ヒデの現役引退のニュースには驚いた。
あのブラジル戦のあと、ピッチから中々去ろうとしなかったヒデを、そして真っ赤に泣き腫らした目をしたヒデを目撃してしまってからというもの、私の彼に対する印象は殆ど真反対くらいに変わっていた。
それは以前、このブログにも書いたけれど、本当に深い感慨だった。
ヒデが多くのファン、サポーターのために(決して、報道の連中の為でも売名の為でもない。それは彼の言葉をしっかりと読めば分かる。)書いたメッセージ。
まずはその言葉のひとつひとつをしっかりと読んでみて欲しい。
私のブログで彼のメッセージを読む人は少ないと思うが、一応メッセージをリンクしておきます。
<中田英寿からのメッセージ>
「シュート」というサッカーを描いた作品(原作はコミックです)の中の、とある若きプレイヤーのこんな台詞を思い出した。
そのプレイヤーは自分のチームメイトに、100の理屈を捏ねるずっと以前に、こう問いかけるのだ。
「お前、サッカー好きか?」
スランプの時、絶好調の時、雨の日、晴れの日、どんな時も、そのプレイヤーはサッカーをしている時以外は寡黙だ。
そして、落ち込んだり、喧嘩腰になったりするチームメイトに出くわす度、彼は静かに問いかけるのだ。
「お前、サッカー好きか?」
その言葉を聴くチームメイトすべてが黙り込み、自らの心の中にあるサッカーへの思いを見つめる。
そして、笑顔を浮かべる。
あるいは、涙を流す。
ヒデのメッセージの中で、私が一番胸を打たれたのが、人々から「サッカーは好きですか?」と聞かれた時の彼の反応について書いてある下りだ。
ヒデという人は、何となく器用でスマートな人間に見えるが、実はとても不器用で、そんなにスマートではなかったんじゃないかな、とさえ感じた。
武骨という言葉が浮かんだ程だ。
その武骨な程の不器用さで、自分の心の中にある「サッカーが好きだ」という気持ちを守り続けて来たのではないか。
プロになる前、それよりずっとずっと前、まだ小さかった頃、何も考えずサッカーボールだけを追い掛けていた頃の気持ちを、止みそうもない嵐の中、小さな蝋燭の灯を両手で包むように、ひたすら守り続けていたのではないか。
そうだとしたら、いや、きっとそうなんだろう。
だから泣いたのだろう。
話が戻るが、ブラジル戦の後、ピッチで泣いたヒデは、小さかった頃の、サッカーが好きで好きでたまらない、ただの男の子に戻っていたんじゃないだろうか。
だから、素直に泣く事も、それを自分に許す事も、はばからなかったのではないだろうか。
引退はさびしいと私も思う。
けれども、これからの彼は、きっといつでも素直にサッカーが好きと言う自分の気持ちを世界中に誇れるだろう。
「サッカー、好きか?」と聞かれたら、黙り込む事も戸惑う事もなく、世界中に向って答えられるだろう。
私はそう信じます。
そしてヒデのこれからの人生に多くの実り、そして何より、サッカーに対する愛情があふれていることを願います。
最後に、一人のサッカーファンとして彼に伝えたいです。
「サッカーの素晴らしさを、またここで知らせてくれて、どうもありがとう。」
ありがとう、ヒデ!!