石垣 稔さんのリポートのシェアです。
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水道水は安全か
作成: 石垣 稔 日時: 2012年9月24日 21:55 •
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*水道水は安全か
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「水」は無色透明で無臭、何も混ざっていないものとして捉えられがちですが、水はモノを溶かす能力に優れているため、常に何かが溶け込んでいます。世界各地の水、同じ日本の水、水道水でも、地域によって水質は違うのです。
今年(2012年)7月20日に『生命維持に欠かせない「水」の基礎知識』でも、水についてふれましたが、今回は別な角度で、現実的な水の状況について整理したいと思います。
日本の水は世界に誇る最高水質を持つものですが、水の安心・安全は神話になりつつあるのかも知れません。
▼水の成分
水に溶け込んでいる代表的な成分にはミネラル成分(カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、[最近ではサルフェルート等も含む])が挙げられます。その他の成分には、鉄、硫酸、塩素、ケイ酸、リン酸、硝酸、アンモニア、油、農薬、その他多くの有機物が含まれます。
また、水の性質を示す指標に「硬度」があります。これは、水に含まれるカルシウム、マグネシウムの量を表したもので、この値が低ければ軟水、高ければ硬水という判定がなされます。
水の「硬度」を簡易に測定する機器としては、「TDS(Total Dissolved Solids:総溶解固形物)メーター」とい測定機器があります。一般用途で水の「硬度」を測る際、2つの成分だけを取りだして測定することは実質的に難しいため、すべての不純物も加味した上で測定することになりますが、一定の目安になると同時に、水にどれだけの不純物が含まれているかを知る上では欠かせないものです。
▼軟水と硬水の違い
▽軟水
・人間の体に最も適した水。
・赤ちゃんのミルク作りに最適。
・だしをとる際の旨味成分を引き出し、日本料理全般に最適。
・炊飯は、水分の吸収も促され、美味しく炊き上がる。
・日本茶(お茶全般)や、紅茶、コーヒーが美味しく抽出される。
・ウィスキーの香りを引き出す効果がある。
・その他に、工業用水としても最適。
▽硬水
・用途を限定することで有益な使い方ができる水。
・赤ちゃんのミルク作りに使うと腸を刺激し頻繁な下痢を起こす。
・肉の臭みを抑える働きがある。
・灰汁が取りやすく、洋風だし、肉を使った煮物や鍋物に適する。
・パスタにコシを与える。
・炊飯に利用すると御飯がパサパサになる。
・エスプレッソ・コーヒーは苦みや渋みが抑えられ、まろやかに。
・胃腸に負担をかけやすい。
・胃腸が弱い人や抵抗力の弱い人が飲むとお腹を壊す原因に。
・工業用水には向いていない。
・石けんの泡立ちが悪い、洗髪すると髪がギシギシする。
▼水の硬度の指標
水の硬度を測る指標は、戦前はドイツ硬度(dH)が広く用いられていましたが、戦後はアメリカ硬度(mg/l ≒ ppm)を用いることが多くなりました。アメリカ硬度では、「水中のカルシウム塩とマグネシウム塩の濃度(総硬度)を炭酸カルシウムに換算した値」により判定します。
#醸造業界で用いられる酒造用水には、まだドイツ硬度が用いられているそうです。
▽世界保健機関(WHO)の基準[アメリカ硬度]では以下の通りとなっています。(単位:mg/l ≒ ppm)
*軟水 :000 〜 060 未満
*中程度の軟水(中硬水):060 〜 120 未満
*硬水 :120 〜 180 未満
*非常な硬水 :180 以上
▽日本の一般的な解釈(飲料水メーカー[SUNTORY等]でも採用)では、以下の通りとなっています。(単位:mg/l ≒ ppm)
軟水 →100 以下
中硬水→101 〜 300 未満
硬水 →300 以上
▽一般的に、日本の水は上記の基準値から、WHOの基準では「中硬水」、日本の解釈では「軟水」であると言われています。
▼飲用に適した水の指標
人間の飲用に最適な水は、余計な成分を含まず、有害な微生物を含まないことが基本です。水に含まれるミネラル分については、水以外の食物により充分な摂取が可能です。そこで、水の硬度とは別に、飲用に適した安全な水の指標の観点から見ると、同じ値から別の側面が見えてきます。この場合、カルシウム、マグネシウムを含めた、全ての溶解物(TDS[Total Dissolved Solids:総溶解固形物])を含めた値を基準にします。
000 〜 049 ppm:理想的な飲料水
050 〜 150 ppm:許容可能な飲料水
151 〜 300 ppm : 飲料水としては不適切
500 ppm 以上 :米国環境保護局(EPA)の最大総溶解物質濃度
この値の中には、勿論、体に有益とされる物質も含まれていますが、値が高くなるにつれて、飲用に適さない不純物が多くなる疑義が高まる、という簡易判断が可能です。
▼TDS (Total Dissolved Solids)メーターとは
TDS(Total Dissolved Solids:総溶解固形物[濃度])メーターという機器があります。これは水の純度を測定するもので、純水に近い水は電気を通しにくく、不純物を多く含んだ水は電気を通しやすい原理を利用して、2本の電極により電気伝導度を測定し、この伝導度にある係数を掛けた値を便宜的に濃度(ppm)に換算するものです。
測定される物質は、主に水中に溶けている無機イオン(カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、鉄、マンガン、塩素、硫酸、等)です。放射性物質は金属ですので測定物質に含まれます。但し、農薬や環境ホルモンなどの電気を通さない物質は含まれません。無機イオンが多く含まれた水は、いわゆる汚れた水ですが、温泉・鉱泉・海水などは違った意味で無機イオンを多く含みます。
このように、あくまで純度を測るものであって、不純物の内容が何であるのかを示すものではありません。
もともとは熱帯魚などの飼育をする際、アクアリウムの水質管理のために用いられてきたものですが、現在では、飲料水の簡易的な指標値を得られるものとして活用される機会が増えました。
▼TDS (Total Dissolved Solids)メーターによる実測値
では、具体的にTDSメーターの実測値を見ていきたいと思います。実測値は固定的なものではなく、日々変化しています。1日1日で測定される数値は変化するのです。(測定は全て、HM DIGITAL社の AP-1:AquaPro を使用)
▽▽【水道水】▽▽
①東京都世田谷区、Aポイント:水道水
▽貯水槽タンク経由(マンション)
注:1ヶ月ほど計測
最小値:142 ppm、最大値:159 ppm
②東京都世田谷区、Bポイント:水道水
▽直結方式(浄水場より直接給水)
注:1ヶ月ほど計測
最小値:149 ppm、最大値:170 ppm
③東京都世田谷区、Cポイント:水道水
▽貯水槽タンク経由(テナントビル)
156 ppm(9/13)
④東京都世田谷区、Dポイント:水道水
▽直結方式(浄水場より直接給水)
注:洋食屋
159 ppm(9/24)
⑤東京都世田谷区、Eポイント:水道水
▽直結方式(浄水場より直接給水)
注:ラーメン店
140 ppm(9/18)
⑤東京都新宿区、Aポイント:水道水
▽貯水槽タンク経由(テナントビル)
94 ppm(9/10)
⑥東京都大田区、Aポイント:水道水
▽貯水槽タンク経由(テナントビル)
注:老舗和食料理屋
86 ppm(9/14)
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▽▽【浄水器】▽▽
①某国内有名メーカーA浄水器
▽蛇口直結:中空糸膜方式
141 ppm(原水:142 ppm)
②某国内有名メーカーB浄水器
▽蛇口直結:大型中空糸膜方式
149 ppm(原水:149 ppm)
③某海外有名メーカー据え置き型浄水器
▽逆浸透膜方式
8 ppm(原水:94 ppm)
④某国内有名メーカー据え置き型浄水器
▽逆浸透膜方式
4 ppm(原水:146 ppm)
⑤某海外有名メーカーポット型浄水器
▽カートリッジ方式
138 ppm(原水:159 ppm)
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▽▽【ミネラルウォーター】▽▽
①某国内有名メーカー天然水
注:ペットボトル(メーカー公表硬度:30 ppm)
52 ppm(公表値との差違:22 ppm)
②某国内ローカルメーカー湧水
注:ペットボトル(メーカー公表硬度:27 ppm)
41 ppm(公表値との差違:14 ppm)
③海外有名メーカーContrex
注:ペットボトル(メーカー公表硬度:1,468 ppm)
1,108 ppm(公表値との差違:360 ppm)
注:1日持ち歩き後
……キリがないので、このあたりで。。
▼TDS メーター実測値をどう読むか
意外だったのは、比較的良質だと考えていた世田谷の水に、かなりの不純物が含まれているということです。コンスタントに140台から150台が出ています。この値は、硬度の指標から言うと「硬水」にあたり、飲用基準から見ると、飲用に不適切なレベルに入っています。
「平成18(2006)年度 水道統計 給水栓水の水質 (上水道事業)」の数値では、東京都の水の平均硬度は、62 mg/l ≒ ppm となっています。仮に、この硬度が変わらないとして考えると、カルシウム、マグネシウム以外の不純物が、倍以上含まれていることになります。飲用には不適切であるとの判断ができるほどの値です。
また、浄水器の効果で見てみると、これまでの浄水器ではほとんど効果がないことも明らかです。もはや浄水器は、逆浸透膜方式のものを選択せざるを得ない状況です。
ある国内有名メーカーの営業担当者と話す機会があり、関東近郊の水道水の状況を聴いたところ、都心部では、やはり世田谷区の TDS の値がかなり高い結果となっているそうです。周辺部では、千葉方面の TDS の値も高いとのこと。
これが何を示しているのかは、恐らく真実の情報が得られない(得られにくい)と考えますが、適切に情報を知り、判断していくことは大切なことだと思います。
人間は、食べ物、空気、水、の3つが最も大切なのです。