事務屋のひとり言

東京都の事務員のひとり言です。

そりゃないよ首都大学(未来塾)

2005-08-23 | 都立大改革の日々
9月認可に向けて、それまで管理本部が抱えていた様々な資料や懸案事項が降りてきました。
しかしそれが更なる混乱を呼ぶことになります。
検討されるはずの問題を管理本部が教員側に流さなかったために、宙に浮いたままの問題が多数あったのです。

中でも特に錯綜したのが「未来塾」「単位バンク」「Tokyo U-CLUB」の3大特色です。「Tokyo U-CLUB」は認可と直接関係ありませんが、産学連携の要として位置づけられていましたので、無視できる問題ではありませんでした。

まず「未来塾」の問題です。
「未来塾」とは「新大学と高等学校との連携により、日本の将来を担い得る改革型リーダーとしての資質を持つ人材を育成」するという目的で設置されました。
相変わらず読んでも意味がわかりません。
この「未来塾」を推進したのは、教育庁でした。

東京都立大学の頃は、1つの局として独立してましたから、大学だけでも教育庁と同等の位にあったわけです。
実際の事務体系では、「都立大学」は「総務局」所属の扱いになってました。
事務組織の序列としては、「総務局」が一番高い位になっています。次が予算を扱う「財務局」ですね。
とはいえ実際の事務職にはあまり序列は関係ありません。わかるのは「財務局の職員は無意味に偉そうだ」くらいです。
しかしこの現場で関係ない事務組織の序列が、「未来塾」の混乱を生んだようでした。

9月認可に向けた作業が7月末に本格化する中、この「未来塾」の文書が各学部に衝撃を与えました。それは「未来塾」の「卒業生」は、首都大学に審査無しに入れるというものです。
噂や世間話としては、ちらちら話はあったのですが、実際に話が降りてきて問題が顕在化しました。

各学部の先生は、無審査入学に難色を示しました。特に難色を示したのは、人文学部だったようです。大学の格を維持するために四苦八苦している中で、審査もなく学生を入学させるのは、自殺行為であると言って大反対しました。
「公にしただけの裏入学じゃないか」とか酷い言われようだったようです。

この話が管理本部を通じて出されると、今度は教育庁が抗議しました。
「未来塾は首都大学に入れることを前提にして、学生を募集している。既にこの件は決着済みである」。
「未来塾」の講習は、毎週火曜日や土曜日、そして夏季休業中にびっしりと講習が入っています。それも50講座とか40講座こなさなければなりません。
つまり学生は大切な受験期間に、独自の勉強をする代わりに未来塾に出る形になってしまうのです。
首都大学に入れるというニンジンをぶらさげて、学生を早くに確保するという究極の青田買いです。
これで首都大学に入れないということになったら、そういう募集を都立高校を中心にかけた教育庁の責任は免れません。
けれども、教育庁が抗議をしても教員側には初めて聞く話ばかりです。

事態が混乱する中、大学管理本部の出した言葉は、「こちらは知らない」。
当然、教育庁は激怒しました。
既にワーキンググループや教育庁の短期推進計画に入っている事案を、知らないですむのか?
できないなら、募集の段階で待ったをかけるべきだったのではないか?
教育庁の怒涛の抗議です。

しかしご存知の通り、あの大学管理本部です。
柳に風と言うか、まったく堪えません。
序列で教育庁より高いと言う認識も手伝って、物凄く消極的でした。

困ったのは大学管理本部の末端の事務員です。
事は学生の人生設計に関わる問題で、ないがしろにできません。
既に法科大学院や、COE絡みでミソがついた新大学です。このまま大騒ぎになるのは非常にまずいことです。
結局あっちこっちにたきつけて、各学部の説得に回りました。
しかし人文学部は、断固とした姿勢を貫いています。
9月認可を是が非でも通したい大学管理本部は、未来塾の件でゴリ押しはしませんでした。

不思議なものですが、散々抗議や反対をしてきた結果、大学管理本部は表面上はともかく人文学部の姿勢を無視することができなくなっていました。
逆に混乱しそうな事案は、まず南雲先生に持ち込み、先生方の感触を探ってから出すほどになっていたのです。
南雲先生がとりあえず納得した事案を、他の学部の先生が反対することはありません。
いつの間にか大学改革のキャスティングボードを握るようになっていたわけです。

実は大学管理本部が、そういう学内の調整も含めた教員側窓口に選んでいたのは、法学部の前田先生でした。
前田先生は、早々に新都市教養学部長に内定し、全学を統括できる立場にあります。
しかし大学管理本部の意に反して、あまり前田先生は動いてくれません。
もともと教学準備会議の頃から、管理本部寄りの発言をして南雲先生と衝突してきた前田先生は、他の学部長からも余り信用されなくなっていたようです。

そんな事情はどうでもいい教育庁は、埒の明かない大学管理本部に代わって、直接学部長室に乗り込み、説得を行いました。
新宿から南大沢にめったに来ないで、メールで済まそうとする管理本部に比べて、実にフットワークが軽いです。

結果、人文学部以外は審査無しに応じたようです。審査するとした人文学部からは、希望していた30人近い人のほとんどが他の学部に流れました。
人数的には、希望者の全員が首都大学に入学し、教育庁の面目は保たれたことになります。

ところで未来塾受講生のレベルですが、どうもピンキリだったようです。
普通に試験を受ければ、相応の大学に楽に入れる人がいるかと思えば、中学英語もままならないレベルの人がいるなど、様々でした。

一応形になった未来塾ですが、まだまだ多くの問題を抱えています。
しかも教育庁との連携は今も良くありません。
事態の中心だったはずの大学管理本部も今はなく、今後も連携不足で問題が起きる可能性があります。学生の未来のためにも、これからの努力が必要です。

この事態を見る限り、大学管理本部は東京都の事務組織の中でも、相当異質な存在だったということになるでしょう。
しかし国の公的機関と比べても異質だと判明した事案があります。
「単位バンク」。
今も開店休業状態のこの問題は、最初から破綻していました。

6 コメント

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序列よりも「発端」 (あぁ~あ)
2005-08-24 21:57:52
石原君が改革を言い出した当初、都立大学事務局が健在だった頃には、大学改革担当が教育庁に置かれましたよね。



未来塾を考えるときには、付属高校との高大連携の話や、その後の中等教育学校化も見据える必要があるかと思います。

未来塾についてさらにいうと、都立高校に強制して、「都立大」に入れるという餌をばら撒いて無理やり優秀な学生を人身御供として出させたという話が出ています。担当者の面子がかかっていたので教育庁も必死だったのでしょう。



「東京都の事務員」氏の文章にもあるように「人文学部」へ進学を「希望していた30人近い人」は「都立大学」への入学を希望して一年間もの間、未来塾塾生として時間を費やし、挙句の果てに「首都大学東京」の珍妙学部へ入らざるを得ないというという・・・人生の先行きが暗そうで哀れでなりません。



大学改革についての所管、特に高校との連携部分を自分の領域にしようとした教育庁と、何も知らないよ!という管理本部の狭間に紛れ込んでしまった生徒が可哀想でなりません。



※未来塾の学生は「都立大学」に「無試験」で入れると言われて応募しているはずです。いつの間にか「首都大学東京」なる珍奇なものになってしまったので、話が違うと抗議もされたようです。
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Unknown (名無し)
2005-08-25 12:22:14
うっ、不安を煽らないでいただきたい・・・
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Unknown (Unknown)
2006-01-25 22:13:54
今回受験に望むのですが、小論文の内容がどのようなものだったかを教えていただけませんか?
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質問 (こだま)
2007-10-24 21:45:02
未来塾に行ってても他の大学の試験を受けられるの??
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不合格 (Unknown)
2008-12-14 13:08:13
今年2008年度の首都大東京への未来塾生が推薦入試で5名落ちました。
 目の前が真っ暗になった彼らは、今、大学受験にあらためて取り組む羽目に!
 未来塾は、高校生を平日も土曜日も夏休みも、けっこう縛るだけ縛って、研修を受けさせ(もう高校の授業にも影響がでるくらいのレポートづけ、実地研修・・・)、首都大への優先入学させることを売りにしていたはず。それが何とダメだった!
 発足当時からのゆがみがここではっきりとでてきたのですな。
 気の毒なのは受験生諸君!ただより高いものはないことを18歳で知らされた!大人はだれも責任を取らない!

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Unknown (url)
2011-01-07 16:07:06
なるほど
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