春烙

寒いなあ…

四神伝 一章 四.朱雀<12>

2008年05月17日 00時02分20秒 | 四神伝 一章<完>
「どうした?」
 翼乃が動かないのに気づいた壱鬼が呼びかけた。
「……翼乃」
 泳地は後ろを振り向かず、翼乃に告げた。
「必ず、戻ってくる」
「うん、わかった」
 翼乃も振り向かずに言うが、微笑みを浮かばせていた。

 泳地たちが奥の部屋に行くと、翼乃は部屋の一角を見て言った。
「そこにいるのはわかってる。出てこいよ」
 一角から出来た影から、古ぼけた服を着た男が現れる。
「よくわかったな」
「あんた、妖魔だろ? そういう気配がさっきから、感じていてきついんだよね」
「ああ、そうだ。おれはミダラ。あの方の命により、この城を探すように命じられた」
「なぜ、この城を探していたんだ」
「いろいろあるが……ここには貴様ら、四神のことを知る奴等がいる。それに、いずれ来るであろう貴様らを抹殺するためにだ」
「俺達を狙う理由はなんだっ」
 翼乃は弧鉄をミダラに向けて言った。
「むろん。あの方を目覚めさせるため。十二天将・天帝の子供が邪魔になる」
「それが理由か」
 翼乃が言うと、なぜかミダラは笑っていた。
「おれ個人は、別だ」
「なに?」
「十二天将の中で『最強』といわれた天将、朱雀……お前と戦いたい」
「……」
「十二の長である貴人の上をいく者を倒し、俺が『最強』になる」
「……言いたい事は、それだけか」
 黙っていた翼乃は目を細め、ミダラを睨みつけた。
「『最強』が欲しいなら、くれてやる。だがな」
 翼乃の周りに、熱気が漂ってきていた。
「俺はまだ、死ぬわけにはいかないんだ」
「そう簡単にもらってたまるか」
「だろうな」
 翼乃は弧鉄の穴に、炎玉をはめ込んだ。
「炎玉装備!」
 熱気が炎玉に入り込み、炎玉から炎が現れ、弧鉄を包み込んでいく。
「俺は、死ぬわけにはいかない!」



コメントを投稿