「花鳥風月」としてのプリキュア
S☆Sのプリキュアは「花鳥風月」(すなわち「美しい自然」)をモチーフとしている。S☆Sの主人公である咲と舞。そしてふたりを導いた妖精フラッピ、チョッピ。その名前は「花」と「鳥」に由来する。(咲=花、花=フラワー→フラッピ、舞=鳥、鳥=チョウ→チョッピ)
当初はダークフォールの戦士としてプリキュアの前に立ちはだかり、後に仲間となった満と薫。この二人の名前は「月」と「風」に基づく。
ゴーヤーンの力によって荒野となった緑の郷。世界は滅び、全ての希望が失われたかのように思えた。しかし、妖精フラッピはこういう。「咲、まだ土があるラピ」
4人は微かに残っていた自然の精霊達の力を受け、最後の変身を遂げる。彼女たちは、滅びの力に抗う生命の力そのものである。
希望の力
ゴーヤーンの前に一旦は倒れた4人。しかし、
「優勝・・ソフトボールの試合、今年は準優勝だったから、来年は絶対に勝つって、泉田先輩と約束したの・・!」 (咲)
「私は、パンを作ってみたい。咲にもらったパンが、とても美味しかったから」 (満)
「私は絵を、舞やみのりちゃんみたいに、見る人を笑顔にさせるような絵を描きたいわ」 (薫)
「私は、これからも咲や皆の笑顔をたくさん描き続けるわ!スケッチブック一杯に、未来を描きたい!」 (舞)
そういって、再び立ち上がる。
咲と舞はゴーヤーンに向かって「どんなに強い滅びの力でも、絶対に消せないものがある!」「私達の心から、希望を消すことはできないわ!」と叫ぶ。
「希望」というのは、今ここには存在しない、将来存在すべきものを目指す。滅びの力は、あくまでもその対象の存在が前提となる。どんなに強力な力も、存在しないものを消すことはできない。そして未来を目指す「希望」の力は、実際に無から有を生み出す。
咲、舞、薫、満の四人の希望の絆が生み出した、最後の技「プリキュア・スパイラルハート・スプラッシュスター」の莫大な力に、ゴーヤーンは、かつてのビッグバンの姿を見る。ビッグバンとは、無から存在へ、滅びから命へ向かう力。希望には大小様々あるだろうが、それらは間違いなく我々の心の中にそれぞれのビッグバンを生み出し続ける力なのだ。
星空の仲間=splash star
ゴーヤーンを倒し、緑の郷の精霊によって蘇った四人にフィーリア王女が語りかける。
「昔、世界は命の存在しない暗黒でした。しかし、命が生まれ、星となって、暗い宇宙の中でお互いを照らし出した。 そんな星たちのように、あなた方も互いを大切に思う心で、照らしあって輝いているのです。」
「星空の仲間・・・」そう呟いた満に、「そうだよ!」と笑顔で応える咲。「私達は、星空の仲間!」そういって、舞は微笑む。
「星」は、ストーリーには直接関わらない形でも何度も登場している。美翔家の天文台、和也が咲の誕生日に贈った隕石の欠片、「スパイラル・スター・スプラッシュ」という必殺技のタイトル、OPの映像にも星空をバックに2人の姿が描かれている。ゴーヤーンを破った「プリキュア・スパイラルハート・スプラッシュスター」はその名前に作品タイトルがそのまま含まれている技である。ちなみに、作中で用いられたのはこれが最初で最後だ。そして、最後に満が呟いたこの「星空の仲間」。この言葉は、最終話のサブタイトルにも使われている。
私は先に挙げたフィーリア王女の言葉に、『ソフィーの世界』(※)の最終章の一節をふと思い出した。
「宇宙のすべての星も星雲も同じ物質からできている。星雲同士は数十億光年隔たっているけれど、起源はたった一つだ。すべての星は家族なんだ。・・・わたしたちもこの物質でできているんだからね。わたしたちは、何十億年も前にともされた巨大な火から飛び散った火花なんだ」
splashは、「飛沫」「飛び散る、はねる」という意味の英語である。starという言葉との組み合わせは一見意外に見える。しかし、ビッグバンの力、すなわち生命を目指す希望の力。そして、それによって飛び散って生まれた星たち。すなわち「星空の仲間」。それはまさに「splash star」という言葉で表現するにふさわしい。
※ヨースタイン・ゴルデル著、須田朗監修、池田香代子訳「ソフィーの世界 哲学者からの不思議な手紙」