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炎症性腸疾患の道標/高橋涼介[特別編]

潰瘍性大腸炎、クローン病の病態と治療法から最適な献立・一品料理を掲載。

潰瘍性大腸炎について

2009-03-21 22:15:52 | 潰瘍性大腸炎
Q.妊娠や出産に支障はありますか。

A.緩解期であれば特に問題はありません。しかし、病状が悪化したときの妊娠は流産などの原因にもなるので、緩解期の妊娠および出産となるように、主治医と相談しましょう。また、妊娠初期や出産直後に病状が悪化することもあり、注意が必要です。
妊娠中の治療については、海外では、非常妊娠時と同じでよいとされます。妊娠によって治療を中断し、悪化した場合のリスクのほうが大きいと考えられているからです。日本では、一定の薬は妊娠中でも比較的問題はないとされます。具体的には、5アミノサリチル酸系の薬(ペンタサやサラゾピリン)および中等量までのステロイド(プレドニンなど)は比較的安全な薬といわれています。免疫抑制剤については、基本的には避けたほうがよいと考える医師が多いようです。
出産後や授乳中の投薬も妊娠中と同じですが、5アミノサリチル酸系の薬を大量に使うと、新生児の黄疸を悪化させてしまうことがあるので、主治医と相談しましょう。自己判断でむやみに中断してはいけません。かえって大きな再燃の原因になることもあるからです。
また先ほども述べましたが、サラゾピリンを服用する男性の場合、精子の抑制や減少が起こることがありますが、ペンタサに変更することで回復するといわれています。

潰瘍性大腸炎について

2009-03-21 22:01:19 | 潰瘍性大腸炎
Q.日常生活では、どのような注意が必要でしょうか。

A.基本的には長期にわたる慢性の病気なので、病気とうまくつき合うように、生活のペースをつかむことがたいせつです。
活動期でひどい下痢や粘血便、腹痛などがあるときは安静にし、必要に応じて入院治療を受けてください。この時期は食事もかなり制限されます。
一方、緩解期や病状が安定しておちついたときは、無理をしない範囲で日常生活は普通に戻してよいと思います。過労やストレスには注意しましょう。食事面では過剰な制限は不要ですが、脂質が少なくて消化がよい食事を心がけてください。刺激の強い飲食物や多量のお酒は避けたほうが無難でしょう。スポーツも適度であれば問題ありませんが、過度なものは主治医と相談しましょう。仕事や家庭生活、就学、就職などへの影響もありません。
また、タバコは潰瘍性大腸炎を悪化させる因子ではありません。しかし、タバコによる肺がんなどな危険性もあるので、すすめられるものではありません。

Q.職場や学校では、どのようなことに注意したらいいでしょうか。

A.潰瘍性大腸炎の性質上、自己管理がたいせつになります。つき合いで外食が多い職種や、ストレスが強い仕事は、できれば避けたほうがよいと思います。しかし、そのような仕事であっても、周囲の理解を得ながら乗り越えている人もたくさんいます。病気だからといってあきらめることはありません。
学校は通常どおりでだいじょうぶです。ただ体調が悪いときは、それに応じて体育を制限したり、給食を制限したりするほうがいいこともありますので、担任の先生とよく連絡をとり合ってください。

潰瘍性大腸炎について

2009-03-19 18:33:36 | 潰瘍性大腸炎
Q.緩解後も治療は必要ですか。

A.再燃を予防するためには、緩解後も投薬を行います。通常、サラゾピリンなら一日4錠、ペンタサなら一日に6~9錠使います。投薬をいつまで続けるかは意見が分かれるところですが、少なくとも1~2年は続けたほうがよいとされます。

Q.薬の副作用について教えてください。

A.薬によって副作用は異なります。
①サラゾピリン
比較的多い副作用は、皮疹や湿疹などのアレルギー反応です。そのほかに、頭痛や胃障害などがありますが、大部分は軽症です。非常にまるですが、アレルギーのために白血球の減少が起こって、高熱を出したり、口の中に痛みを伴う大きな傷ができたりします。この場合はすぐに主治医に相談してください。また、肝障害や腎障害の報告もあるので、定期的に受診して検査を受けましょう。男性では精子が抑制されることがありますが、薬をやめたり、ほかの薬(ペンタサ)に変更したりすると、3ヶ月ほどで元に戻ります。

②ペンタサ
サラゾピリンに比べ、アレルギーなどの副作用は少ない薬です。しかし、下痢や軟便傾向になる人がいます。胃障害や肝障害が起こることもあるので、定期的な検査が必要です。

③ステロイドホルモン(プレドニンやリンデロンなど)
短期的な副作用には、にきび、満月様顔貌(顔が丸くなる)などがあります。また、肥満した結果、皮膚に腺条(妊娠線ようなもの)が起こることもあります。糖尿病の人では、その悪化が報告されています。
そのほかの大きな副作用には、免疫を抑制するので、感染症への注意が必要になる、骨粗鬆症や大腿骨頭壊死など骨の障害が問題となる、精神症状が出ることがある(こるは入院時の多量投与が原因になる)、どがあります。
ステロイドは、長期にわたって多量に投与すると副作用の問題が大きいのですが、必要なときには充分な量を投与することが肝要です。いたずらに怖がらず、主治医とよく相談して、投与を受けてください。

潰瘍性大腸炎について

2009-03-19 17:47:39 | 潰瘍性大腸炎
Q.白血球除去療法には、顆粒球除去療法もあると聞きました。これらはどのような治療ですか。

A.どちらも、腸管に炎症を起こす原因となる白血球を、フィルターなどを使って除去する治療法です。顆粒を吸着するビーズを使うのが顆粒球吸着療法です。活動期(病状が悪化したとき)は週一回行ない、1回あたり2時間程度で血液を1.5~2㍑ほど処理します。いずれの方法でも、ステロイド抵抗例で約60%以上の有効率が報告されています。これらな療法は、2000年ごろから保険適用になりましたが、重症例や難治例が対象となります。通常、5回を1クールとし、2クールまでが保険適用になります。

Q.外科治療(手術)はどのようなときに行いますか。

A.かならず手術が必要なのは、次のケースです。
・腸に穴があいて腹膜炎になったり、大量に出血があったりするとき。
・症状が悪化して内科チラョウが効かないときや、がんが合併したとき。
また、次のような状態で生活に支障をきたすときは、患者さんおよび家族と主治医がよく話し合い、手術を選ぶこともあります。

・入退院を頻繁にくり返すなど、家庭生活や社会生活に支障が大きいとき。
・ステロイドなどの薬の副作用が強いときや、副作用が予想されるとき。

Q.手術の方法と、手術後の経過を教えてください。

A.手術には、次の3つの方法があります。
①回腸肛門吻合(IAA)・回腸肛門管吻合(IACA)
どちらも、大腸をすべてとって小腸と肛門をつなぎます。病状に応じて2~3回に分けて手術を行なうことがあります。手術後は半年程度で便の回数がおちつきますが、一日数回程度になる人が多いようです。手術後、10~20%程度の人に回腸嚢炎が起こることがありますが、ほとんどは抗生物質の投与で改善し、難治化するケースはあまり多くはありません。

②回腸直腸吻合(IRA)
大腸の中で直腸だけを残し、小腸とつなぎます。手術はわりあい容易で、手術の回復も早く、便の回数も早い時期に安定します。
ただ、直腸に病変が残るので内科治療を続けなければならなかったり、残した直腸にがんが発生したりすることがあるので、近ごろではあまり選択されない方法です。

③回腸瘻(人工肛門のこと)
大腸をすべてとって、人工肛門にします。潰瘍性大腸炎は完全に治り、手術後は投薬や食事制限は原則として不要(便のコントロールの薬は必要です)になりますが、日常生活に若干の不自由さがつきまといます。合併症の多い症例や、手術後に肛門の機能が期待できない高齢者などで選択される場合があります。
現在はおもに①のIAAやIACが行なわれます。患者会などを通じて経験者の声を聞くのもよいと思います。

潰瘍性大腸炎について

2009-03-18 20:22:15 | 潰瘍性大腸炎
Q.潰瘍性大腸炎の原因は何ですか。

A.はっきりした原因は不明です。現在のところ、一定の遺伝的素因(生まれながらの体質)を持つ人が、食事内容や腸内細菌などの環境因子の影響を受け、最終的に大腸の粘膜に対する自己免疫現象の結果、大腸の粘膜を傷つけてしまうのではないか、と考えられています。本来の免疫の役割は、体内に侵入した病原体や毒素を攻撃して病気にかからないようにすることですが、なんらかの原因で自己の成分を攻撃対象にしてしまうことがあり、これら自己免疫現象といいます。また潰瘍性大腸炎では、ある種の腸内細菌が発症や再燃に関与しているのではないかと考えられていますが、完全には解明されていません。
精神的なストレスは原因とはいえませんが、かぜなどと同様に、再燃のきっかけになることがあります。

Q.どのような人に多いのでしょうか。

A.2005年で、日本では約8万9000人%特定疾患患者として登録されており、年々増える傾向にあります。年齢別には、比較的若い人(10~20歳代)に多いのですが、中高年(50~60歳代)にも小さなピークがあり、若い人だけの病気ではありません。世界的に見ると、日本での発症の程度は低頻度から中頻度に相当します。高頻度とされる欧米では、日本の数倍の発症率と報告されています。

Q.内科治療はどのように行うのですか。

A.現在の治療指針では、患者さんの病状(重症度)に応じて行なうことになっています。ただ、病状の変化によって治療内容は変わることがあります。また近年は、潰瘍性大腸炎のガイドラインも作成されています。基本はほぼ同じですが、通常の治療の効果が上がらない場合はさまざまなくふうが必要です。また、投与された薬の副作用の状況や、副作用が出ると予測される場合は、治療指針とは異なる治療を考慮せざるをえないこともあります。以上を念頭に置き、現在の治療内容を次にご紹介します。

①軽症の場合
サラゾピリンやペンタサ(どちらも、5アミノサリチル酸系の薬)を中心に使います。必要に応じてステロイドホルモン(以下「ステロイド」と略す)や5アミノサリチル酸系の座薬や注腸薬が使われます。特に直腸炎型では、座薬や注腸薬を積極的に使います。

②中等症の場合
まずは軽症と同様の治療を行いますが、それでも効果がないときや症状が悪化した場合は、中等量のステロイドを併用する必要があります。症状が治まってきたらステロイドの量を少しずつ減らします。あまり早くステロイドを減らすと、再燃を引き起こす場合があります。

③重症の場合
入院治療が原則です。そのときには、ステロイドの多量投与が必要になることが多いです。中等症と同様に、症状が治まってきたらステロイドは少しずつ減らします。あまり急激に減らすと再燃の大きな引き金になることもあります。ステロイドでは効果が不十分なステロイド抵抗例などでは、白血球除去療法や免疫抑制剤(シクロスポリンなど)を使うこともあります。

④激症・中毒性巨大結腸症の場合
非常に危険な状態です。腸管に穴があいて腹膜炎を起こしたり、全身の感染症を合併したりして生命が危険になることもあります。内科治療を行う場合でも、つねに緊急手術を考慮しながら治療します。
治療法としては、ステロイドの強力な静注療法(多量のステロイドを点滴注射する療法)や、場合によってはシクロスポリンの点滴静注療法(点滴で、時間をかけて静脈に投入する療法。量の調節が重要であり、一部の専門施設で行っています。保険適用外です)などを試みます。

⑤その他
難治例(ステロイドの効果が不十分なステロイド抵抗例や、ステロイドを減量すると再燃するステロイド依存例)では、特殊治療を要します。具体的には、白血球除去療法や免疫抑制剤を使用することがあります。
ステロイド依存例では、免疫抑制剤(アザチオプリン「製品名イムラン、アザニン」や6-MP「製品名ロイケリン」)。ロイケリンは保険が適用されません)が多様されます。これらの免疫抑制剤は効果が出るまでに2~3ヵ月かかります。日本人は外国人に比べて低容量で効き目があることが多いので、たとえばイムランは様子をみながら1錠程度から使います。
免疫抑制剤の副作用として、胃腸障害、白血球減少、膵炎、脱毛などがあります。使用を開始してしばらくは、特に血液検査なとを定期的にする必要があります。