時のつれづれ(北多摩の爺さん)

下り坂を歩き始めたら
上り坂では見えなかったものが見えてきた。
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風評被害と科学的根拠の葛藤

2021年04月16日 | 時のつれづれ・卯月 

多摩爺の「時のつれづれ(卯月の17)」
風評被害と科学的根拠の葛藤(トリチウム処理水の海洋放出)


4月13日、政府が大きな決断をした。
東京電力・福島第一原子力発電所に保管中の汚染水から、
放射性物質の大半を取り除いた処理水としたうえで、
どうしても取り除けない放射性物質のトリチウムを、国の基準の40分の1以下に薄めて、
海洋放出することを決定した。
因みにこの値は・・・ WHOが示す、飲料水の基準の7分の1にあたる。

早速この決断に、野党と漁業関係者が噛みつき、お隣の半島と大陸からは批判の声が上がった。
野党は、「海産物の風評被害がすごい。
ほかに方法はないのか?政府はもっと真剣に選択肢を模索すべきだ。」とし、
全国漁業協同組合連合会(全漁連)は・・・ 「絶対に反対!」と、けんもほろろである。

さらに半島からは、国際海洋法裁判所への提訴を検討すると鼻息が荒く、
大陸は、太平洋を下水処理場にするのかと・・・ 罵詈雑言である。

よくもまぁ、自国で排出される原発処理水のことには触れないままで、
イチャモンをつけられるものである。
まさに厚顔無恥とはこのことであり・・・ もう、笑うしかないだろう。

一方でIAEA(国際原子力機関)の事務局長は、廃炉に向けて大きな節目になると表明したうえで、
特別で複雑な例としつつも、海洋放出自体は厳格な管理のもと、
世界の原発で日常的に行われていると述べ、
モニタリング調査などで、技術協力の用意があると付け加えた。

さらに・・・ 何事につけても、口にするだけで、上から目線だと批判を浴びてしまう大臣からは、
科学的な根拠があるんだから「飲んでも影響ない。」と、ちょっと驚く発言まで飛び出した。

確かに、浄化した処理水を十分に薄めて海に放出するので、
科学的には健康への影響はないと考えられているが、実際に飲もうとする人はいるわけがないので
さすがに、これは言い過ぎだろう。

まず、勘違いしてはいけないことを整理しておくと、
半島や大陸並びに、国内の左派系勢力や、海洋放出に反対する人々は、
処理水とは言わず、汚染水という表現を用いるが、
これは意図的な思惑を持って、批判や反対に誘引するものであり、
これが論点のスタートだということを踏まえると、頭の中をキチンと整理しておく必要があるだろう。

個人的にというか・・・ 心情的には、福島県を拠点に漁業を生業とする方々のことを思えば、
できることなら、海洋放出は避けてほしいと願ってやまない。

とはいえ・・・ 分かっちゃいるが、この国のメディアを含めて、
国の内外で批判を展開する人たちが、挙って海洋放出に反対していることに、
どうしても釈然としない疑問があって・・・ 頭と心にあるモヤモヤが、クリアできないのである。

それは、あえて無視して避けているのか、それとも論外の放言なのか、
そこんとこを判断する見識を、生憎持ち合わせていないので、実のところは不明だが、
IAEAが定める、科学的な根拠があるにも拘わらず、
風評被害が発生するといった声が後を絶たないことであり、
風評被害の言い出しっぺを辿れば、科学的な根拠を否定的する人々が、
発生源だということに行きつくんだから、表現が適切かどうかは分からないが、
自作自演ということになってしまう。

コロナ禍において、あれほど毎日のように、科学的な根拠を求め続けていたにも拘わらず、
国際機関のIAEAが定めた、科学的な根拠に基づいた明快な物差し(基準)があるというのに、
それは全く持って無視されていて、
どこかの半島の国と同じように、国際基準よりも感情が優先されている。
しかも、その感情に拘り過ぎるがあまりに・・・ 風評被害が拡散し、
負のスパイラルにから抜け出せないでいる。

心情的には、私も海洋放出には反対だが、
論理的には、いくら反対しても、否定する根拠が見つからないんだから、
どうしようもないというか・・・ 辛すぎる。

代替案があるのなら、そちらを検討することもあると思うが、それも見つからないなか、
野党や漁業関係者は、メディアに露出して丁寧な説明が必要だと、
正論のように同じ言葉を繰り返すが、国際的に定められた基準があるんだから、
丁寧だろうが、強引だろうが、答えが変わる可能性は極めて低く、
残念だが、こういった感情的な問題は、いくら説明しても、理解を得られることはないだろう。

残された道は・・・ 補償しかないのだが、
毎日が命がけの海の男たちからしたら、抵抗もせずに「はい、分かりました。」では矜持が許さない。
よって、無駄だと分かっていても、しばらくの間は互いの主張を繰り返す、睨み合いが続くのだろう。

ただ、風評被害だけは、言い出しっぺが、その一言を言わなきゃ・・・ 
「人の噂も七十五日」といった諺があるぐらいだから、
時の経過とともに雲散霧消してしまうだろうし、そこに活路が見いだせないわけでもない。

どうしても風評被害を訴え続け、拡散したいのなら、国際基準に対抗できる対案を出すしかないが、
それがあるのなら・・・ 世界の原発で既に採用されており、期待はできないのが現実である。

よって、感情的な風評被害と、国際基準に則った科学的根拠の葛藤といえば、
途轍もなく高度で、英知の極み的な論争のようにも思えるが、
その実は空疎であり、結論ありきの出来レースだということに気づかねばならない。

残念だが、勝ち目のない戦いほど・・・ 切ない戦いはない。
そう捉えるなら、一定程度の期間、丁寧な説明を聞いた後は、
1日も早く補償と風評被害対策に条件闘争を切り替え、納得できないまでも半島や大陸とは違った、
この国ならではの知性で落としどころを見つけてほしいし、
無駄な論争で、無用な消耗を繰り返し、罵り合ったり、憎しみ合うことだけは避けてほしい。

心情的には、海洋放出に反対する漁業関係者の方々に、寄り添いたいという気持ちはあるものの、
一方で風評被害は、どこまで行っても風評被害であって、それ以上でも、それ以下でもなく、
風評被害を正しく捉え、正しく向き合うことができなければ、
自らも風評被害に一定の理解を示し、加担することになってしまうのだろう。

福島に住んでない者が、漁業を生業にしてないものが「勝手なことを言うな。」と、
お叱りを受けることを覚悟で、あえて言わせてもらうなら、
「負けるが勝ち。」という言葉に、活路を見出してほしいと思うが・・・ どうだろうか?
当事者ではないが、食生活に関わることだけに、注目せずにはいられない。


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2 コメント

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Unknown (japon2681)
2021-04-16 06:43:32
大変ご無沙汰しております。

記事を拝見して、あっ!まさにわたくしが叫びたかったモヤモヤを起承転結を整理して書いてくださった!これよ、これなのよ!と僭越ながらうれしくなりました。
風評被害の元凶や感情論の行方も含めて、示唆に富んだ記事をありがとうございました!
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Unknown (多摩爺)
2021-04-16 10:20:43
japon2681さま
コメントを頂戴しありがとうございました。
第三者がとやかく言う問題じゃないのかもしれませんが、
客観的な視点で見ずに、感情や思想が勝ると半島や大陸のようになってしまうので、
思いの丈を書かせてもらいました。
今後とも宜しくお願いします。
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