むらくも

四国の山歩き

鈴ヶ峰(徳島県)

2009-11-16 | その他<徳島の山>

鈴ヶ峰  すずがみね


登山日  11月14日
標高   394.7m
登山口  徳島県海陽町宍喰
駐車場  なし(ただし、登山口を過ぎて林道終点にちょっとした広場あり)
トイレ  なし
水場   なし(近くの沢に降りると水は豊富に流れている)




NHK朝ドラ「ウエルかめ」の舞台になってる日和佐から南西に直線でおおよそ30kmに位置する宍喰に、国指定天然記念物のヤッコソウが生える里山がある。ヤッコソウは熱帯性植物で四国では高知県と徳島県にしか見ることが出来ないそうです。徳島ではこの鈴ヶ峰と海部の妙見山(明現神社)にもあって、ここが北限地のようで、辺りの海岸線は室戸阿南海岸国定公園で風光明媚、自然がいっぱいの景勝地です。
里山のもっともいいところは、地図やコンパスはポケットにしまい込んだまま、多少迷ってもいいという気楽さでしょうか。ちょっと木の上に登ったり高いところに立てば、そこからは川や田圃や町の風景が見えます。





自宅から往復8時間近く掛かるため、行き先はこの日はこの山だけ、目的はヤッコソウと山頂からの展望のみ、帰りは何処にも寄らず温泉に入る。と決めて5時起床、いつもどおり、わんちゃん散歩、準備して出発、ところが忘れ物をしたりで、ロス、結局家を出たのが7時。徳島自動車道を降りて55号線を走り、宍喰から県道301号へ、1km少しのところで左側に交番があって、鈴ヶ峰登山口の案内板があるのでそれに従って行くと、11時前、登山口に着く。(写真左は下山後に撮影した鈴ヶ森、右写真は登山口へ行く林道分岐と鈴ヶ峰への案内板)





天気予報では午前中雨か曇りでしたが、晴れ間が出ました。しかし、空気はひんやりして冷たいし、いつ雨が降ってもいいようにザックに傘を入れ、長袖シャツにチョッキを着込んで林道手前から歩く。ほんの少しのところで第一番霊山寺のお地蔵さんがあって、柿の木の前にはヤッコソウ発生地の説明板がありました。ここはどうやらミニ八十八ヶ所の出発地でもあるようです。




お地蔵さんの横には「鈴ヶ峰観世音道」の石塔。そして丁石ならぬ町石。




雨が振った後の林道をシャカシャカ上っていく。ヒヨドリが甲高い鳴き声で静寂を突き破る。




林道終点には広々とした車の回転場があって、この近辺に駐車が可能なようでした。すぐに木の階段があって、右下、沢からはザワザワと勢いよく流れる水の音が聞こえてきました。




町石とお地蔵さんが津々と登る人を案内してくれます。櫨の木でしょうか、里山での紅葉一番手の木、標高100mにも届かない地点です。




間もなく傍らにお地蔵さんがあるシイと思われる木を見つけました。ヤッコソウが寄生する木を調べてみたところ、スダジイとツブラジイとがあるとのことですが、見分けがつきません。いずれにしても、ジイ・ジイ、孫が後ろから甘えた声で抱きついてくるような気が…(ナンノコッチャ)。標高130mの展望所に着きました。ベンチで一休み。ここにもスダジイかツブラジイの木。




大きく繁った枝先からは街並みと海が見えました。シイの木の下をくぐるようにして…。




町石には登り口から気になってた文字が刻まれていますが、楷書体ですら読めない字がたくさんあるというのに、なんやらスラスラと崩れまわった字は、よう読みません。ですがよく見ると、○△屋□▽×右衛門とか●▲■兵衛の字のようなものがチラホラ。この町石を施工寄贈した方のお名前が刻まれてるようです。11時44分、傍らのお地蔵さんは不動明王・青龍寺。




木洩れ日の植林地を登っていくと、ここにも大きなヤッコソウ説明板(環境庁)が施されていた。辺りをキョロキョロ。足元もつぶさに、目を皿のようにして…、シイの根元を見詰める。




わ~い\(^^)/一番左下のは雄しべの帽子を被ったヤッコ。その右隣は受粉した雌しべのヤッコでしょうか、頭が少し黒くなってます。その右隣はヤッコそのものの姿で手を広げてますが、これも受粉後でしょうか、頭がほんのちょっぴり茶色くなってきてます。手を広げた脇には甘い蜜があるそうですが、あまりにも小さくて、爪楊枝のさきっちょでもどうかなという感じでした。盛りは過ぎてるのか、蜂なども飛んでなくて、もう蜜はでていないかもしれません。




こんなにたくさん密生するんだ。小豆島の猿だんごとまではいきませんが、モゴモゴもぐれつくように…。ほとんど受粉後のヤッコソウのようですね。因みに天敵はこれを食べるノウサギだそうで、もっとも恐いのはシイの木を切ってしまったり、土を踏みつける人間だそうです。ヤッコソウは山道へも進出していますが、わずかに踏まれないように、登山者たちが周りに細々とした木の枝を立てているだけでした。




妻は夢中になってカメラを構えてますが、背中のザックが亀の甲羅に見えました。しかし、国指定の天然記念物の割には、保護されているようには見えません。環境庁は看板を施すだけなんでしょうか?膨大な予算と税金はどのように使われているのか疑問を持ちました。そういえば絶滅危惧種もレッドデータブックで示すだけで、積極的に保護をするために税金を使っているようには感じられませんが、どうなのでしょう?長い時間、ヤッコソウたちを観察した後、苔むした石段を上っていきます。




シイの大木?こちらにも?
スダジイとツブラジイの見分けは学者たちでもこれといった区別がつかないようで、わずかに木も葉も実もスダジイの方が大きいという程度だそうです。調べても実際はどうなのかそれすら分かりませんでした。




圓通寺廃寺に着いたようです。




往時のお寺が偲ばれます。苔むした石段と石垣を見ていると、口ずさんでしまいました。♪山寺の~和尚さんが~♪と唄うとすかさず妻が♪ポンポンポンポン♪とあいを入れる。まりはけりたしまりはなし~♪ポンポンポン♪猫をかん袋に押し込んでぽんとけ~りゃ、ニャンとな~く♪…可哀想に。




わたしたちはここで道を間違えました。お寺の階段を上がって、右奥から登っていくのが正解ですが、左奥へと進んでしまいました。ですが、ここでもヤッコソウが見られました。そのまま上へと行くとお地蔵さんのある、尾根筋に出ました。




尾根を右へと歩くとすぐに四国のみちの道標、直進して山頂へと向かう。青空が見えてきました。




ベンチのあるところに…。奥に三角点。天気予報に反してこんなにお天気がよくてラッキーな日になりました。ポカポカと温かい陽射しを浴びて、おひるごはん。その前にここまで汗かきながら我慢して履いていたズボン下を脱ぐことにしました。すると妻がすかさず「えーっ!」と大声をあげるじゃないですか。目を見ると「嘘やろ、信じれん」みたいな…。はい、わたしはヤッコソウが寄生するジイジイです。ここのところの気温の変化に身体が対応できないんですっ!半袖一枚になり、ズボンを捲り上げる。どうだ、これで短パン姿の生きのいい、若いにいちゃんになったろうが。




眼下には青い海の紀伊水道太平洋(誤り訂正…親切な方のご指摘により、2016年4月19日訂正)とのんびりした宍喰の町。




緩やかに流れる宍喰川、その向こうは高知県の東洋町と室戸岬方面。




パノラマ。




山頂でのんびりくつろいで下山。ヤッコソウの寄生するシイの大木はどうやら葉がついてなくて、枯れているようでした。




シイとウバメガシなどの自然林を過ぎて、再度、シダなどの茂る植林地へ。




展望所へ降りる。もう一度宍喰の街並みを眺めていると、ちょうど阿佐海岸鉄道の車輌が一輌ポツンと駅に止まってるのが見えました。ほんとうにのんびりっとした風景です。里山はほんとうにいいですね。




風もなく鏡のような入り江と紀伊水道太平洋。この山の沢筋はアキアカネ(多分)の生息地のようです。高山から里に下りたアキアカネがあちこちで飛んでました。




ナンバンギセルとアザミ。




イシミカワの実。登山口に帰り着きました。このあと行く山はなし、近くのホテルリヴィエラのヌメッとしたお湯に入って、帰ります。今日はビールは飲みません。





<所要時間>
登山口11:05-11:25展望所11:33-11:50ヤッコソウ群生地12:12-12:35鈴ヶ峰山頂13:33-13:47ヤッコソウ群生地14:02-14:48登山口


(注)GPSログではありません。概念図です。