話の種

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トヨタの最高益決算について思うこと

2024-05-11 10:38:00 | 話の種

「トヨタの最高益決算について思うこと」

今月8日にトヨタ自動車の2024年3月期の決算発表があった。
それによると営業利益が前期比96%増の5兆3529億円で過去最高を更新し、日本企業で初めて5兆円台の大台に乗せたとのこと。(ちなみに純利益は4兆9449億円(前年比101.7%増))

この空前の好決算の要因は、大幅な円安、HV販売が好調だったこと、そして値上げによるものとのことだが、この決算数字を見て、どうにも釈然としないものを感じた。
このような膨大な利益を上げることが出来るのならば、その前にもっとすべきことがあったのではないかと。つまり下請けである中小企業への利益還元である。

このように思ったのは私だけではないようで、確か日本商工会議所の小林会頭だったと思うが、同じようなことを述べており、トヨタが来期決算予想の減益要因の一つとして仕入れ先や販売店の労務費の負担を掲げたことについても、何を今更と暗にトヨタを批判していた。

トヨタは今年の春闘でも組合の要求に対して4年連続で満額回答しているが、下請け業者への対応はどうだったのだろうか。

ここで思い起こされるのは、今年3月7日になされた日産自動車に対する公正取引委員会の勧告である。
日産自動車が下請け業者への納入代金を一方的に引き下げたとするもので、この時違法と認定された減額は過去最高となる30億円超だったとのこと。
このような大企業による「下請けいじめ」は以前から問題視されていたが、特に自動車業界では「悪しき慣行」として長年に渡り定着してしまっている。

(参考)昨日(5/10)のTV東京のWBSの報道によると、この公取委の勧告にもかかわらず今でも日産の下請けいじめはまだ続いているとのこと。(2社からの告発を紹介していた)

2022年12月末、公正取引委員会は下請け業者と協議せずに取引価格を据え置くなどしたとして13の企業・団体名を公表したが、この中にはトヨタ系列のデンソーと豊田自動織機の2社が含まれていた。

(参考)社名を公表された企業・団体:
佐川急便、三協立山、全国農業協同組合連合会、大和物流、デンソー、東急コミュニティー、豊田自動織機、トランコム、ドン・キホーテ、日本アクセス、丸和運輸機関、三菱食品、三菱電機ロジスティクス

話をトヨタに戻すと、ネット上に次のような記事があった。
これ迄述べてきたことと重複する部分もあるが、いろいろと参考になるので記事の全文を記しておく。(ZERO Management)

「トヨタ 部品価格の上昇を認める 4兆円の最高益を支える産業ピラミッドを維持できるか」
(2024.02.21)

 トヨタ自動車は2024年4月から部品価格に労務費上昇分の上乗せを認める方針を明らかにしました。2年前の2022年4月、部品メーカーに対し素材やエネルギー費の高騰に伴うコスト上昇分の加算を認めており、原価低減一本槍だった部品調達政策の軌道修正を加速します。しかし、下請けメーカーの間では価格転嫁できないとの不満が多く、実効性に疑問符も。トヨタが稼ぐ4兆円超の利益は系列部品メーカーで形成される産業ピラミッドが源泉。本当にコスト上昇分を部品に転嫁できるか。今、「最強トヨタを維持できるか」も試されているのです。

[最強トヨタの源泉は部品メーカーの力]
 トヨタは年2回、半期ごとに取引する部品メーカーと調達価格を交渉しています。もっとも、交渉といってもトヨタから部品の値下げが指示され、値上げ要請はほとんど通りません。値下げの理由は部品を生産する金型や機械などの減価償却、生産効率のアップなど。「部品の原価は低減している」を盾に毎回、数%の値下げを実施するのが通例でした。

 自動車メーカーは、1台あたり3万〜5万点の部品を組み合わせて仕上げます。部品の単価がわずか下がるだけでも、全部品に値下げが反映されれば1台あたりの利益は大きく増えます。カンバン方式に代表される工場の生産性の高さとともに、系列部品メーカーを軸にした原価低減が日本最大の利益を計上するトヨタの強さを支えています。 

[部品の価格転嫁は絵に描いた餅?]
 4月から認める労務費上昇分の反映は、政府が求める賃上げ政策に呼応する形となります。今春闘でトヨタ労組が大幅な賃上げを求めているわけですから、取引する部品メーカーも自社の従業員に対し賃上げを実施しなければいけません。本来なら、トヨタから労務費上昇分を認めるというお墨付きをもらう筋の事案ではありませんが、過去の交渉を振り返れば、トヨタ系列大手のデンソーやアイシンならともかく、2次や3次の下請けメーカーが値上げを要求できることは稀。値上げを求めても、目の前の大量受注を逃してしまったら中堅・中小の部品メーカーは空を見上げるしかありません。

 部品メーカーは価格上昇分がすんなり転嫁できるのでしょうか。1年前、こんな”事件”がありました。2022年12月末、公正取引委員会は下請け企業とコスト上昇について交渉しなかった13の企業・団体を公表しました。独占禁止法の「優越的地位の乱用」に該当する恐れがあり、違反を認定しているわけではないものの、下請け企業が求めなくても取引上優位な発注企業が主導して中小企業の経営を改善させるのが狙いと説明しています。

[公取委はデンソー、豊田織機に是正を求める]
 その13社・団体にトヨタグループからデンソーと豊田自動織機の2社が含まれていました。トヨタは2022年4月から鋼材やエネルギーコストの上昇分を反映することを認めていましたが、2次下請けなどとの価格交渉の進捗度合いはどうだったのでしょうか?公取委は「優越的地位の乱用」を認め、デンソーと豊田自動織機に是正を求めていますから、下請けとの価格交渉は難航し、公取委に駆け込んだメーカーもあったのでしょう。

 デンソー、豊田自動織機はトヨタ系列の代表選手です。この2社が下請けとの価格転嫁を受け入れていないということは、他の系列大手も同様の対応だったのかもしれません。トヨタが部品の調達方針を変更し、値上げを認めるといっても、本気で価格転嫁を認める考えだったのか?首をかしげざるを得ません。

[価格転嫁の本気度が問われる]
 トヨタは2023年3月期で3兆円近い営業利益を計上し、デンソー、豊田自動織機も好収益を上げています。同じ期間、トヨタ、デンソー、豊田自動織機は下請けからの値上げを飲む余力は十分にあったにもかかわらず、拒んでいたとしたらトヨタグループの高収益をどう理解してよい良いか。「建前と本音が違うのはビジネスの常套句」。納得するわけにはいきません。

 トヨタはそれから1年後、2024年3月期の連結純利益が前期比84%増の4兆5000億円になりそうだと発表しました。最高益の更新は2年ぶり。好業績の背景には車の機能向上に伴う値上げ、ハイブリッド車などの採算上昇、生産台数の増加、円安が貢献しています。このうちハイブリッド車の採算向上は長年生産しているメリットである原価低減が含まれています。まさに部品メーカーのおかげです。トヨタが本気で自らを支える産業プラミッドを死守しようとするなら、今度こそ身を切る覚悟が必要です。

[トヨタグループへの警鐘は鳴り続けている]
 警鐘はもう何度も鳴っています。日野自動車、ダイハツ工業、豊田自動織機の相次ぐ不正認証、デンソーが開発・生産した燃料ポンプのかつてない規模のリコール。最高益の舞台裏で、トヨタグループが軋み、傷み始めています。帝国データバンクによると、トヨタと取引する企業は4万社近いそうです。産業ピラミッドが1度崩れたら、2度と元には戻りません。エンジンから電動化への転換期にある自動車産業です。部品メーカーが消えたら・・・。トヨタに4兆円の利益に浮かれている余裕はまったくありません。

(記事URL)https://from-to-zero.com/zero-management/toyota4trillionpyramid/

 

以上だが、更に付け加えるなら、トヨタの内部留保は2014年3月期は14兆円だったのが2023年3月期には28兆円と、この10年間で倍に膨れ上がっている。
この内部留保については「年功序列と成果主義」のところでも触れたが、企業が如何にお金を貯めこんでいるかの象徴であり、大企業ほどこの貯めこみの傾向が強い。
賃上げがなかなか進まないのもこのためであり、今年になってようやく大企業では労組の要求に対して満額回答をするところも見られるようになったが、言い換えればそれだけ余裕があったということになる。
しかしこれはあくまでも大企業での話で中小企業にはその余裕はなく、その理由は上記で述べられた日本の産業構造、下請けいじめに由来するといえる。

 

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