上 尾瀬沼と燧ヶ岳 F6号 下尾瀬ケ原と至仏山 F6 共に 410 × 318cm
「私、尾瀬に行くの」とお嬢様は白い歯を輝かせ言う。
高校時代です。 お嬢様は二つ先の教室の生徒で私とは同級生になる。
小麦色の肌からこぼれる白い歯が眩しくて「あっ あぁぁ」と訳の分からない言葉で答えに成っていない返答を返す。
黒目がちの瞳が遠くを見がちに輝く。
何故か恥ずかしくて下を向いてしまった青春の一コマ。
尾瀬・尾瀬 なんて響きの良いワードなんでしょうか。
いつか尾瀬に行こうとその時に思ったのは確かです。
尾瀬国立公園 群馬県、福島県、新潟県の3県にまたがる高原で、
♬夏が来れば思い出す♬と誰もが知るところの水芭蕉で有名です。
「尾瀬に行こうぜェ」と山仲間に言った。
「アルプス命のお前が尾瀬?」彼は呆れたように目で笑っていた。
大清水から一ノ瀬そして1760mの三平峠、眼下に尾瀬沼の全容が6月の陽をなかで輝くその向こうには燧ヶ岳のが聳える。
尾瀬沼を左に見なが6月の爽やかな大気の中を馬鹿を云いながら楽しく歩む気楽な山行です。
沼尻休憩所でその名の通りに小休止をする。
下田代十字路を抜けその先の竜宮十字路を北へ今夜のねぐらの東電小屋への道へと歩む。
ヨッピ吊橋まではほんの僅かの距離二人は相変わらずの馬鹿な話で大笑いしながら歩む。
「すみません」後ろから声がかかる。
「うん!」といったかわからないが振り返る。
「NHKの者ですが、番組とってますので少々待っていてください」
「あっ そうですか。分かりました」と気前よく答えた。
すると夏服のハイカー仕立ての服装の女性が付き人らしき者と我らを通り越して服装点検など付き人が気遣っている。
眼鏡のNHK男子は、「あの女性の方知りませんか?」と当人へ指をさしながら聞いてくる。
「知りませんね」素直に答えると「女優さんですよ」とNHK眼鏡が催促するので我ら二人な声を揃えて[「知りません」
東電小屋へ宿泊手続きをして早速三条の滝へと向かう。
三条の滝は大迫力な容姿で迎えてくれた豊富な水量は見事なものです。
その夜は、満足な行程でビールがとても美味しかった。
彼もまんざらでもないように尾瀬を称賛してくれた。
彼のその瞳はあのお嬢様の眼のように遠くを見つめているようです。
白い歯をこぼしながら「私、尾瀬に行くの」と言ったお嬢様。
恥ずかしくてバカのようにうつむくあの頃の自分。
気持ちよい酔いに誘われ寝具に収まると夜は深く沈んゆく、朝は明ける。
今日は鳩待峠までの間3時間と少しの行程なので我らの歩みは弾んでいる。
彼は山の歌を謡いながら歩む私もつられ後に続き歌う。
「相変わらずの音痴だよなぁー」いつものお決まりを口にする。
お嬢様が歩いたコースを今終わろうとしている。
その後尾瀬には両手に余るほど行きました。
燧ケ岳、至仏山、早春のクロスカントリーと遊んだ。
季節の花々と大きな空がいつも迎えてくれる尾瀬です。
じゃぁまた。
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