時のつれづれ(北多摩の爺さん)

下り坂を歩き始めたら
上り坂では見えなかったものが見えてきた。
焦らず、慌てず、少し我儘に人生は後半戦が面白い。

お葬式のパラダイムシフト

2022年02月22日 | 時のつれづれ・如月 

多摩爺の「時のつれづれ(如月の19)」
お葬式のパラダイムシフト

特定の時代や分野において、当然のこととして捉えられていた規範や認識、さらには価値観などが、
劇的に変化することを・・・ 「パラダイムシフト」という。

ふと思うに・・・ ここんとこ、小さなお葬式や、家族葬といったCMが増えてきている。
特に違和感があるわけじゃないが、これほど葬儀のCMが幅をきかせているのも、
この国の高齢化が進み、高いCM代を払ってでも・・・ ビジネスになるということなんだと思うと、
これも一つの「パラダイムシフト」と言っても良いのではなかろうか?

まもなく父の命日(来週の水曜日)がやってくる・・・ 早いもので1年が経った。
一周忌の法要をしなきゃならないが、昨年は6月に義母、9月に義父が亡くなっていることもあって、
母と妹に意見
を聞き、女房の姉弟たちや配偶者を交えて話し合い、
5月下旬の土曜日と日曜日に・・・ 一周忌法要を二日連続ですることに相成った。

昨春はコロナ禍の真っ只中ということもあり、父も小さなお葬式で見送る予定だったが、
母が地域の葬儀社の互助会に入っているので、それでやるというもんだから任せていたら、
通夜、葬儀、火葬までを・・・ 近くに住む親族と、ご近所の方々数名だけで済ませたものの、
請求額は、なんと150万円であった。

それも、互助会の積み立てや、割引を差し引いての金額であって、
積み立てや割引がなければ、約200万円だというんだから、
ビックリどころの騒ぎじゃなく・・・ 腰が抜けるほど驚いてしまった。

四十九日が済むまで、自宅に小さな祭壇が置かれ、綺麗なお花を毎週取り替えてくれるなど、
アフターフォローは・・・ 確かに素晴らしかったが、
年老いた母が一人で住む家に、弔問に訪れる人が多いとも思えず、
父には大変申し訳ないと思うが、請求書を見てみれば無用なものがたくさんあった。

91歳まで頑張ってくれた父のことを思えば、お金のことで揉めたくなかったし、
母が少しだけ見栄を張ったことを察して、もの申すことは控えることとし、
妹からも幾らか援助してもらって支払いを済ませたが、
母の時は申し訳ないが、小さなお葬式(5~60万以内)で済ませようと、
妹とはしっかり確認しておいた次第である。

また、義父母の葬儀は自宅で行われたので、会場費等が不要で60万程度で済んだが、
集落の仕来りがあって、お手伝いに集まってこられた、ご近所の方々への食事のお世話に加え、
神職(神式だったので)へのお礼や、供え物などの追加費用が、葬儀費用とほぼ同額必要となって、
結局、1回当たり120万円、2回で240万円程度を要し、姉弟3人で折半することになった。

家族葬がすっかり定着しているようにみえる・・・ 昨今の葬儀事情だが、
私の実家は、地方の中核都市であり、母も小さなお葬式でやると言ってたので任せたが、
そもそもは、互助会のシステムを予め確認してなかった私のミスであり、
現実はあまくないことを学ばせていただいたので、母の時にはしくじらないようにしたいと思う。

しかし、女房の実家は同県にあるが農村で、その地域には地域なりの仕来りがあって、
葬儀のお手伝いなどは、なにも言わなくても、ご近所の方が手伝ってくれるのは嬉しいが、
帰郷するにしても、相応のお土産が必要であったり、
通夜にも葬儀にも仕出しを手配して、それなりの食事を出すなど、想定していたとはいえ、
細々とした負担が都度都度発生し、仕来りをしらないがゆえに、必要以上に気を遣うことになった。

これで二人ともに亡くなったので、もうここで葬儀をすることはなくなったと言ったら、
バチ当たりになってしまい・・・ 身も蓋もなくなってしまうが、
現実的には、どんな頑張っても、120万円より下げることはできなかっただろう。

もともと兼業農家が多い集落だが、年齢的に兼業は既にリタイアして、専業になってるはずなので、
こういった負担は辛いと思うが、これがこの集落の仕来りだから、如何ともし難く、
みんなよく頑張るなと・・・ 感心することしきりであった。

閑話休題
いまから30年ぐらい前に、友人葬という形で小さなお葬式を始めた宗教法人があった。
切っ掛けは、けっして前向きに葬儀のあり方を検討したからではなく、
僧俗の立ち位置や、教義や布教に関する対立
から事態が深刻化して袂を分かつと、
葬儀のあり方に窮したこともあって・・・ 知恵を絞ったのが、友人葬だったと記憶している。

その30年の歳月を俯瞰しつつ、客観的な視点で捉えてみれば、
友人葬を境にして、小さなお葬式へと、葬儀のあり方が変わり始めてきており、
いまやスタンダードになりつつあるんだから、
ファーストペンギンとして、この宗教法人が始めた友人葬が、社会に与えた影響は極めて大きい。

友人葬の進め方は、読経から始まり、焼香が終わって、弔電や挨拶など、
一般の葬儀と比べても・・・ 段取りに変化があるわけではない。
詳しくは、ネットで調べれば分るので、詳細を記載することはないが、二つだけ違いがあった。

その一つは、葬儀に聖職者という位置づけの僧侶がいないことである。
僧侶がいないということは・・・ お布施が発生せず、
お布施が発生しないということは・・・ 当然だが、戒名や位牌がない。

読経など、一連の段取りは、同宗教法人の古参幹部が受け持つが、
これも宗教活動の一環にあり、そこに礼金や謝金などはなく、
導師として、お経を読んでいただくだけで・・・ 現金の授受が発生することはない。

僧侶がいないことや、戒名や位牌がないと困る人には、残念かもしれないが、
それよりも、お寺の視点から捉えると、収入源がなくなることから、
これはこれで、けっこう深刻な問題になってくる。

捉え方は人それぞれだが・・・ これこそが、30年かけて定着しつつある、
二十一世紀のルネサンスともいうべき、葬儀のパラダイムシフト(葬式改革)の始まりであり、
広義で捉えれば・・・ 宗教改革にも繋がっていると思うがどうだろうか?

もう一つは、葬儀の参列者が香典を持参しないことである。
香典がないということは・・・ 満中陰志など、香典返しの心配をする必要はないが、
葬儀費用へ充当することができず、費用のほとんどは自腹となり、負担増となることから、
小さなお葬式にシフトするのは・・・ もはや、自明の理であろう。

香典をお断りすることについての捉え方は・・・ 人それぞれだが、
最近のお葬式では、参列することを含め、香典、献花等についても、お断りするするのが一般的で、
小さなお葬式に移行する段階を経て、儀礼的なお付き合いがどんどん薄くなって行くなかで、
葬式ビジネスで動くお金は小さくなり、人々の捉え方にも大きな変化が生じている。

葬儀は故人を敬い、弔う儀式であって、どういった形式の葬儀が良いのかは、
それぞれの家庭事情によって異なり、第三者がとやかくいう筋合いではないものの、
葬儀ビジネスの「パラダイムシフト」が加速する昨今では、
小さなお葬式への流れは・・・ もはや、止めることはできないだろう。

我が家には、我が家の信仰があるし、
信仰に関しての思いは人それぞれなので、ネットでどうのこうのと言うつもりはない。

大事なことは、先祖代々から信仰する宗教において、教義は不変であっても、
人々の生活スタイルは・・・ 月々日々に進化し続けていて、
その進化を見逃すことなく、信仰スタイルも順応して進化を続けない限り、
いくら多くの信者を抱えた宗教であっても・・・ 寂れ、廃れていくのは世の常だろう。

明治以降、寺子屋制度が小学校になり、戸籍などを管理する寺請制度も役所に移管されると、
お寺の位置づけは、冠婚葬祭を取り仕切るところといったイメージが定着し、
収入源は葬式(読経と戒名)と墓守などの・・・ お布施がメインとなっていたが、
友人葬や家族葬などの、小さなお葬式が主流になると、戒名などに拘りを持たない人も増え、
お寺の経営(運営)も・・・ 厳しい方向に向かって行かざる得なくなる。

そして、お寺が経営難に陥ると、墓の荒廃に直結してくる可能性があるが、
いまさら・・・ ご先祖様に相談することはできないし、
どこに、どういった形の墓を持って供養し、維持し、どうやって引き継いでいくのか、
これはけっこう難儀な課題で、葬儀の後になって「これもあったか?」と気がつく盲点でもある。

都会に住み、都会に墓を持つ人々には分らない、
都会に住む地方出身者で、地方に墓がある者ならではの悩みが、
現実のものとして・・・ 目の前にあるのだ。

私の終の棲家は東京であり、息子もおそらくそうだろう。
嫁いだ妹は、実家(山口)から1時間ちょっとの・・・ お隣(福岡)に住んでいる。
先祖代々のお墓は島根にあるが、我が家は祖母が養子(祖父)をとって分家したことから、
父がお金を出して、叔父(父の弟)が墓園を見つけ、
祖父母のために建てた墓は・・・ 叔父の住まいから近い広島にある。

広島にある我が家の墓は、永代供養の墓園にあり、
極論だが・・・ 用がなければ、ほったらかしでも構わないが、
親が埋葬されていると思えば、そういうわけにもいかず、
だからといって・・・ 彼岸や盆に参ることすら厳しい環境にあり、
息子夫婦に至っては、墓参に行ったこともなければ、その場所すら知らない。

また、いまは叔父夫婦が墓守だが、叔父の二人の子供(娘)はともに嫁いでおり、
叔父夫婦が亡き後・・・ その役割は、必然的に私になってくる。

よって、これからどうするかは深刻な問題で、
叔父夫婦を交えて、話し合いをもたねばならないと思うものの、
昨秋行った父の納骨のとき、叔父夫婦から言われた言葉は「お前に任す。」であった。

揉めることなく、任せてもらえるのはありがたいが、
東京に住んでいては・・・ どうしようもできないこともあり、
今夏に行う予定の父の一周忌法要では、もう少し詰めて話し合わねばならないだろう。

葬儀は、小さかろうと、派手であろうと、1回だけで済む定例の儀式だが、
墓守は永代供養ということもあって、生活する上では全くもって気にならないものの、
だれかが生涯をかけて受け持たねばならない・・・ 重責だということが、
この歳になって、やっと理解できたような気がする。

さらには、相続税は不要だったが、
だれが家屋の相続するのか決めて、登記変更もしなきゃならない。
相続税が不要なんだから、たいした資産ではないものの、
それでも、売却すれば・・・ 古い家だが2~3百万円ぐらいにはなるだろう。

私と女房は、毎週のように母のご機嫌を伺ってくれている妹に、
いままでのお礼も込めて、土地や家屋は全てもらってもらいたいと話し合っているが、
妹の口ぶりから察するに、その気はないみたいだし・・・ そちらも悩ましい。

やれやれだが、逃げることはできないし、腹を割って話し合うしかない。
親が亡くなるってことは・・・ 本当に辛くて大変だが、
後処理は、もっと大変だということを・・・ しかと学ばせていただいた。

相続で大金が入ってくるのなら、悩んだり愚痴がでることもないが、
そこら辺りに屯する爺さんでも、頼りにされるんだから、
もうひと汗を掻くしか、選択肢は残されていないようである。

父が亡くなってから、もう一年経つのか・・・ なんて思いながら、思いの丈を書き始めたら、
とりとめもないことを、長々とぐだぐだ綴ってしまった。

そろそろ、ここらで筆を置きたいと思うが、
かくいう私も年金生活者であり、そんなに若くはないこともあって、
否が応でも2年後にはやってくる古希から、その先の喜寿の間ぐらいを目安にして、
息子夫婦とは、話しあっておかねばと思っている。

まずは・・・ その日がくるまでに、
母のこと、墓のこと、相続のことを、一つ一つ丁寧に取り組まねばならないのだろう。

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6 コメント

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Unknown (びこ)
2022-02-22 06:49:31
200万円とはまた高かったですね。10年余前に執り行った我が家の義母の葬儀は、かなり豪華なものになりましたが、150万円くらいでした。最初は家族葬の予定でしたが、義母の三人の子供家族と姪家族が集まると家族葬では収まらない人数に成り結局普通のお葬式になりました。香典は、義父の時に香典返しで苦労した過去があったので、いただかないことにしましたが、ただ腑に落ちなかったのは義母のわずかな遺産は兄弟で等分に分けたはずなのに、葬儀費用その他は全部長男の我が家が負担したことです。一応香典辞退の建前でしたけれど、それは世間様に対してであって、葬儀後の食事その他は義妹、義弟にも負担してほしいと思いました。こういう時に、いろいろあるのが日本の冠婚葬祭なのでしょうね。まだまだ前近代的な面の残る現代の日本の冠婚葬祭だと思います。これからは少しは変わっていくでしょうか?
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Unknown (多摩爺)
2022-02-22 08:56:11
びこさん、こんにちは

正確には192~3万円だったと思います。
税込みですから、実質的には175~6万円だったのでしょう。
かかった金額にとやかくいうつもりはありませんが、
高齢者を見送る費用に、そこまでかかるのかという疑問は強くありました。
友人葬、家族葬、小さなお葬式という言葉は、10年前には耳にすることもありませんでしたが、
もはや、こういった葬儀の形式は避けられないと思います。
昭和から平成を経て、令和の時代に入り、お葬式のパラダイムシフトが加速しているようです。
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Unknown ( kazukomtng)
2022-02-23 13:21:45
そちらは、サメ母葬儀費用の2倍以上だったのですね。
くちこは、80万の費用で大騒ぎをしているのですが、、、
確かに、今、過渡期ですよね。
葬儀屋は、その中で、上手く利益はキープすべく、手練手管が?
憤懣やる方ないくちこは、棺桶だけ、買いたい気分です。
33年前の、父の葬儀は、まさしく、田舎のご近所さん達総出、数日間の葬儀でした。
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Unknown (多摩爺)
2022-02-23 17:50:31
くちこさん、こんにちは

葬儀場を1泊2日から2泊3日で貸し切るわけですから、CMでいうほど安くはならないですね。
別にケチりたいわけじゃありませんが、せめて5~60万ぐらいでできればと思います。
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負の習慣 (まろ)
2022-02-27 17:21:00
日本の葬式、ほんと!困ったもんですよね。当家も似たような状況で、ここ3年で父と兄の葬式経験、まもなく母も他界しそうです。田舎の掟があり葬式1回で200万円かかります。生前の父は俺が逝ってもなにも心配することはない、財産はあるんだから、と意味不明なことを繰り返すのみで、その後の整理が大変だったです。
父で大変だったので、兄のときは家族葬にすると決めていました。しかし、隣組の互助という文化が定着しており組長さんにバカヤローと一蹴され通常の葬式を強制されてしましました。お寺の檀家でもあるためいろんな出費が発生、戒名も先祖と同じ位でないと許してもらえず大金が出てゆきました。一周忌も三回忌も、親族を大勢呼ばなくてはならず、同様に出費がかさみます。死者や先祖を供養することは大切なことですが、色々勉強すると今の葬式文化は近代明治以降にできた、歴史的根拠のない金まみれ商売であることを知りました。経済と同じこの国のしがらみの構造問題です。こんなもの後世に残してはいけません。お金のかからない供養はどうにでもできますもんね。ただ、道理の通らない田舎の掟、反逆しようものなら家に火を付けられるほどの恐怖もあります。
世界の葬儀費用のデータを見たことがあります。世界チャンピオンは当然日本で平均130万円ダントツ、2位が韓国で15万円、欧米先進国は10万円を切ります。
先日戒名代等お布施は、領収証をとれば控除に使えると聞いて住職さんに要求したところ鬼の顔されました。
この悪しき文化を変えるには、、もう命がけでかかるしかなさそうです。
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Unknown (多摩爺)
2022-02-27 19:47:25
まろさん、コメントを頂戴しありがとうございました。

私なんかが足下にも及ばない、大変な体験をされていたのですね。
お返しするコメントに窮してしまいました。
地方に行けば、今も昔からの因習が残っているようで、どこかで、だれかが断ち切っていかねばならないと思いますが、
それが自分の家族になると、お互い様であるとか、以前お世話になったとかで、腰が引けてしまうのが現状です。
本当に二十一世紀の宗教革命には、期待するところ大です。
心痛、お察しします。
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