第43話 聖夜の戦い
周は聖夜のデートをしていた。
クリスマスイブとあってイルミネーションと大勢の人々で賑わう。
2人は手を繋ぎ歩く。
周は和香の手を強く握り立ち止る。
「和香ちゃん、あのね。」
「何?」
周は懐から小さな箱を取り出した。
「はい。」
和香は受け取り開けると指輪が入っていた。
銀の左半分のハートの中にWの文字の指輪。
文字上を煌びやかな石が同じWを描くように埋まる。
周がもう右半分のSの文字の指輪を左薬指にしていた。
手の甲を向け指輪を見せる。
「ペアリング。2人でしたかったんだ。」
「いいの?」
「2人の愛の形として俺からの誕生日プレゼントさ。」
「誕生日覚えててくれたんだ。」
「もちろん。」
そう言い周は和香を抱きしめキスをした。
「ずっといようね。約束だよ。」
周は和香の頭を撫で笑って言った。
一方で風馬と理央も手を繋ぎ街を歩いていた。
「理央、クリスマスだしヴィトンでも何でも買ってあげるよ。」
風馬の顔はニヤニヤしている。
それを理央は察した。
「どうせエッチなこと考えてるくせに。」
「それは~」
そう言い風馬を思い切りぶつ。
「あんたがいてくれるだけでいいわ。」
そう言い理央は風馬にキスをした。
「卒業したら結婚しましょう。」
「そして夫婦で子作り。」
「最後は結局そうよね。」
理央はため息をついて言った。
その頃教会でもクリスマス会は盛り上がっていた。
「まぁそういうわけで1人者同士クリスマスパーティー開始!」
拝努の掛け声で皆がクラッカーを鳴らした。
テープが部屋中に舞いグラスにシャンパンが注がれる。
「父さん、ヴィシャス先生、今日は皆無礼講で行きましょうね。」
拝努は2人の肩に腕を回しそう言う。
「神に仕える者として神の生誕祭では礼儀は大切だと思うのだが。」
「父さん、固いことは言わないで下さい。神様も笑顔が一番見たいはずです。」
「あの常時無礼者モンスターがいないだけで私は満足です。」
「先生もそんなこと言ったらダメダメ。彼の分僕らが楽しみましょう。」
完全にパーティーモードの拝努に皆ついて行けていない。
「僕…彼女なしで…今年もクリスマスを…」
落ち込む冬人。
「郡山君、来年があります!」
「そうですね。過ぎたことより未来ですね。」
冬人は早々に立ち上がり復活した。
そしてご馳走をやけ食いする。
「そうです。戦士たる者元気でいなければ。」
その言葉に一気に皆テンションが上がる。
エクソシスト隊隊員たちも元気を出し酒を飲みだす。
十神とヴィシャスだけが取り残され静かに酒を飲んでいるのだった。
一方で雫は部屋にこもりカードを手にしていた。
シャッフルしたカードをテーブルに置く。
京の写真を前に置き伏せられたタロットカードを捲る。
雫が手にしたカードは9のハーミットのカードだった。
「ハーミット。これは一体何を意味して…」
その時雫の脳裏に帝の言葉が過ぎる。
「まさか!」
そんな雫をよそにパーティーは盛り上がる。
クリスマスソングを熱唱したりと皆酒に酔っていた。
「もっと声出して!お腹の底からぐっと!」
流石の様子について行けない冬人、十神、ヴィシャスは庭に出た。
「あれは酷過ぎます。」
「クリスマスなれどやはり主に対しての礼儀がな。」
「そのせいで我々はこの様ですな。」
3人の顔は落書きだらけになっていた。
「流石に復活してもまだ高校生の僕はあの酔いにはね。」
「神の生誕祭で父親の顔にこんなことをするなどな。」
「本当の無礼講だ。私も部下にこんなことをされ。」
3人は怒っていた時だった。
庭に雫が出て来た。
「総統!」
「ん?」
「お話が。」
「話とは?」
「出来れば2人で。」
「少し外に行かんか。今時の聖夜の街が見てみたくてな。」
「構いませんが。」
「色々教えてくれ。何せ昔の人間だからな。」
こうして2人は教会を出て行った。
その頃周と和香は街のイルミネーションを見ていた。
港の公園に建てられた大きなイルミネーションを階段に座って見ていた。
周りには多くのカップルもいる。
2人は手を繋ぎ寄り添う。
光と影の幻想的な世界に魅せられ心を奪われる。
甘いひと時を送る。
そんな中2人を呼ぶ声がした。
振り向くと後ろに風馬と理央がいた。
2人は今来た所だった。
「君たちも来てたんだね。」
「皆考えは同じかな。」
一方で帝はマモンと行動を共にしていた。
アマイモンの運転する車が夜の街を走る。
助手席にマモン、右後部座席に帝が座る。
「マモン、本当にやつが来るのか?」
「聖夜にテロ。もう現場に来ている。」
「神の生誕日に神の生んだ尊い命を奪う。まさに外道だ。」
「仏の顔の裏は外道。やつに送る言葉としてよく似合う。」
そして車の光は1人の歩行者を照らした。
それは冬人だった。
「クリスマスが何ですか!僕は1人でも!」
車がすれ違う時だった。
冬人と帝の目が合った。
そしてそのまま車は通過した。
一方で雫は十神に占いの結果を話した。
個室のバーで夜景を見ながら酒を嗜む2人は親子のように見えた。
「そうかね。隠者のカードが。ならば彼に更なる魔の手が。」
「ええ。あの一枚が出た限りまだ切れたとは。」
「それよりシスター、1つ頼みごとが。」
「?」
「息子をもらってくれんか?ああ見えて父親思いのいい息子だ。」
「ですが。」
「真面目な君だから釣り合う。君が必要だ。」
「でしたらこの戦いが終わってからそれは考えさせて下さい。」
そう言い雫は目を逸らした。
そしてその頃京はビルの上に立っていた。
「君たちには申し訳ないが我が愛する者のため犠牲になってもらおう。」
そう言い港の公園を見下ろす。
そのビルの前に2人の車が停まった。
帝たちが降りてビルに入る。
それを見た冬人は思わず駆け出し周たちのいる場所に来た。
「大変です!」
「冬人!どうした?」
「帝さんがあのビルに!」
それを聞き5人で走り出しビルの前に来た。
「ここだな。」
周の言葉に冬人は頷きビルに入ろうとした時だった。
「お客さん、ダメですよ。」
警備員2人が制止する。
「でも仲間が入ったんです!」
「ですが我々は止めろと言われてますので。」
「インキュバス様とマモン様の命により。」
「まさか!」
「皆さんの相手はこのロキと。」
「チュパカブラが致します。」
そう言い2人はモンスターに変身する。
ロキは長い鼻に長い白鬚と帽子に民族衣装とマントに鞭を持った老人風の怪人。
チュパカブラは背に縦一列のトゲと鋭い爪や牙をしたエイリアン風の怪物。
それを見た市民たちが逃げ惑う。
「チェンジオン!」
5人は迷わず変身し向かって行く。
一方屋上に帝たちが来た。
「無駄だ。」
マモンの言葉に笑う京。
「余裕そうだな。俺がいる限り無駄だ。何せ俺が盾になる。」
「ハーミット、大人しく降参して下さい。」
「君たちが来るのは知っていた。少し話そうか。」
一方で周たちは苦戦していた。
2体の鞭と爪の攻撃は華麗な動きで翻弄させられる。
「フェンリル!」
周は素早さで翻弄しようと出る。
しかし動きを見切ったロキの鞭に打たれ倒れる。
「僕らも!アヌビス!」
「チェルノボグ!」
剣で攻撃に出るもチュパカブラはすばしっこく命中しない。
それどころか死角に回られ攻撃を受け倒れる。
「私たちも!フェアリーシャイン!」
「エンジェルサンダー!」
魔法が2体を襲う。
しかしロキは周たち3人を鞭で叩き飛ばし盾にした。
「ぐあ!」
「そんな!」
「まだだ!ガーゴイル!」
「レイキ!」
周と冬人は鋼鉄化した体で向かう。
「無謀です!」
2体の鞭と爪は鋼の体を砕いた。
「ぐ!これもダメか…」
「ワイバーン!ダブルトルネード!」
風馬の放った2つの巨大竜巻が2体を襲う。
しかし竜巻を乗りこなし中で踊っていた。
「戦いで熱くなった体に最適ですね。」
「ではこちらもお礼を致しましょう。」
2体は竜巻をUターンさせた。
竜巻が和香と理央を襲う。
「きゃーーーーーー!」
2人は変身が解け倒れる。
「さて皆さん。」
「お遊戯はここまでです。」
3人がこれまでかと思った時だった。
「ゴッドクラッシュ!」
「マーメイドウェーブ!」
衝撃波と大波が2体を襲い2体は倒れた。
そこには変身した十神と雫が来た。
「これより我々も参戦する。」
「よくもクリスマスを台無しに!」
「総統に雫さん!」
「借りるぞ。」
「私も。」
十神はガーゴイルメダル、雫はダゴンメダルを手に取りバンクに入れる。
「ガーゴイル!」
「ダゴン!」
そして十神を先頭に駆け出し鞭と爪で攻撃が来た。
「メタルボディ!」
より鋼鉄化した十神の体には無効。
そのまま大槌と槍の渾身の一撃が入る。
「ぐあーーーーーーーーーーーーー!」
2体は港まで飛ばされた。
2人も追いかけ倒れる2体の前に立つ。
「小癪な!」
ロキは鞭で攻撃するも十神はハンマーで受け止めそのまま鞭を放り投げた。
「形勢逆転だ。アイアンボールシュート!」
無数の鉄球がロキに命中した。
一方チュパカブラは爪で雫を切り裂くも液状化した体には無効だ。
「おのれ!」
「往生際が悪いわ。アクアショット!」
全身が水の弾丸になってチュパカブラを襲い命中した。
2体はなすすべなく倒れそこに聖騎士の姿になった3人が来て最後の技に出た。
「これで終わりだ!エクリプスソードストライク!」
3人の斬撃が命中し大爆発が起こる。
「ぐあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
こうしてロキとチュパカブラは死にメダルが砕けた。
皆変身を解き一斉に抱き合い言った。
「メリークリスマス。」
そして夜空に一筋の流星が瞬いた。
続く