改正総一郎の外断熱・外張り断熱日記

断熱工事に関わって38年。
快適・健康・省エネ建築について探求し続ける日々の雑記帳。
建物の外皮性能、計画換気など。

断熱業界には今までにない一年でした

2010-12-31 00:00:00 | 日記

早今年もわずかとなりました。

いろいろなことがあった一年ですが

外交問題が重要と認識され

建築の省エネが大きくとり上げられた一年でもありました。

私たちの業界では住宅版エコポイントが動き出した

今年の春前ごろからグラスウールがショートしだし

今では他の断熱材も1ヶ月から2ヶ月以上待たないと材料が入らない状況です。

二年前のリーマンショックで各メーカーが製造ラインを縮小し

やっと市場に見合った供給体制ができたところで

住宅エコポイントと長期優良住宅が一般消費者に受け入れられ

供給面積はあまり増えていないけど断熱材の厚みが従来の2倍以上になったので

供給が追いつかない事態になっているようです。

現状の経済状況では生産ラインを増設するとリスクになるので

各メーカーは成り行きを見守っているという状況ではないでしょうか。

この状況は5月くらいには収束するという意見と

一年以上続くという意見に分かれていますが

いずれの意見もメーカーが増産体制を取らないという前提条件で言われていますので

やはり、この状況も経済的には一過性のものなのでしょうか。

今年3月のニューズウイークにこんな記事がありました。

『世界同時不況の解決策として「グリーン雇用」ほど受けのいい言葉はない。バラク・オバマ大統領からニコラ・サルコジ大統領、中国のフーチンタオ(コキントウ)国家主席まで、国連のパン・キムン事務総長が提唱する「グリーン・ニューディール政策」を支持し、未来の成長と新規雇用の創出源として、風力やクリーンエネルギー産業に希望を託している。

---省略---

 問題は、歴史がそうした楽観論を否定していること。マッキンゼー・グローバル・インスティチュート(MGI)の新しい報告書によれば、クリーンエネルギーは古い製造業と違って多くの労働者を必要としない。こうした点では、新しい製造業やサービス業に似ているという。

 比喩として一番ふさわしいのは半導体だろう。半導体産業は、高給のハイテク雇用を大量に生み出すと期待されたが、実際に「雇った」のはロボットばかりだった。

 クリーンテクノロジー産業で設計をしたり、風力タービンや太陽光パネルを作る人々が現在、アメリカの労働人口に占める割合は0.6%。補助金や税優遇処置など、政府が網の目のように支援を張り巡らせているにもかかわらずだ。

 ---省略---

 政府は、「グリーン経済」の名の下に新しいクリーンエネルギー産業を育成する変わりに、環境にやさしい最先端のあらゆる部分をグリーンにしていく努力をすべきだという。

 アメリカはトウモロコシを原料にしたエタノールをガソリンの代わりに普及させようとしているが、原油価格の下落などでうまく行っていない。太陽光発電に巨額の補助金を出すドイツは、中国にお株を奪われつつある。

 いずれの場合も、国家が肥大化して非生産的な産業を作ろうとしているケースだ。たとえ雇用が生まれても長続きするはずがない。

 より賢い方法は、建物に断熱材を入れ老朽化した冷暖房設備を買い換えるなどの基本的な対策を取るよう、企業や消費者に促すことだ。

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 こうした効率化は、間接的な雇用創出源だ。ITによる生産性向上がそうだったように、それは単なるコスト節減ではなく可処分所得の増加を意味するからだ。

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 物になるかどうかも分からない特定のグリーン技術に政府が投資するばくちをやめて、「グリーン」をもっと幅広く捉えることだ。

 MGIが言うように、各国政府が産業の「組み合わせ」を微調整したところで競争力は強化できない。必要なのは、個々の産業を向上させることだ。グリーンな発想はそのための戦略の1つになる。

---省略---

 幅広い環境政策は、焦点が定まらず国際競争力を弱めかねないとしばしば批判される。だが実はそこにこそ、将来の成長と雇用創出のチャンスがある』               以上

日本も太陽光や省エネ設備機器に多くの投資をしています。

断熱などのローテクは最近になってようやく住宅版エコポイントや各種補助が出ていますが

いつまで続くのか、またその予算総額がどれだけ景気回復に寄与するのか不透明です。

自動車の燃費は大きく取り上げるのに

自動車より燃料を食う「家の燃費」については専門化レベルの話題で、一般化していません。

建物の省エネ基準を欧米並みに強化して省エネ改修を促進すれば

断熱材の施工というローテクで、新たな雇用と経済活性策になるのではないでしょうか。

 

 

 


中国の火災事故に思うこと2

2010-12-24 17:35:15 | 日記

少し前の話題ですが

昨年の中国北京に続き今年も上海で外断熱の火災事故が続きました。

犠牲者が50人以上も出たんで驚いています。

日本人の犠牲者も出たことにより、日本のマスコミにも取り上げられました。

ネットで検索したら中国では上海以外でもハルビンや新疆ウイグル自治区などでも

外断熱らしき建物が火災事故を起しているようです。

 

上海の事故詳細について私に入っている情報では

外断熱改修工事を入居者がいながらウレタンフォーム断熱ボードを施工していたようです。

日本でも外断熱改修は入居者がいながらするケースが多くあります。

通常のウレタンは引火性が強く

いったん燃え出したら急速に炎が広がるので知られており、

韓国や日本でも事故が頻発しています。

一般的に国内では難燃3級以上のものを使いますが中国でも

同じ性能のものを使っているのか不明です。

昨年からの中国火災事故を見てひとつのことに気づきました。

事故のほとんどは工事中に発生しているということです。

たしか、日本では天井に施工するはずだった不燃性のグラスウールが

引火して火事になった例がだいぶ前にあった記憶があります。

工事中に溶接の火花が可燃物に引火し、その温度が900℃以上で長時間接触すると

たとえガラスでも燃え出すらしいのです。

ウレタン以外の断熱材で火災事故につながったケースというのは

中国以外ではあまり耳にしません。

しかしたとえ難燃性とはいえ溶接などの高温の火花が化学系の断熱材に飛び散り

近くに紙やプラスティックなど可燃性の物が引火してしばらく高温状態が続くと

断熱材から発生したガスに引火して燃え広がる可能性はあります。

完工後の建物はそれぞれのメーカーで防火対策が施されているケースが多いですが

工事中は断熱材が裸です。工事中の防火対策はきわめて重要といえます。

 

ところで、来年の1月14日に東京で外断熱アドバイザー試験があります。

私も理事をしている「NPO法人外断熱推進会議」が主催します。

受験資格者はNPOの会員です。

私は「外断熱マネージメントアドバイザー」の講義を依頼されています。

断熱全般のマネージメントアドバイスならやりやすいけど

外断熱に限られてしまうと、なんか「我田引水」的な感じやなー。

受験資格がNPO会員のみというのも

なんか前時代的な気もするなー。

このブログを読んだNPOのメンバーさん・・・どう思います?

賛成意見が多ければ理事会ででも提案しようと思います。

でも外断熱に限った資格ってどうなんやろ?

 

 

 


建築物省エネ改修緊急支援事業の募集が始まりました。

2010-12-06 13:13:14 | 日記

国土交通省の省エネ改修支援事業の募集が始まっています。 

建築物省エネ改修緊急支援事業サイト(建築研究所)で確認できます。 http://www.kenken.go.jp/shouenekaishu/index.html

今年8月に募集が行われた第2回の募集要項と申請書式とは若干異なるような記述がありますのでよく確認しましょう。 

省エネ率20%以上(ただし10%以上でも受け入れるようです。募集が予算を超えれば性能順位で決めるようです。)

省エネ事業費1000万円以上(ただし省エネ率10%以上であれば事業費500万円以上でも受け入れるとのこと。)・

平成22年度に着手するもので、応募期間12/1~12/22、非住宅対象です。

補助額は省エネ工事にかかる費用の1/3以内 上限は無し。 前回までは上限5000万(うち設備2500万まで)でした。

国交省(建築研究所)は年々ハードルが上がってきています。ということは応募者が多くなり、競争が激しくなったといえるかもしれません。8月は都市部では設備よりも断熱性能を評価されたようです。私の会社や知り合いの方も断熱を強化した計画はすべて採択されました。

地方都市は設備中心でも採択されています。

短期の省エネ効果は設備機器で大きな成果を挙げれますので、国が目指すCO2の25%削減には有効ですね。しかし設備機器には寿命が短いという欠点があります。その点耐久性が高い(耐久性が検証されている)システムを使った外断熱改修は建物の寿命を延ばす効果があるとされているので建物の耐久性向上という、究極の省エネかもしれません。