落合峠から烏帽子山周回 6月14日(日)
- 烏帽子山(えぼしやま)
- 標高 1669.9m
- 登山口 徳島県三好市東祖谷落合
祖谷山系の山で四国100名山の一つとして有名。寒峰から落合峠への縦走路から外れて、北奥へ入り込むこと1時間弱の山で、その山容が平安時代以降公家たちの間で被られた帽子にそっくりの姿をしていることで一目で見分けられる。落合峠から落禿を経て前烏帽子へ立ち、そこから見る景色は素晴らしく、360度の眺望だ。
この山の山頂に立つには一般的には二つのルートしかない。一つは三加茂・祖谷山線にある造林小屋から急勾配を登るか、落合峠から前烏帽子を経て一旦深い笹のある鞍部へ下り、そこから登りかえすかのどちらかだ。踏み跡はどちらもはっきりしているが、そんな状況なので隣の矢筈山や寒峰に比べると人気は今ひとつだ。
過去に一度落合峠からピストンをしているので、今回は是非ともということで落合峠から前烏帽子を経由で烏帽子山頂へ行き、そして造林小屋へと降り、日浦谷を横切って落合峠へ登る周回ルートを歩こうと思い立った。
ナビを入れると三加茂から桟敷峠を経て、落合峠へ至るルートが案内され、所要時間1時間半と出た。しかし、そのナビを信用せず、わざわざ、大歩危・小歩危廻りで落合に行き、峠へと上る。結果、家から2時間40分もかかってしまった。はれま、こちらのほうが距離は遠いが時間が掛からないと思ったのだが…。
お天気は早朝の時間帯は曇り、6時以後はだんだんと晴れ間が出るとの予報だった。そのとおりの結果で峠に着いた8時頃にはガスが徐々に薄れ、向かいの天狗塚や三嶺辺りの稜線が見えるようになっていた。登山口の少し広い道ぶちに車を止め、靴を履き替える。先着車は香川と倉敷からの車が一台ずつ、カメラを手に持った頃にさらに倉敷からの車が二台三加茂からやってきた。みなさん矢筈山へ登られるとのこと。
1530mの標識のある登山口から短い笹のある道へと入り、出発。心地よい風が吹き、半袖では寒いかなと思ったが、そのうち身体が温まり、気温の上昇とともに汗が出てくるだろうと考え、足元の花たちを愛でながらゆっくり歩く。
峠に着いた頃、次第にガスが退き、西から晴れ間が広がってきた。天狗塚のピラミッド頭はまだぼんやりガスの中。登山口標柱より笹原へ踏み出す。
足元ではアザミやスミレ、そしてニガナなどの野山の植物の花が咲き、振り返ると落合峠には駐車中の車が増え、人の姿が見える。ほとんどの方たちが矢筈山に向かっている。
峠からひょっこり頭が見えていた落禿がもうすぐで着くところにきた。頭がだいぶ薄くなりかけている者としては非常に気になる名前の山ではある。由来はどこからきているのだろうか、勝手に推測するには落合峠の傍らの禿げ山で略してオチハゲなんだろうか。最近は帽子を被ることが欠かせない。などと考えながら登っていると上から単独の男性の方が降りてきた。倉敷から来たという。烏帽子山ピストンとのこと。健脚でもここまで2時間はかかるので峠を6時頃に出発したことになる。
紫色の可愛い小さな花があちこちでたくさん見かけた。ヒメハギだと教えてもらった。独特な山容の烏帽子山までの稜線が遠くに見える。
ミヤマハコベとクルマムグラだろうか。野山の植物は一目で分かるものと葉や花そして葯や萼や髭など微妙に異なるものがあって、素人にはなかなかに分かり難く、いつも「だろうか?」で済ますか、「スミレ」などの言い方で一括りで済ましてしまう。鳥なども同様で、姿が見えないものだから鳴き声で聞き分けようと努力はするのだが、ややもするとウグイスとホトトギスを最後の語尾の鳴き声(ケトケト)だけ聞いて間違えてしまうのだから、たいしたもんだと感心してる。
鎖場に来た。頭から真っ逆さまになって落ちないよう十分に用心して降りる。こんなところでつまずこうものなら、醜い顔がますます見られなくなるのは請け合いだ。信号機のように、落ちるときの一瞬は青くなり、落ちたあとは血で真っ赤に変わる。くわばらくわばら。
キバナツクバネウツギにドウダンツツジ、こんなにたくさんの種類の花があるのだから女性に人気があっても良さそうに思うのだが。最近では比較的厳しいコースである石鎚の東陵や笹倉湿原から筒上山への尾根などが、花の時期には黄色い声で賑わしくなっているのでそのうちここも人気の的になるかもしれない。それとももっとピンクピンクした花が咲かないと駄目なのかな?
一旦深く鞍部へ落ち込んで、再度目の前の前烏帽子へ這い上がらないといけない。三角点のある山頂で人が動いているのが見えた。
自分では足取りはグイグイと登ってるという感じだが、傍から見るとヨタヨタ歩いてるんだろうな。木もれ日の落ちる清々しい自然林の道を身体全体で感じながら一歩一歩進んで行く。
前烏帽子に着いた。女性が一人、挨拶と同時に寒峰へ去っていった。60Lくらいのパンパンに膨れたザックを背負っていた。身のこなしからもただのハイカーではなさそうだ。道標には寒峰まで3km烏帽子山まで1kmとある。
喉を潤ししばらく休憩したあと西の寒峰方向とは90度異なる北への烏帽子山へと向かう。段々2段腹を過ぎ、テンニンソウの群生地を下り、鞍部へどんどん降りていく。
踏み跡ははっきりしているが、笹がだんだんと深まり、胸からもっとも深いところで頭まで覆い被さってきた。笹越しに烏帽子山の西絶壁が目前に迫ってくる。
笹をかき分けかき分け、汗が額から流れ出す頃に山頂にたどり着いた。ハイタッチ、時刻はまだ10時半だったが朝ご飯が早かったため、お腹の虫が鳴っている、食事にすることにした。ビールを飲んだため食後のコーヒーは止めにした。さてここからは初めて歩くコースになる。慎重に地図を見、コンパスで造林小屋の位置を確かめておく。しばらくは稜線歩きになるようだがそのあとは谷へと下るようだ。
おおよそ1kmも稜線を歩いただろうか、やがて踏み跡は右に振り植林地の谷へと急速に下降した。どこかでコマドリが鳴いている。やや踏み跡が不鮮明になってるところもあったが、植林の幹には白いペンキで印が施されており、辿っていくと谷川のせせらぎの音とともにバイクのエンジン音が聞こえ、造林小屋の下にあるアスファルトの道に降り立った。ここが造林小屋登山口で、すぐ傍には橋があり「第1号橋梁」と書かれている。
少し休息したあと30mほど登り返し、左への小さな橋を渡る。
いくつもの崩れ落ちそうな鉄の橋をおそるおそる渡り、左下に滝を眺めながらゆるゆると登っていく。やがて爽やかなブナの原生林に入り、ジグザグのつづれ折れの登り坂に差し掛かる。単独の若い男性が静かに降りてきた。峠はもうすぐですよとのこと。アスファルト道に飛び出る。入口には木に赤テープが巻かれ、細い枝にはいくつものテープが目についた。峠までは200mそこそこの歩き、東祖谷雨量観測所が峠頂上近くに建っていた。落禿手前で見たたくさんの車はもうすでになく、わずかに3台だけになっていた。
<参考>
落合峠登山口8:08-落禿8:39-9:29前烏帽子9:39-10:28烏帽子山11:24-12:28造林小屋登山口12:38-14:10落合峠登山口
※烏帽子山山頂には西方向に濃い踏み跡があったが多分西側絶壁からの展望が得られる場所へ行く踏み跡でないかと…情けないことにこの山に二度訪れて、二度ともこの踏み跡を確認していない。あ~、三度目に訪れることがあるだろうか。もしも訪れることがあったなら、心残りのこの踏み跡の先を是非この目でしかと確かめたいものだ。北へも薄い踏み跡があるがこれは林道烏帽子線へ降りる道だろうと思われた。
(注)GPSログではありません。概念図です。