時間と金銭的な都合で、せいぜい年1回くらいしか行けない遠征登山(信州近郊の方がうらやましい)。今年は北アルプスのバリエーションルート、北鎌尾根に行った。
北鎌尾根は前々から行きたいとは思ってはいたものの単独で行くことに踏ん切りがつかずにいたんだけど、沢部メンバーのKさんが一緒に行くというので決定した。
8月30日(金)
仕事を午前中で切り上げて、19時10分発の宮崎港発神戸港行きのカーフェリーに乗船した。
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カーフェリーでの移動は食堂があったり風呂があったりして、宿がそのものが移動している感じで好きなんだけど、今回は大学生(専門学校生?)20~30人グループのバカどもがロビーで一晩中騒いでいて熟睡できなかった。
8月31日(土)
7時20分、神戸港に入港。
さあ、ここから上高地までは、分単位で電車、新幹線、バスを乗り継で行かないといけない。何時に上高地に到着できるか次第で今夜のテン場が決まる。テン場次第で明日以降の計画が変わってしまうのだ。
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幸い計画通りに14時に上高地バスターミナルに到着できた。まずは今回の遠征の第一関門をクリア。
ということで、計画どおり横尾を目指して歩き始めた。
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徳澤辺りまで来るとさすがに観光客はいなくなり静かになった。
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16時過ぎに横尾に到着。
天気も最高だし、ここまですべて順調
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やっぱり北アルプスは、山も、景色も、空気も、九州の山とは全然違う!いいね~
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9月1日(日)
この日の予定は、水俣乗越を越えて北鎌尾根の稜線まで。稜線上の適当な場所にテントを張るつもり。
5時15分に横尾を出発。上高地周辺は前々日まで大雨だったようで、枝沢の水量が若干多めのよう。北鎌沢は大丈夫かな
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大曲から見上げる水俣乗越。かなりの急登だなと思って見上げてたけど、実際にはそれほどでもなく1時間余りで登り終えた。何せここまではまだ体力をぜんぜん使ってないからね。
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ここまで歩いて来た梓川方面
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さて、いよいよここから先はバリエーションルートだ。気を引き締めて無事に槍ケ岳までたどり着こう!
事前に情報収集してきた頭の中の地形のイメージと実際の景色が一致すると、おおよその歩くコースが見えてくる。
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水俣乗越からの下り始めは情報どおり相当荒れていた。人の頭ほどの石がゴロゴロと崩れ落ちる。前後に人がいないので良かったけど人がいるときはヤバイな。ザレ場が終わるとゴーロ歩き。
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進行方向の左手には、明日歩く北鎌尾根の稜線と槍ヶ岳が見える。結果的に今回の遠征で槍ヶ岳の姿を見たのはこれが最後になった。
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10時前に北鎌沢との出合に到着したところで大休止。ここまで順調だ!
この調子で行くと今日のうちに北鎌平近くまで行けるんじゃないか?と思えるほど、このときは体力も気持ちも余裕があった。
30分ほどの休憩を終えて、北鎌沢を登り始めた。水線を外さないように忠実に谷を詰めて行く。なかなかの急登だ。
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目指すコルは見えているし、水線を外さないように登ることで、分岐で迷うようなことはなかったけど、その分だけ少々テクニカルな大岩も乗り越して行かないといけない。
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高度を稼ぐにつれ勾配は徐々にきつくなり、1時間くらいを過ぎてくるとだんだんとバテてきた。ザックの重さが堪えてペースが落ちる。
谷の水が枯れかけたところで、プラティパスとハイドレーションに5Lの水を汲んだ。すると、更に足が上がらなくなる。
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最後の詰めのところで、草付きの泥壁に入り込んでしまった。傾斜がきつい上に足下はもろい。草を掴んで登るのは頼りないけどほかに掴む物がないから仕方ない。四つん這いで慎重に這い上がった。
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2時間半の登りを終えてコルに着いたと同時にへたり込んだ。しばらく立ち上がれないほど体力を消耗しきった。
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もう今日はここでテントを張ってしまいたい気持ちだったけどまだ13時。進めるだけ進もうということで歩き始めた。しかし、ちょっと歩いては立ち止まり、ちょっと歩いては立ち止まりの繰り返しでぜんぜん足が進まない。こんなに疲れきったた経験は記憶にないほど。
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結局、コルからそれほど進んでいない標高2600m付近にテントを張って今日はここまで。
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9月2日(月)
昨日の夕方ごろから弱い雨が降ったり止んだりを繰り返していた。
朝、テントの外に出ると雨は降っていないもののガスっている。この後、天気は回復するのか?下り坂なのか?
例え天気が下り坂だとしても、北鎌沢を昨日の登ってきた感じからして、あれを下るという選択肢はなかった。
5時半出発
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やがて深いガスに包まれて展望は全く無し。お陰で高度感の怖さを感じることなく進める。
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独標への登りではあまり良くない岩に取付いてしまった。イメージ的には西側から独標に直登するような感じ。ここは慎重を期してロープを出した。
ちょっと道を間違うと(バリエーションルートだから別に決められた道があるわけじゃないけど)危険が待ち受けている。バリエーションルートってこういうことなのかと思い知った。
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その後もランドマークとなる槍ヶ岳が見えないので、ちょくちょくGPSで進行方向を確認しながら、稜線通しで進んだ。
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そのうちに雨、風が強くなってきた。立ち止まると急激に体が冷えるから休憩もできない。岩も滑るしヤバイ感じ。
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それでも独標の取付き以外はルートミスすることなく槍の袂までやって来た。あとはチムニーを登れば穂先だ。
事前に情報収集した感じではチムニーはそんなに難しくないような感じだったけど、岩が濡れていたせいなのかそこそこ苦労した。しかも、体は寒さでガタガタ震えているし。
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12時20分、槍ヶ岳登頂!!
当然ながらそこには我々以外誰もいなかった。とにかく寒くて、喜びとか感動とか味わう余裕もなく証拠写真だけ撮ると、滞在30秒で駆け下るように槍ヶ岳山荘を目指した。
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12時45分、濡れ鼠のようにヨタヨタになりながら山荘に到着。計画では南岳山荘まで行ってテントを張るつもりだっけど、ここまでの悲惨な状況で、Kさんとは暗黙のうちに槍ケ岳山荘に宿泊することで合意できていた。
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服を着替えて、体が暖まったところで、ようやくKさんと北鎌尾根を達成できたことを喜び合った。景色は何も見えなくて残念だったけど、これはこれでいい思い出かと。
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9月3日(火)
この日も朝から雨。計画は大キレットを越えて穂高岳山荘まで。この状況じゃ厳しい気もするけどとりあえず南岳山荘まで行ってから判断することにして出発した。
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稜線上は西からの強風が切れ間なしに吹き続ける。時折の突風では体が持って行かれそうになるほど。
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8時15分、南岳山荘に到着。
昨日槍ケ岳山荘に到着したときと同じような状態だ。山荘の中に入れてもらい休憩。窓の外はガスが真横に猛スピードで流れて行く。この状況では大キレットに進むのは無理と判断して、南岳を登り返して天狗原から槍沢に下ることにした。
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南岳山荘から外に出るのは勇気がいった。小屋で居合わせたこの辺りに慣れている風の登山者が「天狗原を下り始めれば風は止むよ」と言ったのを信じて、南岳を登り返し、天狗原を目指した。
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あの登山者が言ったとおり槍沢側の斜面に入ると風はピタリと止んだ。そして標高を下げて行くと、ガスの下に出たようで展望も拓けてきた。
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上の方はガスが掛かってるから槍ヶ岳は見えない。まあ、ここで見えたら逆に腹が立つけどね。
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槍沢まで下って来ると、さっきまでの冬のような状況や寒さが嘘じゃないかと思えるくらいに夏らしい暑さになった。上と下ではこうも違うもんなんだね
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14時に横尾に到着。風呂に入れる所まで行きたい気もしたけど、この日の夜はまた横尾に泊まることにした。なぜなら、天気予報が夕方から雨となっていたので、橋の下にテントを張れば少しはしのげるかと思って。
案の定、夕食頃からポツポツと降り始めて、朝まで激しい雨になった。
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9月4日(水)
いよいよ最終日だ。と言ってもこの日は上高地に戻るだけ。
テントの撤収から歩き始めの頃までは雨が降っていたもの次第に天気は回復しバスターミナルに着く頃には陽が差していた。
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こうして山中4泊の遠征登山が終わった。
景色が何も見えなかったことや計画どおりに西穂まで抜けられなかったことは残念だけど、とりあえず北鎌尾根を歩けて、無事に帰って来られたのだから良しとしよう。
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夜は、松本市内の居酒屋で、久々の生ものを前にして祝杯を挙げた。(登山中の食事は乾物のみだったので)
4泊5日の遠征登山はそれなりに満足いく山旅となった。できれば北鎌からの槍を見たかった・・・
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