伊那の春 41cm × 31.8 cm F6号
今回は山の雑学のアレコレを、思いつくままに描きだしてみます。
1. 山小屋の事
〇白馬山荘
白馬山荘のその昔の姿は大雪渓から進むと一番手前の石を壁面にした小さな山小屋で
地上から見るとやけに低い建て方に見えるが中へ入れば普通の建築物です。
低く見えるのは半地下風に建造されているのだ、実に理にかなった建造だとつくづく思う。
外観の壁面が最小限で済むことによって様々なことが節約できるのだと思う。
この小屋へは2度程やっかいになったが以降は新たに建設された山荘へ案内された。
またまたその後は更に山のホテルのような館へ案内されて行く。
そんな風にして白馬山荘は豪華に大きくなったのである。
最後のホテル風山荘へ宿泊してから数十年たってしまったが廊下は赤の敷物がひかれ文字通りのホテルである。
特に申し立てて選んだことは一度もない案内に従ったに過ぎない。
半地下の山小屋は言葉は悪いが中世の牢屋に居る風情を感じた事を覚えている。
豪華なホテル風はヘリコプターで来て結婚式を挙げるカップルも居るという。
信じられない程の様変わりである。
〇鳳凰小屋
鳳凰小屋は、麓の御座石温泉の(確か細野氏と記憶している)経営で地蔵岳へ直接登る時は
御座石温泉からスタートする、この温泉に浸かった記憶がないには恐らく一度も入浴したことは無いと思う。
面白いことに登山道がこの温泉の土間を通っているので必ずや顔を出さずして登ることが出来ない。
残念ながら温泉の全体像が思い浮かばないのは早朝の山の中のためだろうか。
必ず聞かれることがある「今夜の泊りはどこじゃ」尾根筋には三軒の小屋があるのである。
「そうか、そこよりは鳳凰小屋がえぇだょ」と指名することが此処の義務のように念を押す。
登山道を夜叉人峠を起点に登り鳳凰小屋で一泊たまにはドンドコ沢を下り青木鉱泉に下山と計画も
鳳凰小屋では「ダメです。御座石温泉ですよ」と念を押されるのである。
自由の利かない珍しい山行を経験できます。
鳳凰小屋の親方は無口で威圧感をやたらに放出する方だが恐らくはお人好しを隠す為だろうと思っている。
ある年の鳳凰三山は既に秋めいていた、やはり今回も鳳凰小屋泊まりで下山は御座石温泉と言われどうりの
ルートで午後早めに着いた今夜の泊りを頼むと親方が草履バキで付いて来いと云う。
手には細い2m程の枝を持っている。
今しがた辿ってきた登山道を数メートル戻ると左の森に入ってゆく、森の中は薄暗く心持たない
気分を味わっていると親方は枝を太めの幹の下を叩き「ココ、ココ、取れ」と分け解らんが何かを取るんだ
と灌木を掻き分けるとそこには大量のキノコが群生していた。
名前はマツタケもどきと言うそうだ、なるほど松茸に見える。
香りはマツタケに及ばないが他はマツタケによく似ている。
大量のマツタケもどきをお土産に東京へと列車へ乗った。
小屋の親方は優しさを隠し持っている。
次回も山小屋を主に・・・・