論争 格差社会

論争 格差社会 (文春新書) 文春新書編集部 文藝春秋 このアイテムの詳細を見る

論争 格差社会 (文春新書) (新書)

この本を読んで昔、子供の頃　親（戦中派）が「働かざるもの食うべからず」という事を言っていたのを思い出した。
親は決して収入が多かったわけではないし、むしろ貧乏に近いと今では感じる。
貧乏であるから働かなくてはいけなく、そして子供が多く跡取りは長男だけに限られて親の財産を受け継ぐのは家を継ぐものだけであって、今のような親に寄生する生活など考えられなかった。
そう考えると、今の世の中の豊かさ故に、フリーターという存在が発生するのだという事はこの私でも自ずとわかってくる。

この本は、17人の論者による論文・対談が12編掲載されていて、格差に関する人それぞれの考え方がわかる。
渡部昇一氏と日下公人氏との対談に関しては、戦前の上流階級の話を延々として反吐が出るのだが、そういう考え方をする人もいるのだと知る必要はあるのだろう。
こういう人は、指導階層の人であって普通の人間とは違う。
だからこそ、普通の人間がその人たちの話を聞けば反吐が出る。
世界が違うのだから・・
結局、指導者階級の人間が今より自由があった戦前にノスタルジーを感じているだけなのだ。
主人がいてそれぞれの家に使用人がいる。
そんな姿が、全ての人間に能力に見合った分別ある行動をする事が幸せを運んでくるのだと。
でもね、私はこの考え方は違うんじゃあないかと思うことしきりなのです。

まあ、そんな話は隣に置いて他の論者の論文・対談について考えるに、社会科学って学問はなんなんだと思うのです。
社会の現象をあたかも自然現象と同じようにとらえるこころみなのだろうけど結局そこにあるのは、その人その人のイデオロギーじゃあないのかと。
人間の営みは、変わらないと感じるのが従来の考え方なのだろうが、科学技術の発展による経済の成長は人間の心までも変えていくのだと感じる。
そういう人間の営みを分析する事によって何が得られるのか？
格差社会を敢えて作り出そうとする輩に対しては、警告を発してそれを防ぐことが目的ならいいだろう。
しかし現実はイデオロギーの問題なのだと認知して知ることが大切だと思う。