トゥーフェイス、本名ハービー・デント、ゴッサムの地方検事にしてその容貌の美しさから「アポロ」とあだ名された人物だったがマフィアのマローニに公判中硫酸を浴びせられ顔の半分が醜く変化した結果、精神に異常をきたし犯罪者トゥーフェイスとなった。
顔の傷に合わせた左右色の違うスーツを着用し、重要な局面ではコイントスで決断する。傷ついた面が出れば悪事を働き、きれいな面が出れば中止する。「2」という数字にこだわる。
この人物は、過去バットマンの映画に三度登場している。ティム・バートンの「バットマン」、ジョエル・シュマッチャーの「バットマン・フォーエヴァー」、そしてクリストファー・ノーランの「ダークナイト」。
この3作品でのトゥーフェイス=デントの扱われ方は見事に違っている。
「バットマン」でデントを演じるのはランド・カルリシアンことビリー・ディー・ウイリアムズ。ゴッサムのギャングを取り締まるべく颯爽と登場する。後半はほとんど登場しないが、正義感あふれる人物として描かれる。特筆すべきは、コミックスでは白人だった彼を黒人が演じていること。後々重要なキャラになることを考えると、異例なことといえる。
この作品ではトゥーフェイスは登場せず、最後まで地方検事として出てくる。役者の格としてはニコルソンにかなわないものの、次回作でトゥーフェイスとして登場するのではないかと思わせている(結果としてウィリアムズの再登板は無かった)。
「バットマン・フォーエヴァー」では一転、トゥーフェイスとしてのみ登場する。一応地方検事ハービー・デントが法廷でマフィアに酸を浴びせられ顔半分変形してよぅーフェイスになったという事実は劇中で描かれるがほんの一瞬である。
演じるはトミー・リー・ジョーンズ。「漫画レベルにまで分かりやすくしたジキルとハイドだ」とパンフレットの中で述べているが、ただうるさいだけで、過去に判事だったということはまったく生かされていない。この映画、ジム・キャリー演じるリドラーについては素晴しいが、トゥーフェイスについてはまったくダメな作品だった。
特に、バットマン=ブルース・ウェインに気付き、ウェイン邸を襲撃するシーンで傷のついた面が出るまで何度もコイントスをするシーンは噴飯物だった。トゥーフェイスにとってコインの決定は絶対。自分の気に入らない面が出たからといって、何度も繰り返すなどありえない。
このダメダメな「フォーエヴァー」の描写と違って溜飲を下げるのがブルース・ティムのアニメ版に登場するトゥーフェイスである。
最初の何回かは、地方検事でブルースの親友、ハービー・デントとして登場する。そして満を持してトゥーフェイス誕生のエピソードが描かれる。
トゥーフェイスになる前から凶暴なもうひとつの人格「ビッグ・バッド・ハーブ」に悩まされ、カウンセリングを受けている。そのことをギャングに脅され、「ビッグ・バッド・ハーブ」が出てきているときに工場の爆発に巻き込まれ、顔半分を負傷、トゥーフェイスになる。
しかし、その後も婚約者や、正義の心と悪の心の間でゆれているのだ。ちゃんとコインの決定に従う様子を見せてくれる。
今回の「ダークナイト」ではほとんどをハービー・デントとして登場する。
バットマン、ゴードンと共に正義を体現する人間として登場する、ゴッサムの「光の騎士(ホワイト・ナイト)」。
ただし、それぞれの立ち場は違う。
裁きはしないが(バットマンは決して悪党を殺さない)、法を犯して犯罪者を捕まえるバットマン、汚職まみれの警察の中で、それでも警察を信じて一人孤軍奮闘するゴードン。デントは法律を駆使し、権力の許す範囲で戦う。
彼は普段からコイントスで物事を決めているように見えるが実はそこで使用するコインは両面表のものである。つまり、運任せのようで実は自分で決めている決断力のある人物なのだ。
デントはゴードンに再三忠告する。
「部下にマフィアのスパイがいる」
しかし、人手の足りないゴードンは、その忠告を聞かない。結果として、デントは恋人(でブルースの幼馴染)のレイチェルとマフィアに拉致されてしまう。
結果、デントは恋人を失い、自らも顔に火傷を負う。そこにジョーカーがやってきて、デントを誘惑する。デントはジョーカーの生死を自分でなくコインで決める。かつては両面表立ったコインは、爆発で片側が黒く焼け焦げている。きれいな面が出れば殺さない。焦げた面が出れば殺す。この時点でデントは自分で決断することを止め、トゥーフェイスとなってしまう(このときの結果は殺さない)。
ジョーカーの思惑にはまってしまったトゥーフェイスは復讐を始める。ゴードンの部下でマフィアのスパイだった刑事、マフィアのマローニ(とその運転手)、そしてゴードンに復讐の手を伸ばす。
トゥーフェイスは、人は簡単に悪に落ちるということを証明してしまった。彼の存在は映画と現実に住む我々に暗い影を落としている。
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