池田 悟≪作曲家≫のArabesque

・・・深くしなやかに・・・(音源リンクしてます)

第2回東京佼成ウインドオーケストラ作曲コンクール本選会

2009-11-08 | レビュー/作曲

第2回東京佼成ウインドオーケストラ作曲コンクール本選会を聴く。東京芸術劇場 大ホール [指揮] 小林恵子 [演奏] 東京佼成ウインドオーケストラ
応募作品数:38作品 / 13ヶ国(客の入りは、3年前大盛況だった第1回とは別の催しかと思うほど少なかった。→参照

1曲目、平野達也(日本)「ノットゥルノ」/個々の響きで実験的な試みをしながらも、全体像は日本の作曲の黎明期を思わせる伝統的なオーケストレーションをベースに、タイトル(夜想曲)からは意外なほどの躍動的な音楽を率直に展開した。

2曲目、ブライアン・ハーマン(カナダ)「ダイアレクティクス」/'04年トロント大学卒の若手とは思えない成熟した作品。微分音クラスターの弱い持続に始まり、途切れつつオブジェのような控え目な響きが膨らんでいく。審査委員長、湯浅氏のスタイルに近い。これこそ「ノットゥルノ」。前半に挿入される破壊的なトムトムは遊離して感じたが、後半のクライマックスの予兆だった。曲尾、チューバが半音階で下行しながら鎮静する場面も印象的。

3曲目、稲森安太己(日本)「吹奏楽の為のグランド・アラベスク」/洞穴の中で小動物が蠢動するような冒頭。やがて自分がいた3階席後方からコントラバスやトランペット、他の客席から打楽器が加わる。コントラバスなどは1階席に届いたろうか。このような試みは近くの客にとっては遠近感を狂わされる。フルートの息音、ピアノのドライな扱い、客席のトランペットの高いG音のつんざきが半音階でスッと消え入る断片などが展開し、暗い酒場のクルト・ワイルの音楽を想像する。

休憩中この3作品を総括した。ウィンド・オーケストラはスコアこそ大編成の様相を呈しているが、実際にステージを見聞きする限り、大オーケストラとは違い、室内オーケストラの大きくなった感じだと。ところが後半の2曲を聴き、その解釈はたちまち修正を迫られる。

4曲目、フランシスコ・サカレス・フォルト(スペイン)「デ・カウシス」/ハリウッドの超一流映画音楽か、サグラダ・ファミリアか?無調と調性の壁を自由に行き来しつつ、大オーケストラもたじたじの色彩、ダイナミクス、表現内容の変化、その大きさ、意外さ、ふてぶてしさ。冒頭の暗いカオスはさっさと捨て、オーボエのソロにクラリネットの和音とコントラバスによるワルツ、という当たり前の音楽の新鮮なこと。後半、ホルン→チューバ→トランペットとフーガが畳み掛け、オケは沸騰した。大仕掛けの展開の妙。

5曲目、山内雅弘(日本)「宙(そら)の時~吹奏楽のための」/旋法的な螺旋、反復音、トリルなどの音響が過重な重層構造で上昇、墜落する過程で、現代では一般的な様々な特殊奏法が過多と言えるほどの間の手を入れる。朝日作曲賞など制約の多い学校向け吹奏楽作品で成功を収めた反動だろうか。クライマックスの大音響は伝統的な良く鳴る重ね方。前後して、ホルンのフォルティッシモのロングトーンは効果的だった。



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