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sou16の物理学的な週末 ~sou16's Physical Weekends.

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奥穂高岳? 第2日目

2023年10月06日 | 登山

5:01、起床。
穂高岳山荘のライブカメラで稜線の状況を確認すると…
ガッツリ雪が積もっているじゃないか!
軽アイゼンは持ってきたけど、
これはもう12本爪アイゼンが要るレベルだな…
こうなると昨夜考えた代替案に切り替えねばなりません。

代替案その1は、隣の常念山脈蝶ヶ岳に登る案。
昨晩の雪は西高東低の気圧配置で飛騨側から来たもの。
となれば、梓川の東に位置する蝶ヶ岳ならば
穂高連峰が壁となって雪が積もっていないのではないか?
と期待しましたが、横尾山荘の管理人に状況を尋ねると
常念山脈も普通に積雪しているとのこと。
駄目か…

代替案その2は涸沢まで往復して
今日の内に上高地まで戻ってしまう案。
せめて紅葉の涸沢カールだけ拝んでから
蜻蛉返りして下山してしまおうということです。
ただ、横尾-涸沢-上高地は20km超の長丁場。
混雑も考えると上高地発の最終バスに乗れるかが
怪しくなってしまう程の距離です。
上高地で野宿は嫌だなぁ…

代替案その3は涸沢すら諦めて
大人しく横尾で踵を返して帰ってしまう案。
これは一番の安牌ではありますが、
展望も無い往復20kmの作業道歩きの為だけに
2日も有休を取って上高地まで来たのか?
という悔悟の念を抱きながら
この後の三連休を過ごすことになってしまいます。

代替案その4は涸沢までの往復にして
道中の何処かの小屋に泊まる案。
時間的に余裕があり、涸沢の紅葉も拝めるので
最善案ではあるのですが、
紅葉シーズンの上高地周辺の小屋は何処も彼処も満室。
悪天候でキャンセルが出てはいないだろうかというのが
一縷の望みではありますが、果たして…


どうやら本当にキャンセルがあったようで、
電話してみたらあっさり予約が取れました!
紅葉真っ盛りに涸沢で小屋泊なんて
普通なら奥穂高岳登頂よりよっぽど至難の業ですが、
奥穂高岳を潔く諦めた僕等へのせめてもの慈悲でしょうか。
という訳で、涸沢を目指して登山再開です。
この横尾大橋から漸く登山道。
長野県警山岳遭難救助隊が張っていて
ハイキング気分の観光客を追い返しています。


ただ、上高地の登山道の基準は大分緩くて、
どうやら車が入って来られる道が並走していないだけで
登山道という扱いになっているようです。
暫くは横尾谷の平坦な道が続きます。
一度稜線に出ると凄まじいんだけどな…


本谷橋で横尾谷左岸から右岸へと渡ると、
いよいよ真の意味での登山道開始です。


槍ヶ岳方向へと分岐していく横尾本谷を見送ります。
この辺りの標高から紅葉していますね。


そして、ここからがかの有名な涸沢です。
段々とガレ場が増えてきました。
ガレ場の整備のガチ度が凄い。
南アルプスならほぼ放置か、
精々ちょっとステップを刻むだけだろうな…


穂高連峰を視界に捉えました!
完全に冬山の顔をしていますね。
エベレスト街道から見るヒマラヤ山脈もこんな感じでしょうか。


穂高連峰には低い雲が覆い被さっていますが、
後ろの常念山脈方面は綺麗さっぱり晴れています。
不思議な天気だ。


涸沢カール直前で遂に積雪が。
岩が露出し過ぎていて軽アイゼンは使えないな…
もう小屋は目前なので注意しながら歩きます。


という訳で、涸沢カールに辿り着きました!
まだ緑さえ残るナナカマドと雪山がセットという
頭が混乱しそうな組み合わせです。
このように紅葉前の緑、紅葉真っ盛りの赤、
そして雪の白が共演する景色を三段紅葉と呼ぶそうです。
初めて聞いた日本語だ…


涸沢下流、常念岳の方角を見遣るとこんな感じ。
緑が多くて余計に不思議な眺めですね。
普通の三段紅葉は麓の木々が緑色、中腹が紅葉で赤色、
山頂が冠雪で白色と、山全体を使って
やっと三色を揃えるものらしいのですが、
涸沢カールだけで三段紅葉を実現するのは
20年に1度くらいの珍しい現象だとか。
運が良い…のか?


とはいえ、ハイキング客ではなく一介の登山者としては
やっぱり奥穂高岳にも登りたかったな…
今年は穂高岳山荘が100周年で記念品も貰えたらしいし…
まあ、3度目の正直で登頂を果たした剱岳(2020/9/20-21)然り、
実は1度悪天候で山行計画を中止していた槍ヶ岳然り、
日本三大岩峰の剱、槍、穂高は
何度か撤退を余儀無くされるくらいが
ラスボスっぽくて良いのかも知れません。
お楽しみは取っておくということで…


今夜の宿は涸沢ヒュッテ。
紅葉時ともなれば日本一予約困難と言っても過言ではなく、
コロナ禍前は1枚の布団に3人寝るのが普通だったという
超人気の山小屋です。


しかし、今はコロナ後の時代なので1枚の布団に1人どころか、
布団と布団の間にもう1枚布団を敷けそうな間があるという、
4年前までの登山者に伝えたら
絶対に信じてくれないであろう快適さです。
予約は更に取り難くなってしまいましたが、
ある意味登山者にとって良い時代になったのでしょうか。
ちなみに、涸沢ヒュッテには何と無料Wi-Fiもあります。


屋上のテラスは盛況です。
この寒いのに屋外で食べるのか…
だからなのかは分かりませんが、
涸沢ヒュッテ一番の名物メニューはおでんです。


おでんに続く名物を作ろうとしているのか、
「涸あげ」なるメニューもありました。


横尾から涸沢カールまでのコースタイムは3時間足らず。
時間が余りまくっているので、
カールを挟んでお隣の涸沢山荘にも遊びに行ってみます。
この小屋の密集具合は流石北アルプス。


涸沢小屋の名物メニューはジョッキパフェ。
ですが、残念ながら夏季限定のメニューだとか。
ソフトクリームも売り切れです。


ということで、スタミナ豚丼を頂きます。
ニンニクが効いていて美味しい。
汗をかいてきた登山者向けだからか塩辛い味付けです。
付け合わせのわかめスープはやけに薄いけど。


食べていたら外から音が聞こえてきたので
何かと思って出てみたら、
涸沢ヒュッテにヘリコプターが飛んできていました。
着陸していたので荷上げではなくて遭難者の救助のようです。
この天候の急変によって低体温症になってしまった人が居たとか。


今度はこちら側にヘリが飛んできました。


涸沢小屋に荷上げをしにきたようですね。
もしかして、ソフトクリームも補充されるのかな?


されました。
「この気温でソフトクリーム〜?」
と周りのおじさんに茶化されながらも己を貫きます。


ホットコーヒーも頼んでコーヒーフロート風の食べ合わせに。
このカップとソーサーが涸沢小屋オリジナル仕様で
凄く欲しかったのですが、
残念ながらお土産としては売っていないようです。


涸沢小屋でのんびりコーヒータイムを楽しんでいたら、
いつの間にかテントの数が100を優に超えていました。
そろそろ涸沢ヒュッテの方に戻るか。


中の売店でお買い物。
丁度ヘリで荷上げされてきた
ナルゲンボトルをお土産として買ってみました。
湯たんぽしても使えて便利。


時間が余ったので食堂でのんびりします。
この一角は特に意匠が凝らされていて
およそ山小屋とは思えません。


それでも、窓から見える景色はちゃんと山小屋です。
こんなところでテレワークがしたい。


談笑したり昼寝したりしていたら
夕食の時間になりました。
ここもまた具沢山な夕食です。
トンカツやエビフライまであるけど、
油の処理とかどうしているのだろう…


夜の帷が下りてから再び外へ。
夜の涸沢の名物、色とりどりのテントです。
まるで無数のランタンが山を飾っているかのよう。


露光時間を長くしてみるとこんな感じ。
背後の北穂高岳とその上には星も見えます。
三脚があってフルサイズのカメラなら
もっと綺麗に撮れるのでしょうが…


マイクロフォーサーズのカメラを
吹き曝しの凍った手摺りに置いて撮るのではこれが限界です。
ちなみに、前面の紅葉の光源は
偶然そこを通りかかる登山者のヘッドライトです。
もう少し何とかならないかと暫く悪戦苦闘しましたが、
極寒の山風が体温だけでなく
カメラのバッテリーもゴリゴリ削ってくるので、
この辺りで切り上げて寝床に戻りました。
湯たんぽ代わりのナルゲンボトルが早速大活躍している…


奥穂高岳? 第1日目

2023年10月05日 | 登山

秋と言えば紅葉です。
そして、スポーツの秋という言葉もあります。
この2つが掛け合わさった時に何が生まれるか?
そう、秋山登山ですね。
という訳で、会社の登山部の先輩の企画で
紅葉の奥穂高岳を目指すことにしました。


あずさ1号に乗って松本駅へ、
そこからアルピコ交通を乗り継いで上高地にやって来ました。
メッチャ暴風雨なんですが…
近年の山行はかなり天気に恵まれていたのと
荒天予報時はほぼ日程変更か中止をしていたので、
ガッツリ悪天候下での山行は剱岳を諦めて
立山縦走にした4年前(2019/7/19-20)以来です。
まあ、今日は遊歩道歩きみたいなものだし
雨だったところで不快なだけだけど、
明日も天気が悪いと流石に穂高の岩場は難しいのでは…


ここから天候が回復することを祈りつつ歩行開始。
上高地から10kmは樹林帯の平坦な作業道歩きです。
舗装路じゃないだけまだマシだけど、
車道歩きはとにかく怠いんだよな…


正午スタートでも尚余裕があるので、
明神池にも寄ってみます。
穂高神社奥宮の境内にあたり、
「かみこうち(神垣内)」の名の由来になった場所です。


大正池と同じく、北アルプスからの土砂が
梓川を堰き止めたことによって生じた明神池。
水深は極浅く、庭園のような雰囲気です。

明神池から先は初めて歩く区間。
上高地発の登山だと何度か槍ヶ岳を計画してはいるのですが、
天候不順やら急用やらで全部中止になっているので…
ただ、初めてだからといって面白い区間ではありません。


徳澤園で一休み。
ここは昔牧場があった関係でソフトクリームが有名です。
外観は山小屋っぽい感じですが
実情はリゾートホテルと言っても良く、
高い部屋だと1泊2食付きで32,500円/人もします。
当然、基本的に赤貧な登山者が泊まる訳も無く。


今夜の宿の横尾山荘に辿り着きました。
作業道の終点にあたり、ここが実質的な登山口です。
椹島ロッヂ(2023/9/16)みたいに
宿泊者には送迎バスを出して欲しかった。
まあ、上高地の観光客数の多さでは難しいのでしょうが…


事実上の下界なので設備は非常に整っており、
お風呂にも浸かることが出来ます。
無料Wi-Fiまであります。
合宿所みたいな雰囲気ですね。


明日の天候回復を祈りつつも、
代替案を議論してから就寝しました。


赤石山脈縦走 第4日目

2023年09月19日 | 登山


4:12、起床。
今日が最終日です。
コースタイムが5時間で帰りの送迎バスが12:10発なので、
休憩時間や疲労の蓄積を考えると
日の出前に出発するのが無難なのでしょうが…


この先は樹林帯でほぼ眺望が無い
という話を小屋の女将さんから聞いたので、
日の出だけ拝んでから行くことにしました。
ある程度メンバーを選抜した甲斐あって
標準コースタイムの七掛けくらいで歩けているので…
唯一の遅延事由は写真撮影ですが、
樹林帯ならその心配も無いでしょう。


こんな鬱蒼とした樹林帯が今日の行程の殆どを占めます。


なので、撮る物は茸くらいしかありません。
同行者にキノコオタクが居て興奮していました。
これはベニテングタケ…だと思います。
キノコは類似種が多過ぎて
Googleに訊いても答が定まりません。


上のベニテングタケの方が禍々しい色をしていますが、
この人畜無害そうな顔をしている方が
最強の猛毒キノコとの呼び声高いドクツルタケです。
曲がりなりにも日本百名山の登山道で
目に付く位置に生えていながら大きく成長出来るというのは、
大なり小なり食用に不適であることを意味しているのでしょう。
これが続くと日本百名山は毒キノコだらけになるんだろうか。


大倉尾根に比べると千枚岳からの尾根は傾斜が緩いので、
かなり高い位置まで林業の手が入っていたようです。
森林軌道跡なら興奮したけど、木馬道か…


標識も林業用と思しきものが多くあります。
FHとMってどういう意味なんだろう…


このルートの数少ない見所である駒鳥池。
名前から勝手に爽やかな池を想像していたけど、
何て陰鬱な雰囲気の池なんだ…


こちらはこのルートで唯一爽快な眺めを拝める見晴台。
この3日間で歩いてきた南アルプスの稜線を見遣りながら
暫し休憩します。
…ん?後ろから何か聞こえるような…


おおっ!?車!?
もう廃道同然だろうと思っていた林道から作業車が現れました。
こんな高い場所までまだ林道が現役だったんだ…


「道なき未知を切り拓く」のキャッチコピーが的確過ぎる。
林道は千枚小屋までは続いていないようですし、
何をしに行くんでしょうかね?
一部の登山ツアーでは駒鳥池の裏にあるこの林道の終点まで
車でアプローチして千枚岳まで片道2時間弱で登るものもあるとか。


貴重な水場の清水平で給水。
清水はともかく平…?
この地形で何を思ったら平と名付けたくなるんですかね。


湧水地点からもう少し下ると本当に平らな地形になって
先程見たあの林道の続きと付かず離れずの経路を取るようになります。


地形がなだらかになると道が分かり難い!
林業をやっていた(いる?)だけあって
そこかしこに人が立ち入っているので
余計に正規の登山道を見失い易く、
1回本当に道を逸れて100mほど進んでしまいました。


清水平のなだらかな地形が終わって
特殊東海フォレストの林道が離れていくと、
今度は中部電力の鉄塔巡視路が並走
というか登山道をカバーするようになります。


いや、巡視路にしてはあまりに岩場が多過ぎない?
何処かで分岐したのを見逃したのかな…


と思ったら本当に鉄塔がありました。
電力会社も大変だな…


地味なアップダウンが3日間歩き詰めの身体に堪えますが、
ここが最後の踏ん張りどころです。
岩と木の根で歩き難い急登を下っていきます。


あそこに見えるのは!


千枚大吊橋だ!
これで大井川を渡れば…


舗装林道まで戻ってきたぞ!


10:48、距離27.0km、累積標高3,299m、
コースタイム19時間30分の周回路を完遂して
椹島に帰還しました!!


12:10のシャトルバスの時刻まで
食堂で軽食を食べたりしながらのんびり過ごします。
下山後のソフトクリームとアイスコーヒーが最高過ぎる。


ではシャトルバスに乗って駐車場まで戻ります。


さらば、赤石山脈…!
またいつの日か!


アプローチの運転担当としては
駐車場まで戻ってきたら終わりという訳でもありません。
この山深い奥大井から抜け出さねばならないのです。
道が細いよぉ。
口坂本温泉の入口を間違えた時は泣いた。


安倍川本流まで下りてきました。
これで勝ち確です。


この後は新東名高速道路を走って関東へと帰りました。

北アルプスの岩峰とはまた違った意味で
日本の最高峰に位置していると言って良いであろう南アルプス南部。
辛くなかったと言えば真っ赤な嘘になりますが、
天気に恵まれたこともあって辛さ以上に楽しさが大きく勝る山行でした。
これは南アルプスの沼に嵌まってしまいそう…


赤石山脈縦走 第3日目

2023年09月18日 | 登山


5:46、起床。
ぐっすり10時間も眠ってしまいました。
もう日が昇ってしまっています。
ただ、昨日頑張った分今日明日は余裕のある行程なので
今朝は少しだけのんびり出来ます。


荒川小屋のご機嫌な朝食。
嬉しいミカン缶付きです。


では、今日も一日頑張っていきましょう!
昨日ので感覚が麻痺してしまっていますが、
今日は今日で5時間超のコースタイムではあります。
7:02に荒川小屋を出発。


振り返って見る荒川小屋。
こうして見ると本当にとんでもない位置にあるよな…
流石は日本で最も遠い山小屋の一つに挙げられるだけあります。


荒川岳は高山植物の宝庫としても知られており、
鹿による食害を防ぐ為に防鹿柵が設置されています。


が、もう花は全く咲いていませんね…
山の夏は短い。


昨日見えていたあの稲妻道を登っていきます。
急登は急登ですが、景色が良いので頑張れます。


大聖寺平以来の稜線に復帰しました。
やっぱり稜線は気分が良い。


荒川岳は別名荒川三山とも呼ばれる3つのピークから成る山なので、
西側から順に踏んでいきます。


8:26、まずは荒川前岳(標高3,068m)に登頂。
西側の眺めが非常に良いです。
…あまりにも良過ぎます。


実は荒川前岳の西斜面は
「荒川大崩壊地」と名付けられているほど崩壊の激しい場所で、
雨の度に崩落が進んでいるのです。
江戸時代に一帯から大量の木材を伐採したことが
きっかけではないかと目されているとか。
南アルプスの不安定さが垣間見える一面です。


崖は山頂を示す標柱ギリギリのところまで迫っており、
そろそろ標柱が飲み込まれてしまうのではないかと言われています。
いつか荒川前岳自体が消えてしまうのでしょうか。


荒川前岳から三伏峠への登山道も崩壊に巻き込まれており、
道が崩れてしまっているところもあるとか。
その内に廃道化してしまうのでしょうか。
南アルプスがどんどん登り難くなっていく…


ここから荒川三山の残りをなぞっていきます。


8:54、荒川中岳(標高3,083m)に登頂。
中央に位置しているので主峰…
という訳ではなく、正直一番地味なピークです。


ただ、三角点はこの荒川中岳にあります。
中岳の面目でしょうか。


そして、赤石岳と同じく山頂直下に避難小屋もあります。
中岳避難小屋です。
まるで絵に描いたような山小屋。
山小屋のイメージ像はここから持ってきたのか?
と思わずにはいられない、
山小屋のエッセンスを混じり気無しに具現化したような景色です。


ここも静岡県営の山小屋で、
赤石岳避難小屋と同じく定員10人の予約制で素泊まり宿泊出来ます。
1週間くらい泊まってみたい…


中はこんな感じ。
サイズ感も相俟って民家みたいですね。
ペットボトル飲料と行動食を売っていました。


中岳避難小屋の前で一息吐いていると…
また見えちゃったよ…
今度はあの道を登るのか…
同じ荒川岳の名で括られている割に登り返しが激しくない?


あそこが荒川三山の最高峰で謂わばラスボスなので、
心して掛かりましょう。
中岳避難小屋に別れを告げて前進です。


北アルプスを彷彿とさせる細い稜線になってきました。
ラスボスの前の回廊に相応しい。


さあ、ここからが最後の急登です!
滑りやすそうな砂利の九十九折の先には
針山地獄を思わせる岩稜地帯が続いています。


思ったよりガチな岩場だな…
南アルプスって北アルプスよりなだらかなイメージがあったけど…
登山者が少ないからなのか、
北アルプスなら鎖が付けられていそうな場所でも
己の身体のみで登攀することが求められます。


しかし、南アルプスのそういう朴訥なところがそそりますね。
登山の何たるかを体現している気がします。
いや、北アルプスが登山じゃないと言いたい訳ではないのですが。


岩場地帯を抜けました。
ここまで来れば後はウイニングランも同然…!


10:28、悪沢岳こと荒川東岳(標高3,141m)登頂!
これで荒川三山制覇です!


我々が登頂するや否やガスってしまいました。
陽光の下の姿をギリギリ拝めてラッキーでした。
この悪沢岳は標高が円周率の10^3倍ということで数学徒に人気
…ということもないようです。
ここまで登って来られる数学徒は殆ど居ないのでしょう(暴論)


悪沢岳というおどろおどろしい名前は
この山から下る沢の地形が非常に「悪い」ことから
その名が付けられています。
そして、「地形が悪い」とは「崩れていて険しい」という意味です。
何とも南アルプスに相応しい名前です。
登山道の続く東斜面も崩れた岩が散乱していて歩き難い。
攀じ登る岩場よりもこういう足元に気を付ける岩場の方が
足を挫きそうで嫌いなんだよな…


悪い岩場を抜けました。
大分なだらかな地形になってきましたね。


11:17、丸山(標高3,032m)に登頂。
名前通り丸っこい形の山です。


広い山頂で皆思い思いに休憩します。
悪沢岳よりもこちらの方が休憩適地ですね。
お昼時なので昼食を摂ります。


これでもう険しい箇所は終わりかと思いきや、
まだ梯子が掛かっていたりと悪い地形は続きます。


12:19、千枚岳(標高2,880m)に登頂。
これが荒川岳最東のピークにして、
今回の山行における最後のピークです。


ここからは明日も含めてひたすら下り一辺倒です。
楽しい稜線歩きもここでお別れか…
名残惜しいですが仕方ありません。


森林限界も下回ってこの先は眺望も望めません。
修行要素も強いのが南アルプスです。


二軒小屋への分岐。
二軒小屋ロッヂは椹島ロッヂと同じく特殊東海フォレスト管理の小屋で、
宿舎感の強かった椹島ロッヂと違ってログハウス風のお洒落な建物に
本格的なジビエ料理と檜風呂まで楽しめる
下界のホテル顔負けの宿泊施設だったのですが、
リニア工事の影響で長らく休業状態になっています。
泊まってみたかったな…


12:51、千枚小屋に到着。
これにて今日の行程は終了です!
昨日に比べるとぬるい行程に思えてしまう。


ここもまた非常に綺麗な山小屋です。
静岡県営の小屋は最近一気に改修したのでしょうか?


売店の品揃えも良いです。
卯年ということで近くにある兎岳を描いたTシャツがあったので
お土産に買ってみました。
軽食も買って談話室で新入部員育成計画などを駄弁ります。


夕食はハンバーグでした。
登山の後の蛋白質は良いものです。


千枚小屋は東側に開けた斜面にあるので
夕陽は見えないだろうと思いつつも外に出てみたら、
謎の光がある一点から放射されている様子が見えました。
何この光!?
調べてみたところ反薄明光線という現象のようで、
雲の切れ間から太陽の光が漏れ出た際に
そのまま空の反対側へ飛んでいく軌跡が霧などにより可視化されると、
太陽とは正反対の点に光が収束していくように見えるそうです。
なるほど、太陽光は地球の位置ではほぼ平行光線だからそうなるのか。


日が完全に落ちて目が慣れると街灯りが見えて来ました。
この立地でこんなに明るい街灯り?
方角的に左は甲府市で右は富士宮市のようです。
この距離でもこんなに明るく見えるんだな…
天体観測では荒川小屋に敵いませんね。

荒川小屋のスタッフの方も星を見に出てきていたので、
夜空を眺めながら色々お話を伺いました。
曰く、昨今の働き方改革の波は山にも押し寄せているそうで、
今は山小屋の仕事でも労働時間をきちんと管理して
残業代が支払われるのだとか。
話をしたスタッフは普段地元の林業会社で働いているそうですが、
社長に山小屋のバイトを紹介されて
実際に来てみたら想像以上に良い条件で驚いたそうです。
民営ではなく県営の小屋だからというのもあるのでしょうか。
こういう背景も鑑みると宿泊料金の値上げも已む無しですね。


赤石山脈縦走 第2日目

2023年09月17日 | 登山


2:29、起床。
未明どころか深夜と言って良い時間ですが、
今日の行程はとにかく長いのです。
最後息も絶え絶えになっていた剱岳第2日目(2020/9/21)
距離9.3km、累積標高上り1,220m下り1,267m、
コースタイム9時間15分(YAMAP等倍)だったのに対し、
今日は距離11.7km、累積標高上り2,342m下り844m、
コースタイム9時間35分という長丁場。
東大ワンゲル部の山行では
常念山脈縦走第1日目(距離13.1km上り2,276m、2019/10/5)や
大峯北奥駈道第1日目(距離22.1km上り2,364m、2013/9/7)みたいな
もっと頭のおかしい日もありましたが、
大学登山部の基準を社会人登山部に持ち込む訳にはいかないので…

そう言うなら何故そんな行程を組んでしまったのか?
それこそが南アルプス南部に登山者が少ない理由その2、
山小屋の少なさです。
登山者が少ないからこそ山小屋も少なくなるので、
鶏が先か卵が先かという話ではありますが。
2時間も歩けば次の小屋が現れる北アルプスとは違い、
南アルプス南部は避難小屋を除くと
基本的に小屋から小屋まで6時間は掛かります。
流石に11.7kmの間に小屋が一つも無い訳ではなく
1つだけ中間に小屋があるのですが、
そこは予約合戦に敗れて予約出来ませんでした…


まだ空が白んでもいない3:20に出発。
梯子になりかけている急角度の鉄階段から入山します。
ここから明後日までは下界から隔絶された山上の人間になります。


現在登っている大倉尾根こと赤石岳東尾根は
大倉喜八郎が卒寿祝いで整備させたあの登山道で、
初めの内は樹林帯なので日が出ていようが眺望はありません。
しかも、この区間は急登で有名なんだよな…


林業で拓かれた山なだけあって林道とも交差します。
南アルプスの林道はもう殆ど荒廃する一方ですが。


急登と格闘していたら
いつの間にか空が白んでいました。


椹島から赤石小屋までの中間地点だという樺段に到着。
赤石岳山頂じゃなくて赤石小屋までの中間地点なのか…
ここまで2時間だからそんなものか。


「最後の難関」という案内のあった歩荷返し。
難関…?
岩が所々露出していてちょっと歩き難いと言えばそうだけど…
これくらいで踵を返してしまう歩荷は根性無さ過ぎでは。


クソザコ歩荷は返しても我々を返すには及ばず、
サクッと歩荷返しも通過。
赤石小屋まで後少し!


8:06、赤石小屋に到着。
ここが予約合戦に敗れて予約出来なかった山小屋です。


ここへ来て遂に赤石岳の展望が開けました!
何と堂々たる山容。
流石は南アルプス(赤石山脈)の盟主です。
…今日中にあそこまで登って、更に次の小屋まで歩くのか。


それはそれとして、大展望の中で冷えたサイダーを頂きます。
うーん、最高!
炭酸飲料は深山で飲んでこそ輝きます。
…ステマみたいになっているかな?


衝撃の事実として、ここはまだ中間地点です。
しかも、今日一日の行程の中間地点ではありません。
赤石岳までの中間地点なのです。
深いなぁ〜、南アルプス!
休憩も程々に再出発です。


振り返ると雲海から顔を出した富士山が。
堂々たる姿のようであり、
今直面している巨大山塊南アルプスと比べるとちっぽけにも見えたり。
この展望を望める平場はその名も富士見平です。


まるで富士山と張り合うかのように構える赤石岳。
左のピークが赤石岳、右のピークが小赤石岳です。


あまりに大きく広がっているので
広角レンズでも1枚に収め切れませんが、
右にぐっと振った遥か向こうにあるのが
左から荒川中岳、悪沢岳(東岳)、それに力瘤のような千枚岳。
…あの千枚岳の更に左にある千枚小屋までが
明日の内に歩き切らねばならない道のりです。


まあ、一見とんでもない距離に見えても
意外と人間歩き切れるものです。
一歩一歩目の前の道を進んでいくことに集中します。
割と岩場チックで険しい道だな…


一様に撓って弧を描いた木々。
南アルプスもこの標高まで来ると結構雪深いのでしょうか。


標高2,700mを越えて遂に森林限界を迎えました。
9月中旬でもまだまだ暑い静岡県。
遮る物無く照り付ける陽射しが体力を奪います。


水場って何処だよ…
カラカラに枯れています。
赤石小屋で十分補給していたので大丈夫ではありますが。


着実に稜線が近付いてきています。
北アルプスとは違う、如何にも脆そうな稜線です。


富士山に見守られながら歩く隊。


入山から8時間で稜線に到達しました!
ここから先明後日まで満喫する予定の南アルプス主稜線です。


まずは重い荷物を分岐点にデポして
赤石岳を討ってしまいましょう。


11:58、赤石岳(標高3,120m)登頂です!
日本第7位の高峰であり、
標高3,015mの立山(2019/7/20)、標高3,193mの北岳(2023/9/2)に次いで
僕にとって人生で3座目の3,000m峰です。
ちなみに、ここに設置されている一等三角点は
日本で最も高い位置にある一等三角点だったりします
(富士山山頂にあるのは二等三角点、北岳山頂は三等三角点)。


およそ3,000m峰とは思えぬ静寂の山頂。
代償として辛く長い道を歩き切る必要があるとはいえ、
この天空の世界を独占出来るとは何とも贅沢な山です。
この先(南)は更に登山者の少ない山域になりますが、
今回は立ち入りません。
あっちへ行ってしまうと下山が滅茶苦茶大変になるので…


ただ、赤石岳山頂直下には赤石岳避難小屋があるので寄ってみます。


赤石岳避難小屋は静岡県営の有人小屋。
避難小屋らしからぬ小綺麗な佇まい。
緊急時以外宿泊禁止というのが一般的な避難小屋のルールですが、
ここは事前予約制で普通に宿泊が出来ます。


素泊まりのみの上に定員はたったの10人ですが。
売店もペットボトル飲料と菓子パンくらいしか売っていません。
まあ、本来避難小屋に売店があること自体異例ですが。
ここ、コースタイム的には宿泊に凄く丁度良い位置ではあるんだよな…


定員50人の赤石小屋さえ予約合戦に敗れたのに
定員10人の小屋の予約が抑えられているはずもないので、
たっぷり40分赤石岳山頂を満喫したら登山再開です。
一気にガスって来たな…
赤石岳山頂がギリギリ晴れていて本当に良かった。


小赤石岳(標高3,081m)を越えて稜線を進みます。
宿泊地はまだまだ先です。


赤石岳の一帯から下って次の山塊への登り返しとなる鞍部、
大聖寺平までやって来ました。
ガスっていると道迷いしそうな広い鞍部です。


こんな場所にも特殊東海製紙の標識が立っていました。
ここまで標識を設置しに来た社員の方も大変ですね…
流石に委託したのかな。


ここから登山道はトラバースになります。
疲労で足運びを間違えて足を挫いたりしないよう注意します。
何てったってどちらを向いても下山まで10時間は掛かるような場所。
怪我は許されません。
そろそろ日も傾いてきた様子があるけど、
小屋はまだだろうか…


あっ!あれはーッ!


14:41、入山から11時間以上も掛けて遂に辿り着きました!
如何なる登山口から目指しても優に10時間以上を要する
日本でも指折りの遠い山小屋、荒川小屋です!!


荒川小屋は南アルプスの中で最も歴史の長い山小屋の一つ。
稜線(長野-静岡県境)の東斜面(静岡県領)に位置していながら
人里の近さから元々は長野県側の大鹿村が管理していました
(現在、大鹿村から登る小渋川ルートは
崩壊が進んでいる上に渡渉が多いのでバリエーションルート扱い)。
それが平成8年に他と同じく静岡県営の小屋となり、
更に近年建て替えられたのかとても新しい印象を受ける小屋です。


荒川小屋の北には、小屋の名前になっている
荒川岳が重厚感のある山容で構えています。
明日はあそこを登るのか…


明日はあそこを登るのか…
そりゃあ見ようとしなくても見えちゃうよね…
急斜面をあんな無理くり稲妻状に這い登っていく登山道…


まあ、明日の事は明日やるとして
今日のところは11時間の闘いの疲れを癒しましょう。
荒川小屋はこの立地ながら何とケーキを頂けるという神小屋です。
最高過ぎる。


順光になってやけに近く見えるようになった富士山も、
大井川の向こうの稜線(静岡-山梨県境)越しに
僕等に労いの言葉を掛けてくれているかのようです。


談話室で次の登山について話し合ったりしていたら
いつの間にか17時になっていたので夕食。
荒川小屋の味噌汁は卵焼きが入っているのが特徴?


夜は邪魔な光が一切無い状況で天体観測をしたりしてから、
明日以降に備えて早めに寝ました。