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炎症性腸疾患の道標/高橋涼介[特別編]

潰瘍性大腸炎、クローン病の病態と治療法から最適な献立・一品料理を掲載。

クローン病について

2009-03-23 22:03:05 | クローン病
Q.クローン病の外科治療はどのように行なうのですか。

A.クローン病では、外科的な手術によって病変部を完全にとっても、再発しやすいことが知られています。そこで現在では、腸管の切除は必要最小限にとどめています。

Q.どのようなときに手術をするのですか。

A.腸閉塞、大出血、穿孔、腹膜炎などが合併したときには、手術が必要になります。内科治療だけでうまくいかないときや、狭窄や瘻孔などの合併症があるときも、状態に応じて手術を考えます。
また、肛門部に病変がある場合は患者さんの生活の質(QOL)に大きな影響を与えるので、複雑化しないうちに主治医に相談して適切な管理(場合によっては、切開排膿や、痔瘻をゴムなどでしばって徐々に切っていくシートン法など)を行ないます。シートン法で用いるドレーン(ゴム管のこと)の代わりに、特殊な糸で行う方法(クシャラ・スートラ法)などもあります。

Q.そのほかの治療法にはどのようなものがありますか。

A.近年、抗TNF-α抗体[製品名レミケード]が許可されました。
これは、遺伝子工学で作ったTNF-α(腫瘍壊死因子αといわれ、炎症を起こす物質)を中和しる抗体で、ヒトの遺伝子から作った部分が3/4、マウスからの部分が1/4となっており、点滴で用います。クローン病のほか、慢性関節リューマチなどでも使われていて、欧米では、リューマチなどて計20万例の投与が行なわれています。
日本では、従来のクローン病の治療に反応しない症例や瘻孔(痔瘻など)を伴う場合に、抗TNF-α抗体による治療に保険が適用されます。現在は、瘻孔の有無にかかわらず、まず3回投与を行ない、その後は、8週ごとに維持投与を行なうほうがよい、とされています。

活動期の治療効果は60~80%と高く、効果が現われるまでの期間は2週間程度と短いのが特徴です。1回の点滴で8週間ほど効き目が続きます。ただ、この治療が有効であった場合も、薬の効果が切れると再燃することが多いので、維持投与を行なわない場合はなんらかの緩解維持治療(栄養療法や免疫抑制剤を使用した治療)が必要です。
副作用としては、アレルギー反応(特に点滴時)と、感染症(TNF-αは感染防御にも必要な物質なので)がおもなものです。点滴後はかぜなどに特に注意し、体調をくずしたときは早めに主治医の診察を受ける必要があります。また、結核にも注意が必要です。
そのほかに開発中のものとして、完全にヒト型化した抗TNF-α抗体、白血球除去療法や抗IL-6レセプター抗体などがあります。

…おわりに…
潰瘍性大腸炎やクローン病の人は、日常生活をできるだけよい状態に保ちながら病気とうまくちき合う必要があります。そのためには、病状に応じた生活のコントロールや、食事への配慮が重要です。それらがうまくできるようになるば、けっして怖い病気ではありません。
患者さんが自分の病気について学び、病状を理解し、主治医はそるに対しても適切なアドバイスをするという関係になるたら、これらの病気に打ち勝つことができるのではないでしょうか。また、治療は長期にわたる場合が多いので、医師だけではなく栄養士や看護師、あるいはケースワーカー、そしてなによりも、風邪薬や職場、学校の関係者などの理解と協力がたいせつになると思います。

本記事を利用して、よりよい生活を送っていただければと思います。

クローン病について

2009-03-22 22:14:35 | クローン病
Q.内科治療はどのように行なうのですか。

A.今の日本の治療指針では、活動期の内科治療の基本は栄養療法です。一方欧米では、薬どの療法が主体で、栄養療法についてはあまり理解されていません。日本でも、栄養療法を充分にできない場合は、積極的に薬を使おうという医師が増えています。
栄養療法と薬物療法は、次のとおりになっています。
・栄養療法
初めてクローン病を発症したときや活動期で症状の悪いときは、入院して栄養療法を行ないます。栄養療法には、次の2つがあります。

①静脈栄養法
絶食して、点滴で栄養をとります。

②経腸栄養法
成分栄養法(ED=elemental deite)や消化態栄養剤などで栄養をとります。その摂取方法として、経鼻経管栄養法(経鼻法)と経口法があります。緩解後も再燃予防のために、自宅で経腸栄養法を行う場合があります。
実際の栄養療法は、症状が重い場合や合併症(狭窄や瘻孔など)を伴う場合は、絶食にして静脈栄養法を行ないます。ある程度おちつあたら成分栄養剤を使います。これらは経鼻法でとる場合は、退院後に備えて自分でチューブを挿入する練習をします。
普通、退院時には、体重1kgあたり30kcal程度の成分栄養剤+軽食(おかゆやおにぎりなど)1回の食事がとれるまで回復しています。

・薬物療法
ペンタサを使うことがあります。軽症ならばこれでコントロールできることもありますし、重症でも、栄養療法の補助として使います。また、サラゾピリンは大腸型で使われることがあります。いずれも有効率はあまり高いとはいえず、重症例には適していないようです。
一般には、栄養療法が効かない場合や、日常生活の中でできない状況にある場合には、ステロイドを使います。欧米では、成人のクローン病の治療にはおもにステロイドを使いますが、これは歴史的、経済的な理由が大きいようです。ステロイドは安価で、効果が早く現われますが、副作用への注意が必要です。日本では、病状が悪化したときなどに一時的に使用し、長期にわたる多量投与は避けたほうがよいと考える医師が多いようです。

・緩解期の治療法
緩解後も、再燃予防のための治療が必要です。普通、緩解し始めたら、病状と計画期間に応じて成分栄養剤の量と食事(低脂肪・低食物繊維)の量を変えていくケースが多いのです(スライディングスケール法)

ED 100%
↓緩解 ↑再燃
ED 70%(在宅)+低脂肪・低食物繊維食
↓緩解 ↑再燃
ED 50%(在宅)+低脂肪・低食物繊維食

Hirakawa et al

また、体重1kgあたり30kcal以上(体重60kgの人は1800kcal以上)の成分栄養剤を継続すると、再燃が起こりにくいことが報告されています。しかし、成分栄養剤を経鼻法でとり入るのはたいへんだという場合は、成分栄養剤だけの週と、低脂肪・低食物繊維(低残渣)食中心の週を組合せたり(i-TEN法)、週末だけ成分栄養剤を用いたり(Weekend ED法)することによって、良好な社会生活を保ちながら再燃を予防する試みもあります。狭窄や瘻孔などの合併症がある場合は厳密な管理が必要になりますが、各自のライフスタイルと病状に合わせて、主治医と相談して決めましょう。
また、栄養療法以外の緩解維持療法として、アザチオプリンなどの免疫抑制剤と抗TNF-α抗体が有効であると報告されています。どちらも、肛門部病変に対しても一定の効き目があり、徐々に使われてきています。

治療食を組み合わすた成分栄養療法
(i-TEN法)

・通院
ED 4~5P
治療食※ 1~2回/日
数ヵ月

ED 1~2P
治療食※ 2~3回/日
数ヵ月
2~週


1~2週間
ED6P


ED 1~2P
治療食※ 2~3回/日
数ヵ月
2~4週

ED6P

できる限り継続する

ED=成分栄養剤(エレンタール) 1P=300kcal
※低脂肪・低食物繊維

Nakamura et al

クローン病について

2009-03-22 16:47:27 | クローン病
Q.日常生活では、どのような注意が必要でしょうか。

A.慢性の病気なので、病気とうまくつき合うよう、生活のペースをつかんでください。特に、栄養療法や食事療法は長期にわたります。それだけの制限を受けるのですから、その分、日常生活をエンジョイするように考え方を変えていただければ、と思います。
クローン病の宇宙飛行士もいますし、アイゼンハワー大統領もクローン病でした。
スポーツも、過度なものは主治医との相談が必要ですが、適度なものは問題ありません。
タバコは、クローン病の場合は病気に対して好ましくないので、禁煙が必要です。

Q.職場や学校では、どのようなことに注意したらいいのでしょうか。

A.潰瘍性大腸炎の場合と同様です。

Q.妊娠や出産に支障はありますか。

A.潰瘍性大腸炎と同様に、病状がコントロールされている場合は特に問題はありません。ただ、活動期に妊娠および出産となった場合は、病状が悪化することがあり、また重症になると流産などの原因にもなるので、妊娠や出産はでかるだけ緩解期になるように主治医と相談しましょう。状況によっては早めに栄養療法を強化し、再燃の予防や栄養状態の改善をはかるほうがいいこともあります。
また、妊娠期の投薬も、主治医と相談して受けてください。自己判断で中断すると、かえって大きな再燃の原因になることがあるからです。5アミノサリチル酸系の薬やステロイド(プレドニン)などは、適正に管理すれば危険は少ないとされています。海外では、インフリキシマブ[製品名レミケード]も使われます。

クローン病について

2009-03-22 16:22:15 | クローン病
Q.どのような人に多いのでしょうか。

A.2005年時点で、日本では約2万5000人強の患者さんがいると報告されています。この病気の患者の数は毎年増加傾向にあります。
発症しやすい年齢は、潰瘍性大腸炎と同様に10歳代から20歳代です。欧米では日本より10倍程度の発症率があるようです。

Q.どんな症状があるか、くわしく教えてください。

A.小腸型では、栄養障害や発熱、下痢がおもな症状となります。一方、大腸型では下痢や腹痛がおもな症状で、下血を伴うこともありますが、どちらの場合も、痔瘻などの肛門部病変の合併が多いです。腸下外の合併症としては、潰瘍性(アフタ性)口内炎も高率で起こり、ほかには関節炎なども知られています。また、重症例や、長期にわたり悪化をくり返した場合には、瘻孔(腸と腸、腸と他の臓器が穴でつながる状態)や、膿瘍、狭窄(腸管が細くなること)などの合併症が起こり、治療が困難になることも少なくはありません。

Q.原因は解明されていますか。

A.残念ながら、まだわかってはいません。今のところ、一定の遺伝的素因があると、食べ物に含まれるなんらかの物質の影響を受けて発症すると考えられています。
近ごろ欧米では、クローン病の感受性遺伝子(発症のリスクを高める遺伝子)の一つとして、NOD2の異常が報告されましたが、これもクローン病患者の8~13%が持っているにすぎず、日本人でこの遺伝子を持つ人はいません。しかし、今後のさらなる検証が必要です。
クローン病を悪化させる原因として、食事内容-特に、脂質などの量や種類が注目されています。また、絶食により病気がよくなることなどから、腸の内容物(食べ物や腸内細菌など)が発症に密接にかかわっていると考えられます。

クローン病について

2009-03-21 22:28:11 | クローン病
Q.クローン病とはどのような病気ですか。

A.口から肛門までの消化管(特に小腸や大腸)に潰瘍(深い傷)ができる病気です。症状としては、下痢や腹痛が多くみられます。小腸に潰瘍がある人には栄養障害や発熱などが起こることもあり、クローン病の診断がつきにくい場合もあります。また、痔瘻などの肛門部の病変や、えなかに膿瘍(膿がたまった状態を)合併することもあります。
治療によってけのような病状がいったんよくなっても再燃することが少なくはないので、気長に付き合うこともたいせつです。
ちなみに、クローン病の名前は、アメリカのBurrill Bernard Crohn(ブリル・バーナード・クローン)らによって、1932年に初めて報告された病気であることに由来します。Crohnの名前をとって「クローン病」と名づけられました。
その名前から、遺伝的な病気ではないかと誤解されることもありますが、無性生殖で増やした遺伝的に同一個体群を表す「クローン(cione):語源は、植物の小枝の集まりを意味するギルシャ語」とは違うものです。

Q.病気のタイプには、どのようなものがありますか。

A.次の4つのタイプがあります。
①小腸型
小腸だけに病変がある。約30%の人はこのタイプです。

②小腸大腸型
小腸と大腸に病変がある。約40%の人はこのタイプです。

③大腸型
大腸だけに病変がある。約30%の人はこのタイプです。

④特殊型
胃や十二指腸などに病変がある。