ポルトガルのえんとつブログ

画家の夫と1990年からポルトガルに住み続け、見たり聞いたり感じたことや旅などのエッセイです。

055. 窓からの眺め!フェンスの中では… 

2018-12-11 | エッセイ

 窓から見える景色がどんどん変わっていく。
水道タンクの管理人は以前は24時間体制で交代で勤務をしていたが、このごろは一日中、人の気配がない。
機械の管理点検は遠隔操作になったのだろうか?

 水道タンクの回りはすっかりフェンスで囲まれて、門の扉はいつも鍵がしっかりかかっている。
フェンスが出来る前は、犬の散歩をする人たちやサッカー遊びの少年たちの格好のスペースだった。
今は水道工事に使う砂置き場になっている。

 人も犬も出入りできないが、野鳥はフェンスがあろうがなかろうが関係なく、空からやってくる。
フェンスの中は野鳥の楽園だ。
以前は空気銃を担いだ男たちが山鳩を狙ってうろうろしていたが、山鳩たちはフェンスの中や人家の庭の奥に引越ししたらしく、空気銃の男たちも見かけなくなった。
おかげで山鳩の数は16羽と、2倍に増えている。

 フェンスの中には以前から、オリーヴの古木が一本となんだか知らない木が2本立っている。
その3本の木が野鳥たちの憩いの場所。
 真っ黒い身体に黄色いくちばしの小鳥がその中の一本に巣を架けているようだ。
名前はメルロー。
春先には朝まだ暗いうちからさえずり始める。
まるで人が口笛を吹いているのかと思うほど、様々なメロディーを聞かせてくれる。
最初のころは、いったいどんな小鳥の鳴き声だろうかと思っていたが、なかなかその正体が分からなかった。

 下の階に住むアンナがある時、自分の名前を説明して、「私のファミリーネームはメルローというのよ。そのあたりで小さな黒い小鳥を見かけるでしょう。くちばしが黄色い、きれいな声で鳴くの。その小鳥と同じ名前なのよ」
それを聞いて、あの素晴らしいさえずりと、時々見かける黒い小鳥が一致した。
それまでは「早起き鳥」と私たちは呼んでいたのだ。

 メルローは気が強そう。
ある時、一羽の山鳩をすごい勢いで追っかけているのを見かけた。
メルローより2倍ほど大きい山鳩が必死で逃げている。
たぶんメルローの巣に近づきすぎたのだろう。

でも、ある時私は見た!
あの気が強いはずのメルローがなんと雀に追いかけられているのを~。

そしてまた見てしまった。
フェンスの中を一匹の猫が歩いている。
その前方には山鳩の群れがのんびりと何かをついばんでいる。
猫は身を伏せて抜き足、差し足、じょじょに近づいて行く。
しなやかな猫は高いフェンスを軽々と乗り越えて入ってきたのだろうか?

 空気銃の男たちは来なくなったけれど、今度は猫がやって来た。
フェンスの中は野鳥天国などと、のんびり安心しているわけにはいかないな~。

MUZ
2007/09/30

 

©2007,Mutsuko Takemoto
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