NiU「鳴滝塾」

産官学民が連携して地域課題の解決策を探ろうと
新見公立大学に設置されています

第49回鳴滝塾

2020-01-26 | ☆定期講座

 
 1月26日(日)午後2時から新見公立大学学術交流センターで第49回鳴滝塾「森のルネッサンスⅡ 次世代につなぐまちづくり~第一次産業を元気にする~」が開かれた。講師は鳥取県日南町の中村英明町長。約70人が熱心に耳を傾けた。
 日南町は人口4,498人(2019年12月31日現在)。総面積340.96㎢で、89.3%を森林が占めている。高齢化率は50%を超え、過疎・少子高齢化が進む「日本の30年後の姿」として、学術機関のモデル地域になっている。そこで、同町は「農業・林業を中心とした第一次産業を主役とし、緩やかな人口減少を実現させるために、町民総活躍のまちづくり『創造的過疎』への挑戦――まちづくりをジブンゴトに」を掲げて施策を展開している。
 中村町長は日南町の課題として、①少子高齢化と人口減少に伴う地域コミュニティ機能の低下 ②農林業をはじめとする地域経済と生活基盤の弱体化 ③観光経済拠点の不足による集客力や情報発信力の不足――などを挙げた。

 

 
 課題解決に向けて、行政・教育・文化医療・福祉・商業などを中心地(約1㎞圏内)に効率的に機能集中させる「コンパクトヴィレッジ」構想を推進しており、平成28年にオープンした道の駅「にちなん日野川の郷」は産業・商業や地域づくりの媒体として「CO2排出ゼロ」を目標にカーボン・オフセット(排出されたCO2を森林での吸収で埋め合わせること)を採用、道の駅の商品に1品1円を付与、それを町内の森林保全に活用している(平成28年8月は46,478円で、約5.8t分のCO2に相当)。また、FSC(Forest Stewardship Council 森林管理協議会)の認証を受けた町有林について、間伐地を対象にJ-クレジットを取得しており、山陰合同銀行、鳥取銀行、㈱中海テレビ放送などとカーボン・オフセット契約を結んでいる。
 昨年「SDGs(Sustainable Development Goals 持続可能な開発目標)未来都市」に選定され、持続可能な林業経営の創出事業として、①「木のおもちゃ」の製造、販売 ②林業従事者の確保と森林意識の継承 ③木育を基軸とした、女性や子どもも参加できるコワーキングスペースの整備 ④全国に発進する「生涯森林教育プログラム」の構築――を掲げ、中山間地域における新たな経済循環の構築をめざしている。
 米など農産物のブランド化に向けてヤンマー㈱と連携、森林保全や木材利用促進を図って日本通運㈱と連携するなど、都市部の企業との協働による第一次産業の活性化を図っている。林野面積は30,463haで、スギ9,557ha、ヒノキ5,268ha。年間生産量は約8.5万㎥、年間生長量は約10.9万㎥。町有林面積は約2.300haで、町有林出荷量は6,000~7,000㎥/年。平成18年に「日野川の森林木材団地」を設置し、木材の供給先を1団地に集約した。
 また、「にちなん中国山地林業アカデミー」を昨年4月に開校。実践的な現場研修による技術と知恵、専門家の講義による最新の林学と教養を学ぶことで、即戦力となる人材を育成している。就学年数1年(230日1,380時間)、募集人数10人(全国)、授業料96,000円/年。給付金制度もある。アカデミーでは、小学生の仕事体験や野外キャンプ、高校生のインターンシップ、社会人の就業体験なども受け入れている。
 中村町長は「町内にあるものを活かしていきたい」として「人、自立、魅力」のキーワードをあげ、「補助金ではない〝補助人〟による全員参加、どんなことが起こっても自立できるかたち、魅力を切り札にした人の集まり――をつくっていきたい。(新見市と)これからも交流を続けていきたい」と結んだ。

 
 パネルディスカッションは、中村英明町長、日南町農林課の荒金太郎主任、㈱戸川木材の戸川睦徳代表取締役、(一社)人杜守の多賀紀征理事長の4氏をパネラーに、鳴滝塾の公文裕巳代表(学長)がコーディネーターを務めて開かれた。
 プレゼンテーションで、荒金氏は森林教育、J-クレジットなど中村町長の講演を要約、補足した。また、新見市の2人、戸川代表取締役と多賀理事長は、業務内容のほか機械化による若者(女性)への林業普及、輸送コストの削減、人や地域とのつながりなどについて話した。林業を中心に日南町と新見市の交流、連携が話し合われ、公文代表や中村町長が「森を活用した地域の魅力、町の誇りを子どものころから養っていくことが大事。心が豊かになる、人間として豊かさがある中山間地域をめざしたい」と語った。


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