税理士 田村直樹の 「建設業者の会計・税務・経営のポイント」  個人事業から会社へ、決算、調査、相続に安心で対応

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高級自動車の売却益の申告を巡り地裁判決、フェラーリF50は「使用又は期間の経過により減価する資産」で取得費控除の対象

2023-03-23 09:45:10 | 日記
高級自動車の売却益の申告を巡り地裁判決、フェラーリF50は「使用又は期間の経過により減価する資産」で取得費控除の対象

税金裁判はなかなか勝てません。
さて、どうなりますか。

納税者が売却したフェラーリの売却益を申告していなかったところ、課税庁が同車は取得費控除(4面に「今週のことば」)の対象となる「使用又は期間の経過により減価する資産」(所得税法38条2項)に該当するとしてその譲渡所得の金額の計算上、取得価額から保有期間に係る減価の額を控除して取得費を計算するなどして更正処分等を行った。これに対し、納税者が同減価する資産に該当しないと主張して処分の一部取消しを求めていた事案で、東京地裁(岡田幸人裁判長)は9日、同減価する資産に当たると判断し、処分は適法だったとする判決を下した<令和2年(行ウ)第323号>。

納税者は平成27年から28年にかけて、4台のフェラーリを売却した。このうち2台は同9年に購入したフェラーリF50(購入価格は付随費用も加えて約5400万円)と同4年に購入したフェラーリ512TR(購入価格は2000万円)で、F50の売却価格は1億3500万円、512TRの売却価格は2300万円だった。納税者は各車両を家事用に使用していた。

納税者は各年分の所得税等をいずれも法定申告期限までに申告したが、確定申告書には各車両の売却に関する記載はなかった。このため、課税庁が30年8月に各年中に売却した車両の売却益などに申告漏れがあるとし、各車両が同減価する資産に該当するとして更正処分等を行った。これに対し、納税者が各車両のうちF50と512TRの2台は同減価する資産に当たらないとして処分の一部取消し求めて争いとなった。

主な争点は2台が「使用又は期間の経過により減価」する資産か、しない資産か。

納税者は、2台のいずれも相当長期間の保有後に購入価格を上回る高値で売却できており、それ自体、自動車としての性能を離れた希少価値が認められていることの証左にほかならない。また、実際に自身も2台を実用品とは離れた収集品として購入して保管していたなどと主張し、同減価しない資産だとした。

ただ、地裁は資産の価値は原則、個別具体的な事情や納税者の主観的な意義付けを離れ、その類型ごとに社会通念上想定される本来的な目的や機能という観点から判断すべきで、納税者が購入した目的や実際の売却価格といった事情が直ちに同減価しない資産といえるか否かに影響するわけではないとした。

そして、自動車は機能が一般的に逓減していくものだから原則は同減価しない資産の範囲と同じものと解される「時の経過によりその価値の減少しない」(所得税法施行令6条)資産には該当しないと判断した。

その上で、ヴァイオリンの名器・ストラディヴァリウスが希少性の高さゆえ、年数を経ても価値が下がらない楽器として法人税法上減価償却できないものと扱われた例に言及。ストラディヴァリウスは、時の経過とともに歴代の演奏者の個性を加え、その実用的な機能(楽器としての演奏効果)にも深みが増すものと一般に評価されているという稀有な性質がある点で、原動機の性能の経年劣化を避けられない自動車とは異なるとした。

さらに、ストラディヴァリウスは現に200年以上にわたり一流のヴァイオリンとしてその価値が社会通念上も確立しており、「骨とう」と称するのに十分な長期間を経てもなお高い価値を維持しているといえるから、これを「時の経過によりその価値の減少しない」資産に該当すると判断することは社会通念にも合致するとしつつ、2台はフェラーリ社の他の自動車の値動き等からみても、そのような長期間にわたり高い価値を維持し、今後も維持し得る資産であるとは断じ難いなどと指摘。

結果、2台は「使用又は期間の経過により減価する資産」として、取得費控除の対象となるとした。

(税のしるべ)
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