ある日の事。
「おい。おれのライター知らないか?」
翼乃・ジュン・佑希のいる居間に泳地が入ってきて、消えてしまったライターを聞いていた。
「知らん」
「俺は吸わないぞー」
「どうせ、何処かにやったんだろっ」
ジュンと佑希が言うと、泳地は本を読んでいる翼乃の方を向いてこう言った。
「翼乃、火をくれないか」
「わかった」
翼乃は片手を広げて火の玉を出し、泳地に渡した。
「おい……」
「悪いな」
「おい…」
「別に。いつものことだし」
「おい!」
なぜか佑希が怒鳴りだし、3人は佑希のほうを振り向いた。
「なんだよ、トラ」
「トラって言うな!」
「怒鳴るな。一体何があったんだ」
「お前らよ――毎日力使って、疲れねぇのかよっ」
「……何言ってるんだ??」
「はぁ?」
「ついに頭が壊れたか」
泳地は首を傾げ、ジュンは呆れ、翼乃は意味不明な事を言った。
「壊れてねえ!」
「なんでそんな事を言うんだ、佑希」
「お前ら。いつも能力を、生活の大半に使ってるだろ?」
「大半というより、ほとんどだな」
泳地の『念動力』で身体を浮かせられている翼乃が言った。
「それはお前とジュンくらいだろっ。能力を使う奴は、体力か精神に負担がかかる……なのに、だ!」
トンファーを両方取り出すと、翼乃と泳地に投げつける。
「お前ら兄妹ときたら、顔色変えずにいろいろ使いやがってよ!」
「別にいいんじゃねえの?」
一人だけ打たれなかったジュンが、佑希に言った。
「使いたいように使えばいいだろ。負担にならないようにさ」
「たしかにな。けどな。俺が一番気にしているのは、能力の使い方だ」
「能力の使い方??」
ジュンが首を傾げて聞くと、佑希はどこからかロープを取り出す。
「ああ、そうだ――」
シュッとロープを投げ、居間から逃げ出そうとした二人を止めた。
「おい、こら。何処に行こうとしてるんだ」
「「……別に」」
目を泳がしている2人を見て、ジュンは思わず笑った。
「まずは、泳地。お前は『念動力』で物破壊過ぎ。あと家の横で穴を開けるな、通れないだろ」
「……物といっても、花瓶が多い。それにあの穴は、練習で出来た穴だ」
「場所を考えろよ! 次に、翼乃。お前の能力は凶器に近いっ」
「…俺は凶器使いか」
ロープを外しながら、翼乃は佑希を睨みつけた。
「まぁ、そうともいうよな。お前は『心読み』と『透視』の組み合わせで、ある意味で犯罪になってるぞ」
「もう、犯罪犯してるんだけど」
なぜか真剣な顔つきで、翼乃は言った。
「翼乃の犯罪暦は、俺たちより上だからな」
「14年間に何があったんだっ」
「いろいろだけど」
と、なぜか真剣な(略)
「そういや。あの三人は何処だ?」
ジュンがいう三人は、水奈・壱鬼・アスカのこと。
「水奈兄さんは花園じゃないの。あとの2人は知らないけど」
「……聞いてもいいか。花に水をやるのは当然だよな?」
「あ? 当たり前だろ……」
四人は黙り込むと、居間を出ていき、裏庭にある花園へと向かった。
「――どうかしましたか?」
突然入ってきた四人に水奈は首を傾げていた、が。
「「「……」」」
「おい。お前今、何してんだ」
「何って。水遣りですよ」
小さな雨雲を浮かせて水遣りをしている水奈に、四人は(少し)呆気に取られていた。
「それが何か??」
「……実はな…」
4人は居間で会話していた事を、水奈に話した。
「そうでしたか」
「まあ、お前さんの場合は別に攻撃的なのはないからいいだろうよ」
「……そうでもないんじゃない」
と、翼乃が目を細めて言った。
「水死とかあるし」
「……それはそうだ」
「それはどういうことですか」
「つまり、回復系は最大の攻撃ってことだろ?」
ジュンが言うと、なるほどっと2人が納得し、一人は少しむかついていた。
「ちょっと嫌ですね、それ」
「どこがだ?」
「僕はゲームでいえば、僧侶ですよ。回復が主なのに、攻撃なんて嫌ですよ」
「(僧侶というより、アーチャーだろ!?)」
「(攻撃がいやじゃねえだろ!)」
「(いつも弓でズバと刺しているじゃん)」
ジュン・佑希・翼乃が心の事実を叫んでいるのに、あの男は性格が鈍い所為なのか見方がおかしいだけなのか。
「弓を引く僧侶もいいんじゃないのか」
この発言に、ずっこけたり、雨雲を自分の上に浮かせて降らせたり、発言者を殴ったりとしていた。
「……それにしても」
翼乃・ジュン・佑希は、家に戻ってきていた。
「あいつが、泳地のライターをもっていたとは……」
「「そこなのか。おいっ」」
泳地は花園に残り、ただいま、次男に説教中。
「説教というより、お仕置き?」
「それ以上言うなっ」
家に入ると、3人は妙に怪しげな風を感じた。
「なんだ、この風?」
「なんか変な感じがするが……」
「ていうか、どこから吹いてきてるの。この風は」
風が流れてくる方向に向かっていくと、季節の間へと着いた。
「季節用の部屋じゃねえか」
「しっ。何か聞こえてくる」
翼乃に言われ、閉まっている戸の前で息をひそめると。
「あ~、また負けた~~」
「これで20回目だな」
ビュー
「やっ!」
「うーん。うまく当たらないな…」
「あ~! またおかしな所、破った!!」
「あぁ、わりぃ」
「これじゃあ、服がボロボロになっちゃうよ――!」
「……それはそれでいいよな…」
カチッ―――、バーッン!
「「……」」
扉をバズーカで壊した翼乃を見て、ジュンと佑希は呆然としていた。
「うわっ!」
「翼乃! あれほど家の中で打つなって、言ってるだろ!!」
アスカをかばいながら壱鬼が怒鳴りつけると、翼乃はバズーカを肩に背負って入ってきた。
「ほう。そんな事言うんだ?」
「な、なんだよっ」
「今まで何してたんだよ、ここで。あぁ?」
ケンカ腰で告げる妹には、言いようにも言えない程のプレッシャーを与えてしまう事がある。
「遊んでたよ?」
ただ、アスカだけはその影響に受けていなかった。
「何の遊びだ」
「じゃんけんで、負けたら服の一部を切るのー」
「それは遊びと言えるのか、おいっ」
「遊びと言うより、プレイだろ?」
……神家の年少組に原型を崩されてしまった青年の姿を見て、佑希は「哀れだ」と同情した。
「(壱鬼の力は良い方向だったら良かったのにな――『瞬間移動』を正しく使えば、の話だが)」
「だから、血は争えないないよなよ」
「またそれか。お前もいい加減にしろよなっ」
「はっ。それ言いたいの、俺のほうなんだけど」
「「……」」
佑希がアスカを連れて季節の間を離れた後、その場所は戦場とかした。
神兄妹+佑希+アスカ+ジュンでした。
『これが日常生活』の続編みたいな話です。
兄妹の能力に疑問を持つ佑希が聞く、という具合です。そういう中でも、あちらこちらではイチャついてますけどね……
最後は、末っ子と三男の戦争です(今回、戦場の場は季節の間)。
泳地「だからなんで、あいつらがケンカすると部屋が崩壊状態になるんだ!?」
水奈「アハハハ~」
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