、この人を…」
　その告白とともに指を指された一輝と氷河は仰天した。
「あの人が、この人にどんなことをしていました？」
　そう口にした瞬の表情が引き攣っているのを一輝と氷河は見ていた。
「あの人が、この人の背中に乗って…」
　朝倉の言葉が終わる前に瞬の放った鎖が一輝の身体を絡め取っていた。
「この悪党が、なんですって…」
　瞬が兄を睨み据えながら鎖を引き絞った。

「続く」