たか☆ひ狼のいろいろ

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天獣戦記譚マサムネ:2-5話

2005-07-13 22:18:53 | オリジナル連載小説
すごい怖い目で睨まれたけど、まだ絆のせいでマサムネはみんなに認められてないし、ってことで。
「俺のも買ってこいよな」
ってことでどうにか外出することができた。
日曜は何にもしないで家で寝ていたいんだけど…まぁいいか。

僕の家から15分ほど歩いたところにある、大きなファーストフード店、マーフィーズ。
菜乃はここのシェイクが大好きで、1週間に3~4回は行ってる。
大半は僕のおごりだけど…

「いらっしゃいませ、店内ですか?それともお持ち帰りですか?」
ちょっと店内を見渡す。
日曜だからかなり混んでるか…
「えっと、持ち帰りでバニラシェイクをMサイズ…」
「XLサイズで、それとダージリンとメイプルを1つずつ下さい~!」
Mサイズにしようかと思ったら、菜乃が脇から口を挟む。
ちょっと何だよXLって、1人で飲めるの?

ちなみにメイプルシロップ味は僕の大好物。
菜乃はその辺、ぬかりは無いみたいだ。

「ふんふふ~ん♪」
巨大なXLシェイクを抱えながら、菜乃はうれしそうに飲んでいた。
「んふ~、やっぱここのダージリンは最高♪」
「でしょでしょ、XLサイズなんて他のお店には無いからね」

おなかこわすぞ菜乃。

歩きながら飲むのもなんだから、ちょっと近くの高台にある公園へ立ち寄った。
ほとんど毎日人気の無い、小さなすべり台とブランコが置いてあるだけの、寂れた公園。
でも僕と菜乃はこの公園が大好き。
なぜかって言うと、高台から見下ろす景色がとってもきれいだから。
「んん~、風が気持ちいい~」
はるか遠くに港が見える。
そこから運ばれてくる潮風が、とっても大好きで。
菜乃はいつも高台のギリギリまで近づいて、その潮風の香りにひたっていた。

一方、リンカはというと…
「お日さまが気持ちいいね…ここはいつも変わってない…」 
すべり台の坂部分に寝そべって、日光浴をしていた。

もう少し、ここにいようかな…やること特に無いし。
「あ」
しまった、マサムネのシェイク買うの忘れてた。
あ~、あいつ怒るだろうな、急いで買ってこなきゃ。

「ちょっとマサムネのぶん買ってくる、何味がいいんだろう、リンカ?」
幼なじみだったら、あいつの好きなのわかるかも。

「んく~…」

…寝てた。

しょうがない…菜乃と一緒にもう一度マーフィーズに戻るか。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「マサムネって…何味好きだか分かる?」
「ンなの、あたしが知ってるわけ無いじゃん、適当でいいよ適当で」
公園を下る長い階段、菜乃は思ったとおりの答えを僕に返してきた。
「バニラストロベリーチョコミントダージリンバナナメイプルエスプレッソマンゴーピーチ…と」
「だからさー、別に全メニュー考えなくったっていーじゃない」
とりあえずシェイクの全部のメニュー思い出す…あぁどうしよう。
「だってさぁ、昨日プリンシェイク飲ませたら怒ったじゃん、また変なの買って怒られやしないかって…」
「じゃベーシックなところでバニラでいいじゃん」
「うん…」

階段を降りきったら、お店へダッシュ。
溶けないうちにマサムネのところへ持っていかないと。
「!」
と考えてる時に、前を走ってた菜乃の足がピタッと止まる。
「どうしたの?」
「…前見て…」
驚きの色を隠せない、その顔。
菜乃に言われるままに、ずっと前のほうを見た。

「!!!」
「ショーゴ…昨日のアレ…だよね」
「うん…あれだ…」
ずっと先にある住宅の並び、その通り一帯が、あの霧に包まれていた。
白と黒しか無い、あの霧。

「逃げる…菜乃?」
「うん…戻ってリンカ呼んで…」

ワシャ

「!?」
話に割り込むように、妙なざわついた音が。
ワシャ…シャシャシャ、ジャッ!
落ち葉を踏みしめるような、軽いけど、でも大量の音。
そんな音たちが、近くに…いや周りに!

シャ…

角から姿を現したそいつ。
「これ…」
「うわやだ、これ苦手!」
黒いいくつもの節に別れた身体。
そしてその身体からは無数の脚が伸び、前でワシャワシャと音を出している。
猫背気味の身体のてっぺんには、長い触角と、電気切れかけの懐中電灯みたいに力なく光っている、黄色い眼。
「これ…ダンゴ虫…だよね」
「いやいやいやいや、これわたし大ッッッッ嫌いー!」
ダンゴ虫っていっても、その立ち上がった背丈、僕らと同じくらい。

そしてそれがたくさん、ワシャワシャと現われてきた。
その光る視線は、みんな僕と菜乃に!

「逃げよう!」
マーフィーズへの道にはたくさんのダンゴ虫でふさがれていた。
右も左も…何匹かいる。
後ろの道には何もいない、チャンスだ!
ダッシュでさっきの公園へ!

「菜乃は公園行ってリンカ呼んで!僕はマサムネと権じい呼ぶから!」
あのダンゴ虫がどのくらいの速さか分からないけど、今は逃げるしかない。

っていうか…

ワシャワシャワシャワシャ

ぺったぱったぺったぱった


あー、いつものスニーカーにしとけばよかった。
なんで菜乃も僕もこういうときに限ってサンダルなんか!

だんだんとあいつらの足音が早くなっていくのが分かる。
後ろは振り向きたくない、さっきより増えているのが音でわかるから。


あぁ…マサムネ連れてけば良かった…


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