ポルトガルのえんとつブログ

画家の夫と1990年からポルトガルに住み続け、見たり聞いたり感じたことや旅などのエッセイです。

052. こうのとりは団塊の世代に突入か

2018-12-08 | エッセイ

 こうのとりがこのごろずいぶん増えているようだ。
セトゥーバルにはいないが、ちょっと郊外へ出てアレンテージョ地方へ向かうと、まずガンビアの手前のガソリンスタンドの高い壁の上に大きな巣が架かっている。
アグアス・デ・モウラの教会の鐘楼の上にもある。
ベンダス・ノヴァスの建物の煙突にもあっちにもこっちにも大きな巣があり、そのどれにもヒナの小さな頭が見え、親鳥が餌を運んできたり、巣の中でかいがいしく世話をしている。

 


屋根のてっぺんも煙突の上も子育てラッシュ

以前はこうのとりの巣はあまりなかったのだが、こうのとりの保護活動が盛んになってから、目に見えて増えてきた。
アルカサル・ド・サルを中心に車体にこうのとりの絵を描いたジープが走っているのを時々見かけたものだ。
それは10数年前からで、今その成果が出てきたようだ。

 


松の大木に10個以上もの巣が架かっている

高い煙突や鐘楼の上だけでなく、道端に生えている松やユーカリの大木にも巣を見かける。
一本の大木にいくつも架かっている場合が多い。
そうするとやがてその木は弱って枯れてしまう。
こうのとりの糞公害にやられてしまうのだ。
肥料が多すぎて弱ってしまう。
松やユーカリにとってはありがた迷惑なことだ。

畑や牧場の中に列をなして立つ高圧線の鉄塔には、こうのとりが巣を架けやすいように専用の台がいくつも設置してある。
ひとつの鉄塔に左右、上下、二段、三段に設置してあると、そこにおおきな巣が鈴なりにできて、まるでこうのとり団地。
そのどれもで子育て中。
爆発的に増えている。

 


どの高圧鉄塔にも複数の巣が

こうのとりが巣を架けている所は、その近くに川や溜池や湿地帯があり、そこに出かけて餌を捕る。
餌は小魚やカエルなどだろうと思っていたが、それだけではなさそう。

先日、モンサラシュのふもとのアンタ(古墳)に行った。
その周りはオリーヴの古木がたくさんある野原で、春には色とりどりの野の花が咲き乱れる。
それを見るのが楽しみで毎年のように立ち寄るのだが、今年行った時は、トラクターが野原をドコドコと耕している最中で、驚いた。
これでは野の花はつぶされてしまう。
そしてもっと驚いたのは、トラクターの耕す後ろを大きな鳥が数十羽もついて歩いている光景だった。
その鳥たちはすべてこうのとり!
こうのとりがまるで白鷺のようにトラクターの耕した土の中から必死になって虫を探している。

 


トラクターの後をついて歩くたくさんのコウノトリ

以前、アルカサル・ド・サルで、稲刈りの終った田んぼを耕すトラクターの後ろを無数の白鷺が列をなしていたが、その時は数羽のこうのとりがトラクターにはまるで無関心な様子で、遠くはなれて餌を捕っていた。
でも今回はこうのとりがまるで白鷺のように羽をバタバタさせて大騒ぎ。
先を争ってトラクターについて行く。

でも不思議、いったいこのたくさんのこうのとりは何処から来たのだろう?
この周りにあるサン・ペドロやレゲンゴスでこうのとりの巣を見たことがない。
すぐ近くの小高い丘にそびえるモンサラシュ村の鐘楼やお城はこうのとりが好みそうな場所だが、
昔からひとつもない。

いったいどこから降って沸いたのか?
ひとつ考えられるのは、数年前に谷間をせき止めて作られたダム湖。
モンサラシュの裾野は満々と水をたたえた広大な湖になっている。
その周りのどこかにたくさんの巣を架けてこうのとり団地ができているのだろう。
ダム湖ができて小魚などの餌も増え、ヒナが爆発的に生まれて、餌捕り競争が激しくなっているのでは…。
ポルトガルのこうのとりも団塊の世代に突入したのではないだろうか!

MUZ
2007/04/30

©2007,Mutsuko Takemoto
本ホームページ内に掲載の記事・画像・アニメ・イラスト・写真などは全てオリジナル作品です。一切の無断転載はご遠慮下さい
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(この文は2007年4月号『ポルトガルのえんとつ』に載せた文ですが2019年3月末日で、ジオシティーズが閉鎖になり、サイト『ポルトガルのえんとつ』も見られなくなるとの事ですので、このブログに転載しました。)

 

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