ポン太よかライフ

得した気分、首都圏見て回りの旅、美術館散歩

平櫛田中107歳の軌跡

2009-11-04 08:29:55 | 博物館、美術館行ってきました
小平市に平櫛田中彫刻美術館があります。平櫛田中は、私が木彫を教わっている石黒先生が芸大生だった時に御指導されていた方でもあり、傾倒し興味を抱いている作家の一人です。今年は開館25年・没後30年にあたり、11月29日まで平櫛田中 次世代に遺した珠玉の彫刻と題した特別展が開催されています。出光美術館のUtopia展に収蔵品の帳果像が出ていなかったので、もしやと思っていたところ1室で早々に御目にかかることができました。瓢箪からロバを出してそれに乗ったという仙人に由来し、仙人の手から下がる瓢箪の先から小さなロバの頭がにゅうっと出てくる場面をリアルに彫刻し彩色を施したちょっとシュールでユーモラスな作品です。
私がはじめて平櫛田中の彩色した木彫と出会ったのは、国立劇場の鏡獅子です。東山魁夷をはじめ、有名な作品が展覧会のようにロビーを飾る中でも高い精神性を感じ迫力ある姿に見いった覚えがありました。
業績を回顧する今回の展示では初期の作品である幼児狗張子などからすでに神業的な彫の技術と対象に迫る描写の確かさを見せつけられ感嘆するばかりでしたが、仏教説話や中国の故事などを題材にした作風を経て、モデルを使った塑像、昭和に入っての彩色と変遷し、絶えず「伝統」と「近代」のはざまで表現の可能性を追求し続けた足跡がうかがえました。
学芸員さんによると、初期を除いて彫りを手伝う弟子をおき、多い時には3、4人もの人がアトリエで働いて、工房のようだったそうです。また、工法は最初に正確な塑像を作り、石膏で型を取り、彫の深さを棒で測りながら正確に木に模写するような手間のかかる職人仕事で、今のように作家が木に直接形を描いて彫り進めるのではなかったようです。その仕事は荒彫りのまま完成とした活人箭の表面に残る沢山の穴に見ることができます。
茶室の傍らに置かれた巨大な楠はこれから彫ろうと田中が百歳の時に入手した原木と伺い、高齢者社会何するものぞと勇気がわきました。