春烙

寒いなあ…

咲かない花 3

2008年05月07日 00時09分08秒 | 外伝小説

 俺だけでいい……
 お前には俺だけでいいんだ。

 壊してしまえばいい。
 壊ればいいんだ。
 俺の手で……お前を………


 ずっと咲かない花。
 永遠に咲かない花。
 どこか、僕と似ている花。
 いつ、咲くのか分からない。

 僕がそっと、咲くことのない花に触ろうとしたら、兄に握られてしまった。
「どうかしたのですか?」
 立ち上がろうとすると、兄さんに引き寄せられてしまう。
「……ない…」
 顎を軽く持ち上げられ、目線を合わせられる。
 いつものと違うアメジストの瞳が、僕を睨みつけている――
「誰にも渡さない」
 誰の事を?っと言えなかった。言うことができなかった。
 兄さんにキスをされて、言わせてくれなかった。

 どうして。
 どうして、こんなことをするのですか?
 どうして……

 その後、僕の頭は白くなっていった――

 気がついたときには、自分の部屋のベッドの上にいた。
 起き上がろうとしたときに。
「…っ……」
 体中から、痛みを感じていた。

 あの時――僕は兄さんに抱かれた
 飢えた獣のように、激しく。
 優しさなんてない。

 僕は、心にうえつけられた。
 何かをうえつけられた……


 部屋に戻ると、ベッドに座った。
 両手にはまだ、弟の温かさが残っている……

 俺は欲望のままに、あいつを抱いた。
 抵抗する水奈の泣き顔が、今でも思い出す。

 どうすることもできなかった。
 自分で自分を抑えられなかった。

 まだ、足りない……
 もっと……あいつを感じたい――

 たとえ、あいつが壊れようとしても。



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