時のつれづれ(北多摩の爺さん)

下り坂を歩き始めたら
上り坂では見えなかったものが見えてきた。
焦らず、慌てず、少し我儘に人生は後半戦が面白い。

はからずも目にした専守防衛

2022年05月13日 | 時のつれづれ・皐月 

多摩爺の「時のつれづれ(皐月の28)」
はからずも目にした専守防衛

政府与党は、ウクライナ問題のどさくさに紛れて、改憲に突き進もうとしており、
「ロシアよりも許せないのが今の与党だ。」と批判した野党第一党の幹部が、
12日に行われた憲法審査会では「9条の改憲ありきには断固として反対する。」と発言した。

この国には言論の自由があり、どのような意見であっても・・・ 発言することは自由であり、
自分とは思いが違っていても、それを批判することはないし、
こういった会議で議論をする場合は、皆が同じ意見であることの方が怖いとさえ思っている。

「元総理のときは、憲法に関する議論はしない。」だとか、
「前総理は、元総理の考えを継承しているので議論はしない。」といっていたときと比べたら、
「ロシアよりも許せないのが今の与党だ。」との発言は、内容的には支離滅裂だし、
「9条の改憲ありきには断固として反対する。」では議論にならないものの、
会議に出て、意思を示したことについては・・・ 皮肉抜きに、一歩前進したといって良いだろう。

本来なら、こういった内容のテーマは、
5月3日の憲法記念日に記した「胸騒ぎの風が吹いている。」で記すべきだったが、
あまりに長くなってしまうので・・・ 今回、日を改めて記すことにした。

 

胸騒ぎの風が吹いている。 - 時のつれづれ(北多摩の爺さん)

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平和主義を掲げる日本国憲法には、第9条に戦争放棄、戦力不保持、交戦権の否認が記されているが、
それは主権国家としての自衛権を否定するものではなく、
自衛のために、必要最小限度の戦力を保持することは認められていると解釈されており、
その行動は「専守防衛」を遵守することが基本とされている。

さて・・・ この国が平和憲法の下に、自衛権の基本とした「専守防衛」とは、
いったい、どういったものなんだろうか?

文字や言葉にすると難しくなり、堅苦しくて分りづらいものになるが、
図らずもロシアが暴発した、ウクライナへの侵略戦争において、
「専守防衛」とは、いったいどういうものなのか?
ウクライナという国家の対応を見て・・・ それを現認することになってしまった。

この国に住む国民の多くは、未だに気づくことなく、見逃していると言ったら、
上から目線のようで、鼻につくかもしれないが、
ウクライナという国が取った対応こそが・・・ 「専守防衛」そのものなのだと思うが、
そのような視点で報道を見ている人は、そんなに多くはいないだろう。

国土にミサイルを撃ち込まれ、街を破壊され、好きなように略奪や殺戮を繰り返されたなか、
ウクライナ政府は、領土・領海・領空に入り込んだロシア軍に対して反撃はしたが、
ロシアの国土にある敵基地への攻撃は行っておらず・・・ ひたすら、守るだけだから、
これを「専守防衛(守りに専念するだけの防衛)」と言わず、なんと言うのだろうか?

法律の解釈に、与野党の論客が「ああでもない。こうでもない。」と持論をぶつけ合うだけで、
全くもって議論が前に進まず、盛り上がりに欠けた憲法論争のなか、
ロシアのウクライナ侵略戦争で、破壊と殺戮が行われた現場を、メディアを通して目の当たりにし、
「専守防衛」とは、どういうことだったのか・・・ 図らずも、それを見てしまった。

それは、ならず者による一方的な侵略で、国土が破壊され、略奪や殺戮が行われても、
自国の領土・領海・領空で、敵を追い払うことはできても、
悲しいかな・・・ ならず者の国内にある基地へ攻撃を仕掛けない、
守戦を遵守した対応策であって、まさに専守防衛であった。

この国の場合、そのときのために日米安保があり、在日米軍が居るということになるのだろうが、
果たして在日米軍が海を越えて、敵基地まで打撃を加えに行くだろうか?
あくまでも私見だが・・・ 在日米軍の活動範囲は、
この国の自衛隊の守備範囲である専守防衛と、大差ないと思われる。

なぜなら・・・ これも、ロシアのウクライナ侵略で学んだことだが、
もしも在日米軍が、この国の領土・領海・領空の境界線を越え、
相手国の領土・領海・領空に入り打撃を加えたら、その時点から第三次大戦が始まってしまうだろう。

そう捉えれば・・・ いくら日米安保があったとしても、
在日米軍が、他国に出向いて戦うことはあり得ず、
このような考えは、強ち間違ってないと思うが・・・ 如何なものだろうか?

さらに、いまこの国の思考から抜け落ちていることに・・・ 民間人の避難がある。
島国であるこの国で有事が起こり、他国へ避難するとしても、
陸路で他国という手段がないことから、多くの国民が国内に留まることになってしまうが、
それが議論がされたという話しは・・・ 未だかつて聞いたことがない。

また、避難を海路か空路に求めた場合、何人乗りの飛行機と船を、どこにどれだけ手配し、
どこへ向かうのかといった議論も・・・ 聞いたことがない。
ようするに、他国は攻めてこないとの性善説に立って、高を括っているのである。

9条を論点にして・・・ 改憲するにしろ、護憲のままにするにしろ、
ウクライナの状況を踏まえ、有事を身近に感じてなお、
なに一つ方向性が示せないじゃ・・・ さすがにこれは拙いだろう。

ウクライナ侵略の前なら、そんなことを考えもしなかったが、
ちょっと錆び付いてしまった、私の思考回路でも、最近少しばかり熱を帯びている。

それでも、平和憲法があるから「心配ご無用」と仰るのであれば、
その根拠を披露していただければ、国民は安心できると思うが・・・ 如何なものだろうか?
平和憲法で国民の命と財産が守れるのであれば・・・ それに越したことはない。

平和ボケのまま、老後を楽しく過ごせるものなら、それに越したことはないが、
老婆心ながら、いまそれを議論しなきゃ、手遅れになると思うから、
議員さんたちには、危機管理について・・・ 真面目な議論をしてほしい。


最悪の事態を予め想定して、対策を立てるのが危機管理であり、
重箱の隅を突くぐらいの細やかさが求められる質問は、野党の専売特許だったはずだが、
こと有事に関してだけは、政権トップの好き嫌いで議論を拒んだり、
議論せずに反対するだけなんだから・・・ 情けないんじゃなかろうか?

高い給料と、領収書のいらないお手当を貰ってるんだから、
「嫌だ。」とか、「反対だ。」とか言わず、
現実の世界に目を向け、もっと掘り下げた議論を交わしてほしい。

図らずも、リアルなウクライナ情報で「専守防衛」が、なんだったのか知ってしまった。
個人的には、平和憲法の思考が好きだから、できることなら変えずにいたいと思う。

とはいえ・・・ この国を取り巻く環境を正視すれば、
海の向こうで密かに爪を研いでいる、チンピラ国家や、ならず者国家、悪党国家がいて、
片時も目を背けることができず、常にスクランブル待機している現実がある。

もし、そいつらが牙を剥いたとき、
果たして「専守防衛」で、国民の命と財産は守られるのだろうか?
そういった議論を・・・ オープンで聞かせてほしい。

改憲するのか? 護憲で良いのか? いろんな意見があっても良いと思うが、
とてもじゃないが、悠長に構えたままで良いとは思えないので、
私見で恐縮だが「専守防衛」という耳障りの良い言葉に、淡い期待を抱きつつ、
妙な納得をしてしまうことに・・・ 警鐘を鳴らさずにいられなかった。


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