春烙

寒いなあ…

降りつづく 雨

2009年06月10日 19時40分00秒 | 外伝小説 2
 まるで、誰かの悲しみが降らした雨のようだ――


 この日の雨は、いつもと違う。
 とても冷たく、重い感じだ。
 こういう日は、家にいた方がいいが。
 なぜか俺は、この雨の中を歩きたいと思った。
 何かに、引き寄せられたかのように。
「……!!」

 幻影でも見ているのか。
 傘を差さず、見覚えのある後ろ姿が俺の前を歩いていた。
 とてもゆっくりで、身体が少しよろめいているのを見えた。

 その瞬間。
 俺は傘を放り投げて、一目散に走り出した。
 あいつが消えてしまう前に
 あいつが俺の思いを忘れる前に――

 何度も呼び続けて、やっとあいつを振り向かせた。
 だが振り向いた瞬間あいつの身体が傾きだし、間一髪地面に倒させずにできた。
「しっかりしろ!」
 声をかけたが、雨にぬれたせいか気を失っている。
 このままだと、死んでしまう――
 俺は抱えると、近くのホテルへと走り出した。
 殺したくないから。

 ホテルの一部屋に入ると、ベッドではなく床の上に寝かせた。
 弟の服を脱がせていくと、白い肌が目に入った。
 女より白い、肌。
 つやのある唇。
 誰だって触りたくなるような綺麗な体。
「水奈……」
 全部脱がせると、すうっと美しい身体を見下ろした。

 俺以外の奴が触ると思うと、ぞっとしてしまう。
 他の奴に触らせたくない。
 誰にも渡したくない。
「思い知らせてやる……」
 俺から離れようとすると、どうなるのか。
 お前が思いを捨てると、どうなるのか。
 二度と離れられないようにしてやる――

 自分の服を脱ぐと、細い両腕を背中に回し上着で縛りつけ、シャツを目に覆わせた。
 俺が胸の真ん中を指でなぞってみると、身体がピクッと震えた。
「ん…っ」
 起きてしまったのかと思ったが、小さく寝息が聞こえてきた。
 指を横にずらし、胸の飾りを軽く押したり、指のひらで回したり、摘んだりした。
 もう一つのは唇をあて、舌で舐めたり回してみたり、少し吸ってみた。
「…ぁっ……」
 小さく、声が鳴る。
 その声を聞きたくて、俺は少し噛みつけた。
「あっ…」
 女のように聞こえる声。
 少し噛みつけたり舌で舐めたりと繰り返すと、足の方が少し動き出した。
 俺は空いている手を下のほうにすべらせ、立ち上がっているモノを握り締める。
 ――胸だけで、感じたのか
「や……っ」
 上下に扱いてやると、甘い声がこぼれ落ちてくる。
「…ぃや……」
 離れていこうとするが、後ろに回された両腕を縛られていて自由に動けなかった。
 俺は胸の飾りから離れ、ソレを口に含んだ。
「いや…!」
 暴れ出す綺麗な両足を押さえつけながら、いきり立つソレの先を舌で舐め上げる。
「ひゃ!」
 舐め上げた瞬間、らしくない声を上げていた。
 今まで聞いたことのない、声。
「あぅん、あ、やっ……」
 舐め続けると、甘い声が落ちてくる。
「はぁ、いや!」
 先のほうから蜜が滴ってくるのを感じると、足を押さえている手を片方だけ放し触れることのない場所へと伸ばした。
「い、いや!」
 指を入れようとすると、激しく暴れ出すが右足以外は思うように動かせていなかった。
 無理矢理入れた瞬間。
「ああっ!!」
 口の中に生温いものが流れ込んできた。
 顔を離すと、口に入っている液体を喉を鳴らして飲み込む。
「(苦い……)」
「いやぁ…っ」
 一本、もう一本指を入れ込むと、中をかき回していく。
「あぁーッ……」
 指を上下に動かしていくと、部屋中に甘い声と水音が響いてきた。
「やだぁ、やめて……」
 指を三本とも引き抜き、高ぶった自身をソコに押し付けた。
「――ッ!!」
 言葉にならない声を出す。
「いたい!……、やだ!!」
 全部は入りきれなかったが、少しずつ馴染ませるように腰を動かした。
「あ、いや…!」
 顔を見上げると、涙を流しシャツがさらに濡れていた。
 俺は目隠しを外してやると、潤んだ青い瞳をじっと見つめていた。
 海の色と同じ瞳。
「いやぁ……っ!」
 悲鳴を閉ざすように、唇に自分のを重ねた。
 この感触だ。
 この柔らかさが。温もりが。
 俺を狂わせた。
「んっ、ん……」
 触れるだけキスをすると、流れる涙を指で拭き取る。
「…にぃ、さん……」
 青い瞳が、俺を映し出す。
「…ゆめ…、ですか……?」
 告げられる言葉に、イラつかせる。
 夢、だと? 
 お前は夢で終わらせたいのか?
「夢じゃない」
 もう一度口付けし、白い身体を抱き締めた。
「あっ……」
 肌と肌が重なると、どことなく温もりを感じる。
 冷たいはずなのに、温かい。
「逃げれると思うなよ」
 耳元で呟き、縛り付けた手首の戒めを解いた。
「兄さん……っ」
 何か言おうとしていたが、口を塞いだ。
 今度は舌を絡めて、深くキスをした。
「ん…」
 抵抗もなく、ただ涙を流し舌を絡め合わせてきた。
「…ぁ、んぅ……。はっ……」
 こぼれ落ちる声を聞きながら、激しく動かしていく。
 歯止めが効かなくなった。
「あ…っ、あっ!」

 何もかもが欲しい。
 身体も心も、伝わったくる温もりも全て――

「あぁ…、そこ、ダメ!」
「ここか」
 一点に集中し突き上げると、今までにない声を出した。
「アッ――、ぃい! すごくイイ!!」
 快楽の声を上げ、腰に細い足を絡め奥へと入れてくる。
「っ、……気持ちイイか?」
「アア、いぃ――っ!」
 首に腕をまわし、深く口付けをしてきた。
「んぁ……、にいさっ…!」
「っ……!」
「あ、アアアァァ―――っ!!!」
 勢いよく突き上げ中に流し込むと、再び立ち上がったソレが二度目の射精をした。
「はぁ…、にぃさん……」
 触れるだけキスをし、お互いの顔を見ていた。
 乱れているのに、なぜか綺麗だと思ってしまう。
「…ずっと……」
 俺の頬に手を乗せ、ゆっくりと笑みを浮かばせて言った。
「ずっと、このまま……。雨がやむまで、でいいから――」
 うっとりとする顔に、深いキスを送る。

 何度も抱き上げるなか、外から雨の音が響いてくる。
 雨が止もうが止まないが。
 俺は、お前を手放す気はない。
 快楽に溺れていく姿を、誰にも渡したくない。
 俺だけでいい。
「好きだ」
 疲れきり眠りについた弟に、低く告げた。

 願わくは。
 その心を浸す雨が、永久に降りつづいていく事を願おう――



  - end -


コメントを投稿