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Sliding Cafeマスターのブログ

YSL-891Z使用感

昨日、今日とかなり長時間に渡りYSL-891Zを吹いてみました。YSL-697Zに比べボアサイズ、ベルが大きいので当然といえば当然ですが、息の入りが非常にスムーズで何のストレスもなく楽に吹ける感覚があります。同じZシリーズでありながら、その吹奏感、音色はかなり違うようです。697Zはコンパクトな美しい音色で ’小回りが利く’ 印象の楽器ですが、891Zはダイナミクスレンジが大きく、豊かに響く楽器ですね。697Zでは演奏する音楽ジャンル、編成が限られる感じがありましたが、891Zの場合はどんなジャンル、編成でもOK的な印象。オールラウンドで使える楽器です。今まで僕は697Zをメイン楽器として、豪快なトロンボーンサウンドが必要な時やクラシカルな曲調ではYSL-882Oに持ち替えていたのですが、891Zなら1本でまかなえそうです。クラシックでも問題なく使えるくらい豊かな響きがします。

昨日、今日と891Zを吹いてみた印象では、とにかくよく鳴る楽器です。もう「こんなに鳴っちゃっていいの?」ていう位よく鳴る。鳴りまくりです。マッチョな音がします。この楽器ならフルオーケストラにでも爆音のバンドサウンドにでも対等に張れそうな気がします。しかし、豪快に鳴らせる楽器だからといって、小回りが利かないということはなく、音量を抑えた演奏においては甘く柔らかい音色でレスポンスも素晴らしいです。美しいコンパクトなサウンドから豪快なサウンドまで表現できるキャパシティーの非常に大きな楽器ですね。新品時で既にこんなに鳴りまくっているのに、2~3年吹き込んだ後にはいったいどうなっちゃうんでしょうか。


マウスパイプがNYタイプ(ワイクリフ・ゴードン監修)とLAタイプ(アンディ・マーチン監修)の2本付いていますが、それぞれその監修に携わったプレーヤーの特徴がよく出ていて面白いですね。NYタイプは楽器全体を豊かな響きでたっぷり鳴らせる感覚ですし、LAタイプはpp~mfあたりの反応の良さ、音の粒立ちが素晴らしいです。どちらのタイプも非常に魅力的で、現時点まだどちらのタイプをメインで使おうか決めかねているところですが、吹奏の違和感はそれほど無いので、音楽ジャンル、編成によってマウスパイプを交換しても良さそうです。また今後マウスパイプのバリエーションが増えてくれると嬉しいところです。個人的にはスターリングシルバーパイプを作ってくれないかなぁ~なんて思ってますが。



今までにないユニークなデザインのバランサーです。
何となくバットマンのロゴに似ていると思いませんか?

このバットマン・バランサー(勝手に命名)、重量バランスも考慮された上でのデザインなのでしょうか、程よい重さで音色も良いですね。試しにバランサーを外して吹いてみたのですが、やはりバランサーを装着した方が圧倒的に吹奏感、音色ともに良好です。697Zの場合はバランサー設計があまり良くなく、バランサーは外した方が良かったのですが、891Zではバランサーの材質、重量等かなり綿密に設計されていますね。ということは、このバットマン・バランサーを697Zに装着したら697Zの弱点も改善されるかもしれませんね。今度試してみよう。



昔からヤマハのケースはお気に入りなんですが、891Zの付属ケースいいですねぇ~。コンパクトかつ頑丈です。本当によく考えられてますわ。このストラップは重宝します。コンパクト&軽量でいえばゲッツェンのケースが一番なんですが、楽器保護の点に関してはヤマハの方が安心です。


当初、891Zを買ったら697Zは手放すつもりでいたのですが、891Zと697Zを吹き比べてみると明らかに違うキャラクターの楽器で、やはり697Zでなければ出せないニュアンス、音色はあるようです。位置づけ的にも891Zは697Zの後継機種(改良版)ではありませんしね。ジャンルを選ばずオールラウンドで使える891Zは、細管トロンボーンとして完成された楽器だと思うのですが、ジャンルは限定されてしまうけれども697Zのクリアーな美しい音色は捨て難いです。ソロ演奏に限定するのであれば、僕は697Zの方に魅力を感じます。オールラウンドで使える891Zはいわゆる ’道具’ としてとても優れているのだと思います。楽器を仕事の ’道具’ としてとらえた場合、やはり圧倒的に守備範囲の広い891Zの方に軍配が上がると思うのですが、いざ自分自身の音楽を表現するとなると、やはり697Zの方かなぁ~、と思ってしまいます。まぁ、まだ891Zに馴染んでいないので、これから使い込んでいってみないとわかりませんが。

いずれにしても、もし学生さんとかに楽器購入の相談を受けたら、間違いなく891Zがイチオシですね。誰が吹いても吹きやすいのが891Zです。ヤマハの場合、まず ’ハズレ’ というのは滅多にありませんし。でも891Zの登場でますます697Zの陰が薄くなってしまうのが個人的にはちょっとさみしい。。。697Zってホント銘器なんですよ。


最後に891Zに対するSwing Chipの貼付けについてですが、697Zではバランサーを外してマウスピースレシーバー部と主管の2箇所にSwing Chipを貼った方が音色、吹奏感ともにベストだったのですが、891Zで同じように試してみたらいまいち心地良くありませんでした。それなりに変化は楽しめるものの、891Z本来のポテンシャルを上手く引き出せないようです。891Zの場合は何か足したり引いたりしない方が良さそうです。それだけ完成された楽器ということですね。

891Zはヤマハ細管テナートロンボーンの完成形といってもいいでしょう。

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コメント一覧

マスター
naka3さん

そうですか!
ウィンドクルーに入荷した7本は全て素晴らしい楽器でしたから、安心ですよ。
本当によく鳴る楽器です。
naka3
私も891Zユーザーになりました!
前回の記事の中に写っているはずの、マスターも吹かれた楽器かと思います(笑
凄い楽器ですね。pp-ff、上から下まで均一にめちゃくちゃ良く鳴ります。自分の拙い演奏技術でもよくわかります。
acarranger
ものすごくわかりやすいインプレです!
ありがとうございます<(_ _)>

ますます891Zが魅力的に思えてきましたよ!
オールラウンド対応の「職人の道具」としては、理想的な楽器のようですね。
張って吹いたら太管傾向の細管・・というのは、セクションでブリブリ吹いても、ちゃんと周りと溶け合うサウンドが作れそうですね。

一方、やっぱり697Z特有の(2Bとも違う)スウィートさ、スムーズさ、伸びやかさは、僕にとっても大きな魅力です。
"I'm Getting Sentimental Over You" とか、ホントに「あの」イメージ通りの音がしますもん!
アービー・グリーンを神と仰ぐ僕は、これからも当分コレでがんばります。

897FZ、やっぱり出ませんよね(^ ^;)
640もいいんですが、3BFがなかなか気持ちよく吹けるんですよね~。
滅多にお店には入って来ないのが残念ですが・・
マスター
acarranger

さすが、鋭い質問。

>僕の言う「3Bの音の開きがちな点が好きではない」という感覚
この点に関しては、3Bでもタイトで芯のある音を出せる奏者もいれば、派手に音が割れて音が散ってしまう奏者もいるように一概にこの楽器だから絶対こういう音色が出るとは言いきれない部分はあると思うよ。ただ3Bを使う人って圧倒的に後者の方が多いよねぇ。僕は3Bでもきちんと息の量、スピードをコントロールすればタイトなサウンドが出せると思う。そうすれば、3Bならではのスピード感のある音になるはず。そういった意味においては、891Zは3Bのキャラクターに近いかも。ただff時の音の炸裂の仕方というか割れ方に関しては3Bとは少し違った印象で、891Zは太管っぽい鳴りがします。なんというかクラシカル、シンフォニックです。ただ、これも奏者の吹き方次第かも。ひとつ言えるのはバック16系の鳴りではないことは確か。

メロウに吹いた時の印象は、891Zも柔らかい音色で良いんだけど、この点は697Zの方が圧倒的にスウィートでセクシーな音だね。僕が891Zは仕事の道具としては優秀だけど、自分の音楽表現に使いたい道具は697Zだと思うのはこの部分だね。アービー・グリーンのような音を目指すのなら絶対に697Z。


あと、僕はいずれ897Zは出てくるのではないかと思う。バランサーも含め改良すべき点はいろいろあるしね。もし僕が897Zの開発に携わったらきっと素晴らしい楽器が作れると思うんだけどなぁ・・・なんて。

F管付きモデルに関しては、現ラインナップで中細管テナーで630というモデルがあってそのF管付きモデルが640。だからその改良版ということで830、840が出る可能性はあるね。でも、630は吹いたことあるけどなかなか素晴らしい楽器でした。630は初期のカスタムモデルだったしね。だからきっと640も良い楽器だと思うよ。普通に使う分には640で十分だと思うよ。価格も16万円前後で安いし。

細管のF管付きモデルは需要があまり無いから、891ZのF管付きモデルが出る可能性は低いのではないかな。
acarranger
なるほど(・・)!!
実に得心のいく説です!

897Zなんてもし出たら、スタ銀ベルだったりして☆
個人的には3BFのように、891FZ(テナーバスモデル)なんか出てくれるといいなぁと思います。
(今、3BFが欲しいんですよ~w)

質問です。
僕の言う「3Bの音の開きがちな点が好きではない」という感覚、マスター先輩ならきっとわかっていただけると思うのですが、その点891Zはどうですか?
強めのアタックで張って吹いた際のイメージ、メロウにリリカルに吹いた際のイメージ・・
情緒的表現でも構いませんので、そのあたりのインプレも絡めつつw、ぜひお願いします<(_ _)>
マスター
acarranger

型番から見ても891Zは691の後継機種的位置づけかも。
バストロのダグラス・ヨー・モデル622の後継機種が822だったから。
ヤマハは6シリーズの後継機種(アップグレード版)が8シリーズみたいだね。
ということは、そのうち697Zの後継機種で897Zなんてのも登場してくるのだろうか。。。
マスター
Johnさん

お久しぶりです。
2本のマウスパイプの長さ以外の違いは、NYタイプがテーパーの広がりが大きく、LAタイプはテーパーの広がりが緩やだということだそうですよ。
acarranger
なんてわかりやすいインプレ!!(≧∇≦)

YAMAHAの細管テナーとしては、8510、691ラインの究極モデル・・という感じなんでしょうね。
(8610、695ラインではなく、まして895ENラインとも違う)

3B的な「開きがちな音色」は、僕はやや苦手なのですが、891Zはそういう印象ではなさそうですね。
いいなぁ・・やっぱり欲しくなってしまうw

「バットマンバランサー」を697Zに装着してのインプレも、心待ちにしています!!
Johaness改め
早く吹いてみたいです・・
大変ご無沙汰してます。
まずJohanessはタイソーなのでこれからはJohnとさせていただきます・・

読ませていただきました。
見ても吹いてもいないのに非常に理解できたような気がしてます。
是非とも早く吹いてみたいものの残念ながら大阪ではまだ影もないようです・・

質問なのですがマウスパイプが長さ的に2人の奏者のイメージが逆のような気がするのですが実際長さ以外の違いもあるのでしょうか?
で、言われるように今後材質のバリエーションも増えていってくれたらますます楽しみな楽器になっていくでしょうね~

長くなりますが、実はずっと読ませていただいてたものの、私はこれといった話題もなく過ごしていました。でもオイシイ情報の連続で非常に感謝しておりました!
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