たか☆ひ狼のいろいろ

ファンタジー小説とか、動物園撮影紀とか、アリクイとか。

天獣戦記譚マサムネ:2-10話

2005-07-29 19:55:58 | オリジナル連載小説

「ショーゴ、マサムネのお散歩行ってくれる?」
1階から母さんの声。
はぁ…これから観たいTVあるのに、なんでまたこんな時に限ってビデオ壊れちゃったんだか。
「ショーゴ!お父さんいないんだから、分担して散歩行く約束なんじゃないの?」
分かってるんだけどさぁ、でも今日だけは勘弁してよ、母さん行ってよ。
「ショーゴ!聞こえてるんでしょ!?」
あぁ…もぉ!!

と、階段からいつもの足音が。
マサムネ…上ってきたんだ。
あ~あ、いつもの目つきでじっと見てるよこいつ…

─全く、全然来ねぇと思ってたらTV見てんのかよ。
そんな目で僕を見ないでよ。

─いいんだぜ俺は、別に散歩1日くらい我慢できらぁ
何でお前、いっつもそういう目で僕を見るのさ…
友達の家の犬見ててもさ、みーんな言うこと聞くよ?
マサムネ…お前って、僕の言うこと全然聞かないね。

僕が生まれた時、マサムネはもうこの家にいたんだよね。
だからかなぁ…僕より兄さんだって思っているの?

─オラ、どーすんだ、行くのか行かねぇのか早く決めろ。
「ショーゴ!お母さん今手が離せないんだから、早くしてくれる?」

分かったよ…行きゃいいんでしょ、全く。

「マサムネ…」
─ンだよ?俺に何か言いたいことあるのか?


「ちょっと急ぎたいんだ、最短コースで我慢ね」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
さて…と、ビニール袋持ったし、行くかマサムネ。
─今日はどこ行くんだ?川沿いか?それとも学校か?

「10分で済まさないと最初っからTV観れないから…今日だけ我慢ね」
─おい、いつもとコース違うぞ!こっち行くぞこっち!
相変わらずマサムネの力は凄い、でも僕も負けてられない!
「だ、か、ら!今日だけお願い!10分でトイレ全部済ませて!」

ちょっと車の通りが激しい道へ出た、僕の秘密の最短コース。
─いや違う…こっちは通るな!バカ!
「何だよマサムネ!まだ抵抗するの?」
─違う違う違う!変な予感がするんだ、引き返すぞ!
「ほら、こっちでトイレ済ませて早く帰るよ」

─!!!!!!

突然、マサムネが僕を…もの凄い勢いで押し飛ばした。
目の前が真っ暗に。
それと

ゴシャアアアァァン!!!

耳が張り裂けそうな金属音!

僕は…一体?

あ…
ここ、用水路…か。
細長い溝に、僕だけすっぽりはまってる。
そして黒い、ガソリン臭い屋根。
屋根と僕との間に…マサムネが…

…え?
マサムネ!?



何?何か言いたいのマサムネ?



どうしたんだよマサムネ、そんな弱った顔しちゃってさ…

え…なんだこれ?

生温かい…マサムネの方からこぼれてきてる。



何なんだよこれ…それに何言ってるんだよ!



ねぇ…何を言おうとしてるの?マサムネ。


ちょっと…こんな時に寝ないでよ…一緒にここから出ようよ。

起きてよ…こんなとこで寝ないでさ。

ねぇ、マサムネったら。

起きて…起きてってば…

ねぇ、マサムネ…






「マサムネ…」

「お、気がついたようじゃの」
「よかった~、どっか触っちゃったんじゃないかと思った」
「大丈夫ショーゴ?意識ある?」

「ショーゴ…よかった」

青空の下、僕の周りをみんなが囲んでいる。

権じい、リンカ、タクト、それに菜乃。
みんな心配そうな顔で僕を見てる…何でだろう?
「夢…?」

どうしたんだろう僕…確か蟲に囲まれた後、マサムネに抱かれて…?
「そうだ…マサムネは!?」
僕が尋ねると、リンカはちょっと笑いながら数m先を指差した。

…大の字になって倒れてた。
そうか…僕を抱えながら突破したんだよね…
でもよかった、マサムネも無事で。

と、隣にいた権じいがおデコにシワを寄せて、僕を杖でゴツンと。
「全く…マサムネがいち早く察知してくれたからいいものを、自殺行為じゃぞ!」
「ごめんなさい…」
「うむ、じゃが…まずそれはマサムネに言わねばの」
「うん…」

それを聞いていたのか、マサムネも起き上がった。
「全くよ…気絶して夢見てるなんていい身分だぜ」
「ごめん…マサムネ」

マサムネ、僕と目を合わすの避けてる…やっぱ怒ってるんだ。

「さて…」
「どうしたのじゃ?マサムネ」
「腹減ったからな、メシ食いに行くぞ」
突然僕の方を見て、ニヤリと怖い目で微笑んできた。

「…罰としておめーのおごりな」

「えええええええ!?」


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