たか☆ひ狼のいろいろ

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天獣戦記譚マサムネ:2-7話

2005-07-18 19:41:29 | オリジナル連載小説
初めて僕たちの前に前に現われた時の武器とはまた違う。
何ていえばいいんだろう、そう…簡単に言えば右腕だけのヨロイを装着したリンカが、僕らの前に現われた。
さっきまで滑り台の上で居眠りしていたのに、いつ気づいたんだろう?

「リンカ、さっきまでずっと先の公園で寝てたのに…いつ気づいたの?」
「あたしの耳にピンって来たんだ、蟲のイヤ~な気が」
「気…?」
「うん、いわゆる動物たちの第6感…って言えばいいかな…って菜乃ちゃん!?」
そうだ、菜乃のことすっかり忘れてた。
やっぱり捻挫したのかな…さっきより辛い顔になってきているのが分かる。

「大丈夫?菜乃ちゃん」
「ん…っ」
さっき見た時より足首が腫れてきているのがはっきりと分かってきた。
どうしよう、病院連れて行かないと…
「権じいのところ行こ、いい薬持ってるから」
リンカは今にも泣きそうな菜乃を抱きかかえると、すぐさま今来た道をダッシュで。
「ショーゴ君も早く!みんなこっちにいるから!」
とはいっても、リンカ早いんだよなぁ…

5分ほど走ったとこの空き地に、権じいとタクトがいた。
「ふむ…どうやら無事だったようじゃの」
「心配したんだよ、菜乃姉ちゃんもショーゴも」
あっちの方が2歳年下だって言うのに、何故かタクトは僕だけいつも呼び捨てにしている。
菜乃の方はちゃんと「姉ちゃん」って呼んでるのに…まぁいいけど。
「それが…菜乃ちゃん転んで足捻挫しちゃったんだ…権じい診てくれる?」

空き地と言っても、それほど大きくはない。
そして…僕らが初めてあいつらに会った時のような、あの冷たい気が、だんだんと近づいてくるように感じられた。
下ろされた菜乃の足首を、権じいはじーっと眺めている。
「それほどひどくはないみたいじゃな、これならすぐ治せる」
権じいは、腰に下げていたポーチから、なにやら深緑色の小さな布切れを取り出した。
それをペタンと、腫れてる菜乃の足首へ。
「わしの調合した膏薬じゃ、ここでじっとしていなさい、すぐに治るでな」

正直ちょっと驚いた。
あんなにひどかった捻挫が…普通医者に行けば1週間はかかるくらいの腫れだったのに。
それが「すぐに治る」って…!?

「あ…」
さっきまで痛みをこらえて真っ青だった菜乃の顔に、少しずつ赤みが。
「どうじゃ?」
「え、あ…あんな痛かったのに…これ貼ってもらったら急に引いちゃって」
菜乃の顔、すっごく不思議そう。

「天界での薬をな、こっちの世界向けに調合比率を変えてみたんじゃ、用いる材料は違えども、効力は一緒じゃ」
なんか難しい言葉いってるけど…要は凄い湿布薬なんだろうな。

「…どうやらここ、嗅ぎつけられたみたい…だね」
リンカがちょびっと舌なめずりしながら辺りを見渡す。
そう、正面の通りには、さっきのダンゴ虫がわらわらと湧き出てきた。
「あと何匹くらいかな?権じい」
「あいつがどこで油売ってるのかは分からんが…お前さん含めて、もう三分の二は退治したはずじゃ」
「そっか、んじゃもうひと踏ん張りしてくるね」
リンカは鎧の腕をブンブン振り回した、まるでバッターの打撃練習みたいに。

そして…

「はああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
姿勢を低くした直後、もの凄い速さで蟲の先頭集団にダッシュ。
そこから…何て言えばいいんだろう。
ゲームセンターでよく眺めていた格闘ゲーム、それで言うところの「流れるような連続攻撃」
ダッシュでパンチして、ひざ蹴りした後に今度は回し蹴り。
相手がひるんだところに、あの鎧の腕の、とっても重そうな一撃。
「はっ!たぁっ!っりゃあっ!!!」
流れるようにタンタタンタンと攻撃、そしてフィニッシュ。
ダンゴ虫は崩れ落ち、そして砂のようにサラサラと崩れていった。

「す…ごい!」
思わず僕の口からも、驚きの声が。
「格ゲーの多段コンボ見てるみたいだね、ショーゴ」
そう、僕が思っていたことと同じ思いを、タクトも感じていたみたいだ。
「リンカの得意とする素早さに、あの剛腕を合わせれば、無類の強さになるんじゃ」
タクトの後ろで権じいが、満面の笑みで話してくれた。

そして、集団を驚きの速さで消し去ったリンカ。
「あいつら、あんまり強くないけどね~けど大量に出てくるわ硬いわで、結構大変なんだよ」
「硬い…?」つい僕の口から、そんな言葉が出てしまった。
あの流れるような攻撃を出して、みんな瞬く間に退治して…それでも大変って一体?

「うん、あの蟲ね、背中の殻がすっごく硬いんだ、だから腹側からとにかく叩き込まないとダメなの」
「一旦危険を感知すると、奴らは丸まってしまう習性を持っているんじゃ…」
「そうなんだ…だからリンカの武器も…?」
「そういうこと~、だけどね…」

リンカの言葉をさえぎるように、僕らの背後から突然大きな音が!

ドッ!!!!

知らないうちに僕らの後ろに忍び寄っていた、あのダンゴ蟲。
それも今までのよりちょっと大きい。
でも…僕らを襲わないし、身動き一つしない。

そしてその蟲は、突然真っ二つに!
「ギ…」

正面から斬ったんじゃない、後ろからだ。
けど…確かリンカはこいつの殻が硬いからって…一体??

崩れ去る蟲。
そしてその後ろには、あの大斧を振り下ろしたマサムネが!

「だけどね、こいつだけは別」
リンカがいたずらっぽい笑顔で、マサムネを指差していた。


「何か言ったか?」


マサムネのバカ力だけは…例外なんだね。

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1 コメント

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Unknown (みんなのプロフィール)
2005-07-19 03:06:12
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