改正総一郎の外断熱・外張り断熱日記

断熱工事に関わって38年。
快適・健康・省エネ建築について探求し続ける日々の雑記帳。
建物の外皮性能、計画換気など。

硬質ポリウレタンフォーム吹きつけ断熱業界の・・・その7

2012-11-28 14:17:23 | 硬質ポリウレタンフォーム

前回(その6)のつづき

 

さて、今までに書いてきたポリウレタンフォーム吹きつけは

一般に30倍発泡といわれる、

冷凍冷蔵倉庫やビルマンション、一部戸建て住宅に使われていたものだが

最近は高発泡ウレタンといわれるものが戸建て住宅中心に普及している。

 

高発泡ウレタンとは、

従来30倍前後に発泡していたものが

70倍~100倍に発泡するもので

30倍発泡よりもやわらかく、厚く吹きすぎたときなど

比較的簡単に削ったり加工したりすることが容易なため、普及しているものである。

 

高発泡ウレタンを戸建て住宅の壁体内に使うと

30倍発泡よりもよく膨らむので断熱欠損が出にくく

容易に気密性が取れる。

 

反面、密度が低く断熱性が30倍発泡に比べて低いので

30倍発泡よりも厚く吹かないと同じ断熱性が得られない場合が多く

30倍発泡なら50mm前後の断熱厚さに対し、

木造の壁体内に50mmから100mm吹くことが多い。

 

高発泡ウレタンは木造建築物に使われるが、ビルやマンションには使われない。

なぜか・・・

 

・・・・・・つづく


硬質ポリウレタンフォーム吹きつけ断熱業界の・・・その6

2012-11-19 08:36:31 | 硬質ポリウレタンフォーム

前回のつづき・・・

 

第3のカテゴリーは

木造戸建て市場。

 

冷凍・冷蔵庫用のポリウレタンは密度が高く、難燃加工をしにくい。

密度が高いと言うことは原料を多く使用することになる。

つまり、高くなる。

 

一般的にビルやマンションで使う原料を薄吹き用といっており、

従来は密度を低くして、難燃加工したものが多く使われてきた。


そのころ高発泡ポリウレタンと言うものが海外で開発され

国内でも一部の戸建市場で普及しだしていた。


簡単に言うと、

従来のポリウレタンが約30倍で膨らむのを70倍から100倍に膨らませる。

そうするとスポンジのようなポリウレタンフォームになる。


順風満帆だったポリウレタン業界も、

フロンガスがオゾン層を破壊すると言う仮説が国連で討議されだして

フロンガスの塊だった当事のポリウレタンは規制せざるを得なくなる。

 

そこで登場したのが

規制対象外のフロンガスを使ったものや、ノンフロン品。

 

特にグラスウールやロックウールといった繊維系断熱材が

ほとんどだった戸建て市場ではこの高発泡品が普及しだす。

 

市場価格がもともと安いグラスウール業界も困ったもので、

グラスウールの欠点である湿気に弱い部分を根本的に防止する方法を

価格が高くなるという理由で一般化させようとしない。

 

そして実際には現場でできないような仕様を図面上だけで作り上げる。

しかし現場でできないその方法では内部結露や断熱欠損という致命的な欠陥が生じる。

ちょっと見にくいが、戸建て住宅の壁をを赤外線カメラで撮影した熱画像がある。

赤い色が温度の高い部分で、窓などは赤くなっている。低くなるにつれて青くなっていく。

写真1・2は硬質ポリウレタンフォーム吹き付けをした家。

写真1↑

写真2↑

 

写真3・4はグラスウールを使った家。

写真3↑

 

写真4↑

 

どちらも私の元部下の家で、

ポリウレタンを使った家は柱や間柱が断熱欠損になっていることが分かる。

 


木は断熱材と言う人がいるが、

木の断熱効果は本物の断熱材に比べるとたいしたことがないこともこの写真で分かろう。

 

 

グラスウールを使った家は元部下が

頻繁にグラスウールの充填状況をチェックしたにもかかわらず、

チェックできなかった軒先や屋根の棟近くに熱欠損が見えている。

 

 

・・・つづく


硬質ポリウレタンフォーム吹きつけ断熱業界の・・・その5

2012-11-16 08:36:00 | 硬質ポリウレタンフォーム

前回のつづき・・・

 

硬質ポリウレタンフォーム吹きつけは

コストも従来の断熱工法と遜色なく、

コンクリート面に直接吹き付け、内部に空気層が出ない。

しかも断熱性能がいいので厚みを薄く吹き付けられた。


建物が完成したら、瑕疵担保期間というものがあり、

この間にクレームがあればほとんどの場合ゼネコンが負担することになるので、

その意味でも有利な点が多くあり、

国内のマンションや一般ビルに一挙に普及した。

 

また、

マンションや一般ビルの断熱業界では珍しく、

当時の労働省の後押しを受けて、

熱絶縁施工技能士と言う国家資格ができ、

硬質ポリウレタンフォームの職人さんには断熱の教育がされた。

 


断熱業界の職人さんでこの資格を持っている人はほとんどが、

プラント工場などの特殊な仕事をする人たちだったので、

一般建築物の断熱工事を国家資格を持った

専門の職人さんが施工することがなかったところへ、

断熱知識を持った職人さんが施工しだしたことも普及の一因でもある。

 

当時、

ポリウレタンメーカーの営業マンは鼻高々で、

今の市場が一杯になったら

ライバル業界のグラスウールの後を行けば新たな市場がある。

 


たとえば、

冷凍・冷蔵倉庫や遠洋漁業船、

大型貨物船などはウレタンで席巻し、

次はマンションや一般ビル、

これが席巻できれば次は木造戸建て住宅という具合だ。

 


グラスウール業界にとってはたまったものじゃない。

 


しかし、

じゃあなぜグラスウールは淘汰されないの?

しかも、硬質ウレタンフォームが一般建築やマンションで

これだけ普及している国は日本だけだ。

 

なぜ?どうして?

 

これは次回に回すとして、第3のカテゴリーの話をしよう。

 

・・・つづく

 


硬質ポリウレタンフォーム吹きつけ断熱業界の・・・その4

2012-11-14 08:31:02 | 硬質ポリウレタンフォーム

前回のつづき・・・

 

硬質ポリウレタンフォーム吹きつけの登場で

日本のビルの断熱は大きく変わることになる。

 

特にマンションでは従来の断熱工法では防げなかった

結露やカビが大きく改善された。

 

当事、多くの大手ゼネコン物件では、

従来の断熱工法を図面記載していたら、

現場事務所の技術者だけでなく技術担当の方々も仕様変更に動き出した。

 

理由は

冬季に断熱材とコンクリートの間に空気層があると

冷やされたコンクリート面では冷えたビールのコップのように

断熱材の内部で結露することが多くあるからだ。

 

結露しなくても相対湿度が80%を超えるとカビが発生しやすくなる。

内部で発生したカビは見えないのでどんどん増殖する。

換気が悪いマンションの家庭では、

冬季の室内がムッとするくらい加湿している場合があり、

こんなケースだと一年もしないうちに部屋中がカビ臭い状態になる。
ひどいケースはアトピーなどのシックハウスの原因になるケースも考えられる。

 

それに拍車をかけるように、

初期のコンクリートは乾燥するまで

2年から場合によっては10年も余剰水分を放出し続けるという。

 

・・・つづく


硬質ポリウレタンフォーム吹きつけ断熱業界の・・・その3

2012-11-08 09:38:01 | 硬質ポリウレタンフォーム
前回のつづき・・・
 
しかし、
パーライトとポリウレタンフォームでは断熱性能の評価基準である
熱伝導率が1:5から1:25と比較にならないほど差があり、
徐々にパーライトはウレタンフォームやXPS(押し出し発泡ポリスチレン)、
EPS(ビーズ発泡ポリスチレン)に住宅断熱市場から消えていくことになる。
 
当時ビルマンション用の断熱はプアなものが多く、
ポリウレタンフォーム吹きつけは破竹の勢いで国内で普及しだした。
 
当時(つまり25年から30年前のマンションやビル)昭和54年の国の省エネルギー基準も
義務化されておらず、いわゆる目標基準だったこともあり、
賃貸マンションや賃貸ビルではまったく断熱がないものも珍しくなかった。
 
断熱をしているビルやマンションもひどく、内装ボードの裏側に
グラスウール(ガラス繊維で作った綿のような断熱材)を充填しただけのものや、
内装ボードにポリウレタンなどの断熱材を工場で貼り付けた複合ボードと言われる製品を
建築現場でGLボードというプラスターモルタルで固定したり、胴縁という木製のバーに
固定したりしていた。
 
当時の住宅公団などはコンクリートの壁と複合ボードの間に空気が入らないように
ボードの裏面前面に接着剤を塗り、貼りつける工法を採用していたが
完全に空気層をなくすことは現場では至難の業だった。
 
これらの工法ではコンクリートとボードの間に室内の水蒸気が溜まり、
内部で結露を起こしカビやダニの温床にもなっている。
 
グラスウールなどは水を吸った布団のように重くなり、上部が水の重みで垂れ下がり
コンクリートが内部で露出している現場も多かった。
ここまで行けば悲惨で、水を吸った布団状態になったグラスウールから結露水がボードにしみこみ
ボードが変色したり床から漏水のように結露水が染み出してくることもよくあった。
たんすの裏はカビだらけ・・・ほとんどのマンションはこうなっていたといっても過言ではないと思う。
 
しかし硬質ポリウレタンフォーム吹き付けの登場で状況は一挙に解決したように見えた。
 
次回、硬質ポリウレタンフォーム吹き付けの登場と3つ目のカテゴリーの話