白い絵に何を描こう―――
「だりぃ~っ」
寒さを増していく12月のある休日。
翼乃は生徒会の仕事(サボっていた分)を自分の部屋に持ち帰ってやっていた。
「溜まり過ぎたなぁ……」
重ねられた書類の山を見て、翼乃はため息をついて机に置いてあるカレンダーに目を向けた。
「12月か……クリスマスの時期か」
「よくっちー」
と屋根裏部屋に、スケッチブックを手にしたアスカが現れた。
「どうした、アスカ?」
「あのね。どうやったら、雪の絵かけれるかな??」
真っ白い紙を見せられ、翼乃は頭をかいていた。
「黒紙の方が書きやすいだろ」
「やだ、白がいい」
「じゃあ、黒鉛筆で円を作って雪に見せればいいだろ」
「白で描きたい」
「てか、何を描きたいんだっ」
「クリスマス♪」
笑顔満点で告げてきた子猫に、翼乃は机の上にある書類に目を向ける。
「クリスマスなら、ツリーを描くだけでいいだろ」
「やだ。雪もかきたい」
「なんで雪を描きたいんだ?」
「冬だから~」
「……真面目に仕事をするか」
「無視しないで――!」
とアスカは勢いをつけて後ろから翼乃に抱きつくと、その反動でドンッと額と机をくっつけてしまった。
「抱きつく時は周りを見ろっ!」
「どうしても雪かきたいの!!」
「ちなみに、誰かにやるのか?」
「うん。でも、教えないよ」
「それは残念」
と言うが、翼乃は『心読み』の力で誰に渡すのかを先に読み取っていたのだ。
「雪を見せればいいのか」
「うん!」
「うーん……なんとかやってみるか」
「ほんと!」
「ああ。描いたら、俺の方に持って来い」
「わ~い。ありがとう、よくっち!」
「まだ礼を言うのは早いだろっ」
てか離れろ! と、翼乃は強く抱きついてくるアスカに怒鳴りつけた。
12月24日。
「いつき~」
アスカは大きな包みを持って、三男の部屋へとやってきた。
「なんだ、アスカ?」
「はい、これ。クリスマスプレゼント!」
笑顔満点で渡され、壱鬼はラッピングされたプレゼントを綺麗にあけていった。
出てきたのは、手作りの額縁にはめ込まれた、黒を背景とした雪のクリスマスツリーの絵。
「この絵は、お前が描いたのか?」
「うん!」
「綺麗に描いたな」
頭を撫でられて、アスカは嬉しそうに笑っていた。
「この額縁はどうした?」
「内緒だよ♪ あっ。よくっちから、これを渡すようにって」
アスカから手紙を貰い、壱鬼は内容を読みながら顔を引き付けていた。
「…いきな事をするな、あいつ……」
「何がー?」
「いや………なんでもない」
と言って、子猫の額にキスをおくった。
「……今年は、ホワイトクリスマスか………」
その頃翼乃は赤い三角帽子と赤のマフラーを付けて、屋根の上で舞い落ちてくる白い粉を眺めていた。
「忘れたら、倍にして貰うからな」
“
今年のプレゼントは、額縁と目の前にいる子猫
額縁の材料代、後日回収するから
メリークリスマス
妹の翼乃より
PS:利子つけろ
”
-------------------------------------------
壱鬼×アスカ+翼乃で、クリスマス小説!
クリスマス、遅れましたが(呆)
本当はクリスマスまでに出したかったのですが、いろいろとやってまして……
卒業間近なので。
案外、白で雪を描くのは難しいんですよ。はいっ
翼乃「ちなみに、利子はラッピング代とは別だから」
壱鬼「一緒にしろ!」
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます