三嶺、カヤハゲ(東熊山)、平和丸、高ノ瀬、丸石、次郎笈、剣山
みうねもしくはさんれい、かやはげ(ひがしくまやま)
へいわまる、こうのせ、まるいし、じろうぎゅう、つるぎさん
山行日 2013年7月10日~11日
標高 1893.4、1720、1700.m、1740.8、1683.8、1929、1954.7m
登山口 東祖谷名頃
下山口 東祖谷見ノ越
駐車場 登山口、下山口双方にあり
トイレ 名頃、三嶺ヒュッテ、剣山山頂ヒュッテ、西島駅、見ノ越
水場 三嶺の池150m南下、白髪避難小屋50m南下、高ノ瀬南面岩の下、次郎笈トラバース道
、剣山トラバース道2ヶ所、西島駅、見ノ越
メンバー 単独
いつもの散歩道ではしきりとキリギリスが鳴きだした。
今年は例年より梅雨が明けるのが早かった所為もあるのだろう、合唱する個体数が多く、大オーケストラ、喧噪そのもの。
キリギリスと言えばイソップ物語「アリとキリギリス」子どもの頃この話を聞かされて、イヤな思いをした。
言って聞かせてるヤツがどうにもイヤミな感じで、遊んでばかりいて働かない怠け者はキリギリスのような運命になるんだぞ、みたいな、勉強嫌いなわたしには胸にズンと堪えた覚えがある。
しかし、ひねくれ者はそんな作り話聞かされても、その後も勉強はとんとしなかった。
胸に重石になって堪えるのと、実際の行動とは直接結びつかない子どもだったようだ。
夏休みが終わると、あれやこれや、これでもかと出された宿題は、表紙に名前だけ書いて、中はまったくの白紙で提出した。
不思議なことに注意された覚えはない。
担任は放任主義のいい先生だった。
このアリとキリギリスには裏話がある。
アリは自分たちのためにせっせと働くが、それはあくまでも自分たちのためにだけで、こういう人間は独善的でケチで他人の痛みをしろうとしない冷酷人間だ。
いずれにしても生あるものはいつかは死が訪れる。
キリギリスは生涯バイオリンを弾いて、精いっぱい楽しく生きたんだから素晴らしい。
こういう考え方もあるんですね。
キリギリスにしてもアリにしても、人間が勝手に自分たちの表面的な姿を見て作り上げた話で、迷惑なことです。
地球の生きものは、すべて命を繋いで生きていく。
みんな一生懸命なんだわ。
ただちょっとだけ繋いでいく方法が違っているように見えるだけのこと。
アリもキリギリスも変わりゃしないよ。
せっせと働くことを諦めてしまったわたしは、今日も山へ歌いに行く。
なんかよく分からんプロローグというかモノローグになったわ。
ということで山泊第二弾、前回の葛籠堂から剣山・次郎笈を繋ぐべく、三嶺~剣山を歩くことにした。
ところでキリギリスはなんでギリー…チョンと歌うのか、アリはなんで黙々と働くのか?
分かったら苦労しない。
当人たちの勝手でしょ。
しかし、昆虫の世界は厳しい。
アリの雄は一ヶ月ほどで成虫になり、メス(女王アリ)と交尾するとコロリと死ぬ。
女王アリは栄養たっぷりに食事をとり、延々10年以上生きる。
カマキリは交尾を終えるとメスはオスを食って栄養にする。
人間の世界も同じような…男は強いようで実際は弱い、生涯馬鹿な夢を見る、そして破壊的だ。
女は弱いようで強い、夢も見るが現実的だ。
いかん、何が言いたいのか、とうとう惚けてきたわ、いよいよ訳分からん。
剣山~三嶺は四国のゴールデンルート、四国外から多くの登山者が訪れる。
ときおり外国の方も歩かれ、縦走中の方に2回ほど出合ったことがある。
そのうちの一組は日本語を話すことができなかった。
オーマイガット。
日本人が片言も話をすることが出来ない英語圏以外の国へ行くのと同じことで、よくぞ迷わずに登山口まで来て、縦走出来るものだ。
勇気いるわ。
猛暑が続いている。
前回よりも持参する水の量を1リッタ-増やし2リッターに、食糧も少し増やした。
ザック重量はカメラなども含めると18kg、これで1泊2日分だからやりきれない。
2~3泊の山行になってくると20kg前後になるが、正直体力的にもたないわ。
軽くするにはどうするか、わたしにとっては今後の重要な課題だ。
貞光からR438号線を走った、合歓の木にふわふわっとしたピンクの花が咲いている。
早朝の川沿いの道は散歩する方が多い。
女性が圧倒的に多いのは男性よりも健康志向が強いのだろう。
土釜の手前の対岸に落差の大きい滝があった。
細い滝なのでいままで気がつかなかったが、ちょっとした展望所がある。
他にもちょこちょこ道草をしながら、自転車を見ノ越に括りつけて、名頃に。
途中の奥祖谷二重かずら橋のところでは受付のおばさんだろうか、掃除をしたりして準備中。
8:34、ザックのウエストベルトを思いきり締め上げて名頃登山口を出発。
ウエストがキュッと引き締まり、モンローウォーク(気持ワル)。
登山道からはダムの発電所が左下方の谷底に見える。
しばらくで三嶺林道に、左手に歩いて崩れ落ちそうな階段を上り、意識的に歩調をゆっくりめにしながら尾根に乗る。
平日とあって、歩く人は少ない。
気さくに話掛けていただいたご夫妻と、単独男性にお会いしたのみだ。
1517mPに近づいた。
四ツ小屋谷川上流の谷の向こうにこれから向かうカヤハゲと白髪小屋の笹原、その右奥に白髪山の頭が覗いている。
シカ避けネットが張られた緩いダケモミの丘を歩くが、四ッ小屋谷川方面の踏み跡にはテープが張られており、通行止めの様子だ。
最近、登山道がやや荒れてきており、道迷いもあったことから、テープが張られたのだろう。
踏み跡の先には三嶺林道の東屋もあるので、完全な通行止めではなさそうだった。
たぬきのかんざしで親しまれているマユミの木の下を潜り、やがて展望のいい石ザレ斜面を登りだす。
遠くに特徴のある次郎笈・剣山が見える。
30m先に水場と書かれた道標を過ぎ、岩場の下に作られたテキサスゲートを渡る。
鹿避けネットもテキサスゲートも真冬にはほとんど雪に埋まってしまう。
先ほど通過した石ザレの斜面は特に旧勾配で、積雪時には危険なところだ。
赤い屋根のヒュッテには寄らず三嶺山頂へ。
池の縁を通るときに生きものがいないか水面を覗いてみたが、やや赤く濁っていて、動く物は見えなかった。
サンショウウオが棲んでいそうな感じなのだが、見たことはない。
瓶が森の瓶壷には小さなサンショウウオがいるそうで、生まれて間もない小さい頃だけ壷の中でジッとしているとか。
いつ見ても優美な景色だ。
立ち止まり、眺め、カメラを構えては、山頂に立つ。
誰もいなかったが、やがて白髪山から縦走してきた若者三人、登る途中でお会いしたご夫婦、単独男性の方たちが次々と到着。
蠅に混じってアブが身体の周りをブンブン飛ぶ。
油断してるとシャツの上に止まり、プチッと咬みにくる。
ペシペシッ!
敵はすばしこい、負けておれず、5回に4回ほど空振りして自分の身を叩くが、一度くらいはヤツをペシャンコにした。
山頂に咲くイワキンバイ。
コンビニで買ってきた巻き寿司を食べ終え、みなさんとお別れして白髪方面へと下る。
今年初めて出会ったシコクフウロ。
秋に種ができたら採種して、自宅で実生で育ててみたいと思うが実現していない。
テキサスゲートを越えて、三嶺にお別れ。
展望の好い大岩を過ぎ、鞍部からカヤハゲに、青空に2羽のトンビがゆっくりと輪を描いている。
1羽が頭上すれすれに近寄ってくる。
目が合った。
鋭い目がくるくると動いている。
視力は人間の8~10倍、相当な上空からカヤネズミなどを見分けることができる。
アフリカのマサイ人は昼間の星が見えるそうで、視力は8だそうだ。
トンビには昼間の星などチャンチャラチャン、歩いている人間の服を透かして見ているかも知れない(信じないように、いつもの大ボラです)。
オトギリソウ、昔は血糖値を下げるなど漢方薬として重宝されたらしい。
白髪分岐が近づき、三嶺がだいぶ遠くなった。
14:22、白髪小屋に到着したが、だいぶ疲れてきた。
一先ず小屋に入って休むことにしたが、先に進むかどうか、ザックを床に降ろしながら思案した。
このまま進むとして、丸石小屋へはまだ2時間半以上掛かりそうだ。
予想到着時刻は夕方5時半頃。
次郎笈にはそれからさらに1時間半程度で、予想到着時刻は日没後の7時半~8時頃になるだろうか?
次郎笈まで行ったとして、翌日は剣山に登って下山するのみ、朝の9時には見ノ越に降りてしまうことになる。
丸石小屋は以前南京錠が掛かってたことを思い出す。
ここでゆっくりして、明日早朝に剣山へ縦走するのには時間的にも余裕があるし、いいんじゃないか。
予定変更、白髪小屋泊に決定。
夜の星を眺めるため、小屋のすぐ傍のテン場でツェルトを張ろうかとも思ったが、これも止めた。
小屋があると、やはり寝るにも荷物を広げるのにも、汗で濡れたシャツを干すにも楽なのです。
日が沈むまでテン場の石の上に腰掛けて、ゆっくりと流れてゆく時間と、変化してゆく山や空の色合いを楽しむ。
残念ながら期待した夕焼けは低い雲に遮られ起きなかった。
チャチャットと食事を済ませて、シュラフに入り、ラジオを聴きながら、単行本を読む。
夜、自分の鼾で目が覚め、慌てて外に出た。
ヘッドランプの先でシカの目が光っている。
15mほどの距離だが、逃げない。
しばらくしてピョンと跳ねた。
笹原を跳ねるが、まったく音を立てない、不思議だ。
空を見上げた。
小さな星たちが夜空いっぱいに広がっている。
天の川もくっきり、感動とともに、わーっと吸い込まれそうな気がした。
しまった、三脚を持ってたので写真を撮れば良かったのだが、いつものオオボケだっす、後の祭り。
小屋に入ったあとも、シカたちは周りで歩いたり走ったり、このときは音がガサゴソと聞こえてくる。
やがて静かになり、心地よいいい眠りについたようだ。
夜中にときおり小屋をトンと叩くような音がしたが。
夢???
7月11日(木) 二日目
グッモー、4時起床、外はまだ暗い。
起きて、朝陽を待つ。
4時12分、東の空が白みかける。
食事の準備。
広げたものを片付け、出発の準備。
5時11分、剣山の少し左側から太陽が顔を出した。
歯をカショカショと磨いて、5:23、出発。
空気は凛として爽やか、山を歩くには、やはり早朝のこの時間だね。
7時やかでは遅い。
8時!とんでもなく遅い。
そんな山歩きしてたんじゃ、ダメだわ。カハハハ
山歩きの醍醐味はこの景色だ。
光が歓びに満ちあふれ、乱舞している。
津志嶽~黒笠山の眺め。
写真を引き伸ばして、壁に掛けようかなっと。
石立山
白髪山と雅の丘。
後方は口西山をはじめとする物部の山々。
矢筈山~黒笠山~津志嶽
耳に届く音はなにもなく、静寂のみ。
空は淡い青一色。
三嶺がだいぶ遠くになった。
平和丸の山頂には昨年にも来たが、山頂標識はなかった。
どなたかが、風で飛ばされた山頂標識を見つけて、立てたようだ。
6:20、緩やかに笹原が広がる1732mPが近づいてきた。
昨年にここから名頃ダムへと下ったことを思い出す。
あのときはガスってて、景色は真っ白だったな~。
虫たちも眼を覚まして活動しだした。
シコクアザミの鮮やかな花、花から花へと蜂が飛ぶ。
朝の登山道は、小動物立ちのうんこの山。
人間ほどに汚くは見えない
ところどころで獣の臭いが漂ってくる。
どこからか、大きな乳をぶらんぶらん揺らしながら、親牛・子牛が現れそうなのんびりした景色。
シカの鳴き声が聞こえてきた。
警戒音ではない、親が子を呼ぶときのような鳴き方だ。
ピュ~、真似て声をシカの方に向け発してみた。
その後鳴き声は聞こえなくなった。
やがて1732mPも遠く後方に去り、右手には中東山の丸い頂が見えてきた。
中東山はここから2km余り、ほぼ真南に位置する1684.6mの山で、わたしはまだ登ったことがない。
頂直下の尾根には一本の踏み跡がくっきりと見えていた。
白髪山から別府峡温泉に至る林道が崩壊したいま、西側にある中東山への登山口には近づけないでいる。
石立山分岐の道標には中東山へ2.2km、石立山へ6.2kmと記されていた。
過去この稜線は歩きにくい藪だったようだが、最近は随分歩きよくなっているらしい。
わたしには、機会があれば是非歩きたい稜線のNo1候補だ。
しばらく、小さな岩場に座り込んで、瞼にその景色を焼き付けてはみたが、帰宅したら消えていた。
にわとり並みのノンコの悲しさよ。
7時半、高ノ瀬山頂が近づいてきた。
ここへは何年か前に妻とオオヤマレンゲを見に来たことがある。
オオヤマレンゲがなければ、なんの特徴もない山頂で、この日もどこがそうだったっけという感じで、いつの間にか通過してしまった。
しかし、昔見た風景とは随分と変わってしまったなという印象で、オオヤマレンゲになんとなく元気がないように思われたが気のせいだろうか。
(※写真はオオヤマレンゲとは異なる木)
8:21、奥祖谷二重かずら橋への分岐に到着。
日が高くなり、気温が上昇してきた。
どこからかオオルリの鳴き声が聞こえてくる。
すぐに丸石避難小屋、鍵が掛かっていて、小屋の前には焚き火の跡がある。
8:49、丸石に到着。
汗が流れ、しばし休憩、ペヒペヒ、立ち止まるとアブが寄ってくる。
この時間にここから次郎笈を眺める景色は最高だ(右から次郎笈、剣山、丸笹山)。
昨日、強行してここを歩いていればどうなったことやら、疲労困憊で景色を楽しむ余裕は生まれなかったのじゃないかな。
目の前の木から蝉の鳴き声、ジーギー…ジョーギー…ジギジギジギ~。
丸石からアザミロードを下りながら、鞍部に目をやると、道は三叉路になり、右へと下っているのが見える。
右手下方には剣山スーパー林道が走っており、次郎笈から駆け下った前方にはやや低く不入山、新九郎山が嫋やかな線を描いていた。
※写真は石立山方向に見たスーパー林道とその法面
次郎笈がぐんと近づく。
カッコーの鳴き声が木霊する。
次郎を撮って、太郎を撮らないわけにはいかない。
トンボがしきりと飛んでいる。
アキアカネのようだが、細い胴体はまだ黒い。
次郎笈巻き道との分岐点。
昨夜、白髪小屋でごはんを焚くのと、飲料水として用意した麦茶が足りなくなったので麦茶を作ったが、2リッターのほとんどを使い切ってしまっている。
一先ず、山頂に登って、再びこの分岐まで降りてきて、250m先の巻き道途中にある水場で水を確保するべきか迷った。
ここからは剣山まで2時間と掛からずに行くだろう。
ヒュッテで蕎麦をいただいて、お茶を飲めば、あとは下山するのみだわ。
汲むのは止めた。
10:35、次郎笈山頂。
だーれもいない。
すぐに下山しながら、いままで歩いてきた三嶺までの稜線を振り返る。
ナナカマドの花は終わっていた。
11:33、剣山山頂。
測候所跡への木道を辿り、ヒュッテへ。
月見蕎麦を食って、おつゆも全部飲んで、お茶を5杯、がぶ飲み。
あ~、人心地ついたわ。
わずか二日間の山旅は、終わったね。
咲き残っていたイシタテクサタチバナ。
ぽつぽつと登ってくる方たちと挨拶を交わしながら、ゆっくり下る。
持参した水4.5リッターのうち4リッターは使ってしまったし、7食用意した食料は3食を食ってしまった。
まだ4食残ってはいるが、ザックは軽い。
水を確保すれば、もう一晩泊まれるわ。
見ノ越で抹茶ソフトクリームを食べて、空身で自転車で名頃まで。
名頃で車に乗って、見ノ越へ引き返している途中、ふと右に目をやると、民家の軒下でシロ(わんちゃん)が舌を出してヘロヘロの様子。
可哀相に、いったい気温は何度あるんだろう?
この二日間で、真っ黒けに焼け焦げた。
今夜のお風呂はしみるだろうな~。
二日間の汗をさっぱりと流した後、冷たいビールをちょっこしいただくことにしましょう。
一日目
名頃登山口8:34-11:40三嶺12:22-カヤハゲ(東熊山)13:27-14:22白髪避難小屋
二日目
白髪避難小屋5:23-平和丸5:54-6:50石立山分岐7:09-高ノ瀬7:31-奥祖谷二重かずら橋分岐8:21-丸石小屋8:23-8:49丸石9:08-次郎笈10:35-剣山11:33-11:39剣山山頂ヒュッテ11:55-12:14西島駅12:28-見ノ越12:55-(自転車)-13:24名頃
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